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【防衛情報】スイス空軍-次期戦闘機F-35Aとペトリオット採用,ラファールとSAMP/T完敗

2021-10-12 20:19:57 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回はスイス空軍の次期戦闘機選定に関する話題を中心にお伝えします。

 スイス空軍は次期戦闘機としてF-35戦闘機36機の導入を決定しました。F-35戦闘機導入はスイス連邦議会において承認されました。スイス空軍では旧式化したF/A-18C戦闘機の後継機を選定しており、この他の候補機にアメリカ製F/A-18Eスーパーホーネット、フランス製ラファール戦闘機と欧州共同開発ユーロファイター戦闘機が挙げられていました。

 F-35戦闘機はスイス空軍の選定では336ポイントの各種評価となっており、スイス空軍によれば他の候補機種と比較して95ポイント優位であったとしています。特にステルス性の高さはスイス空軍の生存性を大きく高めると共に高く評価されたのはデータリンク能力の高さと共にこれら訓練には地上シミュレータが多用され、訓練費用が低い点だったもよう。

 F-35戦闘機は戦闘機としては比較的操縦が容易との事で、能力の中枢を担うデータリンク訓練に実飛行よりも地上シミュレータを多用する為に飛行時間は他の候補機種よりも20%抑える事が出来、また離着陸回数も現行機種よりも50%抑えられるとのこと。また構造寿命はスイス空軍が想定する30年間の運用での補修費用等も抑えられ、理想的としています。
■ペトリオットミサイルを選定
 スイスはF-35と共にミサイル選定も完了させました。

 スイス空軍はGBAD次期地対空ミサイルとしてアメリカ製ペトリオットミサイルを選定しました。これは先ごろF-35A戦闘機が決定した次期戦闘機選定と併せ実施していたもので、候補としてはフランスのユーロサム社製SAMP/Tとアメリカのレイセオン社製ペトリオットミサイルが候補に挙げられていました。スイス空軍は5個射撃隊所要を導入します。

 ペトリオットミサイルが採用された背景にはスイス国内にも従来装備しなかった広域防空システムとともに、弾道ミサイル脅威へ正面から対応できる防衛力の重要性が北朝鮮核実験と欧州へのミサイル恫喝などを契機に高まっている状況があります。ペトリオットPAC-3のミサイル迎撃能力は確かに限られていますが、年々改良で能力が向上しています。

 ユーロサム社製SAMP/Tは海軍用アスター30を陸上型としたもので最大射程は120kmとペトリオットよりも優位性があり、また発射装置の射角に制約のあるペトリオットと異なり、シルヴァーVLS機動システムにより射撃陣地を選ばない優位性がありますが、スイスにはアスター30の陸海共用の優位性を活かせず、実績からペトリオットが選ばれたもよう。
■仏政府,ラファール落選へ談話
 ラファールはF-2戦闘機と同世代ながら多少性能に限界があっても改良を重ね進歩させている航空機です、が。

 フランス国防省は6月30日、スイス空軍次期戦闘機としてラファールが落選した事への談話を発表しました。スイス空軍では空軍2030計画として次期戦闘機を選定しており、当初アメリカ製F-35戦闘機は候補機に含まれず、第4.5世代戦闘機の中ではラファールが優位とされていましたが、スイス政府がF-35の途中参加を希望し、追加された背景がある。

 フランスのフローレンスパルリ国防相はこの談話において、欧州連合加盟国ではアメリカへの軍事依存からの脱却の為に欧州製防衛装備の充足率を高める努力、としてスイスの選択に失望をのぞかせていますが、談話ではFCAS欧州次世代戦闘機開発の重要性を示し、共同開発に当るドイツの姿勢を評価しています。尚ドイツは先頃F/A-18Fを採用しました。

