■日本初のDDH建造開始
ヘリコプター巡洋艦という新しい装備体系が各国で萌芽する中、我が国海上自衛隊でも積み重ねたHSS-2対潜ヘリコプターの洋上運用へ大きな一歩を歩み出します。
1968年度計画として海上自衛隊は初のヘリコプター搭載護衛艦はるな建造を開始します。艦砲と大型の対潜ヘリコプター複数を同時運用する能力は当時世界中で模索されていたヘリコプター巡洋艦の概念延長線上にあったといえましょう。この、ヘリコプター巡洋艦という新しい艦種の時代はヘリコプターの多用途性を背景に徐々に形成されてゆきました。
イタリア海軍は国内法により空母艦載機となる固定翼機を空軍が所管し、事実上の航空母艦建造を禁止する艦隊法がありましたが、ヘリコプター巡洋艦という視点からは先駆者で、1964年にアンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦2隻を就役させています。アンドレアドリア級は基準排水量5000tと海上自衛隊が1973年に建造する護衛艦はるな、とほぼ同じ。
アンドレアドリア級はイタリア海軍区分を護衛巡洋艦とし、アグスタベル212対潜ヘリコプター4機を艦載機とし、船体後部を格納庫と飛行甲板に充てており、船体前部には艦隊防空ミサイルとしてアメリカ製テリアMk10連装発射装置を搭載、イタリア海軍自慢の76mm単装砲8門という多数を搭載し、NATOの地中海船団護衛の主力として完成させています。
アグスタベル212対潜ヘリコプターはアメリカ陸軍の多用途ヘリコプターHU-1,陸上自衛隊が現在改良型UH-1Jを運用していますが、この原型機の双発型ベル212をアグスタ社がライセンス生産したもので、対潜ヘリコプターとしては小型ですが、Mk44短魚雷2本と吊下ソナーを搭載し、小型フリゲイトにも搭載可能な対潜ヘリコプターとして完成しました。
ヴィットリオヴェネト、イタリア海軍は1969年に基準排水量7500tという大型のヘリコプター巡洋艦を建造しました。アグスタ212を9機搭載し、船体内に格納庫を有し、飛行甲板へはエレベータにより昇降する大型艦で、テリア連装発射機を搭載していました。二番艦イタリア/トリエステも建造予定がりましたが、残念ながら財政難により建造は中止です。
戦艦の艦名を冠するイタリア海軍のアンドレアドリア、カイオジュリオ、ヴィットリオヴェネト、日本と同じ元枢軸国の海軍はこうした大型艦を建造し、第二次大戦開戦当時には空母を有さなかったオーストラリア海軍の空母運用、こうした趨勢と船団護衛任務の重要性は、多少なりとも海上自衛隊の航空母艦への視点に多少なり影響を及ぼした事でしょう。
ヘリコプター巡洋艦という意味では、既に第一次防衛力整備計画において護衛空母導入構想、11000t型対潜空母研究等が積み重ねられていました。この他、第一次防衛力整備計画では6000t型警備艦、としてヘリコプター巡洋艦の研究も進められており、艦砲等の武装と共に6機の対潜ヘリコプターを集中運用する水上戦闘艦を構想していたと伝えられます。
6000t型警備艦構想は、しかし第一次防衛力整備計画当時には時期尚早というかたちで見送られ、同時期に構想された多種多様な航空母艦に関する諸研究と共に検討事項に留まります。それでは6000t型警備艦が見送られた中で、海上自衛隊が改めてヘリコプター巡洋艦というべき対潜ヘリコプター運用用の水上戦闘艦を構想し具現化したのは何故でしょうか。
ヘリコプターを搭載する護衛艦を必要とした最大の背景は脅威の変化です。第一次防衛力整備計画は1950年代の脅威を想定していましたが、いよいよ第三次防衛力整備計画を画定する時機には、1970年代の脅威を想定する必要があり、海上自衛隊が重視したシーレーン防衛への脅威が通常動力潜水艦から原子力潜水艦へと、大きく脅威度を増した為でした。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
