■週報:世界の防衛,最新12論点
今回の防衛情報は陸軍のヘリコプターとミサイルに重点を置いて各国の最新情報を視てみましょう。

陸上自衛隊とアメリカ陸軍は鹿児島県奄美大島の奄美駐屯地においてミサイル展開演習及び模擬戦闘訓練を実施しました。これは六月より日本全土で実施されているオリエントシールド2021日米合同訓練の一環として実施されるものですが、陸上自衛隊と共にアメリカ陸軍のペトリオットミサイル部隊が沖縄から鹿児島県へ転地訓練を行う事は異例です。

陸上自衛隊からは第8高射特科群の03式中距離地対空誘導弾と奄美駐屯地所在部隊が、アメリカ陸軍は第1砲兵連隊第1大隊B中隊のペトリオットミサイルが参加しました。アメリカインド太平洋軍では現在、中国軍の海洋進出を受け、有事の際に太平洋島嶼部へのミサイル部隊緊急展開能力の構築を急いでおり、今回はその要領を演練したといえましょう。
■IAMD統合防空ミサイル防衛
IAMD統合防空ミサイル防衛システムというアメリカが進める将来のミサイル防衛構想があります。

アメリカのロッキードマーティン社とイスラエルのIAI社は7月6日、IAMD統合防空ミサイル防衛システムとしてミサイル防衛技術に関する協力へ覚書を交わしました。イスラエルはイラン方面からの核攻撃を警戒しミサイル防衛技術へ長い開発経験があり、またロッキードマーティンもイージス弾道ミサイル防衛システムとして技術を有しています。

ロッキードマーティンは具体的にはイージスシステムと連動するスタンダードSM-3迎撃ミサイルをすでに開発しており、IAIも大型ミサイルを超大型弾頭で爆砕するアロー2迎撃ミサイルを開発しています。北朝鮮ミサイル脅威を契機として世界規模で弾道ミサイル防衛の必要性が認識され、この分野で実績ある企業と先駆者である企業の協力は注目です。
■ペトリオットとF-35を連接
イージス艦とF-35を連接させスタンダードミサイルを誘導する試験が進んでいますが次はペトリオットミサイルと結ぶ。

アメリカ陸軍は7月15日、ペトリオットミサイルとF-35を連接させるIBCS実験に成功したと発表しました。試験では模擬巡航ミサイルに対しF-35がこれを捕捉、ペトリオットミサイルPAC-3を誘導し撃墜に成功したとのこと。IBCSはノースロップグラマンが開発していたヒット・ツー・キルインターセプタ能力で、即座の対応が可能となります。

IBCSの意義はF-35戦闘機の有する高度なセンサーノードとしての能力に対し、F-35がステルス性を維持し搭載できるミサイル数は限られ、またミサイル発射時に兵装扉を開放する事は敵レーダーに暴露する懸念があります。これを地上のPAC-3と連接させる事で戦域航空支配を自らは姿を見せずして確実に実現させる新しい技術が、IBCSとなります。
■アスター対空ミサイル共同改良計画
将来の野戦防空を近代化するべくアスター対空ミサイル共同改良計画が進みます。

イギリス国防省とイタリア国防省は7月16日、アスター共同改良計画について合意した。これは12億ユーロを投じ1000発のアスター対空ミサイルを延命改良し2036年までの期間運用するのが狙い。アスター対空ミサイルはフランスが欧州共通ミサイルとして1980年代に開発を開始し、陸上発射型と艦載型の短射程型と中射程型がある。

アスター対空ミサイルは欧州防衛合弁企業であるユーロサム社が製造、陸上型が開発されているが採用は海軍型が主流でイギリス海軍の45型防空駆逐艦やイタリアのアンドレアドレア級ミサイルフリゲイト、フランスのフォルバン級ミサイルフリゲイト等に搭載されており、フランスは既にMBDAフランス社との間でCIMA改修キットの提供で合意している。
■S-500ADS防空システム
ロシアの地対空ミサイルは射程が長い事で知られますがS-500ADS防空システムは特に。

