■F-35A墜落事故から二ヶ月
F-35戦闘機、第302飛行隊所属の最新鋭第五世代戦闘機墜落事故が発生したのは4月9日、事故から二ヶ月と二日が経ちました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/f2/0fce3f2853cfca363ed1e7952ab11b78.jpg)
三沢沖F-35A墜落事故は、操縦士の空間失調による墜落、と防衛省が結論付けました。機体は回収されておらず、僚機等に残る部隊飛行データから推測した結果です。空間失調とは暗夜や雲中等での視程不良時に高度計や水平計等の計器飛行を行わず五感に依存し、水平飛行している感覚で実は高度を下げており、そのまま高度0となり墜落する事故です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a7/f6347998fc59038ec5d4184530930811.jpg)
航空自衛隊は二ヶ月間の捜索と事故原因調査を経て、空間失調を原因と判断した上で同型機での空間失調防止へ計器飛行等の訓練を徹底する事を条件に飛行訓練を再開する方針です。F-35Aは現在42機の導入が進められており、老朽化するむ1971年導入のF-4EJ戦闘機を置き換えると共に、更に102機の追加調達し1981年より導入のF-15J後継も担う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/7a/213253b376fa7c92fc023d0a4f835326.jpg)
しかし、機体回収を優先し、事故原因を究明するべき、とも思う。機体そのものには欠陥は無い、との結論から操縦者の錯誤であろうとの結論です。機体そのものの欠陥が無い点は飛行前の点検や最終組立後の試験結果に基づくのですが、機体欠陥有無こそ機体そのものを検証するべきであり、要するに消去法で操縦錯誤としたようで違和感は禁じ得ません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/26/2ca282660d9c61c8e0c956c8cdf3ee56.jpg)
一般論として、空間失調はベテランの航空機操縦士でも起こり得ます。地面を歩く我々では掴みにくいものですが、空間失調は過去にはKLMオランダ航空のボーイング747が墜落には至りませんでしたが、空間失調で水平飛行している感覚で宙返りしてしまい負傷者が出た事もあります。一般論で可能性は否定できないでしょう、海面が見えなければ、ね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/5a/042af751b5c4f2cd3c6592aae01e5abe.jpg)
一般論と強調したのは、F-35Aには見えなかったのか、という疑問符が残る為です。F-35Aの操縦士はAR-HMDというヘルメット表示型ディスプレイを装着し操縦します。これはヘルメットのバイザーに必要な情報と画像を表示するもので、前方赤外線監視装置FLIRが機体各所計六か所に装備されており、霧中や雲中に夜間でも全周の視界は得られるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/36/844ff10233f79992d479f8521886d324.jpg)
AR-HMDは一個40万ドルといい、ヘルメットですが軽装甲機動車よりも高価です。第四世代戦闘機までは夜間の対地攻撃等に操縦士は暗視装置を装着しており、操縦席の計器も暗視装置に適合し灯火の輝度を落とす構造でした。F-35等第五世代戦闘機はいちいち暗視装置を装着しては効率が悪いとして、全てヘルメットに表示する方式を採用したのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/24/812a6cc3bf1287979d31726efe23f44f.jpg)
統合打撃戦闘機JSF計画としてアメリカを中心に国際共同開発されたF-35は、航空自衛隊は主として航空優勢を確保する制空戦闘機として運用するようですが、その名の通り統合打撃戦闘機であり、夜間の航空阻止任務や近接航空支援に精密爆撃等を担う機体です。AR-HMDはそのために操縦士に高い視野を与えています。また六基のFLIRは連動する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/78/0fbf0db9ad11920fa5ecdf96bcc6001d.jpg)
FLIRは前方赤外線監視装置ですが、六基搭載しますと機体周囲上下左右前後360度を全周に渡り確認できます、つまり操縦席の裏側や機体後部の陰に潜む状況もAR-HMDに画像が表示され、透けて見えるのですね。これは対戦闘機戦闘や対地攻撃にて視覚外を無くす為のもので、AR-HMDで敵機を見つめますと、そのままロックオンし攻撃も可能というもの。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/5a/7e5c5109e179c0ffa009387cc47c5716.jpg)
航空機操縦士の方にAR-HMDの性能と特性を説明した上で、空間失調は夜間に起きうるのか、と問うてみますと、視界が得られるならば空間失調は起きえない、と答えを頂きました。機体に欠陥が無いとするならば、例えばAR-HMDを取り外し飛行する特殊な訓練を行っていたのでなければ、FLIRによる視界を供するAR-HMDを装着していた場合でも、空間失調は起こるのでしょうか、ね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/14/222ac5b9027a72fe84f11141f1562be0.jpg)
飛行再開は妥当と考えます、ただ、飛行再開が原因究明終了と同義である必要はありません。例えば空間失調対策の訓練を徹底する事が飛行再開の条件としていますが、一般論として空間失調対策は計器飛行となります。しかし、F-35戦闘機の計器は多機能フラットディスプレイです、AR-HMDのFLIR画像よりも計器を重視するのは妥当なのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/3f/2cb52ae45ea9845bd27fe1660f9a28fd.jpg)
繰り返しますが、飛行再開は原因究明完了と同義である必要はありません、例えば電源喪失等によるAR-HMDの機能喪失や、アメリカ国内での地上で発生したエンジン系統と燃料供給系統の事故の可能性は皆無なのか、操縦士が命を預け国家の安全保障を司る装備品です、暫定的に空間失調対策訓練を強化し飛行再開を行いつつ、機体回収と原因究明を行うべきだと、考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
