■八月の砲声と政府崩壊の三日間
同時多発テロの直後にアメリカが首謀者逮捕へアフガニスタン攻撃が決定しますと日本も護衛艦くらま以下を派遣、正統政府復帰後は日本も相当支援、その国家が崩壊した。
日本政府はアフガニスタンの日本大使館閉鎖を決定しました。これは15日夜に発表された方針で、アフガニスタン国内が13日金曜日から二日間で急激に悪化した為の緊急措置となっています。大使館は外交関係によるウィーン条約で保護されていますが、攻勢を強めるタリバーンは主権国家でも国家主体でも無く、条約遵守義務履行の保証はありません。
大使館閉鎖に関して、現在、どの経路で脱出するのかは発表されていません。確実を期するのであれば政府専用機など航空自衛隊輸送機の派遣などが求められるのですが、外交機密文書の破棄を含めて情勢悪化が急激であり、日本時間15日夜にはアフガニスタンのガニ大統領が国外に逃亡、事実上アフガニスタンイスラム共和国は崩壊し、時間がありません。
崩壊前のアフガニスタン政府はロシアへMi-35ハインド攻撃ヘリコプターの緊急供与を要請しています。これはアフガニスタンのハニーフアトマール外相が8月12日、ロシアのラジオ放送に出演した際にロシア政府へ空軍力強化への新しいヘリコプター導入を要請したと発言したもの。なお、ヘリコプター供与についてロシア側の反応については明言していません。
Mi-35ハインド攻撃ヘリコプターは1979年から1989年に掛けてのソ連軍アフガニスタン侵攻に際し強烈な威力を発揮したMi-24シリーズの最新型で、当時は空気の薄い高山部の運用に際しアメリカ製スティンガー携帯地対空ミサイルに苦戦を強いられましたが、タリバーンには発射コードが必要なこの種のミサイルは現在運用可能な状態にはありません。
アフガニスタン軍にはアメリカ製MD-530軽武装ヘリコプター多数が配備されていますが、定期整備はアメリカ本土で行い、野整備もアメリカ民間保安会社の支援を受けており、アメリカ軍撤退で支援を受けられなくなる懸念があります。Mi-35ハインド攻撃ヘリコプターは既にインドが若干数をアフガニスタンへ供与したといわれ、その強化を求めていました。
情勢が動いたのは土曜日です、アフガニスタン情勢悪化によりアメリカ陸軍と海兵隊は3000名規模の部隊をカブールへ派遣しており、アメリカ政府当局者の発言をロイター通信が伝えるところによれば8月14日にアメリカ軍部隊がカブールへ到着したとのこと。緊急展開部隊はアメリカ大使館関係者やアメリカ市民のカブールからの脱出を支援する任務で短期間の展開となっています。
アメリカ軍の撤退が進む中、8月13日にはアフガニスタン第二の都市カンダハルと、第三の都市ヘラートがタリバーンの攻撃により陥落しており、タリバーンのカブール包囲は数日内とも危惧されています。今回緊急展開した部隊は2個海兵大隊と陸軍1個大隊、また本土のフォートフラッグより1個旅団がクウェートに展開し緊急展開準備に当っています。
日曜日に緊迫度は増しました、アメリカ政府はカブールのアメリカ大使館員国外退避を支援すべく、日本時間15日朝までに追加の一個大隊を空輸展開させています、これでカブールに到着したアメリカ軍部隊は4個大隊、4000名規模となりました。15日朝の時点までにカブール外苑までタリバーンが到達したという情報もあり、情勢の急激な悪化を受けての泥縄的対処となっています。
アメリカ陸軍には歩兵大隊が機甲諸兵科連合大隊やストライカー機動大隊など強力な装甲戦力を持つ諸兵科連合部隊を有していますが、今回展開したのは軽装備の歩兵大隊と思われます。展開した部隊は大使館員撤退支援に当るとの事ですが、これがカブール官庁街を防衛するのか、カブールの空港周辺だけを一時的に保持するのか方針は示されていません。
土曜日夜、タリバーンのザビフラムジャヒド広報官は、アフガニスタン政府に円滑な政権移譲を求めていると14日深夜に声明を発表しました。タリバーンはカブールを包囲していると示したうえで、詳細な部隊配置は示していませんが、カブール市内での市街戦を回避する為に、カブール全ての陸路に展開した上で、アフガニスタン政府へ政権移譲を迫っています。
