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【くらま】日本DDH物語 《第二三回》米海軍エセックス級対潜空母の中古取得への関心

2017-09-09 20:00:23 | 先端軍事テクノロジー
■エセックス級とHSS-2/S-2
 海上防衛、着実な防衛力整備とともにそれ以上の度合いで増大する脅威へ、アメリカから中古空母導入を求める声が内外より在りました。

 第二次防衛力整備計画において海上自衛隊は着実な防衛力整備を進める一方、23000t型対潜空母構想等、幾つかの国産航空母艦導入への研究が進められたのは前述のとおりですが、海上自衛隊ではアメリカ海軍が第二次世界大戦中に大量建造した大型空母エセックス級の供与を受ける可能性が研究されたという。当時は中古空母が世界中に輸出された時期です。

 第一次防衛力整備鋭角当時、海上自衛隊は沿岸対潜哨戒任務に充てるべくS-2艦上対潜哨戒機をアメリカより導入しましたが、この際に運用研修を行ったのはエセックス級空母の対潜空母プリンストンで、海上自衛官による発着艦訓練も実施しています。回転翼航空機を除けば、海上自衛官が実際に空母へ発着艦を行ったのは極めて異例といえるでしょう。

 S-2艦上対潜哨戒機の導入を敢えて対潜空母艦上において実施した背景には、将来の艦上での対潜哨戒機運用を念頭としていたとも考えられています。海上自衛隊の前身である海上警備隊当時には基準排水量7800tのボーグ級護衛空母をアメリカより供与をうける構想があり、実際に海上自衛隊発足後には当時の長澤浩海幕長が護衛空母の視察を行いました。

 エセックス級対潜空母の供与打診への研究はボーグ級護衛空母に続くアメリカからの供与打診となりますが、これには一つの根拠がありました。それはアメリカ海軍が第二次世界大戦中に大量生産したエセックス級空母が当時としては大型であったものの、戦後のジェット機時代の到来と共に船体規模が不充分となり、より大型の空母が建造されてゆきます。

 エセックス,ヨークタウン,イントレピッド,ホーネット,フランクリン,タイコンデロガ,ランドルフ,レキシントン,バンカーヒル,ワスプ,ハンコック,ベニントン,ボクサー,ボノムリシャール,レイテ,キアサージ,オリスカニー,アンティータム,プリンストン,シャングリラ,レイクシャンプレイン,タラワ,ヴァリーフォージ,フィリピンシー,エセックス級の数は本当に多い。

 基準排水量27000tという航空母艦を太平洋戦争開戦後にこれだけ量産し、並行して護衛空母を100隻以上と巡洋艦に駆逐艦に潜水艦に揚陸艦に輸送船と戦艦まで量産したアメリカを相手に、日本はよくぞ4年近く戦い抜いたと思いつつ、エセックス級空母は近代化改修により基準排水量33000tへ増大、戦後のジェット機時代へも部分的に対応してゆきました。

 SCB-125改修と呼ばれる近代化改修により、エセックス級は艦首部分が閉鎖型全通飛行甲板となり、イギリスが開発した短距離発艦用の蒸気カタパルトと発艦と着艦を同時並行するアングルドデッキ構造へ改修しました。この近代化改修によりエセックス級は練習空母として1991年まで現役に留まる事となりました。一部は強襲揚陸艦へも改修されています。

 海上自衛隊は1960年代に入りアメリカ海軍において除籍が始まったエセックス級に注目したものと考えられますが、しかしその実現は難しかったかもしれません。こういうのも、エセックス級の乗員数は3200名と多く、海上自衛隊の規模では一隻で全隊員の一割以上を必要とする事になるばかりか、艦載機100機以上を搭載出来る能力も過剰と云えました。

 S-2艦上対潜哨戒機とHSS-2ヘリコプターを海上自衛隊中から掻き集めても、エセックス級は大型過ぎます。当時は第二次大戦型航空母艦が南米やオセアニア諸国等へ輸出されていましたが、20000t以下の空母が基本で、エセックス級のような大型艦供与の実例はありません。こうした研究の一方、ヘリコプター搭載護衛艦という研究が並行されていました。

北大路機関:はるな くらま
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