■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は空軍関連の話題を戦闘機について中心に11論点を視てみましょう。
アメリカ空軍は2021年3月に実施したF-15C戦闘機からのAMRAAM極超長距離射程射撃試験において記録的な長射程での命中を記録したとのこと。発表は4月4日に行われたが、長大とされる射程の詳細は発表されていない。この試験は第83評価支援飛行隊が実施、単独飛行BQM-167無人標的機に対しAIM-120D-AMRAAMを用いて実施したという。
AIM-120D-AMRAAMの射程は160kmであるが、これを上回ったと考えられる。アメリカでは海軍のF-14戦闘機がAIM-54フェニックスミサイルにより射程180kmを達成、戦闘機からのミサイルは200km以下が限界と考えられていたが、アメリカ空軍の発表では史上最長という表現も用いられており、これが海軍機を含め最長であるかについて興味深い。
■F-16block72に生産網再建
戦闘機の製造には量産ラインをどう維持するかが日本のF-2でも問題となりましたがアメリカはF-16block72の量産ラインについてどう対応したのでしょう。
アメリカのロッキードマーティン社は今後128機の新造が見込まれる最新F-16block72の量産へ製造ラインを強化したとのこと。F-16戦闘機はアメリカ空軍の数の上での主力戦闘機であるが、後継機となるF-35戦闘機の量産本格化によりロッキードマーティン社のテキサス州フォートワース工場での生産ラインは2010年代後半に既に閉鎖されていました。
F-16block72は最新のAESAレーダーを備えコンフォーマル式燃料タンクを備える等、F-35戦闘機に準じる航空機であり、アメリカでは第五世代戦闘機には及ばないものの既存の4.5世代戦闘機よりも新しい准第五世代戦闘機としています。一時は製造ラインをインドに移転する計画もありましたがインドのF-16採用は今も未決定でその目処は立っていません。
ロッキードマーティン社テキサス州フォートワース工場は同社の主力工場に当りますが、今回F-16block72はサウスカロライナ州のグリーンビル工場に製造ラインを創設する事となりました。バーレーン、スロバキア、ブルガリア、台湾等が導入を計画、2022年に初号機が完成します。ロッキードマーティン社ではアメリカ空軍への再配備も期待しています。
■FCAS計画エンジン開発へ新会社
エンジン開発は戦闘機開発の肝心要の部分で日本も苦労していますが。
欧州将来戦闘機FCAS計画についてエンジン開発へEUMET独仏合弁会社が設立することとなりました。FCASは第五世代戦闘機を持たない独仏が目指す第六世代戦闘機計画です。これはフランスのサフラングループとドイツのMTUアエロエンジン社が共同出資し創設されるもので、EUMET合弁会社の本社機能はドイツのミュンヘンに置かれるとのこと。
EUMET独仏合弁会社として今回はドイツが参画する事となりましたが、実際にはドイツに戦闘機用エンジン開発技術は無く、ラファール戦闘機に搭載されるM-88エンジン技術を持つサフラングループが事実上の主導権を握り、ドイツが開発費を負担するという構図です。サフラングループはスネクマ社とSAGENグループが2005年に合併し誕生しました。
■トルコF-35導入禁止決定
F-35を導入するには信頼が必要でして安価だから自衛隊もロシア製戦闘機をと昔論評していた自称ヒョーロン家は猛省して頂きたい。
アメリカ政府は情報保全上の著しい問題状態が解決されないままだとして、2021年4月21日にトルコを正式にJSF統合打撃戦闘機F-35パートナー国から除外した事を通知しました。トルコ政府はアメリカ政府を相手取りトルコ政府が支出した15億ドルの返還かトルコ向け初号機を含む4機のF-35を引き渡すよう求める裁判の可能性を示唆しています。
