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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(08)74式戦車時代の第7偵察隊と装甲化された後方支援と通信部隊(2011-10-09)

2022-05-01 20:07:57 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■機甲師団の偵察部隊
 ウクライナ戦争は当初無人機と対戦車ミサイルの活躍が報じられましたが開戦十日後からは攻撃前進に戦車の不足が指摘され今や戦いは機甲部隊のぶつかり合いとなっている。

 今回は通信大隊と後方支援連隊、そして偵察隊の観閲行進です。全国の師団偵察隊もせめてこの規模があれば、機動戦闘車の戦闘中隊を加えて偵察戦闘大隊としても敵の正面を突破し主陣地防御の陣容を解明したり、敵機械化部隊の戦力を推し量れるのだと考える。

 機甲師団の偵察隊は凄いぞ、とは言われるところですけれども、もともと1962年の師団改編までは管区隊偵察中隊にM-24,狙撃銃ではなく軽戦車ですが、装備されていました。自衛隊の弱点は偵察、いや機械化全般の遅れが偵察にも反映されていると猛省すべきでしょう。

 第7偵察隊、74式戦車装備の当時は戦車10両と装甲車17両を装備していました、ただ、74式戦車は流石に第7師団では退役していまして現在は90式戦車が装備されている、C4I性能の優れた10式戦車が装備されず10式戦車は第71戦車連隊から配備されています。

 戦車を装備する偵察隊というのは第7偵察隊のみとなっていますが、そもそも偵察の任務は敵の有無を図る斥候ではなく敵の戦闘力を図る事に在るのですから、戦車は必須、近年自衛隊は偵察戦闘大隊として16式機動戦闘車の中隊を配置しているのですが、すくない。

 90式戦車を装備している現代の第7偵察隊は、偵察隊本部、第1戦闘偵察小隊、第2戦闘偵察小隊、第3戦闘偵察小隊、斥候小隊、電子偵察小隊、以上を基幹としています。なお、近年全国に改編が始っている偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねていて不安が残ります。

 偵察戦闘大隊は戦車大隊の機能を兼ねる、この問題は偵察部隊は精鋭部隊が集められている為に、一種の騎兵部隊として認識されるのですが、偵察専従部隊と騎兵部隊の相違は、逆襲部隊や予備戦力では無い点です、戦車大隊を兼ねるのはこの混同の懸念があるのです。

 ウクライナ侵攻という現実を見ますと、戦車大隊は直ぐに方針転換する事は出来ないにしても、偵察戦闘大隊から戦車大隊と偵察大隊を分離させ近接戦闘能力を強化するか、近年50tクラスの装甲戦闘車が出始めていますが、その120mm機動砲型等が必要でしょう。

 戦闘偵察小隊、本題に戻します。戦闘偵察小隊は小隊本部と戦車分隊、装甲普通科分隊、迫撃砲分隊、以上を基幹としていまして90式戦車2両と73式装甲車4両、81mm迫撃砲2門などを装備しています、前の編成では小隊長も戦車に乗車し戦車は3両あったのですが。

 斥候小隊は87式偵察警戒車を装備していまして25mm機関砲は通常の師団偵察隊や旅団偵察隊では重要な威力偵察の手段ですが、第7師団では斥候に使うのが限度と考えている模様、確かに、25mm機関砲で威力偵察を行い戦車に反撃されたらば一溜りもありません。

 偵察部隊、各国は様々な編成を試みているのですが、電子情報や無人偵察機などの情報収集に当る部隊と、実際に戦闘を介して攻撃軸や敵防御態勢など戦闘能力を推し量る部隊とは分けているようにも思えています、ここで参考までにフランス軍の編成を並べてみます。

 フランス軍の増強装甲偵察中隊という編成は、ある意味で自衛隊の理想型ではないかと考えました。その理由はながいのですが要点を示せばフランス軍の戦車定数は230両ほどでしかない、つまり自衛隊の90式戦車よりも少ないながら欧州最強を自称できる点です。

 増強装甲偵察中隊は常設部隊ではなくNATO即応部隊としてバルト三国などへ前方展開している部隊です。など、と曖昧に記すのは昨今のロシア軍ウクライナ侵攻を受けポーランドに増強されルーマニアにも新編されつつあるためで、現在進行形で増強されているため。

 偵察隊と増強装甲偵察中隊、自衛隊の偵察隊は中隊でも大隊でもない隊というどうとでも解釈できる名称を付与していますが、NATO即応部隊の増強装甲偵察中隊も発想としては重なるものがある。ただフランス軍の編成をみますと中隊の1.5個分という規模なのですね。

 フランス軍増強装甲偵察中隊の編成は本部小隊を含め6個小隊と2個分遣隊を基幹としている、本部小隊と2個増強戦車小隊、機械化歩兵小隊、斥候小隊、工兵小隊、そして砲兵前進観測班と戦車回収車班が分遣隊として派遣される編成、戦車は9両配備されている。

