■世界の防衛-最新論点
自衛隊の戦車が今後どのようになるかについての参考までに、今回は戦車関連の最新情報を新型弾薬や国際協力を受けての国産戦車開発などまとめてみました。

ポーランドは四月に入りM-1A2SEP-V3戦車250両と関連装備の取得に関する47億5000万ドルの契約に署名しました、これは当初計画を前倒しし正式契約に至ったものでポーランド政府が隣国ウクライナへのロシア軍侵攻に重大な危機感を実感し前倒ししたもの。これにより、ポーランドは欧州では初めてM-1戦車を採用し配備する事となりました。

M-1A2SEP-V3戦車は英部ランス戦車の最新シリーズで105mm砲を搭載していた原型のM-1エイブラムスとは形状が同じであるものの性能は完全な別物です、ポーランド軍はM-1A2SEP-V3戦車250両に加えてM-1074重戦車橋17両及びM-88A2戦車回収車26両を導入します、M-88は車体系統ではM-60戦車の系譜にあり、訓練や予備部品等もふくむ。

ポーランドがM-1A2SEP-V3戦車導入を発表したのは2021年7月のカチンスキ副首相によるタデウシュコチュシュコ第1機甲旅団視察の際です。なお、この契約から少し後、ロシア軍の侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領はこの新型戦車導入を受け、NATOへ余剰となるであろうポーランド軍のポーランド製PT-91戦車供与を求めています。
■新型砲弾M-339HE-MP
APFSDS弾からMP弾の時代へ即ち戦車戦闘の対象が変容しつつあるのでしょうか。

スペイン陸軍はレオパルド2主力戦車用の新型砲弾M-339HE-MP弾運用を開始しました。これはイスラエルのIMIシステムズ社が開発した戦車砲弾でHE-MPの名の通り多目的対戦車榴弾となっています。NATO標準砲弾としての規格を有するとともに、スペイン陸軍が運用するレオパルド2A6相当のL-55長砲身戦車砲にも適合する新型戦車砲弾です。

M-339HE-MP弾は中程度の装甲目標と陣地攻撃を念頭とした砲弾で、特に5km程度の射程で運用が可能といい、市街地運用を想定しています。二重鉄筋コンクリートに対し200mmを貫徹した上で内部にて作動するPDDポイント遅延信管、空中炸裂など状況に合せた信管作動を選択可能、イスラエル軍のレバノン侵攻などでの戦訓が反映されています。

APFSDS弾が対戦車戦闘に際しては重視されますが、近年では第3.5世代戦車同士の対戦車戦闘は中々発生せず、例えばT-72戦車やその改良型であるT-90等と云った脅威に対してはHE-MP弾によっても有効な打撃を与えられるとされており、一方で地域紛争への対応から多目的榴弾全般への需要が高まっている事もあり、新型砲弾開発がすすんでいます。
■アルタイ戦車用斗山製エンジン
この種の技術は日本で扱いが酷過ぎるように思うのですが囲い込みで防衛産業を保護するのではなく実質は飼い殺しにしているようで心が痛む。

トルコのアルタイ主力戦車用韓国斗山製エンジンがトルコへ到着しました。アルタイ主力戦車は韓国のK-2戦車をトルコ軍仕様として国際共同開発した主力戦車です。しかし韓国K-2戦車事態が国産エンジン開発に難航しドイツ製エンジンやトランスミッションを採用していました、しかしトルコの場合はドイツ製エンジンを搭載出来ない政治的事情が。

トルコ政府のクルド人抑圧政策によりドイツ政府はトルコへの防衛装備品供与に制限を加えており、その規制は韓国との共同開発戦車にも例外ではありません。トルコが検討したのはMTU社製Gmbh1500hpエンジンですが、この実現が不可能となると三菱重工製エンジンなどを検討しますが海外輸出を希望するトルコに対し三菱重工も難色を示しました。

韓国はK-2戦車用エンジンの国産化を断念した訳ではなく、あくまで2007年にK-2戦車試作車が開発された時点の状況であり、2020年代に入り漸く国産化の目処が立ちました。メーカーは韓国の斗山インフラコア社でDV27Kエンジンです。また韓国S&Tダイナミクスが開発したEST15K変速機もレンク社製変速機に代えて納入、開発目処が立ちました。
■ハリマウ中戦車初実弾射撃
ハリマオとはマレー語でトラの事であるという始まりのドラマ”快傑ハリマオ”舞台は何故かインドネシアでしたね。

インドネシア初の国産戦車ハリマウ中戦車は初の実弾射撃試験を成功させました。これは2022年2月24日から翌25日にかけて実施された評価試験の一環として実弾射撃が実施されたもので、西バンドン県のインドネシア軍歩兵教育センターにて実施されました。主砲はベルギーのコッカリル社製105mm砲塔に搭載されるCV105P高圧戦車砲です。

ハリマウ中戦車は戦闘重量35tと中戦車とは言ってもT-55戦車や61式戦車並の重量を有しており、インドネシアのピンダットが開発を担当、トルコのFNSSが技術協力を行い国際共同開発を行い、基本重量は32tですが増加装甲を装着することで35tとなりNATO防弾規格STANAG4569換算ではレベル5の500m先からの25mm機関砲弾に耐えるという。

今回の実弾射撃試験は1250m先の4m四方も標的に対してTPCSDS-T弾を用い実施され良好な成果を上げたという。砲弾としてはM-1061-HE対戦車榴弾にM-393A3粘着榴弾などに対応し、砲塔は自動装填装置を有しています。車体部分の設計はトルコ製装甲戦闘車の派生型で機動砲とも言い得るものですが、インドネシア戦車産業には偉大な一歩です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
自衛隊の戦車が今後どのようになるかについての参考までに、今回は戦車関連の最新情報を新型弾薬や国際協力を受けての国産戦車開発などまとめてみました。

