■特報:世界の防衛,最新論点
アメリカ軍の撤収完了目前のアフガニスタン情勢が緊迫しています、自衛隊も派遣を呼びかけられたアフガニスタンの厳しい現状を視てみましょう。
アフガニスタンの治安が急速に悪化しており二日間で二つの州都がタリバーンにより占領される状況となっています。アフガニスタンの南西部ニムルズ州の州都ザランジがタリバーンにより占領された、ニムルズ州の副知事が8月6日に発表しました。ただ、タリバーンからの正式な占領の発表は無く、現地では中心部で武装勢力の集会が目撃されている。
ザランジはアフガニスタンとイランの国境に近くアフガニスタン政府も、正確な情報が収集出来ない状況があるようです。続いて8月7日、今度はジョズジャン州の州都シェベルガンが占領され、ジョズジャン州の副知事が占領を明らかにしました、シェベルジャンの陥落を受け、ジョズジャン州のアフガニスタン軍は空港へ撤退を開始しているとのこと。
ヘルマンド州の州都ラシュガルガーと北部クンドゥーズ州の州都クンドゥーズではタリバーンに包囲されつつあり、激戦が展開しているとアフガニスタン政府は発表していますが、先んじてザランジとシェベルアンが陥落した構図で、間もなく完了するアメリカ軍やNATO軍有志連合部隊の支えを失ったアフガニスタン正規軍は窮地に追い込まれています。
■B-52戦略爆撃機航空支援
アメリカ軍は航空支援によりアフガン軍を支援していますが、この航空支援もいつまで継続できるのでしょうか。
アフガニスタンにおいてアメリカ空軍は7月末から8月初旬にかけ大規模な航空攻撃を実施しました、これはアフガニスタンの首都カブールにおいてアフガニスタン政府高官の報道官がタリバーンにより暗殺された事件を受けての緊急措置で、三日間に渡り北西部ヘラートと南部カンダハル、ラシュカルガにおいて航空攻撃を各地複数回、実行しました。
B-52戦略爆撃機は巨大な爆弾搭載能力以上に、冷戦時代の核パトロールに代表されるように長大な航続距離と居住性への配慮があり、ヴェトナム戦争のような絨毯爆撃ではなく、長時間戦域上空を飛行し、重要目標に対し精密誘導爆弾による精密爆撃を加える方式で支援を行う。成層圏を飛行するB-52はタリバーンの装備する装備体系で撃墜は出来ません。
しかし、タリバーンの攻撃を阻止するには至らず、ヘルマンド州の州都ラシュガルガーでは中心部に在るアフガニスタン国営放送の施設がタリバーンにより占拠されています。アメリカと有志連合はアフガニスタン空軍の再建に2001年以来取組んでいますが、MD-500ヘリコプターなど限られた装備を例外として攻撃機などの運用基盤構築に至っていません。
■北部クンドゥズ州の州都陥落
アメリカ介入前の北部同盟の重要拠点陥落の報道には驚かされました。
アフガニスタンでは8月8日、北部クンドゥズ州の州都クンドゥズとジューズジャーン州の州都サリプルが武装勢力タリバーンにより陥落しました。アメリカ軍撤退を前にタリバーンの攻勢が続いていますが、僅か数日間で4州の州都が陥落、またタリバーンはタハル州でも攻勢に出ており、州都警備のアフガニスタン軍は苦戦を強いられているもよう。
北部クンドゥズ州の州都クンドゥズ、9.11同時多発テロの際にこの地域はタリバーンに抵抗する北部同盟の拠点都市でもあり、アメリカ軍が再建したアフガニスタン軍は、実質的にはアメリカ軍やISAF国際治安部隊派遣時の、強化される前よりも結果的に弱体化した事となっています。アフガニスタン軍には、戦車と火砲及び航空機が致命的に不足している。
アフガニスタン正規軍には、タリバーンの攻撃に一定程度耐え、そして近接戦闘にもちこませない程度の戦闘能力を有する装備が欠けています。イラクがISILを供与されたM-1A1戦車で凌ぎ、シリアがロシアから大量のT-72戦車の供給を受け持ちこたえたように、アフガニスタンにも戦車を積極的に供与すべきであったと考えるのですが、行われていません。
■国連UNAMAが危機感を表明