ロシア軍が開発を進めるS-500ADS防空システムが初のミサイル試験を成功させた。これはロシアのイズベスチャ紙が6月に報じたもので、ミサイル発射実験はカザフスタン国内のサリーシャガンミサイル試験場にて実施したと報じられている。S-500については2021年5月にプーチン大統領が発射実験について、間もなく行われる、と言明していた。

S-500ADS防空システムはロシア版ペトリオットと称されたS-300地対空ミサイルを起点とする新世代地対空ミサイルの最新型で、射程120kmの9M96中距離用から、ABM制限条約により射程を抑えている最大射程3500kmの40N6超長距離型までが開発されているほか、弾道ミサイル防衛に用いる核弾頭搭載型の77N6迎撃ミサイルも開発されている。

40N6超長距離型ミサイルは秒速4.8kmまでの極超音速滑空兵器や弾道ミサイルを迎撃可能であり、また低軌道を飛翔する人工衛星等も撃墜可能という。S-500ADS防空システムはロステック社が開発を担当しており、2025年に完成を目指す。現在ロシア防空軍にはS-400が配備されているが、S-500ADS防空システムは将来的にこれらを置換える構想だ。
■オランダFLATM-PV計画
オランダ国防省のFLATM-PV計画という新しい全地形車両計画について。

オランダ国防省はFLATM-PV計画として老朽化した全地形車両を更新する小型全地形車両179両の導入計画を発表しました。オランダ陸軍及びオランダ海兵隊では連接型全地形車両であるスウェーデン製BV-206全地形車両とその装甲型であるBvS.10バイキング全地形車両、及びランドローバー高機動車輛等を装備していますが老朽化が進んでいます。

FLATM-PV計画では、水陸両用能力と雪上走行能力、特に北極圏での運用を念頭に全地形車両を導入するとしており、条件としては定員4名、既存の民間車両若しくは軍用車両を選定し、新たな新装備開発を行うものではないとしています。今回はFLATM-PV計画が6月14日のオランダ議会に提出され了承された段階、本格的な選定作業はこれから開始です。

BV-206全地形車両とBvS.10バイキング全地形車両等の後継車両は、オランダ軍では、基本型となる汎用輸送型、偵察型、指揮通信車型、回収車、この四系統の取得を構想しており、4名の兵員と装備を輸送できると共に海兵隊での運用を念頭に現在進められている重機動中型揚陸艇への搭載能力が求められ、現時点ではまだ、具体的車種は示されていません。
■韓国KM-SAM地対空ミサイル
KM-SAM地対空ミサイルという韓国の新型ミサイルがありまして03式地対空誘導弾と似た運用方式となっています。

韓国陸軍は新型のKM-SAM地対空ミサイルの配備が進みMIM-23ホーク地対空ミサイルの更新が完了したと発表しました。MIM-23ホーク地対空ミサイルは中射程の地対空ミサイルで日本の陸上自衛隊でも運用されていますが、基本設計が古く電子装置や推進装置の能力向上改修を定期的に継続せねばなりませんが、その改良費用が年々高くなっています。

KM-SAM地対空ミサイルは韓国がロシアのS-400地対空ミサイルを参考に国産開発したもので、発射装置は自走発射車両からの垂直発射方式を採用、ミサイルの射程は40km、セミアクティヴホーミング方式で誘導し高度15000mまでの目標に対応する。韓国はソ連崩壊当時の借款返済にロシア製兵器を受領して以来、防衛装備について交流関係が続いている。
■オーストラリアLAND4503
オーストラリア軍はCH-47チヌーク輸送ヘリコプターを増強するとのこと。

オーストラリア軍はLAND4503計画で増強するCH-47F輸送ヘリコプターの受領を開始しました、現在オーストラリア軍は10機のCH-47輸送ヘリコプターを運用していますが4機を増強する契約をボーイング社との間で締結し、今回このうち2機が7月、アメリカ空軍のC-5B戦略輸送機にて、オーストラリアのタウンズビル空軍基地へ搬入されました。