アメリカ政府は13日までの発表で、カブールは三カ月間耐えうると発言していますが、アフガニスタン政府は公式Webサイトにおいてカブール周辺において複数の砲声が聞こえると発表しています。カブール市内は戦闘を恐れる市民が大挙して脱出を試みており、また13日の時点でも陸軍や空軍、警察官の任務放棄職場放棄等が顕著化し、瓦解しています。
日曜日までにアフガニスタン情勢悪化によりアメリカ軍は各国大使館関係者の空路脱出支援を強化しています。アメリカ軍当局者の話をBBCが報じたところによれば、アメリカ軍は一日に数千人の外交官や外国人市民を脱出させる事が可能としています。ただ、国防総省報道官談話として、カブールに脅威が差し迫っている認識はないとして撤退計画は予定通りという。
カナダ政府はアフガン難民二万名の受け入れを表明しました。アメリカ情報機関の分析としてタリバーンは30日以内にカブールを占領すると分析しているとのことですが、8月13日、タリバーンはカブールから80km離れたローガル州の州都プリアラムを占領しており、九月中旬までカブール外字出来るとの考えは楽観的な予測と観る事も出来るでしょう。
15日に入るとカブール市内へタリバーンが侵攻を開始した為、アメリカ大使館では機密書類の焼却作業が開始されたと、アメリカ国務省関係者の話としてロイター通信が報じています。また15日にはアメリカ大使館から空港までヘリコプターによる脱出が開始されており、これはアメリカ大使館関係者が安全にカブール市内を移動できない事を示しています。
イギリス空軍はカブールに残るイギリス大使館職員やイギリス国民の脱出を支援するべくC-17輸送機を展開させています。イギリス軍は今年初夏までアフガニスタン南部での治安維持支援任務や麻薬取締教育支援に当っていましたが、既に7月10日に撤退を完了しています。そして僅か一ヶ月と六日を経て再度、今度は撤退支援へ出動することとなった。
イギリス政府はイギリス大使館員とイギリス国民を脱出完了させた際に余力が在れば同盟国や友好国国民の空輸も担うと発表していますが、イギリスはアメリカの撤退計画について、ここまで無秩序になる事を容認してはいないとして暗にバイデン大統領の撤退前倒しを批判しています。イギリスはアメリカ撤退前倒しを受け任務を終了した経緯があります。
アフガニスタンのガニ大統領は日本時間15日深夜、隣国タジキスタンに脱出しました。アシュラフガニ大統領はハーミドカルザイ大統領に続いて民主的選挙理によりアフガニスタン国民に選ばれた大統領ですが、タリバーンへの政権移譲をアブドルミルザクワル内務相代行に委任し、これをアフガニスタン国家和解高等評議会も追認の形で了承しました。
アフガニスタンイスラム首長国の建国をタリバーンは日本時間16日に宣言、同時にアフガニスタン全土を掌握したと宣言、ここにアフガニスタンイスラム共和国は崩壊しました。新国家は現在のタリバーン統治地区での商品作物としての麻薬栽培容認や女性人権無視や異教徒抹殺といった過去の制度を再開させるのか、今後の展開は未知数となっています。
アメリカのブリンケン国務長官は今朝、日本時間16日朝までに500名の大使館員が脱出した事を発表しました。またアフガニスタンのアメリカ大使館では機密書類の処分が急がれていると共にアメリカ国旗の入った機材や書類はタリバーンのプロパガンダに利用される懸念があるとして、国外に持ち出せないものについては破棄焼却することとなっています。
ブリンケン国務長官は、今回のアフガニスタン政府を想定した将来とは異なるものである事を認めつつも、アメリカのアフガニスタン派遣は同時多発テロ首謀者オサマビンラーディン逮捕が目的であり、この目的は達せられたとしています。タリバーンは全土掌握を宣言すると共に大統領府を含む首都カブールの政府庁舎を占拠、勝利宣言を発表しました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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同時多発テロの直後にアメリカが首謀者逮捕へアフガニスタン攻撃が決定しますと日本も護衛艦くらま以下を派遣、正統政府復帰後は日本も相当支援、その国家が崩壊した。
