北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日本国憲法施行七五年【3】戦争を避ける協力をも制限する憲法-戦争は違憲だから駄目なのか平和を問う

2022-05-05 20:05:53 | 北大路機関特別企画
■平和的生存権とは
 子供の日に憲法の日という二日前の話題を繰り返すのも不思議な印象があるのですが、憲法と安全保障という問題は子供の将来にもかかわる問題と云う事で少し考えてみましょう。

 憲法の問題、戦争をしたいのですかと反論されてしまうのかもしれませんが、定番の反論の、戦争をしないための軍事力です、といういわばリアリズム的な視点もありますし、なによりもう一つ付け加えたいのは戦争を回避するための自衛隊による戦闘でも後方支援でもない選択肢というものから、現行憲法が制約してしまうという現実があるということ。

 戦争回避の選択肢までは憲法が制限する状況はどうなのだろう、これが一つの視点です。そして戦争回避といいますと、従来は侵略が起きそうな祭に動員令をかけ戦車部隊を国境に集める、というような見た目にわかりやすい選択肢というものが考えられたのですが、脅威が国境で顕在化するまで放置するというのも、間違っているのではと考えるのですね。

 戦争を起こしにくい雰囲気を集会などで誇示するという選択肢もとることは自由なのですが、日本は90年近く前に戦争を事変といい、ロシアはいま戦争を特別軍事作戦と言い換えています、戦争は反対だが特別軍事作戦は仕方ない、こうした考えではそもそも憲法の精神とは合致しないようにも思うのですね。憲法の精神とはどういうものかもかんがえたい。

 戦争を遠ざける、理念として憲法が掲げる平和的生存権に一番ちかい理念はこちらではないかと思い、少なくとも憲法に明示された平和主義は結果としての平和を享受するものであり、戦争を国家がしないためには国民は財産が爆撃されても人命が虐殺されても、平和が大事だから受け入れよう、という認識ではないように解釈するのです。つまるところは。

 遠ざける、こう認識するのは周辺事態まで我慢するという消極的なものではなく、世界政治における選択肢として戦争を選択肢に含める国への圧力を加えることで、周辺事態そのものが成立しにくい世界政治を醸成するという選択肢が理想であるとし、そのためには集団安全保障機構や枠組みが寄与する分野があると考えます。しかしながらここに制約が。

 憲法について再認識すべきと考える背景には、現行憲法に依拠した自衛隊法では、こうした枠組みにも参加することは集団的自衛権公使への制約という部分で難しく、日本の安全保障政策への選択肢を非常に狭めている現実があるためです。解釈次第という反論があるかもしれませんが、現在の自衛隊法が既に解釈の上限となっていないか、ということです。

 自衛隊の協力として戦争に参戦背っず軍事力による恫喝というような構造以外の選択肢といいますと、例えば航空自衛隊のE-767早期警戒管制機、E-2C早期警戒機、海上自衛隊のEP-3電子情報収集機、OP-3画像情報収集機、いずれも虎の子で一騎当千の情報収集機ですが、こうした装備による戦闘地域域外での情報収集が挙げられるでしょう。意味はある。

 情報、現代特に2020年代はレーダー情報や通信傍受による情報収集と情報解析は軍事行動を左右するほどの重要性を持ちます、その重要度は2003年のイラク戦争と比べても、2022年のウクライナ戦争において参戦しない諸国による情報収集と情報分析は死活的重要性を有するに至りました、そしてそれは参戦国以外により行われていた場合でも効果的です。

 軍事行動によるリスクが耐え難いもの、軍事的損害と経済的損害と金融的損失から文化的損害まで含めて、これが分水嶺をこえますと軍事行動という選択肢はとることが事実上できなくなるのでしょう、そして、この分野において、たとえば参戦しないまでも早期警戒機や電子情報収集機などで域外から警戒監視を行う事には、強烈な圧力となるのですね。

 情報くらいはとられても相手は別に、こう思われるかもしれませんが、完全に中立ではなく、少なくとも侵攻した側を支持しないという姿勢での情報収集は、たとえば早期警戒機ならば航空作戦における死活的に重要な航空情報を、電子情報収集機ならば指揮所位置や部隊展開状況などを標定することができ、この情報提供は大きな意味を持ちます。更に。

