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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】百里基地航空祭二〇一二【05】F-4ミッシングマンフォーメーションフライト(2012-10-20)

2022-05-08 20:12:34 | 航空自衛隊 装備名鑑
■3.11犠牲者を悼む大空
 百里基地は北海道沖を南下するソ連ロシア機への首都防空の要であるとともに、そして基地の所在する茨城県は鹿島灘の太平洋に面しています。

 追悼フライト、ミッシングマンフォーメーションフライトともいう四機編隊にて基地上空に飛来し、その内の一機が上空へ急上昇してゆく編隊飛行です。ここ百里基地は茨城県、そして日本海軍の百里原飛行場がその始まりであり、茨城県は福島県に隣接しています。

 東日本大震災の翌年に行われた航空祭です、ここ百里基地はRF-4戦術偵察機を運用している全国で唯一の基地ですので、大規模災害に際しては最初に離陸し情報収集にあたります、その偵察機がフィルムカメラを採用しているので現像に時間がかかるのが難点なのだけど。

 大規模災害、現在ウクライナで第三次世界大戦への導火線と云うべき状況が火花を散らしている状況では若干まだ災害の方が猶予がありそうに見えてくるのですが、それでも戦術偵察機、そして今は観測ヘリコプターも全廃されている中で大丈夫なのか、と思うのです。

 RF-4戦術偵察機の後継に航空自衛隊はRQ-4無人偵察機を採用しましたが、これも広範囲を長時間に渡り情報収集可能という優れた航空機なのですが、東京から大阪まで最短10分強で到達できる超音速戦闘機を用いた戦術偵察機、急ぎの場には必要だったともおもう。

 次の災害は待ってくれるのだろうか、現代であれば戦闘機に搭載できる偵察ポッドでリアルタイムの画像伝送できる装備は国際市場に複数が存在します、日本は東芝が開発に失敗して後に戦術偵察機というものの選択肢が無くなったように見えるのだが大丈夫なのか。

 RQ-4が一旦離陸するならば被災地の情報は持続的に入るのかもしれませんが、高高度を飛行するとはいえ旅客機との飛行管制をRF-4のように素早く展開できるのか、そもそも機数が限られるRQ-4はスクランブルのように発進できるのか、不安が残るのです。災害の際に。

 ファントム、性能面では2010年代にはしかしかなり厳しい水準にありましたが、今となっては懐かしい戦闘機です。いや、後継機のF-35がもう少し早く決まっていれば、偵察ポッドだけでもデータリンク可能な新型に切り替えて、残るF-4を全部偵察機に出来たとも。

 航空自衛隊が採用する前にアメリカ海軍が空母艦載機として開発したF-4ファントム、正確には空母艦載機仕様ではなく航空自衛隊はアメリカ空軍仕様のF-4Eを元に日本仕様としたものがF-4EJです。この機体は設計当時、合理的である考え方で複座となっています。

 ファントムの優れている部分は無理に自動化しようとせず、二人の操縦要員に分担させることで単座戦闘機であるデルタダートに勝利しました。空母艦載機は二人乗り、アメリカはF-14戦闘機、通称トムキャットでも同様の設計思想を採用しているのが興味深いですね。

 デルタダートの単座と一方、ファントムの複座、無理に自動化しないという発想は、マンパワー依存の運用が前提といえるものでして、これは徐々に自動化が進みますと影響が顕在化してゆきます。ファントムの後継機はF-35ライトニングですが、自動化が凄い事に。

 F-35は整備員がタブレット端末を携帯して機体周囲で整備を開始しますと自動で同調して整備箇所を画像にて示すとともに予備部品をこれも自動で補給処に申請します、これがF-4は全部手作業という時間も手間もかかるものとなっています。人数が居れば平気なのだが。

 いやF-15イーグルでさえ点検部分は前部脚部の内側に自動表示装置があり、緑ランプと赤ランプを見分けて赤ランプの点灯している番号の点検ハッチを開いて交換モジュールと差し替えることで電子整備などは自動化、F-15でも列線整備はかなり省力化されています。

 しかしF-4では250ほどある点検ハッチを一つ一つ手動で整備員が開き目視にて端子に異常な煤の付着はないか、熱を持っていないかを確認するという、マンパワー依存の機体となっています、このために列線整備だけでも大量の人員が必要で、なにしろ手作業が多い。

 これが現場の負担となっていたのですね。ファントムはよい戦闘機、これは間違いはありません、実際、ヴェトナム戦争では大活躍しましたし、イギリスやドイツはじめ欧州に大量供与されたファントムは強力な抑止力となり、第三次大戦の勃発を、阻止しましたし。

 実際ファントムを運用している長い期間にわたり日本も周辺国から軍事攻撃を受けていません。ただ、運用する側にたちますと、ないしろ1981年からレーダーを一人ですべて運用できるほどに自動化されたイーグルを装備している航空自衛隊の視点からは、厳しい。