アメリカ軍の撤退は時期尚早であったのではないか、これまで20年間に渡り注ぎこんだ支援が消えてゆくようですが、このまま再度破綻国家となるのでしょうか。
UNAMA国連アフガニスタン支援ミッションでは、市街地での戦闘によりラシュカルガ市内では非戦闘員の死者が増加していることに警鐘を鳴らしています。国連は市民が戦闘に巻き込まれるのを防ぐにはタリバーンとアフガニスタン政府双方に市街地での戦闘を行わないよう呼びかけていますが、双方とも呼びかけに応じている様子はありません。
アフガニスタン政府は、タリバーンにより陥落したとされる都市部では、まだ戦闘が続いており、タリバーン活動地域の市民に対して、戦闘に巻き込まれないよう避難勧告を続けています。戦闘はジャララバードなどの要衝都市でも激化しており、既に陥落した四州都とともにタリバーンの占領地は2001年の以来の規模へと急速に拡大していル状況です。
2001年のアメリカを中心とした有志連合は、同時多発テロ首謀者の引き渡しに応じないタリバーンに対し空爆を実施しましたが、当時のアフガニスタンは正統政府が北部同盟を形成し、タリバーンに対し一定の地域を確保していました。しかし、北部同盟が維持していた組織的戦闘能力は、現在のアフガニスタン軍に充分継承されていないように思えます。
■時事:ARFが中国核軍拡危機感
ここからは時事の話題をお伝えしましょう。
ASEAN地域フォーラムARF閣僚会合が広島原爆慰霊の日である8月6日に開かれ中国の核軍拡への懸念が呼び掛けられました。これはオンライン形式にて行われた閣僚会議で、この席上、アメリカのブリンケン国務長官は中国の核軍拡を問題視、中国は伝統的に最小限核抑止戦略を採用していましたが、十年間で一桁多い戦略核戦力の整備を進めています。
ASEAN地域フォーラムARFはASEANの安全保障枠組、経済共同体という緩い友好関係を示すASEANにあってこの連携を安全保障をアジア太平洋地域全体で討議する枠組みとして1994年より定期的に行われており、即応待機部隊や常設軍事参謀会議などの軍事的枠食いは持ちませんが、ASEAN加盟国を中心にEU欧州連合と26の国家が参加しています。
■時事:ヒズボラがロケット攻撃
東京五輪の最中にも中東地域の戦火は止む事はありませんでした。
イスラエル軍は武装勢力ヒズボラによるロケット弾攻撃を受け航空攻撃による反撃を行いました。ヒズボラはイラン革命防衛隊外郭団体であり、レバノンを中心に住民支援とテロ活動を実施しています。今回の発端はレバノン南部からイスラエルへ10発のロケット弾が発射された事にあり、イスラエルはアイアンドームミサイルによる迎撃を実施しました。
攻撃は4日から7日に掛け断続的に行われており、イスラエル空軍が反撃しました。イスラエル空軍はロケット弾陣地に対して航空攻撃を行ったとしていますが、戦果などは発表されていません。イランとイスラエルの関係はオマーン沖で発生したイスラエル系列の船会社が運行する日本タンカーへの攻撃を契機に緊張が高まっている最中の攻撃となります。
■時事:英艦ブルネイ親善訪問
クイーンエリザベス空母戦闘群は順調に日本へ向かっているもよう。
イギリス海軍の駆逐艦ディフェンダーはブルネイを親善訪問しました。親善訪問は7月25日から7月27日までの二日間で、ブルネイにイギリス軍艦が入港するのは2019年以来となります。ディフェンダーは45型駆逐艦の8番艦でクイーンエリザベス空母打撃群の一員として行動しまいます。ブルネイは英連邦加盟国であり、イギリスとの関係は深い。
ディフェンダー親善訪問に際して南シナ海に接して、中国の圧力受けるブルネイの関心は高くブルネイに駐在するジョンビルゴエイギリス高等弁務官とともにブルネイ海軍のヤンベルホルマットライララジャ退役少将とダト・パドゥカ・モハド・ユソフ国防大臣が艦内を親善訪問、艦内旅行とともに艦上でのイギリス海兵隊訓練展示等が実施されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