CH-47F輸送ヘリコプターはオーストラリア軍第16航空旅団へ集中配備され、今回の2機も旅団隷下の第5航空連隊へ配備されます。14機体制の完成へ、残る2機は2022年中頃に納入されるとのこと。オーストラリアでは空中機動部隊の増強を進めるとともに、ここ数年多発する大規模な原野火災へもその空輸能力を用いた消火任務が期待されています。
■次世代APKWS誘導システム
APKWS誘導システムというあまり重いものを積めないヘリコプター向けの便利なミサイルが在ります。

イギリスのBAE社は次世代APKWS誘導システムを発表しました。APKWS誘導システムとはAH-1SやAH-64Dに搭載されるハイドラ70ロケット弾に装着する誘導システムで、軽量である為、無人航空機に搭載可能、70mmロケット弾を精密誘導することで、主力戦車を除くほぼ全ての装甲車両や小型船舶に対して有効な、軽量の誘導弾薬となっています。

次世代APKWS誘導システムは誘導システムの改修により射程が最大30%延伸したといい、射程は6500mと、ヘルファイアミサイルには及びませんがTOW対戦車ミサイルよりも射程が長い事になります、BAEはAH-6MやAH-1F,OH-58やCOIN機のA-29,A-208から戦闘機であるF-16.F/A-18,多用途ヘリコプターUH-1Y,UH-60等に搭載可能としています。
■アパッチ,再生産関連情報
ボーイング社のアパッチヘリコプターシリーズ生産に関する情報です。

アメリカ陸軍は2040年代までのAH-64アパッチヘリコプター運用継続へボーイング社との間で再生産に関する3200万ドルの契約を成立させました。アメリカ陸軍では既存のアパッチヘリコプター244機をアパッチガーディアンへ近代化改修させるとともに国名非開示の海外向けに24機のAH-64Eアパッチガーディアンを再製造し供給する計画とのこと。

AH-64EアパッチガーディアンはMQ-1Cグレイイーグル無人機の航空管制能力を持つ最新型で、AH-64Dアパッチロングボウからの近代化改修へアメリカ陸軍は第一段階として2017年に34億ドルの契約を締結しています。この契約は五年契約であり、今回の2021年6月に締約された契約はその第二期の初度費用にあたり、順次改修作業が予定されています。
■中国新型高速ヘリコプター構想
複合ヘリコプターとしてこれまでよりも遥かに光速のヘリコプターがアメリカで開発されていますが、中国も対抗へ。

中国軍はアメリカのシコルスキーS-97複合高速ヘリコプターに対抗する新型高速ヘリコプターを構想している、天津市で7月15日に開始された中国将来ヘリコプターシンポジウムにおいてチャイナヘリコプターデェベロップメントインスティテュート社が発表しました。シコルスキーS-97複合高速ヘリコプターは二重反転ローターなどを採用しています。

シコルスキーS-97複合高速ヘリコプターに対応する、これは400km/h以上の巡航速度を有するとともに新素材を用いた軽量な機体と人工知能AIを用いた姿勢制御システムなどを採用するとのこと。ただ、チャイナヘリコプターデェベロップメントインスティテュート社の発表は具体的な試作機製造日程等含まれず、あくまで研究開発開始の範疇に過ぎません。
■豪州DTCS次世代デジタル端末
陸軍通信体系は地味ではありますが重要であると共に想像するよりも遥かに費用を要します。

オーストラリア陸軍はDTCS次世代デジタル端末制御システムの導入契約をコリンズエアロスペース社との間で締結しました。これはLAND17フェーズ2プログラムとして実施されていたオーストラリア軍陸海空軍統合通信装備近代化計画の一環です。今回契約を担うコリンズエアロスペース社はアメリカのレイセオンテクノロジーズの系列会社のひとつ。

DTCS次世代デジタル端末制御システムは過去十年に渡り運用されてきたLAND17フェーズ1プログラム無線機の後継となる装備で、JTAC統合末端攻撃統制官とJFO統合前方監視官とを長時間に渡りリアルタイムで連接する装備、従来の携帯通信装置よりも軽量で通信容量や通信帯域が増大すると共に野戦に必須のバッテリー持続時間も改善されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回の防衛情報は陸軍のヘリコプターとミサイルに重点を置いて各国の最新情報を視てみましょう。

