■自衛隊地域配備師団への参考
自衛隊の装備体系が島嶼防衛へ地対艦ミサイルや中距離地対空誘導弾と特科部隊へ偏重してゆくところですが。
陸上自衛隊の地域配備師団や旅団もせめてアメリカ陸軍の軽歩兵旅団戦闘団程度には重装備というものを考えて欲しい、特科連隊の方面特科連隊移管や戦車大隊の相次ぐ廃止の中で、こうした考えが前からありまして、これは主として歩兵旅団戦闘団を支援する航空旅団を含めて必要性を感じていたのですが、その歩兵旅団戦闘団、重装備化が始まるもよう。
アメリカ陸軍は歩兵旅団戦闘団を大幅に近代化する方針で、陸上自衛隊としても配慮する部分があるようにも。アメリカ陸軍は2000年代以前、M-1戦車やM-2装甲戦闘車主体の重旅団戦闘団とハンヴィーにM-198榴弾砲主体の軽旅団戦闘団のみであり、軽旅団戦闘団は輸送機により迅速に緊急展開できる強みがありましたが、打撃力その他の問題があった。
ストライカー旅団戦闘団、これはもともとその中間を担うミディアム旅団構想として特に1990年代に多発した地域紛争を背景に導入されたもので、ストライカー装甲車そのものは平凡な八輪装輪装甲車でしたが、諸兵科連合大隊として歩兵装甲車に機動砲と自走迫撃砲に自走対戦車ミサイルなど、戦闘団編成を標準編成としたのが革新的でした。これに対し。
歩兵旅団戦闘団。しかし、2000年代にイラク治安作戦やアフガン安定化作戦、近年にはアフリカ地域や中東でのISIL掃討作戦といういわば低強度紛争への安定化任務が多発しますと、その防御力が、任務遂行能力の足かせ、となってゆくのですね。そこでMPF計画というアメリカ陸軍の軽戦車計画が発動します、MPFは機動防護火力という計画で進められた。
MPFは30トン級装軌式車両に105mm砲塔を搭載したものでGDLS社が装甲戦闘車の車体に1105mm砲塔を搭載、この砲塔はM-1A2戦車最新型のSEP3砲塔技術を応用したものといいますが、ポーランドのPL-01試作軽戦車のような装甲戦闘車派生の機動砲として、もう一社、BAE社は懐かしいXM-8空挺戦車を原型とした改良型軽戦車を提案しています。
JLTV,軽歩兵部隊の概念を一新する可能性があるのが、ハンヴィー後継の統合型軽量戦術車両です。ハンヴィーは装甲型のM-1114を含め治安作戦では簡易爆発物IEDにより甚大な被害が続出し、ウィドーメーカー未亡人製造機のような扱いとなっていました。なにしろIEDは152mm砲弾などを遠隔操作で路肩にて至近距離で爆発させるものの威力凄い。
M-1114装甲ハンヴィーでさえも車内に致命的な損害が及ぶために緊急に開発されたのがMRAP耐爆車両ですが、応急的に、一年間で一万両というむちゃくちゃな需要に応える背景があったとはいえ、量産されたため、不整地突破能力などを殆ど有さず登攀力が非常に低いものも存在しました。ここで開発された装備がJLTVです。米軍は49000両を導入へ。
L-ATV,新しいJLTVにはオシュコシ社製が選定されまして、こちらは四輪駆動という部分ではハンヴィーと共通点があるのですけれど車体重量6.4t、自衛隊の軽装甲機動車よりも五割ほど重くなっているのですね。基本的にアメリカ陸軍では歩兵用の装甲ハンヴィーをこのJLTVにより置き換えることとなり、実質歩兵旅団戦闘団は装甲旅団化されます。
野砲については、歩兵旅団戦闘団は現在M-777超軽量榴弾砲を運用しています、これはUH-60により空輸できるほどに軽量となっていまして、イギリス設計でチタン合金などを多用した結果なのですが、山間部などでは空輸により様々な運用が可能となっています。砲身は39口径、世界の新主流52口径よりは短いですが軽量という点が重要なのでしょう。
しかし、この点についても変革が到来する可能性があるのですね。アメリカ陸軍は将来野砲の研究用にスウェーデンよりアーチャー装輪自走榴弾砲を試験導入しました。既に秋にはアメリカ国内にて試験が開始されています。装輪自走榴弾砲といいますと自衛隊の19式装輪自走榴弾砲を思い出されるかもしれませんが、アーチャーは遙かに次元が違う装備だ。