アメリカ軍の撤収完了目前のアフガニスタン情勢が緊迫しています、自衛隊も派遣を呼びかけられたアフガニスタンの厳しい現状を視てみましょう。
アフガニスタンの治安が急速に悪化しており二日間で二つの州都がタリバーンにより占領される状況となっています。アフガニスタンの南西部ニムルズ州の州都ザランジがタリバーンにより占領された、ニムルズ州の副知事が8月6日に発表しました。ただ、タリバーンからの正式な占領の発表は無く、現地では中心部で武装勢力の集会が目撃されている。
ザランジはアフガニスタンとイランの国境に近くアフガニスタン政府も、正確な情報が収集出来ない状況があるようです。続いて8月7日、今度はジョズジャン州の州都シェベルガンが占領され、ジョズジャン州の副知事が占領を明らかにしました、シェベルジャンの陥落を受け、ジョズジャン州のアフガニスタン軍は空港へ撤退を開始しているとのこと。
ヘルマンド州の州都ラシュガルガーと北部クンドゥーズ州の州都クンドゥーズではタリバーンに包囲されつつあり、激戦が展開しているとアフガニスタン政府は発表していますが、先んじてザランジとシェベルアンが陥落した構図で、間もなく完了するアメリカ軍やNATO軍有志連合部隊の支えを失ったアフガニスタン正規軍は窮地に追い込まれています。
■B-52戦略爆撃機航空支援
アメリカ軍は航空支援によりアフガン軍を支援していますが、この航空支援もいつまで継続できるのでしょうか。
アフガニスタンにおいてアメリカ空軍は7月末から8月初旬にかけ大規模な航空攻撃を実施しました、これはアフガニスタンの首都カブールにおいてアフガニスタン政府高官の報道官がタリバーンにより暗殺された事件を受けての緊急措置で、三日間に渡り北西部ヘラートと南部カンダハル、ラシュカルガにおいて航空攻撃を各地複数回、実行しました。
B-52戦略爆撃機は巨大な爆弾搭載能力以上に、冷戦時代の核パトロールに代表されるように長大な航続距離と居住性への配慮があり、ヴェトナム戦争のような絨毯爆撃ではなく、長時間戦域上空を飛行し、重要目標に対し精密誘導爆弾による精密爆撃を加える方式で支援を行う。成層圏を飛行するB-52はタリバーンの装備する装備体系で撃墜は出来ません。
しかし、タリバーンの攻撃を阻止するには至らず、ヘルマンド州の州都ラシュガルガーでは中心部に在るアフガニスタン国営放送の施設がタリバーンにより占拠されています。アメリカと有志連合はアフガニスタン空軍の再建に2001年以来取組んでいますが、MD-500ヘリコプターなど限られた装備を例外として攻撃機などの運用基盤構築に至っていません。
■北部クンドゥズ州の州都陥落
アメリカ介入前の北部同盟の重要拠点陥落の報道には驚かされました。
アフガニスタンでは8月8日、北部クンドゥズ州の州都クンドゥズとジューズジャーン州の州都サリプルが武装勢力タリバーンにより陥落しました。アメリカ軍撤退を前にタリバーンの攻勢が続いていますが、僅か数日間で4州の州都が陥落、またタリバーンはタハル州でも攻勢に出ており、州都警備のアフガニスタン軍は苦戦を強いられているもよう。
北部クンドゥズ州の州都クンドゥズ、9.11同時多発テロの際にこの地域はタリバーンに抵抗する北部同盟の拠点都市でもあり、アメリカ軍が再建したアフガニスタン軍は、実質的にはアメリカ軍やISAF国際治安部隊派遣時の、強化される前よりも結果的に弱体化した事となっています。アフガニスタン軍には、戦車と火砲及び航空機が致命的に不足している。
アフガニスタン正規軍には、タリバーンの攻撃に一定程度耐え、そして近接戦闘にもちこませない程度の戦闘能力を有する装備が欠けています。イラクがISILを供与されたM-1A1戦車で凌ぎ、シリアがロシアから大量のT-72戦車の供給を受け持ちこたえたように、アフガニスタンにも戦車を積極的に供与すべきであったと考えるのですが、行われていません。
■国連UNAMAが危機感を表明
アメリカ軍の撤退は時期尚早であったのではないか、これまで20年間に渡り注ぎこんだ支援が消えてゆくようですが、このまま再度破綻国家となるのでしょうか。
