北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】イギリスのボクサー増強と東欧存在感増すパトリアAMVとピラーニャⅤ装甲車,トルコFNSSの台頭

2022-05-23 20:04:29 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 自衛隊の次期装輪装甲車が話題となる最中ではありますが今回は装輪装甲車に関する最新情報を集めました。

 イギリス陸軍はボクサー装輪装甲車100両の追加調達を決定したとのこと、これはOCCAR合弁企業が発表したものです。ボクサー装輪装甲車はARTEC合弁企業が製造を行い、これはボクサー装輪装甲車量産に特化したラインメタル社とKMWクラウスマッファイヴェクマン社の合弁会社で、OCCARが欧州でのボクサー装輪装甲車販売を仲介します。

 ボクサー装輪装甲車はモジュラー方式の装輪装甲車であり、イギリス陸軍では歩兵輸送車両と救急車及び指揮通信車の各種派生型を含め532両を調達すると2019年に契約を結んでいますが、今回の追加によりその調達数は632両となります。これはドイツ防衛産業には朗報となっていますが、同時にイギリス防衛産業にも朗報となる増産決定となっています。

 イギリス向けのボクサー装輪装甲車は合弁会社による量産方式を採用しており、主要な部品はイギリスで製造し一部部品をドイツから供給される方式となっています。この方式はライセンス生産と似ていますが、合弁会社にて製造する方式である為にライセンス料を追加する必要はなく、また合弁会社である為、今回の様に増産契約も円滑に実現が可能です。
■スロバキアがパトリアAMV選定
 自衛隊も96式装輪装甲車後継候補となっているパトリアAMVを選定したもようです。

 スロバキア政府は次期装甲車BOVとしてパトリアAMVを選定しました、この選定理由として高い性能を示すとともに自国内での製造が大幅に認められる事による失業対策という地域貢献が挙げられています。今回の次期装甲車選定は2021年末に実施された入札に基づくもので、2022年2月より実試験を経て、フィンランド製装甲車が選定されたかたち。

 パトリアAMVはモジュール方式の武装やキャビン区画の換装が可能となっている装輪装甲車であり、北欧の中立政策を堅持する為に有事の際には一国のみで巨大な脅威と戦うフィンランドの装甲車は装輪装甲車でありながら10kgまでのTNT火薬の車体下部での爆発と爆風に耐え、正面装甲は装甲戦闘車などが多用する30mm機関砲弾に耐える水準です。

 スロバキア政府は、同時に厳しい国家予算下での防衛政策を両立する為に、経済波及効果を重視している。パトリア社は欧州各国へ3000名の雇用を生んでいるとされますが、技術移転や現地生産への製造移転に柔軟であり、スロバキア国内での供給可能な部品や最終組立を実施し、対応できない部品のみを供給する姿勢が、採用への決め手となったようです。
■ルーマニアはピラーニャⅤ
 こちらも自衛隊が候補としたが試作車が納入されなかったほう、装輪装甲車が大型化しているという印象ですが対戦車火力や大口径機関砲の普及を前に今後世界のこの種の車両は大型化し取得費用も巨大化するのでしょうか。

 ルーマニアは導入するピラーニャⅤ装輪装甲車について国内生産でGDELS社と合意しました。これは3月15日にジェネラルダイナミクルヨーロピアンランドシステムズ社とルーマニアのルーマニアROMARM社が発表した提携の内容です。ルーマニアは冷戦時代のソ連の支援を受けソ連製装甲車ルーマニア軍仕様を製造していますが老朽化が進んでいる。

 ピラーニャⅤについてルーマニア軍は2018年に派生型6系統を含む227両を調達発表しており、2022年までに最終組立を行った60両の車両が既にルーマニア軍へ引き渡されていますが、今回の協定はその現地生産部品の度合いを高めます。ルーマニア軍は3万5800名規模、装甲車としてBMP-2の独自仕様であるMLI-84装甲戦闘車を140両装備しています。

 スイスのモワク社が開発したピラーニャ装甲車シリーズは堅実な設計と安価な車体で知られていますが、車幅が2.5mに抑えられていたピラーニャⅠに対してピラーニャⅢからは車体がかなり大型化しており、ピラーニャⅣからは装軌式装甲戦闘車並の重量となっていまして、今回のピラーニャⅤ装輪装甲車については車格が極めて大型となってゆきました。
■マレーシアのFNSS装甲車
 従来型の選択肢に近い車両はいまやトルコのような新興工業国が生産している印象です。