 増強戦車小隊はルクレルク戦車4両とVBL軽装甲車4両に中型トラック1両で、兵員は小隊長以下23名です。ルクレルク戦車は自動装填装置を採用している90式戦車とほぼ同世代の戦車、1994年より運用が開始、初期のデータリンク装置を標準装備している戦車です。

 ルクレルク戦車は4両で戦車分隊、VBL軽装甲車も4両で装甲分隊を編成している。VBLは自衛隊が軽装甲機動車を設計するうえでドイツのウィーゼル空挺装甲車とともに参考とした装甲車となっていまして、2ドアの軽装甲機動車という印象ですが水陸両用車でもある。

 VBL軽装甲車は7.62mm機銃搭載の車両が2両と12.7mm機銃搭載の車両が2両、戦車小隊というには戦車に加えて軽装甲車が4両装備されていますので、小隊長はある程度の経験がなければ、なにしろかたや路上で110km/hの韋駄天、片や戦車ですので運用は熟練が。

 増強戦車小隊といいますと身構えてしまいますが、実際にはフランス軍は2個分隊に分けているものの、VBL装甲車は3両で分隊を構成するような運用が前提ですので、戦車4両を一つの分隊としているために身動きがとれにくそうにしているだけにも思えるのですね。

 戦車を2両で戦車分隊として、2個戦車分隊に1個軽装甲分隊と考えれば自然に見えます、そして人員規模は23名、VBLの指揮車は2名乗車といいますのでトラックに2名乗っているとしても、人員規模ではある意味で歩兵小隊と比べますと小振りともいえるのです。

 本部小隊は戦車指揮班がルクレルク戦車1両、指揮班がVBL軽装甲車2両とプジョーP-6小型車1両、このP-6というのは車格からみても自衛隊の1/2tトラック即ちパジェロと同規模、そして通信班がVAB軽装甲車通信型、VBLは本部に装甲救急車としても1両が。

 VBL装甲車は1975年に開発されたのですが、外見は82式指揮通信車が開発される際に小松が参考としたのだろうというくらいに似ているのです、ただ、模倣かというとそうではない、82式指揮通信車は1970年代初頭に小型装甲車として開発の車両の派生型でした。

 F7警備車として小型装甲車は三菱重工が試作車を警察庁の機動隊用に供給していますので写真をごらんになった方も多いでしょうか、この小型装甲車は全国高速道路網整備を背景に普通科部隊の緊急展開を念頭に開発したもの、オイルショックで量産中止となったもの。

 小松と三菱が試作車を開発していまして、試作車は四輪駆動、車体装備に砲塔などを追加した場合に六輪駆動とできるよう車体を共通化したものですが、肝心の原型が採用されず指揮通信車のみが全国に大量配備されたもの。それにしてもVABと似ている車両なのです。

 本部小隊もう一つの分隊は輸送分隊でルノー中型トラックを3両装備している、いずれも250kgトレーラ付だ。分隊は補給班が支援し補給班はプジョーP-6小型車に乗車する。そして前述のVBL装甲救急車は衛生班に配備される、本部小隊は小隊長含め22名とのこと。

 機械化歩兵小隊はVBCI装輪装甲戦闘車4両より成る。VBCIは3両が歩兵分隊用で1両が支援車両、支援車両ですが基本的に歩兵分隊の車両とおなじで小隊本部要員3名、つまり小隊長と小隊軍曹と通信軍曹が乗っている。VBCIという装甲車は不思議でおもしろい。

 VBCIは1990年代にフランスが日本へも共同開発を打診したというもの、装輪装甲車なのですが25mm機関砲を搭載していまして、もともとはAMX-10P装甲戦闘車というホッチキス20mm機関砲を搭載した装軌式装甲車の後継として開発、重量はAMX-10Pより重い。

 VBCIをおもしろい、と表現するのは25mm機関砲塔が一人用砲塔なのです、するとルノーBT戦車のように車長が砲手を兼ねるのかとおもわれるかもしれませんが、砲塔は砲手のみ、車長は兵員室からモニターを通じ車両を指揮、装甲戦闘車の弱点は下車歩兵の不足だ。

 フランスは、車長が下車戦闘に加わることで解決した。どこにゆく車長、とおもわれるかもしれませんが、VBCIはこの点で心得ていて、FVとAPCの違いを如実に記しているという。APCアーマードパーソナルキャリアーは、要するに運ぶだけが任務、砲弾から守る。

 FVことファイターヴィーグルは、敵陣目の前まで機関砲で射撃しつつのこる十数mという段階で下車戦闘、歩兵の任務は掃討が含まれますが敵前目前まで乗車できることで、言い換えれば"当面の敵を撃破する"から"戦果拡張"の再乗車まで短時間に短縮するのが狙い。