陸上自衛隊とアメリカ陸軍は鹿児島県奄美大島の奄美駐屯地においてミサイル展開演習及び模擬戦闘訓練を実施しました。これは六月より日本全土で実施されているオリエントシールド2021日米合同訓練の一環として実施されるものですが、陸上自衛隊と共にアメリカ陸軍のペトリオットミサイル部隊が沖縄から鹿児島県へ転地訓練を行う事は異例です。

陸上自衛隊からは第8高射特科群の03式中距離地対空誘導弾と奄美駐屯地所在部隊が、アメリカ陸軍は第1砲兵連隊第1大隊B中隊のペトリオットミサイルが参加しました。アメリカインド太平洋軍では現在、中国軍の海洋進出を受け、有事の際に太平洋島嶼部へのミサイル部隊緊急展開能力の構築を急いでおり、今回はその要領を演練したといえましょう。
■IAMD統合防空ミサイル防衛
IAMD統合防空ミサイル防衛システムというアメリカが進める将来のミサイル防衛構想があります。

アメリカのロッキードマーティン社とイスラエルのIAI社は7月6日、IAMD統合防空ミサイル防衛システムとしてミサイル防衛技術に関する協力へ覚書を交わしました。イスラエルはイラン方面からの核攻撃を警戒しミサイル防衛技術へ長い開発経験があり、またロッキードマーティンもイージス弾道ミサイル防衛システムとして技術を有しています。

ロッキードマーティンは具体的にはイージスシステムと連動するスタンダードSM-3迎撃ミサイルをすでに開発しており、IAIも大型ミサイルを超大型弾頭で爆砕するアロー2迎撃ミサイルを開発しています。北朝鮮ミサイル脅威を契機として世界規模で弾道ミサイル防衛の必要性が認識され、この分野で実績ある企業と先駆者である企業の協力は注目です。
■ペトリオットとF-35を連接
イージス艦とF-35を連接させスタンダードミサイルを誘導する試験が進んでいますが次はペトリオットミサイルと結ぶ。

アメリカ陸軍は7月15日、ペトリオットミサイルとF-35を連接させるIBCS実験に成功したと発表しました。試験では模擬巡航ミサイルに対しF-35がこれを捕捉、ペトリオットミサイルPAC-3を誘導し撃墜に成功したとのこと。IBCSはノースロップグラマンが開発していたヒット・ツー・キルインターセプタ能力で、即座の対応が可能となります。

IBCSの意義はF-35戦闘機の有する高度なセンサーノードとしての能力に対し、F-35がステルス性を維持し搭載できるミサイル数は限られ、またミサイル発射時に兵装扉を開放する事は敵レーダーに暴露する懸念があります。これを地上のPAC-3と連接させる事で戦域航空支配を自らは姿を見せずして確実に実現させる新しい技術が、IBCSとなります。
■アスター対空ミサイル共同改良計画
将来の野戦防空を近代化するべくアスター対空ミサイル共同改良計画が進みます。

イギリス国防省とイタリア国防省は7月16日、アスター共同改良計画について合意した。これは12億ユーロを投じ1000発のアスター対空ミサイルを延命改良し2036年までの期間運用するのが狙い。アスター対空ミサイルはフランスが欧州共通ミサイルとして1980年代に開発を開始し、陸上発射型と艦載型の短射程型と中射程型がある。

アスター対空ミサイルは欧州防衛合弁企業であるユーロサム社が製造、陸上型が開発されているが採用は海軍型が主流でイギリス海軍の45型防空駆逐艦やイタリアのアンドレアドレア級ミサイルフリゲイト、フランスのフォルバン級ミサイルフリゲイト等に搭載されており、フランスは既にMBDAフランス社との間でCIMA改修キットの提供で合意している。
■S-500ADS防空システム
ロシアの地対空ミサイルは射程が長い事で知られますがS-500ADS防空システムは特に。