 日本はまだ保有していませんが、E-8地上監視機であれば400km以遠の地上部隊展開情報を識別可能です。こうした航空機などを展開させ、侵略を行う側に対して、手の内は見えているという姿勢を誇示し、また侵略を受ける側にたいして情報提供を行う可能性の示唆だけでも、侵略という選択肢をとりにくいものとさせることができる効果が、ある。

 異次元からの防衛協力、このように現在ウクライナ周辺で行われているNATOなど各国の情報収集機による協力を表現しているのですが、これは実際に効果があります、参戦国とは次元の違う異次元に飛行している航空機は、攻撃できません、攻撃すると相手に自衛権を発動させる口実を与えてしまいますからね。そしてその情報が持ちます意義は大きい。

 しかし、情報共有や、その際における不測の事態への対処を考えますと、憲法上の集団的自衛権公使への制約があっては、必要な法改正も行えません。また、自衛隊は違憲ではない、と主張する団体や政党であっても、自衛隊法は違憲だという主張があります、するとできることとできないことのうち、必要なことが後者に含まれてしまう現状が問題と思う。

 視点を変えますともう一つ、日本から憲法をみるだけではなく世界が日本をどのようにみるのか、ということです。なぜ戦争反対なのか、ととわれて憲法で禁止されていると答えますと、ならば憲法改正されればみんなが戦争賛成になって戦争に走ってゆくのか、と解釈されかねません。考えるに憲法を理由に思考を停止するべきではないと信じるのです。

 戦争は市民が犠牲になるから反対だ、こう返しますとそれではなぜ戦争の拡大を防止する取り組みに日本は参加しないのか、という問いで戻ってきます、だって憲法があるから、こう帰結することが思考停止と呼ぶのです。戦争がだめであるならば戦争を回避する選択肢を憲法が阻害する現状は、どうなのだろう、考えるべきだ、こう思ってしまうのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】京都駅の117系電車-快速電車用の快適設計とともに昨日の大阪駅の出来事を考えてみる

2022-05-05 18:28:18 | コラム
■Webに公開する前に
 Webを通じて個人の情報発信や持論表明は1990年代には考えられない程に簡単になったからこそ考えてみたい。

 京都駅で撮影しました117系電車の写真とともに今日は残念な話題を。117系電車は素晴らし電車です、片側2扉の転換式クロスシートでクッションは独特の弾みがあり、窓際の設計も長時間快適に乗車する事を意識している。しかし、昨日残念な事件があったのですね。

 大阪駅で昨日爆破予告がありまして、急遽複数のホームから乗客全員を退避させるという事件がありました。なんでも大阪と倉敷を結ぶ117系電車のツアーにたいしての爆弾予告であったとSNS上で発見したかたがいまして、これを受けての措置だろう、と考えます。

 幸い爆弾は発見されていませんが、明白な偽計業務妨害、立派な刑事事件です。日本では鉄道でのテロといえば地下鉄サリン事件という、おそらく鉄道関連のテロでは死傷者数6300名、過去世界でもこれほどの犠牲者を出したテロはなく、冗談ですむ問題ではない。

 東アジア反日武装戦線による三菱重工本社ビル爆破事件、東京丸の内で発生しました死傷者384名という戦後最大規模の爆弾テロが過去にありましたので、爆破五分前に予告がありましたが悪戯電話と思われ、電話受付が警備へ相談しているところで爆発しました。

 SNSを通じて安易に書き込んだのかもしれませんが、ISILはじめ世界中のテログループも犯行声明にSNSを活用している現実をみますと、爆弾予告となりますと特に警察は厳正に対処せざるをえないのでしょう。なにしろ過去に実際爆破された事例があるのだから。