トルコは2019年にロシア製S-400地対空ミサイルシステムを導入、これは防空ネットワークにデータリンクする為、情報共有システムを通じNATOの防空情報がロシアへ漏洩する可能性が示唆されていました、これを受け2019年にアメリカトランプ政権がトルコへのF-35輸出を凍結、バイデン新政権もこの姿勢を堅持し、今回のトルコ除外となりました。
F-35開発はトルコも初期より参加しており、15億ドルの開発費を負担しています。ロシア政府はミサイルデータリンクシステムをNATO防空システムに接続した場合にミサイルシステムにデータリンクされる事は認めていますが、ロシア側へその情報がリアルタイムで共有されるかについて立場を明らかとしていませんが、トルコ側は問題無いとしています。
■A-400M輸送機が空中給油実施
日本のC-2輸送機も派生型で空中給油型を開発し生産数を伸ばしてはどうかと思う。
フランスの国防装備総局DGAはエアバスA-400M輸送機を用いた初のヘリコプター空中給油を実施しました。これはA-400M輸送機に空中給油装置を装着した上で空中給油任務に充てる方式で、フランス空軍は現在、C-130J輸送機を用い同様の任務を実施しており、将来的にA-400MがC-130Jを置換える際の任務互換性の検証実験といえるでしょう。
A-400Mからの空中給油試験は2021年3月22日から4月2日にかけ実施、フランス空軍が運用するカラカルとして知られるEC-725ヘリコプターを用い、フランス南西部上空において8回の空中給油を実施しました。この中には夜間空中給油や一度に数トンの燃料を空中給油する試験も実施され、いずれの試験においても良好な成績を残したとのことです。
■エジプトがラファール追加
ラファール戦闘機は一時期タイフーン戦闘機の後塵を拝していたのがウソのようでして日本のF-2もこうして進化を続けて最新を保つ必要が在ったのだと思う。
エジプト空軍はフランス製ラファール戦闘機を追加発注する方針で最大のラファール輸入国となるもようです。エジプト空軍は現在24機のラファール戦闘機を運用中となっていますが、5月4日、エジプト国防省は更に30機を追加するフランスとの協定に署名しました。30機のラファールは米ドル換算で45億ドル、1機あたり1億5000万ドルとなります。
ラファールは開発以来海外輸出に苦慮していましたが、インド空軍への採用がようやく実現しカタール空軍への配備も進んでいます、しかしその数は多くありません。エジプトは2015年に24機導入を契約、同時にフリゲイト等の各種装備をパッケージ契約し、フランス政府が低利子の10年ローンを認め、稼働率も維持出来た為、今回の増強に至りました。
■韓国の次世代輸送多目的航空機
韓国も日本の様な国産輸送機をという試みでしょうが戦闘機や練習機と異なり胴体の大きな航空機は独特の難しさがある、お手並み拝見ですね。
韓国防衛事業庁はKAI韓国航空宇宙産業との間で次世代輸送多目的航空機開発に関する研究開始で合意しました。韓国ではC-130輸送機とCN-235輸送機及びP-3C哨戒機の老朽化が進んでおり、7年間で27億ドルを投じて双発航空機を基本型とした輸送多目的航空機を開発、これを原型として、韓国が必要とする各種の航空機に充てるのが今回の狙い。
次世代輸送多目的航空機についてKAI韓国航空宇宙産業が提案したCGイメージ図では双発のT字尾翼を有する航空機が描かれており、これは恰も日本の川崎重工が開発したC-1輸送機やブラジルのエンブラエルが開発したKC-390輸送機を彷彿させるものだ。一機種で輸送機と哨戒機を開発するのは2000年当時の日本C-X/P-X構想と重なるともいえよう。
■JF-17サンダー戦闘機輸出
JF-17サンダー戦闘機は自衛隊のファントムよりも地味に高性能だったりする。
