北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】情報も補給するJADC2データタンカー構想とSu-57に続くロシア次世代戦闘機

2021-08-17 20:11:40 | インポート
■週報:世界の防衛,最新12論点
 今回は空軍関連の話題を中心に12論点を。空中給油機は今後燃料を補給するだけではなくより深い位置まで航空戦闘へ参画するようです。

 アメリカ空軍はノースロップグラマン社との間でJADC2データタンカー構想を推進中です。データタンカー構想とは、現在空軍が運用する空中給油輸送機をもとに高度な通信支援機能を追加し、一種の空中Wifiを空中給油機周辺に展開する戦闘機等に提供するというもの。戦闘機に比べ空中給油機には数多くの通信機材を搭載する容量的な余裕が大きい。

 JADC2,ジョイントオールドメインコマンドアンドコントロールとする空中Wifiは現在、北方軍とNORAD北米防空司令部がKC-135空中給油機とKC-46空中給油輸送機を用いた実証実験を進めており、人工衛星から受信する様々な情報を4G通信や更には-5G准第五世代移動体通信により伝送、厳しい電子戦状況下でネットワーク維持を継続する構想です。
■小松基地へF-35配備決定
 小松基地は現在日本最大のイーグルネストですが最新鋭機の配備は歓迎しつつ一抹の寂しさも。

 防衛省はF-35A戦闘機を2025年より小松基地の第6航空団へ配備開始する方針を発表しました。これは6月2日に政府関係者が報道発表し6月3日に近畿防衛局から石川県庁や小松市など地元関係者に説明を行っています。航空自衛隊F-35A戦闘機の配備は青森県の三沢基地に続いて全国で二番目で、この他アメリカ海兵隊が岩国基地に配備しています。 

 小松基地へのF-35A配備は先ず2025年に最初の4機が配備され、最終的に20機が配備されると発表されていて、現在運用されているF-15戦闘機のうち一個飛行隊を置換えることとなります。小松基地は第6航空団にF-15戦闘機2個飛行隊と、そして航空教育集団より飛行教導群が展開しており、現在日本国内で最大のイーグル運用基地となっています。
■地中海へバックファイア
 凄いのがやってきました、訓練展開は一時的ですが今後頻度が狭まればNATOの受ける圧力は大変なものになる。

 ロシア航空宇宙軍は最新改良型のバックファイア超音速爆撃機をシリアの地中海沿岸基地へ展開させたとのこと、5月26日付のAP通信が報じた。バックファイア超音速爆撃機が展開したのはシリアの西部、ラタキア県にあるフメイミム空軍基地で、この空軍基地はロシアの資金援助により2021年に入り長大な第二滑走路が整備されたばかりとされる。

 バックファイア超音速爆撃機は近代化改修を受けたTu-22M3、冷戦時代にアメリカ航空母艦攻撃を念頭に超音速対艦ミサイル運用能力を持つ爆撃機として開発された、ただ、戦略兵器削減条約の定義に含まれぬよう、航続距離としては5000kmと戦略爆撃機に比べれば航続距離は短い。他方でラタキア県への展開は東地中海のロシアプレゼンス強化に繋がる。
■米軍のLAAR軽攻撃機計画
 米軍も練習機派生のCOIN機のようなものに手を出すのですね。

 アメリカ空軍のLAAR軽攻撃機計画へアメリカのL3ハリステクノロジー社は農薬散布用軽飛行機を攻撃機に転用したAT-802Uスカイワゴンを完成させました。原型となったAT-802はスカイワゴン社が開発した農業用機でドラム缶15本分にあたる3100lの液体肥料を機内に搭載でき、また放水用増槽により、消防用航空機としても活躍する航空機です。

 AT-802Uスカイワゴンはターボプロップ単発機としては比較的大きな搭載能力と、なにより農業用航空機としての長い滞空時間に低い運用コストを誇り、70mmロケット弾や機銃ポッドを搭載する能力があります。アメリカ空軍が何もこんな変な航空機と嘆息しそうですが、これは正規軍同士の戦闘でなく主として非正規勢力との特殊作戦に用いるものです。