 本人は軽い気持ちで書き込んだのかもしれません、当該アカウントは閉鎖されていますが、恐らく大阪府警から情報開示請求が出されますと書き込んだ方の特定はさほど時間はかからないでしょう。軽い気持ちでも、世界に向け発信することの意味を考えるべきですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ軍事支援,ポーランドがT-72戦車200両・アメリカがM-113装甲車200両-東欧NATO加盟国ロシア兵器離れ加速へ

2022-05-05 07:00:53 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 NATOは当初ロシアを刺激せぬよう重装備のウクライナ供与を躊躇していましたが、いまは戦車に装甲車に火砲に戦闘機と自走高射機関砲などが続々送られている。

 ポーランド軍はウクライナ軍へ装備しているT-72戦車200両を供給する方針を発表しました。200両といえば戦車師団規模の装備数であり、ロシアがポーランドへの天然ガス供給を停止した今、もはや猶予はないとして覚悟を決めた構図です。ポーランド軍はNATO加盟とともにレオパルド2主力戦車を導入、今年に入りM-1A2戦車も導入が正式決定しました。

 T-72戦車は旧式という印象はあります、実際1991年湾岸戦争では手ひどくアメリカやイギリスの戦車に敗北しました、ただ、ポーランドはNATO加盟国であり、NATOは加盟国にたいして装備の標準化を求めており、暗視装置や火器管制装置についてはフランス製照準装置やイスラエル製弾道コンピュータなどの搭載で戦車としてそうとう強化されています。

 ポーランドの戦車供与に対し、イギリス政府はその促進をはかるためにイギリス軍が保有するチャレンジャー2主力戦車のポーランド供与も打診しています、これはウクライナへチャレンジャー2を供与しても、戦車兵の訓練に三ヶ月、整備兵の訓練に半年を要しますが、NATO加盟国のポーランドであればイギリスでの転換訓練ができるため、と考えられる。

 NATOがウクライナへ供与する装備の多くは、ウクライナ政府が旧ソ連製兵器、自国の装備体系との互換性という観点からウクライナ軍も装備している旧ソ連製兵器をもとめており、火砲や戦車や装甲車、東欧諸国が装備している装備を中心に、それこそ数では自衛隊一個分、というような膨大な規模で供給が続いています。この点についてどうみるべきか。

 東欧諸国は、これを契機に旧ソ連製兵器を一斉に吐き出している、見切りをつけているように見えるのですね。これはソ連が嫌いだから、というものではなく、ちょうどソ連崩壊から30年を経て交換の時期が来ているとともに、予備部品などの供給で今後ロシアからの兵器購入を今後いっさい考えていない、という覚悟のようなものが垣間見えるのですよね。

 旧ソ連製兵器には余剰兵器、たとえばドイツが保管している旧東ドイツ軍用T-72戦車などは、1995年頃から運用を終了していますので、保管状況は、いわば30年ちかく野ざらしのトラックや建設機械がどうなるか、という状況と同じものといえるのかもしれません。しかし、東欧諸国では予算不足から更新できずに使い続けている国はかなりあるのです。

 東欧諸国は、たとえば今後アメリカで余剰となる装備、早期退役が決定したストライカーMGS105mm機動砲や後継車両が完成し除籍が始まるM-113装甲車、ドイツやオランダでは相当数のレオパルド2戦車を冷戦後除籍していますので、アメリカの武器援助とともに可能であるならば、ウクライナへ中古を吐き出し、世代交代で入れ替えたいのではないか。

 ロシアはポーランドとルーマニアへ天然ガス供給遮断を発表しましたが、こうした政治と経済を別枠と主張し続けた基本路線を反故にしたことは、同時に東欧のロシア離れを決定的にしたともいえるでしょう。この結果としてソ連時代に大量の兵器を押しつけられた東欧諸国は、これを怒りとともにウクライナ経由でロシア軍へ突き返している構図でしょう。

 M-113装甲車200両以上も供与、こちらはアメリカからで少なくとも三つの州から州兵用のM-113装甲車がウクライナへ援助物資として供与されるとのこと。T-72戦車200両にM-113装甲車200両、これだけでも機甲師団を編成できる戦車と装甲車であり、NATOのロシア離れによる余剰兵器放出のほか、こうした老朽装備使い切り放出も続くのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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