 F-15と比較した場合でも、操縦も整備も、あらゆるめんで古い、といえるのかもしれません。ファントム飛行隊の定数は24機、交代要員を考えずに操縦要員だけを確保した場合で操縦士が48名必要です、なにしろ一人でも飛べる単座戦闘機の複座型と2倍も違います。

 ファントムは二人居ないと能力が発揮できない前提での設計なのですからね。三菱重工でのライセンス生産、ファントムは三菱重工が95%のライセンス生産を実施したことで長期間の運用が可能となりました、なにしろアメリカでは制空戦闘機としては早々と交代した。

 アメリカでは、制空戦闘機として陳腐化したのちワイルドウィーゼルとして防空制圧に活躍しましたが湾岸戦争を最後に退役しています。ワイルドウィーゼル、対レーダーミサイルを搭載し、本格的な航空打撃戦に先立ち自ら囮となり敵地対空ミサイル圏に飛び込む。

 ファントムはワイルドウィーゼル任務に用いられただけでも優秀な特性があるといえます、敵地対空ミサイル圏内をのんびりと飛行し、撃ちあがってきたミサイルを欺瞞と電子妨害で躱しつつ急降下し敵地対空ミサイル陣地を攻撃破壊する、そんな任務に投じるのだから。

 ただ、世界中に供給されたファントムはその後も現役で、最強では無かったが強力な戦闘機ではあった、無理にロールスロイス製エンジンを搭載したイギリス軍機を除き長く運用されています。この背景にはファントムが古い設計であったことが逆に寄与した、とも。

 世界初のソリッドステート式コンピュータを搭載したファントム、ソリッドステートとは要するに半導体ですが、遙か後に北海道函館に亡命したソ連製MiG-25は真空管を採用していましたが、ファントムは半導体を、EMP電磁パルスシールドと共に採用していたのです。

 しかし1950年代の半導体性能はたかが知れていますし何より巨大でした、これが逆に旧式となったコンピュータを新型へ置き換えるための空間的余裕となったのかもしれません、同じことは同時期に開発されたホーク地対空ミサイルにもあてはまるのかもしれませんね。

 ホークミサイルも、草創期の電子計算機を積み込むために直径35cmと巨大な演算装置を組み込む大きさを有していたために、後に新型の誘導装置などにも対応、2020年代でも日本を始め数多くの諸国で第一線運用に耐える能力を維持しつつ運用中です。F-4と似ています。

 航空自衛隊のファントムは2021年に運用を終了しましたが、防衛出動などに用いられる事は無く、RF-4は災害派遣に活躍、F-4は日本に戦争の可能性が及ぶのを遠ざけ抑止力として威力を発揮しました。後継機となるF-35もその偉功を引き継げるように切に願うのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌-岐阜,岐阜基地北門前国道21号線沿いで頂く美味しい御寿司

2022-05-08 18:16:11 | グルメ
■榛名さんの総監部グルメ日誌
 榛名さんの総監部グルメ日誌と銘打った割には中部方面総監部も舞鶴地方総監部も遠い岐阜の話題をひとつ。

 自衛隊関連行事を撮影した際には、ご当地鮨をお勧めしている行事予定紹介の話題を毎週のように掲載していましたが、帰港が1500時前後となる展示訓練や体験航海ではお昼の営業時間が終わってしまうものの、駐屯地祭ですと装備品展示を巡った先でも間に合います。

 戦闘機撮影、さて航空祭が中止となって久しいものでCOVID-19感染拡大前、2019年の那覇航空祭が実質最後の航空祭となっています、するとなんとか平日に休みを確保して、基地周辺で発着機を撮影する事となりますが、昼時にはサイレントタイムが設定されている。

 初寿司、岐阜県内に入りますと国道21号線沿いに散見する御寿司屋さんです。そして岐阜基地にも北門近くに一軒ありまして、ランチタイムにはお手頃な握りずしを頂けるという。もちろん、ランチタイムですし車移動、お酒は呑めないのですが、それでもどうだろう。

 鱧までとは豪勢だ。この岐阜基地周辺は各務原という山を挟んで北に長良川、そして基地の直ぐ南に木曽川が流れているのですが、鰻も美味しい事で知られている、そして長良川といえば鮎で知られた清流という事なのですが、魚との文化は鮨でも鮮やかに広がるもの。

 鮪からゆくか鰹を突くかと考えているところでひとつあがりを嗜んで落ち着く。落ち着かねばならない、というのは私事ですがこの時、カメラのバッテリーが上がりかけ、既に赤ランプを騙しだまし戦闘機を撮影していたのですね、もう、数枚しか撮影できそうにない。