 アメリカ空軍ではF-35戦闘機の配備が進むと共に空軍のF-16戦闘機一部がMQ-9リーパーなどの無人航空機により代替された事で戦闘機操縦要員の不足が指摘されており、特に操縦要員の不足はF-35操縦要員などを選定する裾野の狭まりにもつながる事から、AT-802UスカイワゴンのようなCOIN機を装備させ、操縦要員確保へ充てる構想もある。
■ブルガリアDAM機動整備施設
 日本も島嶼部防衛を考えるのならば離島への機動展開ユニットを海上輸送させる研究と専用の装備が必要となります。

 ブルガリア空軍はサーブ社よりDAM機動整備施設を調達します。DAM機動整備施設、このディプロイアブルメンテナンスファクトリーとはその名の通り、可搬式の整備施設で戦闘機を収容する大型テントと電子整備や兵装整備を行う複数のテント、そして予備部品や弾薬と整備員や操縦士の休息を行うコンテナ群や燃料タンク等から構成されています。

 DAM機動整備施設の導入によりブルガリア空軍は運用する戦闘機を既存基地以外の野戦飛行場や民間空港、必要ならば直線の高速道路からも運用する事が可能となります。ブルガリア空軍は現在MiG-29戦闘機15機とSu-25攻撃機8機を装備しており、MiG-29についてはF-16V戦闘機8機で更新される計画です。サーブ社はJAS-39も売込んでいました。
■Il-76MD-90A量産型が完成
 Il-76,アメリカのC-17輸送機よりは古いですが戦略輸送機ほど飛行場環境整備を必要としない戦域間輸送機という概念の先駆者といえます、その最新型だ。

 ロシア軍が導入するイリューシンIl-76MD-90A輸送機の量産初号機が初飛行を完了しました。これはロシアUAC航空機製造が5月20日に発表したもので、ウリヤノフスク工場にて製造、原型機は2012年に初飛行しています。初号機は2019年4月2日にロシア航空宇宙軍へ引渡されました。UAC航空機製造ウリヤノフスク工場では9機が製造中という。

 イリューシンIl-76MD-90A輸送機は戦域間輸送機にあたり、新設計の主翼や最新の航法装置と新型のPS-90A-76エンジンを搭載しており、従来のIl-76の搭載能力48tから60tへと空輸能力が大幅に向上しています。ただ、試作機完成後に要求が変更され初飛行が大幅に遅れる事となりました。ロシア航空宇宙軍は2028年までに27機を導入する計画です。
■フランスH-160ゲパード追加
 想定戦域が近く、前線救難に使うのであればUH-60クラスのものよりも使い勝手が良いものもあるのかもしれません。

 フランス海軍はエアバスH-160ゲパード中型ヘリコプター2機を追加調達する。これはDGAフランス装備総局が5月に発表したもので、海軍では現在エアバスH-160ゲパード4機の調達が決定、救難ヘリコプターとして運用する構想だが、これが6機に増強される。現在海軍はNH-90と比較的旧式のAS-365パンサーを救難ヘリコプターとして運用中だ。

 エアバスH-160ゲパード中型ヘリコプターは従来の航空機が油圧系統により操縦装置を稼働させていたのに対し電動化させることで同系統のヘリコプターより15%にあたる1tの軽量化を実現し、またユーロコプターX3複合ヘリコプター開発にて蓄積された高速飛行形状を元に最高速度325km/h、巡航速度287km/h、航続距離850km/hという高い性能を誇る。
■サイレントアロー無人貨物機
 有人機の前線輸送が難しい場合のもの。無人機は情報を運ぶものという発想ですが1tと軽トラックの倍以上運べる簡易無人機が出来た。

 アメリカ特殊作戦軍司令部へ提案するべくイェーツエレクトロスペースコーポレーションは1tの物資を輸送するサイレントアローGD-2000貨物輸送無人機を発表しました。これは物量コンテナへ機首ユニットとタンデム主翼ユニットを装着し小型の推進装置により輸送するもので、極めて低コストにて少なくとも70km先まで物資輸送が可能というもの。

 サイレントアローGD-2000貨物輸送無人機のコンテナには一例として20リットルジェリカン3個と弾薬箱14ケース、多目的ミサイルコンテナ2個と戦闘糧食ケース2個が収容できるとし、C-17輸送機やC-130輸送機に大量搭載し空中から発進させる運用を想定しています。厳重に封鎖された第一線への強行空輸が無人機により容易となるのかもしれません。
■カラー型のAAQ-33照準装置
 F-16の真価はまだ伸びしろがあるということなのかもしれない。

