北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】マルバ装輪自走榴弾砲とエヴァ装輪自走榴弾砲,グリフィン&サーバル軽装甲車

2021-03-29 20:01:35 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 防衛情報、今週は陸軍砲兵火力や各国装甲車等の話題を12論点紹介してゆきましょう。

 ロシア軍は2S42マルバ装輪自走榴弾砲の試験を開始した。ロシア軍では1987年に量産を開始した2A65ムスタB牽引式152mm榴弾砲や旧ソ連が1960年代に大量生産した2S1グヴォージカ自走榴弾砲の後継を必要としており、2S1は装軌式自走榴弾砲であるが、ロシア軍は機動性に優れた大型トラック方式の装輪152mm榴弾砲により置き換えたい構想だ。

 2S42マルバ装輪自走榴弾砲はロシア防衛企業ロステック社系列のブレベストニク中央研究所により開発されたもので、大型トラックや装輪装甲車の製造で実績あるブリヤンスク自動車社により、BAZ-6909大型トラック派生型であるBAZ-6010-027トラックに装軌式2S35コアリツィア自走榴弾砲搭載砲用の2A88派生型の152mm榴弾砲を搭載している。

 2S42マルバ装輪自走榴弾砲は射撃に際し駐鋤を展開し射撃準備を行い、新設計の装填補助装置により毎分8発射撃が可能だ。自走装填装置を持つ2S35自走榴弾砲は毎分16発から最大22発が射撃可能であり、相当抑えられたがロケット誘導砲弾による射程は70kmに達する。戦闘重量は21tで車軸は独立懸架、470hpエンジンにより80km/hの機動が可能だ。
■エヴァ最新作がついに公開
 エヴァ最新作がついに公開される事となりました、アニメーション映画ではなくスロバキアが開発した自走榴弾砲のエヴァです。

 スロバキアのコンストラクタディフェンス社は最新鋭のエヴァ装輪自走榴弾砲試験映像を公開しました。エヴァ装輪自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲をタトラ社製八輪型装甲トラックに搭載したもので、コンストラクタディフェンス社はチェコスロバキア時代のZTS公社時代にズザナ装輪自走榴弾砲を開発しており、この後継を目指す新型車両です。

 エヴァ装輪自走榴弾砲はズザナの45口径砲に対して52後継に方針を延長した事で、射撃準備には2分を要し、車体には12発を搭載、ERFB-BB射程延伸砲弾を利用した場合に最大射程41kmを発揮しており、自動装填装置により乗員は僅か3名となり1分間に5発、3分間に13初の連続射撃が可能という。緊急時には手動操作により毎分2発の射撃も可能だ。

 エヴァの車体部分はタトラT3C-928-90-EURO3トラックが採用されました。タトラT3C-928-90-EURO3トラックは300hpの空冷ディーゼルエンジンを搭載し最高速度は85km/h、変速機は手動で半自動変速へのオプションも可能といい、航続距離は路上操行で600kmに達する。C-17,A-400M輸送機への搭載を念頭にコンパクト化しているとのこと。
■軽装甲車に大口径機関砲
 スペインは自衛隊の軽装甲車にさえ搭載可能な30mm機関砲を開発しました。これで無インキなどに対抗するという。

 スペインのエスクリバーノメカニカルアンドエンジニアリング社は軽装甲車に搭載可能な30mm機関砲遠隔操作銃搭M-230LFを発表しました。これはガーディアンL-HITシステムの最新型で元々は5.56mm機銃や12.7mm重機関銃用の遠隔操作銃搭RWSとして供給されていたものですが、M-230LFはこれまでにない大口径の30mm砲型となっている。

 M-230LFの驚くべき点は260kgという軽量に収めていると共に、複合光学照準装置による昼夜を問わない照準能力と二軸型砲安定装置を採用し3km以遠の無人機等の小型目標を撃墜可能で、スペイン軍のVCRドラゴン装輪装甲車にも搭載可能です。この種の装備はアメリカ海兵隊がJLTV統合軽量戦術車輛に搭載し第一線の無人機狩りに充てる構想があります。
■ドイツ,MAN社製トラック
 ドイツ連邦軍は自衛隊も装輪自走榴弾砲車体部分に採用したMAN社製トラックを大量導入します。

 ドイツ連邦軍はRMMVラインメタルMANミリタリービーグル社との間で5億4300万ユーロの軍用トラック新規調達契約を締結しました。5億4300万ユーロの契約により1401台の新たなトラックが取得され、内訳は5tトラック150台と15tトラック1000台などを含むものとなっており、この契約には装甲強化パック等は含まれていないとのことでした。

 5億4300万ユーロの費用はドイツ連邦政府COVID-19緊急補正予算により計上されたものです。COVID-19緊急補正予算により軍用トラックを取得するのは日本が東日本大震災復興予算から陸上自衛隊車輛を調達した構図と似ていますが、連邦軍車両は津波のような物理被害を受けていません。これはRMMV社が経営悪化した事による補填といえましょう。
■ドイツのディンゴ2耐爆車輛
 ウニモグトラックの汎用車体を利用した安価なドイツ製装甲車の最新話題です。

 ドイツのクラウスマッファイヴェグマン社は改良型のディンゴ2耐爆車両の新しい広報動画を発表しました。ディンゴはドイツ連邦軍の汎用軽装甲輸送車としてウニモグ社製トラックの車体部分を基礎として、転覆限界の向上や耐地雷性能を付与し装甲化させたもので、原型は2008年までにドイツ連邦軍へ配備が開始されており、輸出も広く行われました。

 ディンゴ2がウニモグU5000の車体を応用し車体を拡張、汎用性を高めた点が特色とされており、人員8名を輸送可能である点に加え、3.5tまでの各種機材を搭載可能である事から、第一線での歩兵輸送任務の他、前線監視車輛や防空砲兵用車輛と装甲救急車などの用途が考えられます。またウニモグ社の整備サービスを受けられる点も利点といえましょう。
■カタール軍のNH-90
 NH-90,これはUH-1やUH-60等を置換えるヘリコプターですが、NBC防護能力の付与などかなり高性能で高価格のヘリコプターとなっています。

 欧州多国籍企業NHインダストリーズ社は2020年12月20日、カタール軍向けのNH-90ヘリコプター初号機が試験飛行を開始したと発表しました。組立は製造を担当するイタリアレオナルド社のベニステセラ工場とフランスのエアバスヘリコプターズ社マリニャンサイト工場で進められており2021年内にカタール軍へ納入される見通しとされているところ。

 NH-90ヘリコプターのカタール軍導入計画は陸軍多用途ヘリコプターとして16機が、海軍哨戒ヘリコプターとして12機が導入される計画で、カタール軍は将来のオプションとして陸軍用と海軍用を各6機増強し、ヘリコプター部隊をNH-90により統合する計画があります。NHインダストリーズ社は最初の納入について2025年までに完納の計画としています。
■フランス軍グリフィン納入順調
 フランス版軽装甲車と云うべきグリフィンが軽装甲機動車に影響を与えたVBLを順調に置換えています。

 フランスの防衛合弁企業EBMRは同社が量産を担当するグリフィン耐爆車両について、128号車を納入したと発表しました。グリフィンは2019年に92両が納入され、更に2020年には90両が製造される計画でしたが、2020年のフランスはCOVID-19の影響により防衛産業も工場一時閉鎖を余儀なくされたものの、構成部品は製造できたとしていました。

 グリフィン耐爆車両は車高の高い装甲トラック型の六輪式装輪装甲車ですが、耐地雷構造を重視しており、フランス軍では1970年代から改良を重ね使い続けられているVAB軽装甲車の後継に充てています。遅れている製造分は2021年の早い時期に完成させるという。EBMRはネクスター社とタレス社などが出資しグリフィンを製造する特定目的会社です。
■イギリスのボクサー重装甲車
 ボクサー装輪装甲車のイギリス軍導入が本格的に契約されました、もともとは1998年に決定しているはずの計画が延び延びになったもの。

 イギリス国防省は2020年11月、MIV機械化歩兵車輛プログラムとして導入が内定しているボクサー重装輪装甲車260両について、その8億6000万ポンドにのぼる製造契約をRBSL,ラインメタルBAEランドシステムズ社との間で契約しました。ボクサー重装輪装甲車はイギリスシュロップシャー州テルフォードのRBSL工場にて生産される事となります。

 ボクサー重装輪装甲車260両はライセンス生産ではなく合弁会社により製造するという新しい試みでありますが、同時にイギリス国内に1200名規模の新規雇用を生み出すとともに8億6000万ポンドにのぼる製造契約のうち60%はイギリス国内企業との間で交わされるとしており、従来のライセンス料ではなく相互互恵の防衛協力、その一例といえましょう。
■ポーランド製ブラックホーク
 フィリピン軍は民間用ブラックホークを軍用に転用するもようです。

 フィリピン空軍は新たにアメリカシコルスキー社製S-70Iブラックホークの導入を開始しました。2020年末に行われた納入式とともに6機が到着、フィリピン空軍では16機の導入を計画しており、導入費用は2億5200万ドル、2021年内に全てが納入される計画です。フィリピン空軍では特殊作戦や陸軍空中機動作戦の支援用に用いる計画とのことです。

 S-70Iブラックホーク多用途ヘリコプター、フィリピン空軍は旧式化したUH-1H多用途ヘリコプター等の後継機として当初、カナダ製ベル412EPI多用途ヘリコプター24機導入を検討していましたが、価格面で折り合いがつかず、結局ポーランドで組み立てられるUH-60ブラックホーク民間型を安価に取得する事としました。6機は主力ヘリコプターとなります。
■スカイネックス防空システム
 ドイツ軍はかつて大量配備し全廃したゲパルト自走高射機関砲の後継装備を模索しています。

 ドイツのラインメタル社は無人機飽和攻撃を完全に鎮圧するエリコンスカイネックス防空システムを発表しました。これはスイスのX-TAR3Dレーダーシステムにエリコン35mmリボルガーガンや自衛隊ではL-90として知られるGDF009TREO機関砲、及びレーザー砲等を統合運用するもので、単体防空システムではなく、地域防空コンセプトの提案です。

 エリコンスカイネックス防空システムはレーダーにより広範囲の小型無人機や徘徊式弾薬を飛行群単位で捕捉追尾し、複数個所に配備された機関砲より調整散弾を同時射撃し制圧するもので、将来的には蜂群を意味する無人機によるスウォーム攻撃さえも短時間に多数を射撃する高射機関砲により空への面制圧を目指すものです。無論、航空機にも有効です。
■フランスのサーバル軽装甲車
 フランス軍はここ十年間で軽装甲車体系を大きく刷新させようとしています。

 フランス陸軍は2020年12月23日、DGA社との間でサーバル軽装甲車364両の調達契約を成立させました。サーバルは装甲トラック型の四輪駆動軽装甲車両でVAB軽装甲車というフランス軍に1970年代より4000両以上が採用された傑作四輪駆動軽装甲車の後継車両として位置付けられています。サーバルのうち108両は2021年内に納入される見込み。

 サーバル軽装甲車は重量15t、兵員輸送よりは通信中継車や装甲輸送車などの汎用車両として想定されており、これはVAB軽装甲車の内、兵員輸送任務には別個に開発されたグリフィン軽装甲車が充てられる為となっています。フランス陸軍は2030年までにサーバル軽装甲車を978両取得する計画で、VAB軽装甲車は多様な複数車種により置き換えられます。
■インドネシア初の国産軍用車
 軍用装備は国威発揚の為に出来る限り国産で揃えたいというのは気持ちとしては判りますね。

 インドネシア陸軍は1月13日、インドネシア国産のマウン高機動車の受領を開始しました。これはインドネシアのPTピンダット社が自国向けに国産開発した車輛で、装甲を有さないソフトスキン車ですが四輪駆動の不整地踏破能力を有し、歩兵の輸送や偵察用に用いる新型車両で、インドネシアの防衛装備品国産率向上の一環として開発されたものです。

 マウン高機動車は引き渡し式に際して40両が納入され、最終的に500両が配備される計画です。納入式典にはスビアント国防相も出席しました。乗員は4名と荷物室を有しており、エンジンは149hpのトヨタハイラックス2494ccを採用、基本的に固定武装はありませんが、インドネシア軍では警戒任務用に7.62mmのSS2-V4軽機関銃搭載を予定しています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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