日本政府はアフガニスタンの日本大使館閉鎖を決定しました。これは15日夜に発表された方針で、アフガニスタン国内が13日金曜日から二日間で急激に悪化した為の緊急措置となっています。大使館は外交関係によるウィーン条約で保護されていますが、攻勢を強めるタリバーンは主権国家でも国家主体でも無く、条約遵守義務履行の保証はありません。
大使館閉鎖に関して、現在、どの経路で脱出するのかは発表されていません。確実を期するのであれば政府専用機など航空自衛隊輸送機の派遣などが求められるのですが、外交機密文書の破棄を含めて情勢悪化が急激であり、日本時間15日夜にはアフガニスタンのガニ大統領が国外に逃亡、事実上アフガニスタンイスラム共和国は崩壊し、時間がありません。
崩壊前のアフガニスタン政府はロシアへMi-35ハインド攻撃ヘリコプターの緊急供与を要請しています。これはアフガニスタンのハニーフアトマール外相が8月12日、ロシアのラジオ放送に出演した際にロシア政府へ空軍力強化への新しいヘリコプター導入を要請したと発言したもの。なお、ヘリコプター供与についてロシア側の反応については明言していません。
Mi-35ハインド攻撃ヘリコプターは1979年から1989年に掛けてのソ連軍アフガニスタン侵攻に際し強烈な威力を発揮したMi-24シリーズの最新型で、当時は空気の薄い高山部の運用に際しアメリカ製スティンガー携帯地対空ミサイルに苦戦を強いられましたが、タリバーンには発射コードが必要なこの種のミサイルは現在運用可能な状態にはありません。
アフガニスタン軍にはアメリカ製MD-530軽武装ヘリコプター多数が配備されていますが、定期整備はアメリカ本土で行い、野整備もアメリカ民間保安会社の支援を受けており、アメリカ軍撤退で支援を受けられなくなる懸念があります。Mi-35ハインド攻撃ヘリコプターは既にインドが若干数をアフガニスタンへ供与したといわれ、その強化を求めていました。
情勢が動いたのは土曜日です、アフガニスタン情勢悪化によりアメリカ陸軍と海兵隊は3000名規模の部隊をカブールへ派遣しており、アメリカ政府当局者の発言をロイター通信が伝えるところによれば8月14日にアメリカ軍部隊がカブールへ到着したとのこと。緊急展開部隊はアメリカ大使館関係者やアメリカ市民のカブールからの脱出を支援する任務で短期間の展開となっています。
アメリカ軍の撤退が進む中、8月13日にはアフガニスタン第二の都市カンダハルと、第三の都市ヘラートがタリバーンの攻撃により陥落しており、タリバーンのカブール包囲は数日内とも危惧されています。今回緊急展開した部隊は2個海兵大隊と陸軍1個大隊、また本土のフォートフラッグより1個旅団がクウェートに展開し緊急展開準備に当っています。
日曜日に緊迫度は増しました、アメリカ政府はカブールのアメリカ大使館員国外退避を支援すべく、日本時間15日朝までに追加の一個大隊を空輸展開させています、これでカブールに到着したアメリカ軍部隊は4個大隊、4000名規模となりました。15日朝の時点までにカブール外苑までタリバーンが到達したという情報もあり、情勢の急激な悪化を受けての泥縄的対処となっています。
アメリカ陸軍には歩兵大隊が機甲諸兵科連合大隊やストライカー機動大隊など強力な装甲戦力を持つ諸兵科連合部隊を有していますが、今回展開したのは軽装備の歩兵大隊と思われます。展開した部隊は大使館員撤退支援に当るとの事ですが、これがカブール官庁街を防衛するのか、カブールの空港周辺だけを一時的に保持するのか方針は示されていません。
土曜日夜、タリバーンのザビフラムジャヒド広報官は、アフガニスタン政府に円滑な政権移譲を求めていると14日深夜に声明を発表しました。タリバーンはカブールを包囲していると示したうえで、詳細な部隊配置は示していませんが、カブール市内での市街戦を回避する為に、カブール全ての陸路に展開した上で、アフガニスタン政府へ政権移譲を迫っています。