 アメリカ空軍はノースロップグラマン社よりカラー画像方式のAN/AAQ-33-LITENING先進爆撃照準指示装置の受領を開始した、当面は州兵空軍へ配備される。AN/AAQ-33先進爆撃照準指示装置はF-16戦闘機に搭載されレーザー誘導爆弾やレーザーJDAM精密誘導爆弾の照準及び識別に用いられるとともにISR情報手週刊誌偵察任務にも対応するとのこと。

 AN/AAQ-33-LITENING先進爆撃照準指示装置がカラー画像を採用することは、従来の夜間爆撃においてモノクロ画像では目標識別、特に非戦闘員居住地区での戦闘不随被害極限には情報不足であった。夜間暗視映像もカラー化することで識別が容易となる。第五世代戦闘機は徐々に普及する中に在ってもF-16は使いやすい戦闘機として重宝されている。
■トルコがF-16を近代化改修
 F-16は今後どこまで飛行するのだろうか、改修するよりは機体寿命を考えず済むよう改良型を開発した方が良いのではとも思う。

 トルコ空軍はTAIトルコ航空宇宙産業による旧式化したF-16block30戦闘機の近代化改修を順調に進めています。多数のF-16戦闘機を導入したトルコ空軍ですがこのF-16block30戦闘機はF-16Cでも最初期のものであり、トルコ空軍には35機が在籍しています。このため2020年7月より近代化改修本格化、2021年5月に6号機が改修を終えた。

 F-16block30戦闘機の近代化改修では構造部品の内老朽化の可能性のある1500部品を置換え、また老朽化しやすい構造部分の換装も行う事でF-16戦闘機の設計寿命耐用飛行時間8000時間を12000時間まで延伸する構想です。トルコでは独自にTF-X国産戦闘機計画がイギリスの技術支援下で進められており、F-16はそれまでの繋ぎとして維持されるもよう。
■豪州軍がF/A-18Fを改修
 レガシーホーネットが改修受けず早々に引退するなかでスーパーホーネットは長生きするのだろうか。

 オーストラリア空軍はDTP-N能力向上キットを取得し保有するF/A-18F戦闘機とEA-18G電子攻撃機について対艦攻撃能力の付与を行う方針です。F/A-18F戦闘機はハープーン空対艦ミサイル等を搭載し対艦戦闘を行う事は当然可能ですが、海軍統合射撃管制機能ニフカへの接続能力や海軍データリンクの全面的な接続通信能力は有していません。

 DTP-N能力向上キットはTTNTタクティカルターゲティングネットワークテクノロジーに適合するDTP-N分散型ターゲティングプロセッサネットワークであり、戦闘機内に大型モニターを配置することで海軍水上戦闘艦と共通のネットワーク状況表示が可能となり、操縦士は肉眼やレーダー画面では把握できない複雑な海上戦闘概況図を用いる事ができます。
■ロシアが新しい第五世代戦闘機
 日本の次世代機の開発は先が見通せませんがロシアの場合もSu-57の量産が進まない中での新型開発という。

 ロシアのスホーイ社はSu-57戦闘機に続く新しい第五世代戦闘機の開発に着手した、ロシアのタス通信が報じた。スホーイ社はロシア空軍や海軍い採用のSu-27戦闘機などを開発する制空戦闘機の名門で、第五世代戦闘機として大型で双発のSu-57戦闘機を開発しているが、戦術戦闘機としては大き過ぎ戦闘爆撃機的な運用がなされるとも分析されている。

 Su-57戦闘機に続く新型機はタス通信によるところでは、新しい第五世代戦闘機は最大離陸重量18t程度の単発戦闘機であるとされ、最高速度はマッハ2級、また推力偏向ノズルを有する事で優れた空戦機動力を有するとともに、エンジン出力機体重量比1:1以上、Su-57と比較の場合で短距離離着陸能力も備えてゆく構想です。試作機等の段階ではありません。

 MAKS-2021航空ショーにてロシアの防衛産業大手ロステック社はスプートニクニュースの取材に対し新型戦闘機の発表を示唆しているが、スホーイ社の新しい第五世代戦闘機はアメリカのF-35戦闘機を意識した小型のものとなるのかもしれない。現在、その構成要素となる新型ステルス機体塗料や次世代エンジン計画プロジェクト30が推進中とされる。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (2)
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