ロシア軍が開発を進めるS-500ADS防空システムが初のミサイル試験を成功させた。これはロシアのイズベスチャ紙が6月に報じたもので、ミサイル発射実験はカザフスタン国内のサリーシャガンミサイル試験場にて実施したと報じられている。S-500については2021年5月にプーチン大統領が発射実験について、間もなく行われる、と言明していた。

S-500ADS防空システムはロシア版ペトリオットと称されたS-300地対空ミサイルを起点とする新世代地対空ミサイルの最新型で、射程120kmの9M96中距離用から、ABM制限条約により射程を抑えている最大射程3500kmの40N6超長距離型までが開発されているほか、弾道ミサイル防衛に用いる核弾頭搭載型の77N6迎撃ミサイルも開発されている。

40N6超長距離型ミサイルは秒速4.8kmまでの極超音速滑空兵器や弾道ミサイルを迎撃可能であり、また低軌道を飛翔する人工衛星等も撃墜可能という。S-500ADS防空システムはロステック社が開発を担当しており、2025年に完成を目指す。現在ロシア防空軍にはS-400が配備されているが、S-500ADS防空システムは将来的にこれらを置換える構想だ。
■オランダFLATM-PV計画
オランダ国防省のFLATM-PV計画という新しい全地形車両計画について。

オランダ国防省はFLATM-PV計画として老朽化した全地形車両を更新する小型全地形車両179両の導入計画を発表しました。オランダ陸軍及びオランダ海兵隊では連接型全地形車両であるスウェーデン製BV-206全地形車両とその装甲型であるBvS.10バイキング全地形車両、及びランドローバー高機動車輛等を装備していますが老朽化が進んでいます。

FLATM-PV計画では、水陸両用能力と雪上走行能力、特に北極圏での運用を念頭に全地形車両を導入するとしており、条件としては定員4名、既存の民間車両若しくは軍用車両を選定し、新たな新装備開発を行うものではないとしています。今回はFLATM-PV計画が6月14日のオランダ議会に提出され了承された段階、本格的な選定作業はこれから開始です。

BV-206全地形車両とBvS.10バイキング全地形車両等の後継車両は、オランダ軍では、基本型となる汎用輸送型、偵察型、指揮通信車型、回収車、この四系統の取得を構想しており、4名の兵員と装備を輸送できると共に海兵隊での運用を念頭に現在進められている重機動中型揚陸艇への搭載能力が求められ、現時点ではまだ、具体的車種は示されていません。
■韓国KM-SAM地対空ミサイル
KM-SAM地対空ミサイルという韓国の新型ミサイルがありまして03式地対空誘導弾と似た運用方式となっています。

韓国陸軍は新型のKM-SAM地対空ミサイルの配備が進みMIM-23ホーク地対空ミサイルの更新が完了したと発表しました。MIM-23ホーク地対空ミサイルは中射程の地対空ミサイルで日本の陸上自衛隊でも運用されていますが、基本設計が古く電子装置や推進装置の能力向上改修を定期的に継続せねばなりませんが、その改良費用が年々高くなっています。

KM-SAM地対空ミサイルは韓国がロシアのS-400地対空ミサイルを参考に国産開発したもので、発射装置は自走発射車両からの垂直発射方式を採用、ミサイルの射程は40km、セミアクティヴホーミング方式で誘導し高度15000mまでの目標に対応する。韓国はソ連崩壊当時の借款返済にロシア製兵器を受領して以来、防衛装備について交流関係が続いている。
■オーストラリアLAND4503
オーストラリア軍はCH-47チヌーク輸送ヘリコプターを増強するとのこと。

オーストラリア軍はLAND4503計画で増強するCH-47F輸送ヘリコプターの受領を開始しました、現在オーストラリア軍は10機のCH-47輸送ヘリコプターを運用していますが4機を増強する契約をボーイング社との間で締結し、今回このうち2機が7月、アメリカ空軍のC-5B戦略輸送機にて、オーストラリアのタウンズビル空軍基地へ搬入されました。

CH-47F輸送ヘリコプターはオーストラリア軍第16航空旅団へ集中配備され、今回の2機も旅団隷下の第5航空連隊へ配備されます。14機体制の完成へ、残る2機は2022年中頃に納入されるとのこと。オーストラリアでは空中機動部隊の増強を進めるとともに、ここ数年多発する大規模な原野火災へもその空輸能力を用いた消火任務が期待されています。
■次世代APKWS誘導システム
APKWS誘導システムというあまり重いものを積めないヘリコプター向けの便利なミサイルが在ります。

イギリスのBAE社は次世代APKWS誘導システムを発表しました。APKWS誘導システムとはAH-1SやAH-64Dに搭載されるハイドラ70ロケット弾に装着する誘導システムで、軽量である為、無人航空機に搭載可能、70mmロケット弾を精密誘導することで、主力戦車を除くほぼ全ての装甲車両や小型船舶に対して有効な、軽量の誘導弾薬となっています。

次世代APKWS誘導システムは誘導システムの改修により射程が最大30%延伸したといい、射程は6500mと、ヘルファイアミサイルには及びませんがTOW対戦車ミサイルよりも射程が長い事になります、BAEはAH-6MやAH-1F,OH-58やCOIN機のA-29,A-208から戦闘機であるF-16.F/A-18,多用途ヘリコプターUH-1Y,UH-60等に搭載可能としています。
■アパッチ,再生産関連情報
ボーイング社のアパッチヘリコプターシリーズ生産に関する情報です。

アメリカ陸軍は2040年代までのAH-64アパッチヘリコプター運用継続へボーイング社との間で再生産に関する3200万ドルの契約を成立させました。アメリカ陸軍では既存のアパッチヘリコプター244機をアパッチガーディアンへ近代化改修させるとともに国名非開示の海外向けに24機のAH-64Eアパッチガーディアンを再製造し供給する計画とのこと。

AH-64EアパッチガーディアンはMQ-1Cグレイイーグル無人機の航空管制能力を持つ最新型で、AH-64Dアパッチロングボウからの近代化改修へアメリカ陸軍は第一段階として2017年に34億ドルの契約を締結しています。この契約は五年契約であり、今回の2021年6月に締約された契約はその第二期の初度費用にあたり、順次改修作業が予定されています。
■中国新型高速ヘリコプター構想
複合ヘリコプターとしてこれまでよりも遥かに光速のヘリコプターがアメリカで開発されていますが、中国も対抗へ。

中国軍はアメリカのシコルスキーS-97複合高速ヘリコプターに対抗する新型高速ヘリコプターを構想している、天津市で7月15日に開始された中国将来ヘリコプターシンポジウムにおいてチャイナヘリコプターデェベロップメントインスティテュート社が発表しました。シコルスキーS-97複合高速ヘリコプターは二重反転ローターなどを採用しています。

シコルスキーS-97複合高速ヘリコプターに対応する、これは400km/h以上の巡航速度を有するとともに新素材を用いた軽量な機体と人工知能AIを用いた姿勢制御システムなどを採用するとのこと。ただ、チャイナヘリコプターデェベロップメントインスティテュート社の発表は具体的な試作機製造日程等含まれず、あくまで研究開発開始の範疇に過ぎません。
■豪州DTCS次世代デジタル端末
陸軍通信体系は地味ではありますが重要であると共に想像するよりも遥かに費用を要します。

オーストラリア陸軍はDTCS次世代デジタル端末制御システムの導入契約をコリンズエアロスペース社との間で締結しました。これはLAND17フェーズ2プログラムとして実施されていたオーストラリア軍陸海空軍統合通信装備近代化計画の一環です。今回契約を担うコリンズエアロスペース社はアメリカのレイセオンテクノロジーズの系列会社のひとつ。

DTCS次世代デジタル端末制御システムは過去十年に渡り運用されてきたLAND17フェーズ1プログラム無線機の後継となる装備で、JTAC統合末端攻撃統制官とJFO統合前方監視官とを長時間に渡りリアルタイムで連接する装備、従来の携帯通信装置よりも軽量で通信容量や通信帯域が増大すると共に野戦に必須のバッテリー持続時間も改善されています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)