アーチャー装輪自走榴弾砲はスウェーデンが冷戦時代に26両のみ開発し全く輸出を検討しなかったバンドカノン自走榴弾砲、マガジン式で連射速度が世界一という155mm自走榴弾砲、その技術が応用されています。ただそのまま移植したのではなく、52口径に延伸していまして、自動装填装置とともに、防御力の高いボルボ製装甲トラックに搭載しています。
99式自走榴弾砲の砲塔部分をそのまま装甲キャビンを有する重装輪回収車に搭載したもの、アーチャー自走榴弾砲というものはそうしたものでして、例えばフランスのカエサルシステム軽自走榴弾砲のような、砲架をトラックに搭載しただけ、という簡易自走砲とは訳が違います。これが、アメリカ陸軍の軽歩兵旅団戦闘団に装備される可能性があるのですね。
自衛隊の地域配備師団はといえば、装甲防御力は戦車大隊の廃止により偵察隊と機動戦闘車中隊からなる偵察戦闘大隊が配備されますが、要するに一個師団に機動戦闘車が一個配備されるだけ。特科連隊は方面特科連隊に移管され、一応担当大隊が回される事となるのですが、一個師団に10門程度装輪自走砲が配備される程度、普通科に装甲車などはない。
地域配備師団や旅団についても普通科連隊にせめて輸送防護車を高機動車の後継に大量配備するとか、特科火砲定数は300門なのだから地域配備師団も30門の特科隊を持続的に配備したとしても、方面特科の203mm自走榴弾砲が廃止されるのだから問題は無いだろうと思いますし、機動戦闘車も戦車中隊を残すか大隊規模で30両くらいは配備してはどうか、と思うのですよね。
即応機動連隊の強力な装備、とされる装甲車体系も欧州の機械化歩兵部隊や諸兵科連合大隊と比較しますと平均的な機械化部隊に過ぎません。その上で現状の地域配備師団は、と云いますと厳しい状況です。しかし有事の際には本土防衛に戦え、という。それならば、最低でも第一線が納得できる装備を必要な数量揃える事が、最低限、政治の責任でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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自衛隊の装備体系が島嶼防衛へ地対艦ミサイルや中距離地対空誘導弾と特科部隊へ偏重してゆくところですが。
陸上自衛隊の地域配備師団や旅団もせめてアメリカ陸軍の軽歩兵旅団戦闘団程度には重装備というものを考えて欲しい、特科連隊の方面特科連隊移管や戦車大隊の相次ぐ廃止の中で、こうした考えが前からありまして、これは主として歩兵旅団戦闘団を支援する航空旅団を含めて必要性を感じていたのですが、その歩兵旅団戦闘団、重装備化が始まるもよう。
アメリカ陸軍は歩兵旅団戦闘団を大幅に近代化する方針で、陸上自衛隊としても配慮する部分があるようにも。アメリカ陸軍は2000年代以前、M-1戦車やM-2装甲戦闘車主体の重旅団戦闘団とハンヴィーにM-198榴弾砲主体の軽旅団戦闘団のみであり、軽旅団戦闘団は輸送機により迅速に緊急展開できる強みがありましたが、打撃力その他の問題があった。
ストライカー旅団戦闘団、これはもともとその中間を担うミディアム旅団構想として特に1990年代に多発した地域紛争を背景に導入されたもので、ストライカー装甲車そのものは平凡な八輪装輪装甲車でしたが、諸兵科連合大隊として歩兵装甲車に機動砲と自走迫撃砲に自走対戦車ミサイルなど、戦闘団編成を標準編成としたのが革新的でした。これに対し。
歩兵旅団戦闘団。しかし、2000年代にイラク治安作戦やアフガン安定化作戦、近年にはアフリカ地域や中東でのISIL掃討作戦といういわば低強度紛争への安定化任務が多発しますと、その防御力が、任務遂行能力の足かせ、となってゆくのですね。そこでMPF計画というアメリカ陸軍の軽戦車計画が発動します、MPFは機動防護火力という計画で進められた。
MPFは30トン級装軌式車両に105mm砲塔を搭載したものでGDLS社が装甲戦闘車の車体に1105mm砲塔を搭載、この砲塔はM-1A2戦車最新型のSEP3砲塔技術を応用したものといいますが、ポーランドのPL-01試作軽戦車のような装甲戦闘車派生の機動砲として、もう一社、BAE社は懐かしいXM-8空挺戦車を原型とした改良型軽戦車を提案しています。
