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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】英独ボクサー装甲車最新情報とプーマ戦闘車改修,仏ジャガー&グリフィン装甲車

2021-10-25 20:18:59 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 冷戦後に重装備調達の遅れが目立った欧州では逆に地域紛争を想定した装輪装甲車の発達が進みました。この姿勢には自衛隊も96式装輪装甲車後継等で学ぶ点は多い。

 イギリス陸軍がMIVとして導入を進めるボクサー装輪装甲車の製造が6月7日に開始されました。ボクサー装輪装甲車はイギリス陸軍へ500両以上が導入される計画で1998年にピラーニャ装甲車を導入する暫定決定が経済再建を理由に覆されて以来何度も検討と中止を繰り返し、実に23年間遅れていた歩兵用装甲車の後継計画が軌道に乗った事となります。

 ボクサー装輪装甲車の製造はドイツのカルーセルにあるArtec GmbH社工場にて開始されました。同社はボクサー装輪装甲車製造に特化したラインメタル社とクラウスマッファイヴェクマン社の合弁企業です。もともとイギリス陸軍向けの装輪装甲車はイギリス国内の合弁会社にてイギリス人を雇用し生産する事となっていますが、ドイツで製造開始という。

 イギリス国内でのボクサー装輪装甲車生産はRBSLラインメタルBAEシステムズランド社が担当しますが、RBSL社の生産設備が整うまでの暫定措置で、2023年よりイギリスで製造されるとのこと。この為、イギリス軍仕様の通信機器や遠隔操作銃搭と車内照明システムやデータリンク装置などは一旦イギリスからドイツに移され、組立に利用されるのこと。
■ドイツ,ボクサー導入完了
 自衛隊が次期装甲車で右往左往する中でドイツはボクサー装輪装甲車の導入を完了しました。

 ドイツ連邦軍はボクサー装輪装甲車405両の導入計画を完了したと、製造を担当するクラウスマッファイヴェクマン社が発表しました。当初ドイツ連邦軍はボクサー装輪装甲車について174両の取得を計画していましたは、2015年12月に第二次生産契約131両の増強を4億7800万ユーロで決定し、防御力を強化したA2型として導入していました。

 ボクサー装輪装甲車はドイツ連邦軍のアフガニスタンISAF国際治安支援部隊派遣に際し重要な役割を担い、また幾度もの攻撃と損傷から防御力強化の研究を積み重ねており、2017年には既存の車両も全てA2仕様へ改修される事となりました。ドイツ連邦軍には装甲車型256両、装甲救急車型72両、指揮通信車65両のボクサー装輪装甲車が配備されています。

 ボクサー装輪装甲車は共通車体に各種モジュールを搭載する事で多用途化できる設計で、基本重量は25tですが戦闘重量は33tを想定しています。連邦軍は装軌式でより大型のプーマ装甲戦闘車を開発、導入していますが、運用のしやすさなどからプーマの調達計画を下方修正し、ボクサー装輪装甲車を重点配備しており、装甲戦闘車型も開発されています。
■プーマ装甲戦闘車巨額の改良
 日本の89式装甲戦闘車よりも桁一つ高いプーマ装甲戦闘車は大金を積んで導入間もない中で改修を行うという。

 ドイツ連邦軍は6月28日、プーマ装甲戦闘車初期型の改修について5億0100万ユーロ規模の契約をPSMGmbH社との間で締結しました。PSMGmbH社とはプーマ装甲戦闘車の量産を行うラインメタル社とクラウスマッファイヴェクマン社の合弁会社です。対象は初期型とされる154両で、改修作業は契約直後の2021年7月から開始されるとのこと。

 プーマ装甲戦闘車は旧式化したマルダー装甲戦闘車の後継として2002年に開発された装甲戦闘車で、乗員3名に加え6名の擲弾兵を輸送し30mm機関砲により対装甲車戦闘を展開できますが、最大の特色は二つあり、基本重量31.4tに対し増加装甲装着時に43tまで重装甲化出来る点と、もう一つは2013年まで本格的量産が行われなかったという点でしょう。

 NATO高高度即応統合任務部隊VJTF2023としてドイツ連邦軍には最新型のプーマ装甲戦闘車40両が集中されていますが、初期型154両の改修はラインメタル社により火器管制装置の特に電子部分の改良や車内情報表示装置等が加えられ、VJTF2023部隊配備仕様まで改修される。連邦軍は全てのプーマを8億2000万ユーロで追加改修する構想もあります。
■ジャガー偵察車に追加装甲
 ERCジャガー装甲偵察車は日本の向う装輪装甲車ファミリー化の在り方を示すよう思えるのですが、落ち着いて考えると87式偵察警戒車と中止された中型装甲車の関係と似ている。

 フランス陸軍が運用するERCジャガー装甲偵察車についてネクスター社は新型のワイヤーケイジアーマーの評価試験を開始した。ERCジャガー装甲偵察車は300両が調達予定で既に42両が発注されている。安価である事を第一に設計されたVBMRグリフィン軽装甲車とともに部品共通設計を構成し、フランス軍の次世代装備体系を担う装輪装甲車である。

 ERCジャガー装甲偵察車は14.5mm機関銃弾や10kgまでのIED簡易爆発物による爆風や至近距離での155mm砲弾炸裂に耐えるが、対戦車ミサイルやRPGに代表される携帯対戦車火器に対する脆弱性を有している。この為、タレス社が開発したBarageアクティヴ誘導妨害装置やAntaresミサイル警告警報システムなどを搭載しているがそれは充分ではない。

 ワイヤーケイジアーマーは一種の鳥籠型スラッド装甲軽量版で、幾何学模様のようにワイヤーを車体周囲と砲塔周囲に展開させ、装輪装甲車の宿命である懸架装置への重量増大負担を局限しつつ、ミサイルやロケット弾等が車体から離隔した位置で作動させる狙い。ERCジャガー装甲偵察車は40mmCTA機関砲を搭載、操砲を妨げない位置に配置されている。
■グリフィン装甲車を自走迫に
 VBMRグリフィン軽装甲車は明確に予算を抑える事を第一とした割には一定の性能を有するという。

 フランス陸軍では導入を進めるVBMRグリフィン軽装甲車の派生型として自走迫撃砲の導入を進めている。VBMRグリフィン軽装甲車は耐爆車輛型の六輪式装輪装甲車で大量配備を期し取得費用を抑える為に100万ユーロ以下の製造が求められているが、製造を担当するネクスター社はタレス製2R2M迫撃砲を戦闘室に設置し自走迫撃砲化する構図である。

 VBMRグリフィン軽装甲車の自走迫撃砲型は、INS慣性航法装置と火器管制装置の搭載により牽引式の120mmRT重迫撃砲よりも命中精度を高めており、自動装填装置ウにより毎分10発を射撃、砲は全周旋回可能で40°から85°の射角に対応、停車と同時に射撃を開始可能、陣地変換能力は牽引重迫撃砲よりも遥かに高い。フランス軍は42両を取得する。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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