北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】F-15-EPAWSSとコロナとF-35量産,インドF/A-18E検討とロシアSu-57改良

2021-03-15 20:05:21 | インポート
■週報:世界の防衛,最新11論点
 今週は空軍の戦闘機関連の最新話題を中心としまして11の論点をお伝えしましょう。

 アメリカ空軍はF-15戦闘機に搭載するイーグルEPAWSS機体防護複合電子警戒システムの搭載改修についてボーイング社との間で1億8930万ドルの契約を締結しました。EPAWSS機体防護複合電子警戒システムはF-15戦闘機に及ぶ地対空及び空対空脅威を未然に検知もしくは索敵により発見し電子妨害や欺瞞行動等により機体自衛へ対処するもの。

 F-15には非ステルス機生存性向上へのSHiELD機体自衛用レーザー装置の搭載へ試験が進められており、これは地対空ミサイルや空対空ミサイルを50キロワットのレーザーにより直接破壊するという新時代の防衛システムです。EPAWSS機体防護複合電子警戒システムにはSHiELDそのものの搭載は含まれませんが、将来的に連接される事となるでしょう。

 EPAWSS機体防護複合電子警戒システムにはレーダー電波検知、目標座標把握、脅威度状況認識、チャフやフレアーと電子妨害装置の運用等を一体化させて対処するもので、これによりF-15は脅威度の高い地域への展開能力が強化されるとのこと。現在のところ、このシステムは戦闘爆撃機型のF-15Eへの搭載が想定され、2026年に完了する予定とのこと。
■2020年F-35生産数123機
 COVID-19下でも自衛隊向けF-35が量産されたようにロッキード社ではなんとか製造を継続しています。

 ロッキードマーティン社は2020年内に納入したF-35戦闘機が123機であったと発表しました。COVID-19新型コロナウィルス感染拡大により、2020年は当初141機を製造する計画でしたが、2020年5月に各国での感染拡大を受け117機から123機まで下方修正していました。これ以上縮小すると部品供給で生産費用が爆発的に高騰する懸念がありました。

 F-35戦闘機2020年123号機はイタリアのカーメリFACOにて完成しました。123機の内、アメリカ軍得配備されたのは74機、開発参加国へ配備されたものは31機、そして体外有償軍事供与向けに製造されたものが18機です。やはり多国間国際分業で組み立てられるF-35には部品製造面でのCOVID-19の影響は大きいものの影響は局限化できたとのこと。
■インド空母F/A-18を検討
 インド軍にもスーパーホーネットの時代が到来するのかもしれません。それも空母艦載機として、です。

 インド海軍は将来空母艦載機としてF/A-18E/Fスーパーホーネットを検討しており、この為の評価試験がアメリカ本土メリーランド州のパタクセントリバー海軍航空基地にて開始されました。この試験にはアメリカ海軍の第23実験飛行隊が参加しており、今回の評価試験では主としてスキージャンプ台からのF/A-18E/Fスーパーホーネット運用を支援する。

 F/A-18E/Fスーパーホーネットは現在、アメリカ海軍では後継機開発が開始されています、しかし第4.5世代戦闘機として十分な性能を有しており、一方、インド海軍では蒸気カタパルトを有する通常の航空母艦は運用していない為、重い機体を比較的小さな船体よりスキージャンプ台から運用できるかについて、その採用を左右する重要な視点と云えましょう。
■パキスタンが中国製JF-17増強
 F-2戦闘機のように小型の戦闘機に最大限の高性能を詰め込む事例がありますが、逆に世界では安価ながら最低限の高性能を詰め込む事例も。

 パキスタン軍は12月30日、中国製JF-17block2戦闘機14機を受領しました。JF-17は中国とパキスタンが共同開発した航空機で、中国空軍では採用されていませんが、ナイジェリア空軍等への配備も開始され、視程外空対空戦闘能力や精密誘導爆弾誘導能力等を持ち、世界最高ではないものの高性能の多機能レーダーを搭載しF-16よりも遥かに安価です。

