北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮-本日午後に日本海でSLBM発射実験,北朝鮮潜水艦ミサイル戦力整備の背景と核武装目的の考察

2022-05-07 20:11:35 | 防衛・安全保障
■核実験再開懸念の最中
 ニュース速報にてミサイル発射が報じられますとロフテッド軌道による高高度からの攻撃か単なる実験なのかを憂慮してしまう。

 海上保安庁は本日1411時頃、日本海において北朝鮮ミサイルと思われるものを発射したと発表しました。海上保安庁への情報は防衛省から海上保安庁に通知されたもので、続いて1425時、海上保安庁はミサイルと思われるものは既に落下したと見られるとの発表を行いました。ミサイルは我が国EEZ排他的経済水域外に落下したとされ、被害はありません。

 SLBM潜水艦発射弾道弾の可能性があり、これは海中から発射されたものの海中発射台から発射されたのか、新しく建造されたミサイル潜水艦から発射されたのかについては明らかにはなっていません。北朝鮮は寧辺核施設など複数核施設が活性化していると衛星画像により判明しており、今月中に核実験を再開するのではないかと懸念があったところです。

 弾道ミサイル実験は今月に入り二度目であり、まだ、日本列島上空を飛翔するミサイル実験は再開されていませんが、アメリカ本土を射程に収めるICBM大陸間弾道弾を開発するには、何れは太平洋上に落下させる実験を行わなければ、目的としているアメリカへの示威的なミサイルの完成には至りません。そして本日発射された潜水艦発射弾道弾について。

 北朝鮮は地上配備の弾道ミサイルとともに潜水艦発射弾道弾開発を急いでいます、これは地上配備の弾道ミサイルは万一場所を特定された場合に破壊される可能性がありますが、海中を航行する潜水艦であれば、その危険はかなり低下します。そして北朝鮮の潜水艦建造技術は高いものではありませんが、沿岸部であればミサイル潜水艦には用途がある。

 沿岸部にミサイル潜水艦を遊弋させ、外洋との間に機雷を敷設し機雷原を構築、こうすることでアメリカの攻撃型原潜や韓国の潜水艦から攻撃を受けにくくなりますし、沿岸部であれば防空砲兵部隊などの地対空ミサイルにより米韓の哨戒機からもミサイル潜水艦を防護できる。通常動力型潜水艦であっても、海中にミサイル戦力を温存できる事となります。

 ゴルフ級潜水艦、弾道ミサイルは通常動力潜水艦にとっては大き過ぎる装備ですが、北朝鮮はスクラップ艦を含め旧ソ連製のゴルフ級潜水艦を取得、これは通常動力艦ですが、艦橋構造物と一体化したミサイル発射筒が内臓されており、海中から発射可能、北朝鮮ではゴルフ級をリバースエンジニアリングにより、独自型の新造艦を建造しているところです。

 アメリカに対する抑止力の確保という視点は、二通りの見方をする事は出来ます、そしてその片方が非常に危険な解釈となるのですが。一つは北朝鮮が将来的に現在のウクライナに対してロシアが行っている行動をアメリカが韓国を拠点として行おうとしていると憂慮していること。ウクライナはソ連から継承した戦略核を1990年代に放棄した歴史がある。

 北朝鮮が憂慮するのは、核武装を解除と十年程度の後に、人権問題や軍事挑発を口実として韓国軍を先頭に北進する可能性を現実問題として受け止め、アメリカ本土まで到達する核戦力の整備がこれを抑止する為の不可欠の要素であり、北進による国家消滅を考えれば経済制裁などの脅威と弊害は採るに足りないと考え開発を継続しているという視点です。

 南進し韓国を武力統一する際にアメリカの介入を阻止したい、二通りの見方のもう一方はこの視点です。非常に危険な解釈という論拠は、南進が前提であり、その際の介入を阻止するというもので、少なくとも攻撃される前に核兵器を先制使用する可能性、という為です。使われない限り使用しない抑止力を以て、攻勢に出るか現状を維持するかの違いです。