ヘリコプター巡洋艦という新しい装備体系が各国で萌芽する中、我が国海上自衛隊でも積み重ねたHSS-2対潜ヘリコプターの洋上運用へ大きな一歩を歩み出します。
1968年度計画として海上自衛隊は初のヘリコプター搭載護衛艦はるな建造を開始します。艦砲と大型の対潜ヘリコプター複数を同時運用する能力は当時世界中で模索されていたヘリコプター巡洋艦の概念延長線上にあったといえましょう。この、ヘリコプター巡洋艦という新しい艦種の時代はヘリコプターの多用途性を背景に徐々に形成されてゆきました。
イタリア海軍は国内法により空母艦載機となる固定翼機を空軍が所管し、事実上の航空母艦建造を禁止する艦隊法がありましたが、ヘリコプター巡洋艦という視点からは先駆者で、1964年にアンドレアドリア級ヘリコプター巡洋艦2隻を就役させています。アンドレアドリア級は基準排水量5000tと海上自衛隊が1973年に建造する護衛艦はるな、とほぼ同じ。
アンドレアドリア級はイタリア海軍区分を護衛巡洋艦とし、アグスタベル212対潜ヘリコプター4機を艦載機とし、船体後部を格納庫と飛行甲板に充てており、船体前部には艦隊防空ミサイルとしてアメリカ製テリアMk10連装発射装置を搭載、イタリア海軍自慢の76mm単装砲8門という多数を搭載し、NATOの地中海船団護衛の主力として完成させています。
アグスタベル212対潜ヘリコプターはアメリカ陸軍の多用途ヘリコプターHU-1,陸上自衛隊が現在改良型UH-1Jを運用していますが、この原型機の双発型ベル212をアグスタ社がライセンス生産したもので、対潜ヘリコプターとしては小型ですが、Mk44短魚雷2本と吊下ソナーを搭載し、小型フリゲイトにも搭載可能な対潜ヘリコプターとして完成しました。
ヴィットリオヴェネト、イタリア海軍は1969年に基準排水量7500tという大型のヘリコプター巡洋艦を建造しました。アグスタ212を9機搭載し、船体内に格納庫を有し、飛行甲板へはエレベータにより昇降する大型艦で、テリア連装発射機を搭載していました。二番艦イタリア/トリエステも建造予定がりましたが、残念ながら財政難により建造は中止です。
戦艦の艦名を冠するイタリア海軍のアンドレアドリア、カイオジュリオ、ヴィットリオヴェネト、日本と同じ元枢軸国の海軍はこうした大型艦を建造し、第二次大戦開戦当時には空母を有さなかったオーストラリア海軍の空母運用、こうした趨勢と船団護衛任務の重要性は、多少なりとも海上自衛隊の航空母艦への視点に多少なり影響を及ぼした事でしょう。
ヘリコプター巡洋艦という意味では、既に第一次防衛力整備計画において護衛空母導入構想、11000t型対潜空母研究等が積み重ねられていました。この他、第一次防衛力整備計画では6000t型警備艦、としてヘリコプター巡洋艦の研究も進められており、艦砲等の武装と共に6機の対潜ヘリコプターを集中運用する水上戦闘艦を構想していたと伝えられます。
6000t型警備艦構想は、しかし第一次防衛力整備計画当時には時期尚早というかたちで見送られ、同時期に構想された多種多様な航空母艦に関する諸研究と共に検討事項に留まります。それでは6000t型警備艦が見送られた中で、海上自衛隊が改めてヘリコプター巡洋艦というべき対潜ヘリコプター運用用の水上戦闘艦を構想し具現化したのは何故でしょうか。
ヘリコプターを搭載する護衛艦を必要とした最大の背景は脅威の変化です。第一次防衛力整備計画は1950年代の脅威を想定していましたが、いよいよ第三次防衛力整備計画を画定する時機には、1970年代の脅威を想定する必要があり、海上自衛隊が重視したシーレーン防衛への脅威が通常動力潜水艦から原子力潜水艦へと、大きく脅威度を増した為でした。
北大路機関:はるな くらま
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