ナイジェリア空軍は中国設計のJF-17サンダー戦闘機の受領を開始しました。5月20日にナイジェリアのムハンマドブハリ大統領出席のもとで引渡式典が実施され、3機のJF-17がこの日に就役しています。ナイジェリアは国内の武装勢力ボコハラムとの戦闘に近代的な戦闘機を必要としており、今回の引渡は第四世代戦闘機相当の戦闘機導入となりました。
JF-17サンダー戦闘機は中国が設計しパキスタンがライセンス生産、ナイジェリアへ供給しています。これは2018年にパキスタンとナイジェリアの政府間合意により3機のJF-17をナイジェリア国内においてノックダウン生産する1億8400万ドルの契約が結ばれ、2021年3月にノックダウン生産向けJF-17戦闘機が海路を経てマクルディ基地へ到着しました。
■ナイジェリアJF-17導入
JF-17サンダー戦闘機の話題をもう一つ。
ナイジェリア空軍は5月20日に最初の3機を受領したJF-17サンダー戦闘機について、能力向上型の開発や自国でのライセンス生産開始について、中国及びパキスタンの協力を期待しています。JF-17は1980年代のF-16C戦闘機程度の戦闘機を1980年代の易かった時代の費用で入手できる新型で、原型はFC-1として成都航空機製造公司で開発されました。
ナイジェリア空軍が運用するJF-17サンダー戦闘機はMIL-STD-1760データ通信装置と7カ所の兵装架、23mm双連機関砲を搭載、また精密爆撃を行うべくトルコ製Aselpod照準ポッドが搭載されています。ライセンス生産を行うPACパキスタン航空工業社ではナイジェリア政府に対して、更に35機から40機のノックダウン用機体輸出を期待しています。
■アルゼンチンJF-17難航へ
イギリスは一旦関係をこじらせさせるとこうした対応を組めるようでして日本も外交力の在り方として見習うべき。
アルゼンチン空軍が進める中国製JF-17戦闘機導入計画について不確定要素が生じています。アルゼンチン空軍は旧式化したA-4AR攻撃機の後継機としてJF-17を計画していますが、1982年のフォークランド紛争後関係が悪化したままであるイギリス政府がJF-17輸出を阻止する可能性があるもよう。JF-17の射出座席はイギリスマーチンベイカー社製です。
JF-17戦闘機はF-16C戦闘機に匹敵する中国製戦闘機で、第4.5世代戦闘機には及ばないものの中距離空対空ミサイルや対艦ミサイルが運用可能、更に1700万ドル程度と1980年代のF-16戦闘機と同程度の取得費用で調達可能です。アルゼンチン政府は2021年5月に中国代表団のアルゼンチン訪問に際し12機のJF-17売却で合意したとの発表を行いました。
A-4AR攻撃機はアルゼンチン空軍がかつて運用したミラージュⅢの老朽化退役の際にA-4攻撃機へAPG-66V2レーダーを搭載し空対空能力を付与したものですが、流石に古くA-4AR改修を受けた36機は極めて低い稼働率となっています。過去には韓国よりFA-50軽戦闘機の導入を試みましたが、やはり、イギリス政府の反対により実現していません。
■アルゼンチンはパンパⅢ増産へ
T-4練習機はこうやってみてみると世界的には成功した部類と云える。
アルゼンチン空軍はアルゼンチン国産のIA-63パンパⅢジェット練習機及び軽攻撃機型6機を1億0320万ドルで取得します。パンパを生産するFaDeA社は現在、この航空機を生産する以外製造ラインは無く1990年から2020年まで製造した航空機は10機のみ、A-4攻撃機の改修や航空機維持部品などを製造していますが1600名の雇用を維持しています。
IA-63パンパは西ドイツのドルニエ社の技術協力により1984年に初飛行した練習機で、ドルニエ社が製造したアルファジェット高等練習機の技術を元に簡略化した設計となっており、1984年から2018年までの34年間で24機が細々と生産されています。パンパⅢは2013年に完成した最新型でグラスコックピット化され、機関砲やロケット弾を搭載可能です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は空軍関連の話題を戦闘機について中心に11論点を視てみましょう。