 鉄火巻と長芋巻も艶やかな風情を放っていますが、個数は多いので先ずこちらから頂くかな、と箸を進めます。そしてしゃりりと自然薯の歯応えを愉しんだのちに、魬の白身に旨みを湛えた部分を頂き、なんというかこの順番を選ぶのは囲碁でも打っているような感じ。

 赤だしが届きました。赤だし、八丁味噌の味噌汁にはなんと海老さんの御頭が頭頂を覗かせているではありませんか、これ出汁が出るのですよね。しかし、この海老さんが来るのならば先に握りの海老さんを味わっておくべきだったか、こう迷うものでも愉しいのだ。

 蕎麦が冷たい出汁に浸りつつ〆にとやってきました。そう、〆があるのですね。ただ、麺を箸で摘まんだ様子を撮影しようとしたところで、バッテリーは無くなりました、冷菓のデザートも来たのですが。また撮影する為に来てもいいよね、その満足感を愉しめました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ロシア対独戦勝記念日明日5月9日に迫る-モスクワ戦勝記念パレード予行と当日プーチン大統領演説への関心

2022-05-08 07:02:27 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 本日は母の日なのですがロシアは明日重要な日を迎えることとなる。

 対独戦勝記念日が明日5月9日に迫っています。ロシアではモスクワ戦勝記念パレードが準備される中、ロシア連邦建国後重要な祭日となっている対独戦勝記念日では、プーチン大統領が重大発表を行うのではないかと目されていました。一方、ロシア軍による侵攻が続くウクライナでは、NATO加盟国よりPzH-2000自走榴弾砲などの供与が開始されます。

 PzH-2000自走榴弾砲は陸上自衛隊の99式自走榴弾砲と同じ長砲身52口径の155mm榴弾砲を有し、極めて長い射程と正確な射撃精度を発揮可能です。フランスも52口径のカエサル装輪自走榴弾砲を供与しており、今後これら装備の訓練が完了しますと数週間後には第一線での運用が可能となり、ロシア軍侵攻部隊は今後更なる苦戦が予想されるところです。

 対独戦勝記念日が一つの区切りとされたのは、それまでSWIFT除名を筆頭に厳しい経済制裁に曝されるロシア経済が崩壊する為、それ以上は考えられないという論拠ではあったのですが、ロシア経済は工業生産などが崩壊の瀬戸際に追い詰められながら崩壊には至っていません、これは9月2日の対ファシスト戦勝記念日まで長期化するのかもしれません。

 モスクワ戦勝記念パレードについて、7日までに予行が実施されていますが、その参加車輛は例年と比較し大きく減少しており、ウクライナ侵攻には参加していないT-34戦車や最新のT-14アルマータ戦車は予行に参加しているものの、戦車の車列などは例年と比較し圧縮気味であり、心なしかパレードが本業に思えるロシア軍も行進に乱れがみえていました。

 モスクワ戦勝記念パレード予行、一方で今回のウクライナ侵攻には参加していない核戦力などは例年通りの参加と見られ、結果的に我が国始め周辺国にはロシア軍の核戦力誇示に直面する事となるのかもしれません。そして式典に際し、プーチン大統領の訓示が予定され、戦勝を一方宣言するのか、特別軍事作戦から正式開戦を宣言するか、関心は尽きない。

 パレード当日、もう一つの関心事はウクライナ戦線視察中にウクライナ軍砲撃を受けたと一部報道があるロシア軍のゲラシモフ参謀総長です。ロシア制服組トップですが、その視察の際に受けた砲撃で負傷したとの未確認報道があり、プーチン大統領の隣に健在な姿を見せるのか、どうなのか。見るべきウクライナでの戦果の無い記念日となるのは確かです。

 5月9日はロシアにとり節目となるべき日でしたが、目立つ戦果はありません、出口戦略はどうなるのでしょう。キエフ包囲は断念し北部戦線は完全撤退、同じくハリコフ包囲も中止、マリウポリは残存部隊がこもる製鉄所の制圧めどさえ立たず、ミサイル巡洋艦モスクワ沈没を筆頭にロシア軍の損害だけが目立つ状況となっており、核で脅す情けない状況だ。

 出口戦略、例えば5月9日に一方的に“ロシアは勝利した”“ネオナチを放逐した”“作戦が完了したので撤収を開始する”と発言し、実際に撤収を開始するならばこれ以上損害はありませんが、現時点でロシア軍がウクライナで失った戦車や火砲と航空機や装甲車は、今後長期間無ければ補填できない程に数の損耗を重ねています。長期戦は厳しいといえる。

 出口戦略を提供する国はどこにもなく、ロシア軍は泥沼に陥っていますが、このまま消耗を重ねれば戦術核兵器以外、ロシアはウクライナ以外との諸国と緊張の際に示す兵器が枯渇しかねません、他方で、ロシア政府のウクライナへの、現政権崩壊や体制のロシア衛星国化等は受け入れる余地などなく、核へ近づく現状からの出口戦略が示されるかも関心です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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