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北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(09)87式自走高射機関砲装備する第7高射特科連隊(2011-10-09)

2022-05-15 20:11:08 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■87式自走高射機関砲
 自衛隊は2000年代に入りますと巨額のミサイル防衛事業費を捻出する為に余りに装備を妥協し逆に危機を招く事にはならないか、防衛費をGDP比2%に増額させる機運とともにこの歪を直視して欲しい。

 87式自走高射機関砲、第7師団はこの87AWSPともよばれる32両の高射特科装備と、81式短距離地対空誘導弾システム10セットにより厳重に防空されています。各防空装備はいずれも師団対空戦闘情報システムに連接しており、対空レーダ装置P-14の支援下にある。

 35mmエリコン機関砲は、射程が3500m云々と聞いていましたので自衛隊もAH-1S対戦車ヘリコプターに搭載しているTOWミサイルが射程は3750m、射程4000mのミサイルには太刀打ちできないのではないか、こういうのは昔、書籍の情報を鵜呑みにしていたもの。

 機関砲、しかし、毛髪に触れるだけでも作動する焼夷徹甲弾を毎秒17発射撃でき、しかもこの35mm砲弾は安全考慮し6500mで自爆するという設計を聞きますと、3500mという射程は、有効射程が実際にはもう少し長いのではないか、とも考えてしまうのですよね。

 機関砲の利点として、熱源や欺瞞紙などで妨害されず発射したならば真っ直ぐ飛翔するところ、ミサイルと違う利点です。もっとも難点として機関砲の整備はミサイルと違い遥かに面倒ですので、即ち整備性と信頼性の高い機関砲というものも課題なのかもしれません。

 高射特科部隊は、しかも中隊で6両が猛烈な弾幕を構成し、しかもレーダー管制されており機動力も高いものですし、電波を発信しなくとも87式自走高射機関砲は照準用カメラによる光学照準が可能ですので、電波を発していなくとも相手は存在を留意せざるをえない。

 48両しか製造されませんでしたが、当初は150両が全国の高射特科部隊へ配備される計画でしたので、今更でも遅くはありませんのでこの種の装備を揃えるべきなのでは、と。取得費用は高い装備ですが、無人機対処等も含めこの種の高射機関砲の近代化は必要と思う。

 野戦防空は、しかしこれも一概に一種類の装備品だけで自己完結できるほど甘いものではありません、また防空制圧という高射特科部隊そのものが標的となるものでもありますし、延々とレーダーを作動させ警戒していますと、そのレーダーが防空制圧の目標になります。

 ハーピー徘徊式弾薬などは、レーダー電波を探知して突っ込む防空制圧用の徘徊式弾薬でイスラエル製ですが既に1990年代に中国へ輸出され、リバースエンジニアリングされています、かなり小型なのですがその分多数による飽和攻撃が可能で、看過できない脅威だ。

 CIWSの20mm機関砲が威力が大きすぎて付随被害、周辺の民家などに流れ弾がという認識ならば、例えばM-134ミニガン、20mmではなく7.62mmですが、これと併用してもよい。おそらくHARMのような超音速機が相手では無理ですが、小型無人機には十分に効く。

 ミニガンのCIWS,奇しくも1990年代初頭にBAEシステムズの前身であるヴィッカース社が戦車を対戦車ミサイルから防衛する戦車版CIWSとして兵器展に出展しているのですね。高射特科の広域防空ミサイルも、自衛するための装備は今後考えてゆかねばなりません。

 装備品、これこそ決定打、という装備はありません、すると様々な装備品は近代化されるか更新してゆく必要があるようにも思う。例えば、昨今、89式装甲戦闘車の車体を更新する共通装軌式車両が開発されていますが、無いよりましにしても、要求仕様は古いのでは。

 共通装軌式車両は、89式装甲戦闘車の後継車両となるものですが基本的にこの砲塔は89式装甲戦闘車のものを流用するとの事で、同時に共通装軌式車両の車体は87式自走高射機関砲の砲塔も継承するという。フィンランドもマークスマンAWSPでやった方式ですが個人的に火器管制装置の性能を相当に強化せねばならない。

 共通装軌式車両、ただ、87式偵察警戒車の砲塔も共通装軌式車両に搭載するならば対戦車ミサイルは搭載しないものの装甲戦闘車として転用できそうなものでも、と考えたことはあります、装甲戦闘車が足りなさすぎる為に、偵察警戒車の分が増えればせめても幸い。

 日本が戦車開発を進めている間、10式戦車という高性能戦車が開発されたのですが、61式戦車と組んだ60式装甲車、74式戦車の相方73式装甲車、90式戦車の相棒志望の89式装甲戦闘車に当る10式戦車の同僚は開発されることはありませんでした。問題といえます。

 35mm機関砲を誇った89式装甲戦闘車の優位も、CV-90が40mm機関砲を搭載しロシアが30mmに加えて100mm低圧砲を搭載したBMP-3を開発しますとあっさり格差が開きます、そして89式装甲戦闘車の戦闘重量26tも徐々に重量級とは言えないようなってゆく。

 紛争地域ではRPG対戦車擲弾やIED簡易爆発物が日常的に装甲戦闘車に降り注ぎ、結局はCV-90も、スペインオーストリア共同開発のASCODも、装甲が徐々に強化されてゆき、これも89式装甲戦闘車の戦闘重量26tは当初頑丈の部類に入っていましたが、時代は進む。

 1990年代後半に装甲戦闘車の標準重量は30t台後半、そして40t台に入って行きました、10式戦車が44tですので凄いといえば凄い。ドイツがマルダー装甲戦闘車の後継にプーマ装甲戦闘車を開発した際には増加装甲を最大限装着した場合で戦闘重量41tに達しました。

 プーマ装甲戦闘車の41tを勝手に重装甲戦闘車と表現していましたが、同じメーカーであるクラウスマッファイ社がドイツ連邦軍向けではない輸出用のリンクス装甲戦闘車を開発しますと45tと10式戦車よりも重く、イギリスのエイジャックス装甲偵察車も40t級です。

 40t級の装甲戦闘車が2010年代の趨勢となりつつある、10式戦車並の重さ。もちろん車格が大きいために防御力の優位を示すものではないが、26tの89式装甲戦闘車は下手をすれば装輪装甲車の、下手をせずとも実際そうなのですが、装甲は平凡なものとなっています。

 航空自衛隊のC-2輸送機が36tまで搭載できるのですから35tの61式戦車程度の装甲戦闘車、増加装甲の装着により40t程度まで、40mm機関砲程度には耐えられる装甲戦闘車を、戦車部隊が300両なのですから450両から600両程度、量産しても良いよう思うのですね。

 列国に伍する高性能、そんな安直な発想ではありません、戦車に随伴するということは戦車と同じ攻撃を受ける事を示すわけで、耐えられねば意味はありません。日本の場合は、専守防衛ですので結局は国土戦となります、そして国土戦ということは重要な点がひとつ。

 国土戦では、我が同胞の居住地域が戦闘地域となるのですね。国土戦となれば、どうしてもサイパン攻防戦と沖縄戦の歴史を思い出さないわけには参りません。そして同時に、戦車が撃破された場合には戦車の乗員は3名、その人命が大きな危機にさらされるのですが。

 装甲戦闘車の場合は10名、乗員に加えて普通科隊員が乗車中ですので危険にさらされる人命はどうしても多いのです、すると装甲戦闘車の防御力重要性を考えないわけには参りません。装甲戦闘車、開発当時には戦車を支援するとか乗車した歩兵の地位を変えたもの。

 通常のAPC装甲人員輸送車では戦場までのタクシーであり乗車したならばそのまま戦闘に関与できないというもので、そこに機関砲を搭載することで戦闘に参加できるという点と、銃眼、装甲戦闘車の第一世代では銃眼は必須だった、ここから小銃をつきだして撃つ。

 銃眼により戦闘に参加できるというものが。乗車戦闘能力こそが装甲戦闘車の考えでした、これは間違いとはいいません、装甲戦闘車の重要性が認識された一つに対戦車兵の第四次中東戦争における能力の拡大であり、撃退できる能力を戦車が十分もたなかったのですね。

 装甲戦闘車はこうした必要性から生まれたものなのですが、他方で留意しなければならないのはこの戦争が1973年、49年も昔の戦争だ、ということなのですね。すると装甲戦闘車というものにも世代が在る、この視点を忘れないようにしなければ、なりませんよね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】阪急伊丹線,路線長3.1kmを往くマルーンカラー6000系と7000系電車

2022-05-15 18:22:37 | コラム
■マルーンカラー阪急電車
 マルーンカラーの阪急電車は常に磨き上げられていて眺めると綺麗さは小気味良い。

 阪急伊丹線、全長僅か3.1kmの路線ですが、1920年に開業した100年を超える路線です。ながらく3100系電車が運行されていましたが、現在は6000系と7000系が充当されていまして、四両編成のささやかな編成ではありますが運行頻度は高く、便利な路線という。

 7000系は1980年に運用が開始された神戸本線と宝塚本線用の車両で、初期車両は鋼製車輛となっていますが後期車両はアルミ製車体を採用するという転機が在りまして、リニューアル工事をうけ、一部は界磁チョッパ車からVVVFインバータ制御へ改修されている。

 伊丹線は沿線の方以外には阪急沿線全般の方には一つの支線と云うだけなのかもしれませんが、自衛隊行事を撮影する方々には京阪神近畿紀州を警備管区とする第3師団、その司令部が置かれる千僧駐屯地、西日本全域を管区とする中部方面総監部の伊丹駐屯地が近い。