 ラファール戦闘機は年々改良を進めておりラファールF4の試験が開始されています、フランスはイギリスのEU離脱とともに欧州独自の防衛力整備と欧州の結束を掲げており、戦闘機についても政治的な位置づけから装備を進めていますが、政治的であると共にフランス自身がフランス製が大半を占め他の欧州諸国の装備採用が小銃など僅かとなっています。
■PNF国家金融検察庁捜査開始
 ラファールについてはフランスではもう一つ問題が在ったようです。

 フランス司法府はダッソー社のラファール戦闘機輸出に不正がある可能性についてPNF国家金融検察庁へ捜査を命令しました。これはフランスの民間団体Sherpaが4月28日、ラファール戦闘機36機のインド輸出についてダッソー社がインド当局者へ汚職と受け止められる不正を行った可能性があるとして提訴したもので、フランス司法府が対応しました。

 ダッソー社の不正疑惑は今回が初めてではありませんが、告発に先立つ4月8日、ダッソー社はフランス国内法に参照して問題のある収賄行為は行っていないとの声明を発表しています。インド空軍戦闘機選定ではF-16Vとラファールの熾烈な販売合戦が繰り広げられ、一時はF-16Vのインド国内へ生産移転も報じられましたがラファールが採用されています。

 防衛装備品の輸出は安全保障政策と合致する分野であり、不正が絡む事もありますが、確実に稼働状態が維持される確証として例えば装備品のバーター輸出、即ち輸出対象国の装備を自国が取得するという事例や、運用基盤を構築する為の合弁会社設立等の選択肢がありますが、一般的な商慣行に照らし合わせると、不正取引と見做される場合もあります。
■時事:いずも艦上F-35B発着
 此処からは時事ですが最初の話題も表題と同じF-35戦闘機関連のものです。

 海上自衛隊は10月3日、ヘリコプター搭載護衛艦いずも艦上へのF-35B発着試験を成功させました。いずも飛行甲板は耐熱加工と誘導表示の変更が実施、試験には岩国航空基地へ前方展開しているアメリカ海兵隊第1海兵航空団所属機が参加しています。今回試験に参加したのは米軍機ですが、航空自衛隊は42機のF-35B戦闘機導入を決定しています。

 この実験成功は幾つかの点で歴史的と云えます、一つはF-35B戦闘機が日本の護衛艦へ発着したのは今回が初めてという点、もう一つは日本の艦艇へ戦闘機が発着したのは第二次世界大戦後初めて、という点で歴史的な一幕でした。試験に参加したF-35Bには護衛艦いずも発着記念マークが記されています。一方、いずも改修は第二段階が計画されています。

 いずも改修は飛行甲板の耐熱加工と表示変更が第一段階として実施されていますが、第二段階として2026年までに艦首部分が形状変更され全面を短距離滑走に対応させるとともに、新たに空対空ミサイル等のミサイル格納庫が増設される計画です。自衛隊は2024年に8機のF-35Bを導入予定であり、2022年度予算に更に4機のF-35B取得を計画しています。
■時事:沖縄沖で日米英など訓練
 沖縄県沖にて米英の空母と日本のヘリコプター搭載護衛艦を中心とした大規模な訓練が行われました。

 海上自衛隊は10月2日から3日にかけ日米英空母型艦艇4隻が参加した合同演習を実施しました。訓練は沖縄県南西海域で実施され、海上自衛隊護衛艦いせ、アメリカ海軍の空母カールビンソンとロナルドレーガン、イギリス海軍のクイーンエリザベス等大型艦艇に加えてオランダ海軍、カナダ海軍、ニュージーランド海軍のフリゲイトも参加しています。

 いせ、カールビンソン、ロナルドレーガン、クイーンエリザベス、そして護衛艦きりしま、やまぎり、アメリカ巡洋艦シャイロー、レイクシャンプレーン、アメリカ駆逐艦ザサリバンス、チャフィー、イギリス駆逐艦ディフェンダー、イギリスフリゲイトケント、オランダエヴァーツェン、カナダウィニペグ、ニュージーランドテカハ、大規模な訓練でした。


北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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