UNAMA国連アフガニスタン支援ミッションでは、市街地での戦闘によりラシュカルガ市内では非戦闘員の死者が増加していることに警鐘を鳴らしています。国連は市民が戦闘に巻き込まれるのを防ぐにはタリバーンとアフガニスタン政府双方に市街地での戦闘を行わないよう呼びかけていますが、双方とも呼びかけに応じている様子はありません。
アフガニスタン政府は、タリバーンにより陥落したとされる都市部では、まだ戦闘が続いており、タリバーン活動地域の市民に対して、戦闘に巻き込まれないよう避難勧告を続けています。戦闘はジャララバードなどの要衝都市でも激化しており、既に陥落した四州都とともにタリバーンの占領地は2001年の以来の規模へと急速に拡大していル状況です。
2001年のアメリカを中心とした有志連合は、同時多発テロ首謀者の引き渡しに応じないタリバーンに対し空爆を実施しましたが、当時のアフガニスタンは正統政府が北部同盟を形成し、タリバーンに対し一定の地域を確保していました。しかし、北部同盟が維持していた組織的戦闘能力は、現在のアフガニスタン軍に充分継承されていないように思えます。
■時事:ARFが中国核軍拡危機感
ここからは時事の話題をお伝えしましょう。
ASEAN地域フォーラムARF閣僚会合が広島原爆慰霊の日である8月6日に開かれ中国の核軍拡への懸念が呼び掛けられました。これはオンライン形式にて行われた閣僚会議で、この席上、アメリカのブリンケン国務長官は中国の核軍拡を問題視、中国は伝統的に最小限核抑止戦略を採用していましたが、十年間で一桁多い戦略核戦力の整備を進めています。
ASEAN地域フォーラムARFはASEANの安全保障枠組、経済共同体という緩い友好関係を示すASEANにあってこの連携を安全保障をアジア太平洋地域全体で討議する枠組みとして1994年より定期的に行われており、即応待機部隊や常設軍事参謀会議などの軍事的枠食いは持ちませんが、ASEAN加盟国を中心にEU欧州連合と26の国家が参加しています。
■時事:ヒズボラがロケット攻撃
東京五輪の最中にも中東地域の戦火は止む事はありませんでした。
イスラエル軍は武装勢力ヒズボラによるロケット弾攻撃を受け航空攻撃による反撃を行いました。ヒズボラはイラン革命防衛隊外郭団体であり、レバノンを中心に住民支援とテロ活動を実施しています。今回の発端はレバノン南部からイスラエルへ10発のロケット弾が発射された事にあり、イスラエルはアイアンドームミサイルによる迎撃を実施しました。
攻撃は4日から7日に掛け断続的に行われており、イスラエル空軍が反撃しました。イスラエル空軍はロケット弾陣地に対して航空攻撃を行ったとしていますが、戦果などは発表されていません。イランとイスラエルの関係はオマーン沖で発生したイスラエル系列の船会社が運行する日本タンカーへの攻撃を契機に緊張が高まっている最中の攻撃となります。
■時事:英艦ブルネイ親善訪問
クイーンエリザベス空母戦闘群は順調に日本へ向かっているもよう。
イギリス海軍の駆逐艦ディフェンダーはブルネイを親善訪問しました。親善訪問は7月25日から7月27日までの二日間で、ブルネイにイギリス軍艦が入港するのは2019年以来となります。ディフェンダーは45型駆逐艦の8番艦でクイーンエリザベス空母打撃群の一員として行動しまいます。ブルネイは英連邦加盟国であり、イギリスとの関係は深い。
ディフェンダー親善訪問に際して南シナ海に接して、中国の圧力受けるブルネイの関心は高くブルネイに駐在するジョンビルゴエイギリス高等弁務官とともにブルネイ海軍のヤンベルホルマットライララジャ退役少将とダト・パドゥカ・モハド・ユソフ国防大臣が艦内を親善訪問、艦内旅行とともに艦上でのイギリス海兵隊訓練展示等が実施されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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