 自衛隊行事は第3師団祭が5月、中部方面隊創設記念行事が10月とありまして、この際にお世話になります路線、という印象があります。そして有岡城址に近く、白雪で知られる小西酒造や猪名神社はじめ寺社仏閣など沿線には散策の際に、趣き深い名所旧跡もならぶ。

 阪急6000系は7000系と並ぶ伊丹線の主力車両で1976年から運用されています、設計最高速度が110km/hということで昔は将来120km/h運転時代には対応できないのかと考えていたものですが2020年代にもこうした予定は無く、今しばらくは活躍が続くもよう。

 6000系は能勢電鉄にも譲渡されているのですが、車体は鋼製車輛ながらアルミ車体試作車が製造されていまして、阪急電鉄の転換点と云える車両の一つです。ロングシートの車内は混雑しない折には広々と過ごしやすく、短い路線ながら快適な移動が愉しめる電車だ。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【7D特報】吠える105mm砲!師団祭予行,74式戦車駆使する第3師団-第3戦車大隊(2018-05-12)

2022-05-15 07:01:44 | 陸海空自衛隊関連行事詳報
■第二世代戦車の奮闘
 第二世代戦車という第二次大戦後の主力戦車という概念を固めた区分に類別されるのが自衛隊に僅かに残る74式戦車という。

 74式戦車、いよいよ最終段階です、第3戦車大隊の74式戦車は第3師団祭において特別展示を行うと発表されていますので、これは陸上自衛隊でもっとも古い戦車部隊の一つである第3戦車大隊の偵察戦闘大隊への改編が迫っている、ということを示すのでしょう。

 第3戦車大隊、61式戦車に74式戦車と続き、前の防衛大綱改定前までは10式戦車の配備が予定され、年度まで決定しており第3戦車大隊の駐屯する今津駐屯地、ここに隣接していました饗庭野演習場も10式戦車に対応する戦車射撃場の造成工事が計画されていました。

 10式戦車はスラローム射撃を可能としていますので饗庭野演習場の戦車射撃場もスラローム射撃に対応した造成とする計画であったのですが、戦車大隊が戦車定数削減により廃止される方針を受け、この造成工事も中止することとなったと。これには疑問符も感じます。

 偵察戦闘大隊、この編成は16式機動戦闘車を配備する戦闘中隊と偵察中隊を大隊隷下に置くというもので、戦闘中隊は事実上戦車の代わりとなる訳ですが、なにしろ数が10両ですのでいまの戦車大隊、縮小編成とはいえ2個中隊30両ある訳ですので三分の一という。

 16式機動戦闘車、優れた装備ではあると確信するのですが戦車の代替になるかととわれますと、おそらく高初速の徹甲弾に対する防御は要求仕様として盛り込まれていません、論拠は、その開発時期は87式偵察警戒車の後継車両開発と明らかに重なっているためです。

 74式戦車も戦車は戦車だという反論があるかもしれません、しかし、この戦車が設計されたのは1970年代であり戦車の交戦距離は1000m内外から2kmの大台に乗り、なんとしても2km先の戦車に初弾命中率50%を叩き出して勝利しよう、という要求仕様がありました。

 第三世代戦車、つまり90式戦車や10式戦車の現代ですが、戦車の交戦距離は4kmまで延伸しており、初弾命中率は95%が要求されています。設計の時点で、言い換えれば0系新幹線を改造して300km/h叩き出し東京大阪間を二時間で踏破を目指せという発想に近い。

 90式戦車はじめ、第三世代戦車は基本的に戦車弾薬は誘爆するという前提で、車内の弾薬庫は誘爆をもっとも回避する位置に配置されています、ここからして第2世代戦車は車内各所に弾薬を分散する発想ですので、全部一度に誘爆はしないが配置からして発想が違う。

 1990年代ならば、74式戦車の照準器を熱線暗視装置として砲塔システムも一新し、砲塔に爆発反応装甲を装着する事で対応できたのでしょう、2000年代でもなんとかなったかもしれない、しかし2010年代となりますと、砲塔を16式機動戦闘車のものとでもしないと。

 戦車なのですから機動戦闘車の砲塔を移植したとしても戦車とはなりません、なにしろ機動戦闘車は105mm砲弾を含む徹甲弾に耐えるという要求仕様が元々なかったものですので、戦車駆逐車とするのが精いっぱい、その上で機動力も足回りを一新しなければならぬ。

 10式戦車に置換えれば、とも思うのですが、なにか政治には出来ない理由があるのでしょう。一方で戦車、各国戦車を取り巻く情勢を見ますと、2020年のナゴルノカラバフ紛争、いまのウクライナ戦争、シリア内戦にリビア内戦、決め手となるのはやはり戦車でした。

 ラインメタルリンクス120として、50tクラスの重装甲を備えた装甲戦闘車に全自動の120mm砲塔を搭載した機動砲が提案され、あのくらいならば戦車を置換え得る機動砲となるようにも思えるのですが、こうしたのも開発される事無く、戦車は日本で消えています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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