JLTV,軽歩兵部隊の概念を一新する可能性があるのが、ハンヴィー後継の統合型軽量戦術車両です。ハンヴィーは装甲型のM-1114を含め治安作戦では簡易爆発物IEDにより甚大な被害が続出し、ウィドーメーカー未亡人製造機のような扱いとなっていました。なにしろIEDは152mm砲弾などを遠隔操作で路肩にて至近距離で爆発させるものの威力凄い。
M-1114装甲ハンヴィーでさえも車内に致命的な損害が及ぶために緊急に開発されたのがMRAP耐爆車両ですが、応急的に、一年間で一万両というむちゃくちゃな需要に応える背景があったとはいえ、量産されたため、不整地突破能力などを殆ど有さず登攀力が非常に低いものも存在しました。ここで開発された装備がJLTVです。米軍は49000両を導入へ。
L-ATV,新しいJLTVにはオシュコシ社製が選定されまして、こちらは四輪駆動という部分ではハンヴィーと共通点があるのですけれど車体重量6.4t、自衛隊の軽装甲機動車よりも五割ほど重くなっているのですね。基本的にアメリカ陸軍では歩兵用の装甲ハンヴィーをこのJLTVにより置き換えることとなり、実質歩兵旅団戦闘団は装甲旅団化されます。
野砲については、歩兵旅団戦闘団は現在M-777超軽量榴弾砲を運用しています、これはUH-60により空輸できるほどに軽量となっていまして、イギリス設計でチタン合金などを多用した結果なのですが、山間部などでは空輸により様々な運用が可能となっています。砲身は39口径、世界の新主流52口径よりは短いですが軽量という点が重要なのでしょう。
しかし、この点についても変革が到来する可能性があるのですね。アメリカ陸軍は将来野砲の研究用にスウェーデンよりアーチャー装輪自走榴弾砲を試験導入しました。既に秋にはアメリカ国内にて試験が開始されています。装輪自走榴弾砲といいますと自衛隊の19式装輪自走榴弾砲を思い出されるかもしれませんが、アーチャーは遙かに次元が違う装備だ。
アーチャー装輪自走榴弾砲はスウェーデンが冷戦時代に26両のみ開発し全く輸出を検討しなかったバンドカノン自走榴弾砲、マガジン式で連射速度が世界一という155mm自走榴弾砲、その技術が応用されています。ただそのまま移植したのではなく、52口径に延伸していまして、自動装填装置とともに、防御力の高いボルボ製装甲トラックに搭載しています。
99式自走榴弾砲の砲塔部分をそのまま装甲キャビンを有する重装輪回収車に搭載したもの、アーチャー自走榴弾砲というものはそうしたものでして、例えばフランスのカエサルシステム軽自走榴弾砲のような、砲架をトラックに搭載しただけ、という簡易自走砲とは訳が違います。これが、アメリカ陸軍の軽歩兵旅団戦闘団に装備される可能性があるのですね。
自衛隊の地域配備師団はといえば、装甲防御力は戦車大隊の廃止により偵察隊と機動戦闘車中隊からなる偵察戦闘大隊が配備されますが、要するに一個師団に機動戦闘車が一個配備されるだけ。特科連隊は方面特科連隊に移管され、一応担当大隊が回される事となるのですが、一個師団に10門程度装輪自走砲が配備される程度、普通科に装甲車などはない。
地域配備師団や旅団についても普通科連隊にせめて輸送防護車を高機動車の後継に大量配備するとか、特科火砲定数は300門なのだから地域配備師団も30門の特科隊を持続的に配備したとしても、方面特科の203mm自走榴弾砲が廃止されるのだから問題は無いだろうと思いますし、機動戦闘車も戦車中隊を残すか大隊規模で30両くらいは配備してはどうか、と思うのですよね。
即応機動連隊の強力な装備、とされる装甲車体系も欧州の機械化歩兵部隊や諸兵科連合大隊と比較しますと平均的な機械化部隊に過ぎません。その上で現状の地域配備師団は、と云いますと厳しい状況です。しかし有事の際には本土防衛に戦え、という。それならば、最低でも第一線が納得できる装備を必要な数量揃える事が、最低限、政治の責任でしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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