 マレーシア軍は次期装甲車としてトルコFNSS社製装輪装甲車派生型を選定しました。マレーシア陸軍はドイツ製コンドル軽装甲車とベルギー製シブマス軽装甲車の後継車両を選定していました。コンドル軽装甲車はドイツ製多機能トラックであるウニモグトラック車体を応用した万能ですが箱型装甲を載せました軽装甲の四輪駆動装甲車となっています。

 ベルギー軍のシブマス装甲車はベルギーの輸出用装甲車でコッカリル社製90mm低圧砲を搭載した六輪式の偵察装甲車で、共に低烈度紛争においては大きな威力を発揮するものの、コンドル軽装甲車については過去1990年代にボスニアPKO任務派遣に際し脅威に対し軽装甲過ぎる点が問題視され韓国からKIFV装甲車を緊急調達するという過去もありました。

 トルコFNSS社製装輪装甲車とは、PARS装輪装甲車シリーズと思われ、トルコからはPARS四輪駆動型と六輪駆動型が提案されています。六輪駆動型は箱型車体を有するAPC型で歩兵輸送や偵察任務に用いられ、四輪駆動型はMRAP耐爆車両構造とAPCの中間に近い構造であり、自走対戦車ミサイル等ウェポンキャリアーとして運用する事が可能です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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サル痘拡大兆候-天然痘類似症状の感染症へWHO世界保健機関が警鐘,致死率は1~10%-情報収集強化呼び掛け

2022-05-23 07:00:21 | 防災・災害派遣
■臨時情報-サル痘関連情報
 日本では指定感染症四類に区分される危険な感染症が欧州や北米を中心に流行の徴候があるとのこと、本日の朝の臨時情報はこの点について。

 WHOは“サル痘”という天然痘によく似た症状を引き起こす感染症の流行兆候について、警戒態勢の強化を提唱しました。これは欧州や北米地域においてサル痘とおもわれる感染事例が徐々に増大している事を受けてことで、各国保健機関に対し患者の情報把握と感染者と接触した人の迅速な追跡体制を強化するよう呼びかけたものです。そのサル痘とは。

 サル痘とは、1958年に初めて発見されたもので幾度か人類を滅亡のふちまで追いやった天然痘とよく似た症状を発症したカニクイザルが1958年に確認されたもの、この確認はポリオワクチン製造への情報収集が発端です。1970年にはコンゴ民主共和国において数万規模の感染が確認され、熱帯雨林などでげっ歯類からサルへ感染拡大したものがヒトに感染へ。

 天然痘、これは上記の通り古代から中世において幾度も感染拡大を引き起し、その都度人類を滅亡のふちに追いやり、日本などは奈良時代の感染拡大が一時的に律令制度を崩壊に追いやりました、その最たる懸念は“空気感染”することで、COVID-19のマイクロ飛沫感染と異なり、疱瘡の膿が乾燥し空気中に拡散する事で数百m先まで感染すりという。

 天然痘は、ジェンナーの種痘に代表される予防法の確立により再度人類を滅亡させ得るリスクとはなっていません、そしてサル痘の予防にも種痘が有効と考えられるのですが、天然痘の根絶により40年近く前に日本では種痘が終了しており、欧州やアメリカでも同様の状況があるのですね、天然痘と似た症状、大丈夫なのでしょうか。しかしサル痘とヒトは。

 終末宿主である、要するにサル痘のヒトへの感染は感染拡大における終着点ではないかというものが厚生労働省の“感染症法に基づく医師及び獣医師の届け出について-サル痘”での分析です、これは媒介原となる宿主はネズミなどのげっ歯類であり、ヒト-ヒト感染は発生するものの主たる感染源はげっ歯類であり、日常生活では基本的に感染しえないという。

 致死率は最大で10%、CIVID-19デルタ株の五倍程度ですが、概ね1%程度で推移しており、CIVID-19オミクロン株の20倍以上ですが、COVID-19原種株と比較すれば同程度かやや上回る程度、そしてサル痘が現段階ではヒト-ヒト感染はまだ主流ではありません、感染力が上昇する様な変異は未だ確認されていませんが、要注意、という水準なのでしょうね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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