 日本のミサイル防衛について。北朝鮮ミサイル事件が沈静化していた時期に、我が国ではミサイル防衛システムとしてのイージスアショア陸上配備型ミサイル防衛システムの建設を、落下する切り離したブースターの基地施設外落下の問題が解決できず、棚上げした上で既に注文したSPY-7レーダーシステムを水上戦闘艦へ搭載する変更をおこないました。

 日本が核攻撃を受ける可能性はあるのか、この問いに関しては北朝鮮がアメリカ本土への攻撃を考えるならば、日本の情報通信網を少なくとも高高度核爆発による電磁パルス攻撃で機能不随に至らせる必要があり、韓国や韓国軍が北進した場合の北朝鮮領内での戦術核兵器使用に準じて、日本への核攻撃の可能性は軍事的合理性に適合する事は、現実です。

 イージスアショアの建設中止により、当初2020年代半ばにも稼働開始という計画が立っていましたミサイル防衛能力整備は大幅に遅延する見込みであり、更に為替の円安、もともと日本円は戦争に弱いとされる、更にCOVID-19による世界規模のサプライチェーン崩壊により、建造費用などが上昇する事は必至、ミサイル防衛の優先度が問われる事でしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【京都幕間旅情】東海道線湖西線行き交う京都駅日常風景と改めて考えたい大阪駅のこと

2022-05-07 14:44:13 | コラム
■世界と繋がる電子空間
 大阪駅の例の事件は容疑者が逮捕されたと報道がありました。

 逮捕されたのは19歳の特定少年とのこと。これは先日ありましたJR団体列車爆破予告事件で大阪府警が捜査に乗り出し、SNS上に爆破予告を掲載した容疑者の逮捕に至ったとのこと。爆破予告というものは、前にも記しましたが実際に爆弾が使われた事もあります。

 大阪府警はじめ日本の警察は、テロ予告にも不測の事態は有得ますので、摘発できるものは全て摘発して、偽計業務妨害の今後の発生を抑止する目的もあるでしょうし、特に今回犯行声明が出されましたSNSは、情報開示要求が裁判所から出されれば特定は容易です。

 東アジア反日武装戦線という日本の過激派組織が1974年に東京丸ノ内で行った三菱重工本社爆破事件がこれにあたり、死傷者384名という日本での爆弾テロとしては最大の死傷者を出すテロ事件が、まさに予告電話があり予告通りに爆発という痛ましい事件となった。

 三菱重工本社爆破事件は、三菱重工東京本社の入り口付近に爆弾二つが仕掛けられ、お昼の1242時にビル電話受付に爆弾の予告電話があり、しかし口調が不自然である事から悪戯電話と勘違いされますが、総務と対応を協議する事となりました。しかしその五分後に。

 テロ事件は予告電話の五分後に発生し、爆発しました。かなり強力な爆弾が使われましたが、特に現場は東京丸ノ内、爆風は本社ビルよりも東京の中心部という当時の高層ビル街で発生した為に抜けられない爆風が周辺のビルガラスを吹飛ばし破片の雨を降らせました。

 死傷者384名という日本での最悪の爆弾テロは、予告電話の五分後に爆発したという過去の歴史があります。そしてSNSでの犯行声明は、前回も書きましたが現実として世界中のテログループが犯行声明に用いている手段、SNSは私的な情報発信ですが公共空間です。

 特定少年にテロが可能なわけがないのに大袈裟だ、と思われるかもしれませんが、近年問題となっているのはローンウルフ型テロという、海外の過激派組織に影響され一人でテロを決行する事案であり、しかも実際に起こしている件数は無視できないものとなっている。

 サイバー空間における情報認識やサイバー空間と社会生活というものを、法制度も加えまして、もう少し義務教育などで徹底させる必要があるように思う、例えば高等学校での公民教科、義務教育での社会科などで、知識として学ぶ必要があるように思うのですよね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ロシア黒海艦隊アドミラルマカロフがミサイル被弾か-ウクライナ軍反撃で巡洋艦モスクワ撃沈に続く艦隊の損耗