 APCでなくFVなのだから車長は下車戦闘に際しても車両を指揮できる位置に遷移する、そんなの無理だろうといわれるかもしれませんが、マリ介入サーバル作戦など実戦でVBCIはそこそこ成功している。もっともギリシャへの輸出仕様は二人用砲塔を採用しているが。

 斥候小隊はVBL軽装甲車を8両とルノートラック1両を装備、定員は24名です。VBLは2両ごとに装甲班を編成している、自衛隊と同じだ、とおもわれるかもしれませんが、そこは装輪装甲車先進国フランス、装甲班は機能別編成となっていて様々な班が協力します。

 VBL軽装甲車は指揮班が7.62mm機銃装備の2両、そして2個班がミサイル班といいましてミラン対戦車ミサイルを装備している、ミランはレーザー誘導方式の対戦車ミサイルで、実は自衛隊も昔小銃班用に検討したことが、パンツァーファウストⅢが採用されましたが。

 ミラン対戦車ミサイルを運用する対戦車班のほかに残る一班が12.7mm機銃搭載のスカウト班です、速度が速いものですから万一の際には一目さんに退却することもできるしミラン対戦車ミサイルの射撃位置を確保できれば戦車が相手でも防御戦闘は可能という編成だ。

 工兵小隊は28名、小隊本部はVBL軽装甲車に乗車し工兵機材などを輸送するルノートラックも1両おかれている、そして工兵分隊は3個で各分隊はVBL軽装甲車により機動します、専用の装甲ドーザーや架橋装備は配備されていませんがこの部隊は偵察隊、妥当です。

 ルクレルク戦車9両、VBCI装輪装甲戦闘車4両、VBL軽装甲車20両、VAB軽装甲車6両、P-6小型車2両にトラック7両、戦車回収車1両、なかなかの規模といえまして、NATO即応部隊は大隊戦闘群規模ですので偵察部隊としては、十分以上の規模といえるでしょう。

 第7偵察隊の話題を中心にお伝えしましたが、後方支援連隊には90式戦車回収車に交じり78式戦車回収車が残り、また戦車は更新されるものの73式装甲車が残るなど、機甲師団は強力ですが、唯一の機甲師団なのですから、支援部隊強化も今後の課題といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌ー京都,京都駅で頂く駅蕎麦と日常に粋を演出したい蕎麦屋呑み

2022-05-01 18:29:24 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 榛名さんの総監部グルメ日誌は舞鶴地方総監部の在る京都府はその中心部の京都駅の話題を少し。

 遠出しますとそれは数日であっても駅に戻るだけで何かこう安心するものです。遠出する機会が少なくなるのはCOVID-19の時代というものなのですけれども。遠出するのはそれが出張やワクチン接種であっても高揚感あるものですが、帰ってくるとやはり地元がいい。

 京都駅の駅蕎麦は、いちばんよかった一軒が駅弁屋さんになってしまいましたが、なかなか誇れるところだと思います。もっともJR東海の新幹線京都駅は駅蕎麦が無く、いっそ名古屋駅のような名古屋風きしめん、なんてものを京都駅販売してくれたら、と思いますが。

 駅蕎麦、素早く頂けるものでして、もっとも真夏につい月見の熱いのを頂くと、市バスに乗っても一時間二時間は汗が引かないということもありますので、もうちょっと考えなければならないと反省する事もあるのですが。御出汁も好み、こればかりは個人差もあるか。

 蕎麦屋呑み。日本食といいますか和食というものは出汁の文化とか侘び寂といわれる価値観が在るというのですが、実際のところはファストフードから発達したものが多い、蕎麦なんかも典型ですので、要するに蕎麦屋呑みというものはパブやBARのようなものと思う。

 板わさ。直ぐに出てくる肴の定番というものなのですけれども、これは小田原で気づかされたことで、蒲鉾というものは普及品のお蔭で手軽のように見える一方で実は奥深い、高い蒲鉾にはそれなりに手間が在るという、それを直ぐ頂けるのですから、これは有難い。

 松竹梅を常温で。冷とか熱燗とか考えるのではなく、こちらも素早く頂くには常温が嬉しい、これをとくとくと注いでゆきます。長居は野暮、とはいわれるところですが素早く一献、これは現代風に考えると長居の回避はさてと、感染対策にもなるのかな、と思うもの。

 牡蠣フライ。いきなりとハイカラだと思われるかもしれませんが、蕎麦屋は種物も愉しみでして、しかしこの牡蠣フライは大振りで驚いた、これはもう懐かしい江田島の牡蠣を思い出します、頬張るとこう牡蠣の滋味が口中に溢れるとともに旨みを満足するものです。