F-35戦闘機、第302飛行隊所属の最新鋭第五世代戦闘機墜落事故が発生したのは4月9日、事故から二ヶ月と二日が経ちました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/61/f2/0fce3f2853cfca363ed1e7952ab11b78.jpg)
三沢沖F-35A墜落事故は、操縦士の空間失調による墜落、と防衛省が結論付けました。機体は回収されておらず、僚機等に残る部隊飛行データから推測した結果です。空間失調とは暗夜や雲中等での視程不良時に高度計や水平計等の計器飛行を行わず五感に依存し、水平飛行している感覚で実は高度を下げており、そのまま高度0となり墜落する事故です。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/a7/f6347998fc59038ec5d4184530930811.jpg)
航空自衛隊は二ヶ月間の捜索と事故原因調査を経て、空間失調を原因と判断した上で同型機での空間失調防止へ計器飛行等の訓練を徹底する事を条件に飛行訓練を再開する方針です。F-35Aは現在42機の導入が進められており、老朽化するむ1971年導入のF-4EJ戦闘機を置き換えると共に、更に102機の追加調達し1981年より導入のF-15J後継も担う。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/7a/213253b376fa7c92fc023d0a4f835326.jpg)
しかし、機体回収を優先し、事故原因を究明するべき、とも思う。機体そのものには欠陥は無い、との結論から操縦者の錯誤であろうとの結論です。機体そのものの欠陥が無い点は飛行前の点検や最終組立後の試験結果に基づくのですが、機体欠陥有無こそ機体そのものを検証するべきであり、要するに消去法で操縦錯誤としたようで違和感は禁じ得ません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/26/2ca282660d9c61c8e0c956c8cdf3ee56.jpg)
一般論として、空間失調はベテランの航空機操縦士でも起こり得ます。地面を歩く我々では掴みにくいものですが、空間失調は過去にはKLMオランダ航空のボーイング747が墜落には至りませんでしたが、空間失調で水平飛行している感覚で宙返りしてしまい負傷者が出た事もあります。一般論で可能性は否定できないでしょう、海面が見えなければ、ね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/31/5a/042af751b5c4f2cd3c6592aae01e5abe.jpg)
一般論と強調したのは、F-35Aには見えなかったのか、という疑問符が残る為です。F-35Aの操縦士はAR-HMDというヘルメット表示型ディスプレイを装着し操縦します。これはヘルメットのバイザーに必要な情報と画像を表示するもので、前方赤外線監視装置FLIRが機体各所計六か所に装備されており、霧中や雲中に夜間でも全周の視界は得られるのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4a/36/844ff10233f79992d479f8521886d324.jpg)
AR-HMDは一個40万ドルといい、ヘルメットですが軽装甲機動車よりも高価です。第四世代戦闘機までは夜間の対地攻撃等に操縦士は暗視装置を装着しており、操縦席の計器も暗視装置に適合し灯火の輝度を落とす構造でした。F-35等第五世代戦闘機はいちいち暗視装置を装着しては効率が悪いとして、全てヘルメットに表示する方式を採用したのですね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/24/812a6cc3bf1287979d31726efe23f44f.jpg)
統合打撃戦闘機JSF計画としてアメリカを中心に国際共同開発されたF-35は、航空自衛隊は主として航空優勢を確保する制空戦闘機として運用するようですが、その名の通り統合打撃戦闘機であり、夜間の航空阻止任務や近接航空支援に精密爆撃等を担う機体です。AR-HMDはそのために操縦士に高い視野を与えています。また六基のFLIRは連動する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/72/78/0fbf0db9ad11920fa5ecdf96bcc6001d.jpg)
FLIRは前方赤外線監視装置ですが、六基搭載しますと機体周囲上下左右前後360度を全周に渡り確認できます、つまり操縦席の裏側や機体後部の陰に潜む状況もAR-HMDに画像が表示され、透けて見えるのですね。これは対戦闘機戦闘や対地攻撃にて視覚外を無くす為のもので、AR-HMDで敵機を見つめますと、そのままロックオンし攻撃も可能というもの。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/5a/7e5c5109e179c0ffa009387cc47c5716.jpg)
航空機操縦士の方にAR-HMDの性能と特性を説明した上で、空間失調は夜間に起きうるのか、と問うてみますと、視界が得られるならば空間失調は起きえない、と答えを頂きました。機体に欠陥が無いとするならば、例えばAR-HMDを取り外し飛行する特殊な訓練を行っていたのでなければ、FLIRによる視界を供するAR-HMDを装着していた場合でも、空間失調は起こるのでしょうか、ね。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/45/14/222ac5b9027a72fe84f11141f1562be0.jpg)
飛行再開は妥当と考えます、ただ、飛行再開が原因究明終了と同義である必要はありません。例えば空間失調対策の訓練を徹底する事が飛行再開の条件としていますが、一般論として空間失調対策は計器飛行となります。しかし、F-35戦闘機の計器は多機能フラットディスプレイです、AR-HMDのFLIR画像よりも計器を重視するのは妥当なのでしょうか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/3f/2cb52ae45ea9845bd27fe1660f9a28fd.jpg)
繰り返しますが、飛行再開は原因究明完了と同義である必要はありません、例えば電源喪失等によるAR-HMDの機能喪失や、アメリカ国内での地上で発生したエンジン系統と燃料供給系統の事故の可能性は皆無なのか、操縦士が命を預け国家の安全保障を司る装備品です、暫定的に空間失調対策訓練を強化し飛行再開を行いつつ、機体回収と原因究明を行うべきだと、考えます。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)