ポーランドは四月に入りM-1A2SEP-V3戦車250両と関連装備の取得に関する47億5000万ドルの契約に署名しました、これは当初計画を前倒しし正式契約に至ったものでポーランド政府が隣国ウクライナへのロシア軍侵攻に重大な危機感を実感し前倒ししたもの。これにより、ポーランドは欧州では初めてM-1戦車を採用し配備する事となりました。

M-1A2SEP-V3戦車は英部ランス戦車の最新シリーズで105mm砲を搭載していた原型のM-1エイブラムスとは形状が同じであるものの性能は完全な別物です、ポーランド軍はM-1A2SEP-V3戦車250両に加えてM-1074重戦車橋17両及びM-88A2戦車回収車26両を導入します、M-88は車体系統ではM-60戦車の系譜にあり、訓練や予備部品等もふくむ。

ポーランドがM-1A2SEP-V3戦車導入を発表したのは2021年7月のカチンスキ副首相によるタデウシュコチュシュコ第1機甲旅団視察の際です。なお、この契約から少し後、ロシア軍の侵攻を受けているウクライナのゼレンスキー大統領はこの新型戦車導入を受け、NATOへ余剰となるであろうポーランド軍のポーランド製PT-91戦車供与を求めています。
■新型砲弾M-339HE-MP
APFSDS弾からMP弾の時代へ即ち戦車戦闘の対象が変容しつつあるのでしょうか。

スペイン陸軍はレオパルド2主力戦車用の新型砲弾M-339HE-MP弾運用を開始しました。これはイスラエルのIMIシステムズ社が開発した戦車砲弾でHE-MPの名の通り多目的対戦車榴弾となっています。NATO標準砲弾としての規格を有するとともに、スペイン陸軍が運用するレオパルド2A6相当のL-55長砲身戦車砲にも適合する新型戦車砲弾です。

M-339HE-MP弾は中程度の装甲目標と陣地攻撃を念頭とした砲弾で、特に5km程度の射程で運用が可能といい、市街地運用を想定しています。二重鉄筋コンクリートに対し200mmを貫徹した上で内部にて作動するPDDポイント遅延信管、空中炸裂など状況に合せた信管作動を選択可能、イスラエル軍のレバノン侵攻などでの戦訓が反映されています。

APFSDS弾が対戦車戦闘に際しては重視されますが、近年では第3.5世代戦車同士の対戦車戦闘は中々発生せず、例えばT-72戦車やその改良型であるT-90等と云った脅威に対してはHE-MP弾によっても有効な打撃を与えられるとされており、一方で地域紛争への対応から多目的榴弾全般への需要が高まっている事もあり、新型砲弾開発がすすんでいます。
■アルタイ戦車用斗山製エンジン
この種の技術は日本で扱いが酷過ぎるように思うのですが囲い込みで防衛産業を保護するのではなく実質は飼い殺しにしているようで心が痛む。

トルコのアルタイ主力戦車用韓国斗山製エンジンがトルコへ到着しました。アルタイ主力戦車は韓国のK-2戦車をトルコ軍仕様として国際共同開発した主力戦車です。しかし韓国K-2戦車事態が国産エンジン開発に難航しドイツ製エンジンやトランスミッションを採用していました、しかしトルコの場合はドイツ製エンジンを搭載出来ない政治的事情が。

トルコ政府のクルド人抑圧政策によりドイツ政府はトルコへの防衛装備品供与に制限を加えており、その規制は韓国との共同開発戦車にも例外ではありません。トルコが検討したのはMTU社製Gmbh1500hpエンジンですが、この実現が不可能となると三菱重工製エンジンなどを検討しますが海外輸出を希望するトルコに対し三菱重工も難色を示しました。

韓国はK-2戦車用エンジンの国産化を断念した訳ではなく、あくまで2007年にK-2戦車試作車が開発された時点の状況であり、2020年代に入り漸く国産化の目処が立ちました。メーカーは韓国の斗山インフラコア社でDV27Kエンジンです。また韓国S&Tダイナミクスが開発したEST15K変速機もレンク社製変速機に代えて納入、開発目処が立ちました。
■ハリマウ中戦車初実弾射撃
ハリマオとはマレー語でトラの事であるという始まりのドラマ”快傑ハリマオ”舞台は何故かインドネシアでしたね。

インドネシア初の国産戦車ハリマウ中戦車は初の実弾射撃試験を成功させました。これは2022年2月24日から翌25日にかけて実施された評価試験の一環として実弾射撃が実施されたもので、西バンドン県のインドネシア軍歩兵教育センターにて実施されました。主砲はベルギーのコッカリル社製105mm砲塔に搭載されるCV105P高圧戦車砲です。

ハリマウ中戦車は戦闘重量35tと中戦車とは言ってもT-55戦車や61式戦車並の重量を有しており、インドネシアのピンダットが開発を担当、トルコのFNSSが技術協力を行い国際共同開発を行い、基本重量は32tですが増加装甲を装着することで35tとなりNATO防弾規格STANAG4569換算ではレベル5の500m先からの25mm機関砲弾に耐えるという。

今回の実弾射撃試験は1250m先の4m四方も標的に対してTPCSDS-T弾を用い実施され良好な成果を上げたという。砲弾としてはM-1061-HE対戦車榴弾にM-393A3粘着榴弾などに対応し、砲塔は自動装填装置を有しています。車体部分の設計はトルコ製装甲戦闘車の派生型で機動砲とも言い得るものですが、インドネシア戦車産業には偉大な一歩です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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