 JF-17block2戦闘機はロシア製の9300kg推進力を発揮するRD-93MAエンジンを搭載し、初期のJF-17よりも性能は大幅に向上しており、パキスタン空軍ではJF-17を既に100機以上配備、JF-17block2は2024年までに62機の量産が見込まれています。非常に安価であるがゆえに中小国でも短期間で配備でき、F-16にも対抗できる魅力的な選択肢といえる。
■ハンガリーはL-39を再生産
 戦闘機の陰に隠れる練習機は地味でも非常に重要な存在といえましょう。

 ハンガリー空軍はL-39NG練習機試作機の評価試験を本格化している。L-39は1968年に開発されたチェコスロバキア製高等練習機で冷戦時代に東側諸国を中心に2900機が製造供給された機体で、高等練習機であると同時に軽攻撃機としての性能を有している。しかし、極めて高い性能と汎用性の為に2000年代に入っても後継機があまり普及していない。

 L-39NGはアエロドボディが開発した新型機種で基本的にL-39の製造ラインを踏襲しつつ新世代航空機の操縦要員を養成できる操縦体系を有している。ハンガリー空軍ではケチメート第59空軍基地において評価試験を行っている。ハンガリーでL-39練習機は2010年に除籍、現在は派生型のL-159-ALCA練習機を運用中だが、その後継機を模索している所だ。
■キンジャール極超音速ミサイル
 極超音速兵器時代と聞きますと改めてもうファントムの時代ではないのですね。

 ロシア海軍は北方艦隊第98航空連隊にKh-47キンジャール極超音速ミサイルの実戦配備を開始した、ロシアのイズベスチャ紙が報道した。キンジャールはMiG-31戦闘機より運用するもので、元々はイスカンデル短距離弾道弾、スカッドミサイルの後継として開発された短距離弾道弾を上昇性能に優れたMiG-31戦闘機から投射し落下速度を速めたものだ。

 Kh-47キンジャールはマッハ10乃至マッハ12で飛翔するとされ、これは地上からイスカンデルミサイルを発射した場合よりも大幅に強化されている。MiG-31はMiG-25戦闘機の改良型であり、最高速度こそMiG-25よりも低下しているが電子装備は大幅に強化されているため、重量の大きなイスカンデルミサイルを搭載した場合でも上昇性能は充分である。

 MiG-31は航空宇宙軍に配備されており、海軍航空隊への配備はこれまで行われていないが、近く海軍カムチャトカウィル基地の太平洋第317航空連隊へも配備が開始されるという。イスカンデルは中距離核戦力全廃条約の制約下で射程を500kmに抑えているが成層圏から発射するキンジャールは射程が2000kmにまで延伸、対艦用に用いられる可能性が高い。
■Su-57ステルス性を向上
 ロシア機はSu-27でも試作機と量産機が大きく形状を変化させたことを思い出します。

 ロシア軍の第五世代戦闘機Su-57がエアインテークグリルを装着しステルス性を大幅に向上した、ロシア国内報道が伝えるところによればSu-57戦闘機はエンジンに空気を供給するエアインテーク部分がステルス性の脆弱性となっていましたが、今回この部分にエアインテークグリルとしてステルス遮蔽板を装着することで脆弱性を払拭したとのことです。

 Su-57戦闘機を含む戦闘機は機体形状によりステルス性を構成していますが、エンジンへの空気取り入れ口から入ったレーダー波がそのまま奥に位置するエンジンに反射し、部分的にステルス性を損なう問題が。F-22やF-35では空気経路をS字状とする事で対応していますが、Su-57はここに反射板を置き、レーダー反射面積下げつつ空気経路を確保します。

 Su-57戦闘機は2019年に76機を27億ドルで量産契約を結んでおり、これはロシア製戦闘機としては破格の高さではありますが、アメリカ製第五世代戦闘機よりは大きく費用を抑えている点が特色です。Su-57のステルス性がどの程度であるかはロシア政府発表の信憑性により判断が難しい所ですが、それは0.1平方メートル以上1平方米以下と発表しています。
■二転三転のインドネシアF-X
 インドネシアの国防計画は二転三転するものと認識せねば下手な信頼は大やけどの元です。

 インドネシア空軍は12月、アメリカよりF-15戦闘機及びF/A-18戦闘機の100機を長期的に契約する方針を表明しました。これは12月7日に行われたインドネシアのスビアント国防大臣とアメリカのミラー国防長官代行との代打で示されたもので、インドネシア政府はF-35戦闘機の170機取得を望んだものの十年以上要するとして断念したもようです。

 インドネシア政府は90億ドルから110億ドルにより次期戦闘機の取得を望んでおり、しかしフライアブルコストではF-15,F/A-18ともに現行の生産型ではこれだけの装備を調達する事は現実的ではありません、この為、アメリカとの合意にもかかわらずユーロファイター中古機やラファール中古機導入の交渉も進められており、現実的な見通しは立ちません。
■米海兵隊F-35C母艦運用開始
 ニミッツ級空母などで運用されるF-35Cは空母艦載機型で垂直離着陸型のF-35Bとは別の型式です。

 アメリカ海兵隊の第3海兵航空団司令官クリストファーマホニー少将はVMFA-314/第314海兵攻撃飛行隊はF-35C戦闘機のIOC初度作戦能力獲得を12月2日付で発表しました。VMFA-314/第314海兵攻撃飛行隊は第3海兵航空団隷下の飛行隊であり、F-35Cを運用する海兵隊最初の飛行隊で、MAGTF海兵空地任務部隊一員としれ艦上に展開します。

 VMFA-314/第314海兵攻撃飛行隊に配備されたF-35CはF-35シリーズの中でも最も開発に時間を要した機体で空母艦載機型、海兵隊は既に垂直離着陸が可能でアメリカ級やワスプ級強襲揚陸艦から運用するF-35Bの運用ではかなりの経験を有していますが、F-35Cは基地やニミッツ級原子力空母やジェラルドFフォード級原子力空母より運用するものです。
■U-2偵察機にAI副操縦士
 U-2偵察機は胴体部分がF-104という大時代的な機体ですが搭載能力が大きくまだまだ現役です。

 アメリカ空軍では現在も運用が継続されるロッキードU-2戦略偵察機についてAI副操縦士の近代化改修を計画しているとの事です。U-2偵察機はF-104を原型とした設計ではありますが、RQ-4無人偵察機よりも大型で高性能のセンサーを搭載可能であり、無人偵察機全盛の現代でも運用が続いていますが、極めて操縦が難しい事でも知られている航空機だ。

 U-2偵察機のAI副操縦士は操縦士の飛行情報や脅威情報等の情報処理を従来の自動操縦装置よりも的確に補佐し、収集した情報の伝送も実施、操縦士の負担を軽減する事が期待されています。U-2偵察機は成層圏を飛行する為に宇宙服とほぼ同じ高高度与圧服を装着する為に機内での作業には大きな制約があり、長大な主翼は離着陸にも高度な技術を要します。
■豪州空軍P-8A増強へ
 P-8A哨戒機、海外の兵器見本市では海上自衛隊のP-1哨戒機と毎回比べられる海洋哨戒機ですね。

 オーストラリア空軍はボーイングP-8Aポセイドン海洋哨戒機を更に2機増強する方針を発表しました。オーストラリア空軍はP-3B哨戒機の後継にP-8Aを選定、現在12機の配備計画があり、今回の増強によりP-8A海洋哨戒機は14機体制となります。これは南シナ海に加え東シナ海の海洋監視能力強化が求められている為の海洋哨戒能力強化の一環です。

 P-8A海洋哨戒機は海洋監視と共に対潜哨戒任務に充てるべくMQ-4Cトリトン無人偵察機3機の導入が進められています。またオーストラリア空軍ではLRASM長距離対艦ミサイルをP-8Aに搭載し対艦打撃力の一端を担わせる計画もあり、オーストラリア軍全体では10年間で2700億ドルの巨費を投じて、オーストラリア軍の近代化を進めているところです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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