アメリカ政府は13日までの発表で、カブールは三カ月間耐えうると発言していますが、アフガニスタン政府は公式Webサイトにおいてカブール周辺において複数の砲声が聞こえると発表しています。カブール市内は戦闘を恐れる市民が大挙して脱出を試みており、また13日の時点でも陸軍や空軍、警察官の任務放棄職場放棄等が顕著化し、瓦解しています。
日曜日までにアフガニスタン情勢悪化によりアメリカ軍は各国大使館関係者の空路脱出支援を強化しています。アメリカ軍当局者の話をBBCが報じたところによれば、アメリカ軍は一日に数千人の外交官や外国人市民を脱出させる事が可能としています。ただ、国防総省報道官談話として、カブールに脅威が差し迫っている認識はないとして撤退計画は予定通りという。
カナダ政府はアフガン難民二万名の受け入れを表明しました。アメリカ情報機関の分析としてタリバーンは30日以内にカブールを占領すると分析しているとのことですが、8月13日、タリバーンはカブールから80km離れたローガル州の州都プリアラムを占領しており、九月中旬までカブール外字出来るとの考えは楽観的な予測と観る事も出来るでしょう。
15日に入るとカブール市内へタリバーンが侵攻を開始した為、アメリカ大使館では機密書類の焼却作業が開始されたと、アメリカ国務省関係者の話としてロイター通信が報じています。また15日にはアメリカ大使館から空港までヘリコプターによる脱出が開始されており、これはアメリカ大使館関係者が安全にカブール市内を移動できない事を示しています。
イギリス空軍はカブールに残るイギリス大使館職員やイギリス国民の脱出を支援するべくC-17輸送機を展開させています。イギリス軍は今年初夏までアフガニスタン南部での治安維持支援任務や麻薬取締教育支援に当っていましたが、既に7月10日に撤退を完了しています。そして僅か一ヶ月と六日を経て再度、今度は撤退支援へ出動することとなった。
イギリス政府はイギリス大使館員とイギリス国民を脱出完了させた際に余力が在れば同盟国や友好国国民の空輸も担うと発表していますが、イギリスはアメリカの撤退計画について、ここまで無秩序になる事を容認してはいないとして暗にバイデン大統領の撤退前倒しを批判しています。イギリスはアメリカ撤退前倒しを受け任務を終了した経緯があります。
アフガニスタンのガニ大統領は日本時間15日深夜、隣国タジキスタンに脱出しました。アシュラフガニ大統領はハーミドカルザイ大統領に続いて民主的選挙理によりアフガニスタン国民に選ばれた大統領ですが、タリバーンへの政権移譲をアブドルミルザクワル内務相代行に委任し、これをアフガニスタン国家和解高等評議会も追認の形で了承しました。
アフガニスタンイスラム首長国の建国をタリバーンは日本時間16日に宣言、同時にアフガニスタン全土を掌握したと宣言、ここにアフガニスタンイスラム共和国は崩壊しました。新国家は現在のタリバーン統治地区での商品作物としての麻薬栽培容認や女性人権無視や異教徒抹殺といった過去の制度を再開させるのか、今後の展開は未知数となっています。
アメリカのブリンケン国務長官は今朝、日本時間16日朝までに500名の大使館員が脱出した事を発表しました。またアフガニスタンのアメリカ大使館では機密書類の処分が急がれていると共にアメリカ国旗の入った機材や書類はタリバーンのプロパガンダに利用される懸念があるとして、国外に持ち出せないものについては破棄焼却することとなっています。
ブリンケン国務長官は、今回のアフガニスタン政府を想定した将来とは異なるものである事を認めつつも、アメリカのアフガニスタン派遣は同時多発テロ首謀者オサマビンラーディン逮捕が目的であり、この目的は達せられたとしています。タリバーンは全土掌握を宣言すると共に大統領府を含む首都カブールの政府庁舎を占拠、勝利宣言を発表しました。
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