 〆ものは蕎麦を頂きます、蕎麦屋で頂くのですからね。こちらは冷で小蕎麦を頂く、なにしろ蕎麦屋呑みなのですから、間食といいますか。さて、蕎麦は物凄いほどにきんと冷えて〆てありまして、〆物に冷水で〆た蕎麦を手繰る、なにかこう粋を絵に描いたような。

 小蕎麦、暖かい蕎麦を香りを嗜みながらと手繰るのも好きなところなのですけれども、冷えた蕎麦は歯ごたえが違います、そして主食でなく〆物に胃の腑を落ち着けるには冷やした方が好き、でも気分で熱いのが良い時も。そんな自由さが蕎麦屋呑みなのでしょうね。

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ウクライナ支援UNHCR輸送へ自衛隊C-2輸送機-国連のロシア軍Il-76輸送機支援依存からの脱却へ大きな一歩

2022-05-01 07:01:09 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 C-2輸送機によるPKO協力法に基づく初の空輸任務がいよいよ開始されます。そして派遣される機数は少ないのですが自衛隊にも国連にとっても転換点となり得る一歩です。

 航空自衛隊のウクライナ支援空輸支援が1日より開始されます。これはUNHCR国連難民高等弁務官事務所の要請に基づく支援となります。さて今回派遣されるのは川崎重工が誇るC-2輸送機、フェリー航続距離では10000kmの飛行が可能であり、日本から欧州へ直行可能です。そして最大空輸能力は36t、自衛隊では戦車や自走砲以外大半を輸送可能だ。

 C-2輸送機の派遣はPKO協力法にもとづくものであり、このPKO協力法に基づくC-2輸送機の派遣は今回が初めてとなります。もともとC-2輸送機は26tの貨物を搭載し6500kmの航続距離が求められた戦術輸送機であり、従来のC-1輸送機が8tを搭載し2000kmの航続距離という要求性能とは根本から別次元といえる程の大きな性能が要求されていました。

 PKO支援任務、C-2輸送機が開発された背景には、1992年のカンボジア派遣以来一貫して増加傾向にあったPKO任務に際して、航空自衛隊の装備する輸送機は、周辺国に脅威を与えないとの国家政策を反映して空輸能力が低く抑えられており、例えばモザンビークPKOへ空輸をおこなったC-130では片道五日間を要するなど任務に対する能力不足が深刻です。

 このため、航続距離の大きなC-2輸送機が開発されたのですが、自衛隊が最後にPKOへ部隊を派遣したのは2012年の南スーダンPKO,この時期にはまだC-2輸送機は初度作戦能力を付与されておらず、飛行開発実験団などでの評価試験が継続、最大搭載能力37tが補強材の関係で36tとなっていたころです、その南スーダンからも2017年に自衛隊は撤収へ。

 PKO任務は、日本がPKO参加を開始した1990年代とは異なり2002年の南スーダンPKO以降は安保理決議をもって派遣する平和執行、つまり国連軍としての要素が濃いものとなっていて、日本の自衛隊法では集団的自衛権公使の観点から簡単に派遣できないものとなってゆき、周辺情勢緊迫化などとあわせ、2017年以降、部隊としては派遣できていません。

 UNHCRの要請に基づくウクライナ周辺国への人道支援物資輸送支援は、ようやくC-2輸送機が平時における本来の用途に追いついたといえるのかもしれません。一方で、国連がなぜ日本に敢えてC-2輸送機派遣を求めてきたのか、この点の視点も実は重要です、それは従来、国連が従来に依存した空輸支援が受けられないという特段の事情がありました。

 Il-76輸送機、42tまでの貨物を輸送可能でC-2輸送機とアメリカのC-17輸送機の中間、いや中国のY-20輸送機に準じる程度の輸送機があります、設計はかなり古いのですが傑作機と呼びうるもので、もともと国連はUNHCR以外の空輸支援も含めて、このIl-76輸送機にかなりの部分依存していました、それが今回運用できないという状況なのです。それは。

 Il-76輸送機はロシア軍が国連支援の一環として派遣しているもので、恐らく国連も今回ロシア軍へウクライナ人道危機への要請を考えはしたのかもしれませんが、ロシア軍はIl-76輸送機をウクライナ侵攻への空挺部隊による侵略に活用しており、とても回す余裕はありませんし、おそらくそのつもりもないのでしょう、つまり国連がロシア依存脱却に自衛隊に頼った構図だ。

 C-2輸送機と同程度、たとえばエアバスA-400M輸送機やアメリカ製C-17輸送機ならば対応は可能ですが、A-400M輸送機は今回、NATOがウクライナ支援として全力で運用しており、C-17輸送機もアメリカは米本土からの作戦輸送に、オーストラリアやイギリスもウクライナへの直接支援に動員されており、とても国連まで回る余裕がないのです。派遣されるのは1機なのですが、意義は大きいのですね。

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