2022-05-07 07:01:13 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 ウクライナ侵攻に際してロシア黒海艦隊はミサイル巡洋艦モスクワ撃沈を始め大打撃をうけつづけていますが更に未確認情報が。日本に寄港するロシア艦よりも遥かに新しい最新艦が。

 アドミラルマカロフがミサイル被弾か。これはウクライナ国防省が発表したもので、ロシア海軍黒海艦隊に所属するアドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイトの3番艦です。黒海艦隊は唯一の巡洋艦であるミサイル巡洋艦モスクワが撃沈された後も、駆逐艦や大型対潜艦は装備されていませんが、フリゲイトは残っていました。艦砲射撃に派遣されていたとも。

 アドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイト、ロシア海軍の最新フリゲイトです。そしてソ連崩壊後に初めて設計されたもの、ソ連時代に設計された延長線上のアドミラルゴルシコフ級フリゲイトとは一世代新しい、ロシア海軍第一世代の最新鋭フリゲイトです。しかし、この被弾、場合によっては撃沈の可能性は、本型の建造の苦労を考えると厳しいものが。

 日露戦争にて戦死した太平洋艦隊マカロフ提督の名を冠するフリゲイトは、経済崩壊したロシアが苦労してソ連崩壊から四半世紀が迫る頃に建造が実現した水上戦闘艦で、しかし、ロシア経済は天然資源輸出により軌道に乗りつつも、9隻建造予定を6隻建造に計画を縮小、一部の完成艦をインド海軍へ輸出する方針など、苦労して建造した待望のフリゲイトです。

 ソ連崩壊後のロシア連邦は経済崩壊により幕をあけましたが、経済崩壊はソ連時代の軍需産業の崩壊も意味し、2010年代までまともな水上戦闘艦を、実に20年に渡り建造できなかったのです。しかし、ロシア軍需産業はインド海軍の下請けというかたちで何とか存続を図りました、大型水上戦闘艦の設計と建造は一回断絶すると簡単に再建できないため。

 インド海軍向けタルワー級フリゲイトは、ロシア軍需産業が経験のあるクリヴァクⅢ型設計を元に汎用型VLS垂直発射装置とステルス形状の上部構造物など、新機軸を盛り込んで建造したものです。本来であれば新生ロシア海軍の主力となるべき艦艇を、インド海軍の下請けでインド向け仕様の艦艇として設計し、造船所を廃業からだけは守った構図という。

 タルワー級フリゲイトは横須賀や佐世保に幾度も親善訪問にて寄港しているインド海軍の新鋭水上戦闘艦ですが、ロシア海軍はインドの了承を受けロシア海軍仕様とした、これがアドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイトとなっています、満載排水量は4035tですので護衛艦はつゆき型後期艦と比べても小さく、ロシアの限界は未だこの規模であったのですね。

 ロシア黒海艦隊は、またしても苦悩に曝されています。アドミラルマカロフはアドミラルグリゴロヴィチ級フリゲイト3隻が配備されていますので、まだ全滅した訳ではありませんが、もともとロシア海軍が厳しい予算でも黒海艦隊に最新のアドミラルグリゴロヴィチ級を配備した背景には、NATO艦隊の黒海展開などを警戒してのものであるためです。

 NATOの黒海展開は、NATO加盟国トルコとは1930年代からの条約によりある程度危機を回避できる関係を維持しましたが、冷戦後のルーマニアとブルガリアのNATO加盟により黒海沿岸国がNATO加盟国となっているのですが、これによりアメリカやイギリス艦艇の共同演習などでの黒海展開が増えるようになり、ロシアはべつの憂慮を抱える事となる。

 ロシアの憂慮とは、NATOが仮にトマホーク巡航ミサイル搭載艦を展開させた場合、黒海からはモスクワまでトマホークミサイルの射程内に入るという現実があるのです。もっとも落ち着いて考えればバルト海からの方が近いのですが。この危機感から、黒海艦隊に新鋭艦を配備し黒海安泰を期していたのですが、虎の子の一隻、こうした結果となりました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする