■重要なのは既成事実化阻止
専守防衛という施策からは南シナ海は遠い異世界の話なのかもしれませんが、抑制的な防衛政策が必ずしも憲法が定める平和的生存権に繋がるとは限りません。

竹のカーテンが南シナ海に降ろされるのを回避するにはどうするべきか。南シナ海にヴェトナムやフィリピンから武力奪取した環礁の軍事施設化が資源獲得ではなく戦略ミサイル原潜聖域確保であったとするならば、既成事実を構築される前に、関与の姿勢と関心の誇示を続け、中国政府へ日本政府の厳しい姿勢を示唆し、次善策を求める他無いでしょう。

日本側が示す関与の姿勢とは、例えばアメリカの航行の自由作戦に参加する必要はないが、宣言せずとも平時から公海としての扱いを重視する方策、また友愛ボートとして継続される自衛隊と非政府団体との協力による東南アジア地域での人道支援訓練や民生協力の拡大、国内で充分確保出来ない行進間戦車射撃場等の訓練移転の当該地域への借用等考えられる。

専守防衛からの逸脱とならない範囲内で、しかし、専守防衛が本土決戦以外不可との防衛政策ではない点を再確認しつつ、抑制的な防衛政策に限定した上でも、南シナ海への中国海軍戦略ミサイル原潜聖域化を目的とした、南シナ海の閉塞化、恰も東西冷戦下でのソ連によるオホーツク海閉塞化に並ぶ施策の再来となった場合の影響は計算しておくべきです。

シーレーン防衛という観点からは、勿論南シナ海地域での任務が求められる可能性はあります、例えば戦略ミサイル原潜防衛の為に、緊張が一定程度高まった際に商船等の航行が南シナ海全域で制限された場合には、南シナ海を唯一の海上航路とする諸国との交通が大きく途絶する事を意味します、その際に自衛隊へ海上警備行動命令が発令される可能性も。

海上警備行動命令ですが、南シナ海の様な遠隔地域に発令されるのかと問われた場合、過去の実例としてソマリア沖海賊対処派遣任務について、遠く離れたアフリカ沖での任務ながら海賊対処特別措置法成立までの暫定措置として、自衛隊法に基づく海上警備行動命令が発令された実例があります。また更に厳しい情勢では防衛出動命令の可能性もあります。

原潜聖域を突破する、重要な視点は中国軍が戦略ミサイル原潜の聖域を構築し、その上で戦略ミサイル原潜を使用する瀬戸際という緊張状態まで待って、その上で商船の航行が阻害された為に海上警備行動を発令するまで、待ちの姿勢であっては、状況を悪化させる可能性があるという点で、これは攻められるまで待つ従来の防衛戦略の転換を迫られる事に。

予防外交、抑止戦略、我が国が戦後堅持した専守防衛政策は、地域紛争が小火の内に安定化するという施策を自制してしまい、取り返しのつかない状況まで防衛力を用いられないという建前が、最高法規である憲法に明示している為、必ずしも平和維持と平和構築を求めず、手段が平和、結果は平和の保証なし、という状況で推移した歴史が戦後ありました。

南シナ海は第二のオホーツク海となる、本特集ですが重要なのは、南シナ海は第二のオホーツク海となった、という主題ではないという点です。我が国シーレーン防衛を考えた場合、南シナ海が第二のオホーツク海となる以前に抑止する事が望ましい。これはオホーツク海がソ連核の聖域となった1950年代当時と違い、我が国には拒否する選択肢があります。

核の海を拒否する選択肢、別に米中の軍事衝突や核戦争位は無視して日本は平和主義を貫けばよい、と反論があるでしょうが、中国は核拡散防止条約に加盟しており、2003年の加盟国会合において核拡散防止条約に明記された核兵器国の核軍縮義務を中国代表はNPOとの拡大会合議事において中国も義務を負っている、と発言し、記録されているのですね。

南シナ海を核の海とし、これまで試験運用に留めていた戦略ミサイル原潜を量産する事は、広島長崎原爆投下から七十年以上経て、更に冷戦構造が終結した後の三十年を経て、米ロ両国が抜本的な核軍縮を進める中で、中国が新しい核軍拡を行う事は人類への背信としか言いようがありません。この正論だけでも国際公序として中国施策を拒否する権利がある。

日本が採り得る具体策は何か。アメリカ海軍のように年に数回の頻度で航行の自由作戦を繰り返しても本質的な解決とはなりません。勿論中国大使館で平和を訴えるという事もあまり意味がありません。しかし、水陸機動団により中国人工島付近を遊弋させるとか、中国空母へ潜水艦隊が模擬襲撃運動を繰り返す、という施策でも、やや性急すぎるやもしれない。

ただ、中国の核軍拡への反対と海洋自由原則に反する戦略ミサイル原潜聖域構築への反対姿勢は、国際公序に沿ったもので、世界の賛同と場合によっては参画も得られるものでしょう。その上で、竹のカーテンにより南シナ海閉塞が現実のものとなった後では手遅れであり、南シナ海を核の海とさせぬ為に可能な施策は何か、専守防衛の再論が必要でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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専守防衛という施策からは南シナ海は遠い異世界の話なのかもしれませんが、抑制的な防衛政策が必ずしも憲法が定める平和的生存権に繋がるとは限りません。

竹のカーテンが南シナ海に降ろされるのを回避するにはどうするべきか。南シナ海にヴェトナムやフィリピンから武力奪取した環礁の軍事施設化が資源獲得ではなく戦略ミサイル原潜聖域確保であったとするならば、既成事実を構築される前に、関与の姿勢と関心の誇示を続け、中国政府へ日本政府の厳しい姿勢を示唆し、次善策を求める他無いでしょう。

日本側が示す関与の姿勢とは、例えばアメリカの航行の自由作戦に参加する必要はないが、宣言せずとも平時から公海としての扱いを重視する方策、また友愛ボートとして継続される自衛隊と非政府団体との協力による東南アジア地域での人道支援訓練や民生協力の拡大、国内で充分確保出来ない行進間戦車射撃場等の訓練移転の当該地域への借用等考えられる。

専守防衛からの逸脱とならない範囲内で、しかし、専守防衛が本土決戦以外不可との防衛政策ではない点を再確認しつつ、抑制的な防衛政策に限定した上でも、南シナ海への中国海軍戦略ミサイル原潜聖域化を目的とした、南シナ海の閉塞化、恰も東西冷戦下でのソ連によるオホーツク海閉塞化に並ぶ施策の再来となった場合の影響は計算しておくべきです。

シーレーン防衛という観点からは、勿論南シナ海地域での任務が求められる可能性はあります、例えば戦略ミサイル原潜防衛の為に、緊張が一定程度高まった際に商船等の航行が南シナ海全域で制限された場合には、南シナ海を唯一の海上航路とする諸国との交通が大きく途絶する事を意味します、その際に自衛隊へ海上警備行動命令が発令される可能性も。

海上警備行動命令ですが、南シナ海の様な遠隔地域に発令されるのかと問われた場合、過去の実例としてソマリア沖海賊対処派遣任務について、遠く離れたアフリカ沖での任務ながら海賊対処特別措置法成立までの暫定措置として、自衛隊法に基づく海上警備行動命令が発令された実例があります。また更に厳しい情勢では防衛出動命令の可能性もあります。

原潜聖域を突破する、重要な視点は中国軍が戦略ミサイル原潜の聖域を構築し、その上で戦略ミサイル原潜を使用する瀬戸際という緊張状態まで待って、その上で商船の航行が阻害された為に海上警備行動を発令するまで、待ちの姿勢であっては、状況を悪化させる可能性があるという点で、これは攻められるまで待つ従来の防衛戦略の転換を迫られる事に。

予防外交、抑止戦略、我が国が戦後堅持した専守防衛政策は、地域紛争が小火の内に安定化するという施策を自制してしまい、取り返しのつかない状況まで防衛力を用いられないという建前が、最高法規である憲法に明示している為、必ずしも平和維持と平和構築を求めず、手段が平和、結果は平和の保証なし、という状況で推移した歴史が戦後ありました。

南シナ海は第二のオホーツク海となる、本特集ですが重要なのは、南シナ海は第二のオホーツク海となった、という主題ではないという点です。我が国シーレーン防衛を考えた場合、南シナ海が第二のオホーツク海となる以前に抑止する事が望ましい。これはオホーツク海がソ連核の聖域となった1950年代当時と違い、我が国には拒否する選択肢があります。

核の海を拒否する選択肢、別に米中の軍事衝突や核戦争位は無視して日本は平和主義を貫けばよい、と反論があるでしょうが、中国は核拡散防止条約に加盟しており、2003年の加盟国会合において核拡散防止条約に明記された核兵器国の核軍縮義務を中国代表はNPOとの拡大会合議事において中国も義務を負っている、と発言し、記録されているのですね。

南シナ海を核の海とし、これまで試験運用に留めていた戦略ミサイル原潜を量産する事は、広島長崎原爆投下から七十年以上経て、更に冷戦構造が終結した後の三十年を経て、米ロ両国が抜本的な核軍縮を進める中で、中国が新しい核軍拡を行う事は人類への背信としか言いようがありません。この正論だけでも国際公序として中国施策を拒否する権利がある。

日本が採り得る具体策は何か。アメリカ海軍のように年に数回の頻度で航行の自由作戦を繰り返しても本質的な解決とはなりません。勿論中国大使館で平和を訴えるという事もあまり意味がありません。しかし、水陸機動団により中国人工島付近を遊弋させるとか、中国空母へ潜水艦隊が模擬襲撃運動を繰り返す、という施策でも、やや性急すぎるやもしれない。

ただ、中国の核軍拡への反対と海洋自由原則に反する戦略ミサイル原潜聖域構築への反対姿勢は、国際公序に沿ったもので、世界の賛同と場合によっては参画も得られるものでしょう。その上で、竹のカーテンにより南シナ海閉塞が現実のものとなった後では手遅れであり、南シナ海を核の海とさせぬ為に可能な施策は何か、専守防衛の再論が必要でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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