アメリカ空軍は2021年3月に実施したF-15C戦闘機からのAMRAAM極超長距離射程射撃試験において記録的な長射程での命中を記録したとのこと。発表は4月4日に行われたが、長大とされる射程の詳細は発表されていない。この試験は第83評価支援飛行隊が実施、単独飛行BQM-167無人標的機に対しAIM-120D-AMRAAMを用いて実施したという。
AIM-120D-AMRAAMの射程は160kmであるが、これを上回ったと考えられる。アメリカでは海軍のF-14戦闘機がAIM-54フェニックスミサイルにより射程180kmを達成、戦闘機からのミサイルは200km以下が限界と考えられていたが、アメリカ空軍の発表では史上最長という表現も用いられており、これが海軍機を含め最長であるかについて興味深い。
■F-16block72に生産網再建
戦闘機の製造には量産ラインをどう維持するかが日本のF-2でも問題となりましたがアメリカはF-16block72の量産ラインについてどう対応したのでしょう。
アメリカのロッキードマーティン社は今後128機の新造が見込まれる最新F-16block72の量産へ製造ラインを強化したとのこと。F-16戦闘機はアメリカ空軍の数の上での主力戦闘機であるが、後継機となるF-35戦闘機の量産本格化によりロッキードマーティン社のテキサス州フォートワース工場での生産ラインは2010年代後半に既に閉鎖されていました。
F-16block72は最新のAESAレーダーを備えコンフォーマル式燃料タンクを備える等、F-35戦闘機に準じる航空機であり、アメリカでは第五世代戦闘機には及ばないものの既存の4.5世代戦闘機よりも新しい准第五世代戦闘機としています。一時は製造ラインをインドに移転する計画もありましたがインドのF-16採用は今も未決定でその目処は立っていません。
ロッキードマーティン社テキサス州フォートワース工場は同社の主力工場に当りますが、今回F-16block72はサウスカロライナ州のグリーンビル工場に製造ラインを創設する事となりました。バーレーン、スロバキア、ブルガリア、台湾等が導入を計画、2022年に初号機が完成します。ロッキードマーティン社ではアメリカ空軍への再配備も期待しています。
■FCAS計画エンジン開発へ新会社
エンジン開発は戦闘機開発の肝心要の部分で日本も苦労していますが。
欧州将来戦闘機FCAS計画についてエンジン開発へEUMET独仏合弁会社が設立することとなりました。FCASは第五世代戦闘機を持たない独仏が目指す第六世代戦闘機計画です。これはフランスのサフラングループとドイツのMTUアエロエンジン社が共同出資し創設されるもので、EUMET合弁会社の本社機能はドイツのミュンヘンに置かれるとのこと。
EUMET独仏合弁会社として今回はドイツが参画する事となりましたが、実際にはドイツに戦闘機用エンジン開発技術は無く、ラファール戦闘機に搭載されるM-88エンジン技術を持つサフラングループが事実上の主導権を握り、ドイツが開発費を負担するという構図です。サフラングループはスネクマ社とSAGENグループが2005年に合併し誕生しました。
■トルコF-35導入禁止決定
F-35を導入するには信頼が必要でして安価だから自衛隊もロシア製戦闘機をと昔論評していた自称ヒョーロン家は猛省して頂きたい。
アメリカ政府は情報保全上の著しい問題状態が解決されないままだとして、2021年4月21日にトルコを正式にJSF統合打撃戦闘機F-35パートナー国から除外した事を通知しました。トルコ政府はアメリカ政府を相手取りトルコ政府が支出した15億ドルの返還かトルコ向け初号機を含む4機のF-35を引き渡すよう求める裁判の可能性を示唆しています。
トルコは2019年にロシア製S-400地対空ミサイルシステムを導入、これは防空ネットワークにデータリンクする為、情報共有システムを通じNATOの防空情報がロシアへ漏洩する可能性が示唆されていました、これを受け2019年にアメリカトランプ政権がトルコへのF-35輸出を凍結、バイデン新政権もこの姿勢を堅持し、今回のトルコ除外となりました。
F-35開発はトルコも初期より参加しており、15億ドルの開発費を負担しています。ロシア政府はミサイルデータリンクシステムをNATO防空システムに接続した場合にミサイルシステムにデータリンクされる事は認めていますが、ロシア側へその情報がリアルタイムで共有されるかについて立場を明らかとしていませんが、トルコ側は問題無いとしています。
■A-400M輸送機が空中給油実施
日本のC-2輸送機も派生型で空中給油型を開発し生産数を伸ばしてはどうかと思う。
フランスの国防装備総局DGAはエアバスA-400M輸送機を用いた初のヘリコプター空中給油を実施しました。これはA-400M輸送機に空中給油装置を装着した上で空中給油任務に充てる方式で、フランス空軍は現在、C-130J輸送機を用い同様の任務を実施しており、将来的にA-400MがC-130Jを置換える際の任務互換性の検証実験といえるでしょう。
A-400Mからの空中給油試験は2021年3月22日から4月2日にかけ実施、フランス空軍が運用するカラカルとして知られるEC-725ヘリコプターを用い、フランス南西部上空において8回の空中給油を実施しました。この中には夜間空中給油や一度に数トンの燃料を空中給油する試験も実施され、いずれの試験においても良好な成績を残したとのことです。
■エジプトがラファール追加
ラファール戦闘機は一時期タイフーン戦闘機の後塵を拝していたのがウソのようでして日本のF-2もこうして進化を続けて最新を保つ必要が在ったのだと思う。
エジプト空軍はフランス製ラファール戦闘機を追加発注する方針で最大のラファール輸入国となるもようです。エジプト空軍は現在24機のラファール戦闘機を運用中となっていますが、5月4日、エジプト国防省は更に30機を追加するフランスとの協定に署名しました。30機のラファールは米ドル換算で45億ドル、1機あたり1億5000万ドルとなります。
ラファールは開発以来海外輸出に苦慮していましたが、インド空軍への採用がようやく実現しカタール空軍への配備も進んでいます、しかしその数は多くありません。エジプトは2015年に24機導入を契約、同時にフリゲイト等の各種装備をパッケージ契約し、フランス政府が低利子の10年ローンを認め、稼働率も維持出来た為、今回の増強に至りました。
■韓国の次世代輸送多目的航空機
韓国も日本の様な国産輸送機をという試みでしょうが戦闘機や練習機と異なり胴体の大きな航空機は独特の難しさがある、お手並み拝見ですね。
韓国防衛事業庁はKAI韓国航空宇宙産業との間で次世代輸送多目的航空機開発に関する研究開始で合意しました。韓国ではC-130輸送機とCN-235輸送機及びP-3C哨戒機の老朽化が進んでおり、7年間で27億ドルを投じて双発航空機を基本型とした輸送多目的航空機を開発、これを原型として、韓国が必要とする各種の航空機に充てるのが今回の狙い。
次世代輸送多目的航空機についてKAI韓国航空宇宙産業が提案したCGイメージ図では双発のT字尾翼を有する航空機が描かれており、これは恰も日本の川崎重工が開発したC-1輸送機やブラジルのエンブラエルが開発したKC-390輸送機を彷彿させるものだ。一機種で輸送機と哨戒機を開発するのは2000年当時の日本C-X/P-X構想と重なるともいえよう。
■JF-17サンダー戦闘機輸出
JF-17サンダー戦闘機は自衛隊のファントムよりも地味に高性能だったりする。
ナイジェリア空軍は中国設計のJF-17サンダー戦闘機の受領を開始しました。5月20日にナイジェリアのムハンマドブハリ大統領出席のもとで引渡式典が実施され、3機のJF-17がこの日に就役しています。ナイジェリアは国内の武装勢力ボコハラムとの戦闘に近代的な戦闘機を必要としており、今回の引渡は第四世代戦闘機相当の戦闘機導入となりました。
JF-17サンダー戦闘機は中国が設計しパキスタンがライセンス生産、ナイジェリアへ供給しています。これは2018年にパキスタンとナイジェリアの政府間合意により3機のJF-17をナイジェリア国内においてノックダウン生産する1億8400万ドルの契約が結ばれ、2021年3月にノックダウン生産向けJF-17戦闘機が海路を経てマクルディ基地へ到着しました。
■ナイジェリアJF-17導入
JF-17サンダー戦闘機の話題をもう一つ。
ナイジェリア空軍は5月20日に最初の3機を受領したJF-17サンダー戦闘機について、能力向上型の開発や自国でのライセンス生産開始について、中国及びパキスタンの協力を期待しています。JF-17は1980年代のF-16C戦闘機程度の戦闘機を1980年代の易かった時代の費用で入手できる新型で、原型はFC-1として成都航空機製造公司で開発されました。
ナイジェリア空軍が運用するJF-17サンダー戦闘機はMIL-STD-1760データ通信装置と7カ所の兵装架、23mm双連機関砲を搭載、また精密爆撃を行うべくトルコ製Aselpod照準ポッドが搭載されています。ライセンス生産を行うPACパキスタン航空工業社ではナイジェリア政府に対して、更に35機から40機のノックダウン用機体輸出を期待しています。
■アルゼンチンJF-17難航へ
イギリスは一旦関係をこじらせさせるとこうした対応を組めるようでして日本も外交力の在り方として見習うべき。
アルゼンチン空軍が進める中国製JF-17戦闘機導入計画について不確定要素が生じています。アルゼンチン空軍は旧式化したA-4AR攻撃機の後継機としてJF-17を計画していますが、1982年のフォークランド紛争後関係が悪化したままであるイギリス政府がJF-17輸出を阻止する可能性があるもよう。JF-17の射出座席はイギリスマーチンベイカー社製です。
JF-17戦闘機はF-16C戦闘機に匹敵する中国製戦闘機で、第4.5世代戦闘機には及ばないものの中距離空対空ミサイルや対艦ミサイルが運用可能、更に1700万ドル程度と1980年代のF-16戦闘機と同程度の取得費用で調達可能です。アルゼンチン政府は2021年5月に中国代表団のアルゼンチン訪問に際し12機のJF-17売却で合意したとの発表を行いました。
A-4AR攻撃機はアルゼンチン空軍がかつて運用したミラージュⅢの老朽化退役の際にA-4攻撃機へAPG-66V2レーダーを搭載し空対空能力を付与したものですが、流石に古くA-4AR改修を受けた36機は極めて低い稼働率となっています。過去には韓国よりFA-50軽戦闘機の導入を試みましたが、やはり、イギリス政府の反対により実現していません。
■アルゼンチンはパンパⅢ増産へ
T-4練習機はこうやってみてみると世界的には成功した部類と云える。
アルゼンチン空軍はアルゼンチン国産のIA-63パンパⅢジェット練習機及び軽攻撃機型6機を1億0320万ドルで取得します。パンパを生産するFaDeA社は現在、この航空機を生産する以外製造ラインは無く1990年から2020年まで製造した航空機は10機のみ、A-4攻撃機の改修や航空機維持部品などを製造していますが1600名の雇用を維持しています。
IA-63パンパは西ドイツのドルニエ社の技術協力により1984年に初飛行した練習機で、ドルニエ社が製造したアルファジェット高等練習機の技術を元に簡略化した設計となっており、1984年から2018年までの34年間で24機が細々と生産されています。パンパⅢは2013年に完成した最新型でグラスコックピット化され、機関砲やロケット弾を搭載可能です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)