■いきなり宇宙といわれても
防衛費がGDP1%枠から政治決定によりGDP2%と倍増される事となりましたが、それ以上に多くの任務を政治が課した為に予算不足は当面続く印象があります。
航空宇宙自衛隊への航空自衛隊からの改称が話題となっています、政府は今月中旬にも成立させる安全保障基本方針へ盛り込むとのことで、航空自衛隊に宇宙作戦能力を強化させるべく名称を変更させるとのこと。実現しますと1954年の自衛隊発足以来初の名称変更となり、航空自衛隊は航空宇宙自衛隊として、また創設一周年から創設年度が始まります。
宇宙、しかし航空宇宙軍という組織は世界中に存在します、アメリカは逆に陸海空軍と海兵隊に加え宇宙軍を独立させていますが、イスラエルやロシアは空軍を航空宇宙軍へ改称、フランスも続き人工衛星など多数を運用する国にはもはや宇宙分野でのキラー衛星など脅威情報監視や、逆に衛星攻撃兵器の運用などは必要な任務となっている証左ともいえる。
ただ、問題は航空自衛隊の大規模な組織改編を行うのか、という疑問符です。航空自衛隊の作戦基盤は航空方面隊であり、その上級司令部として航空総隊がおかれています。宇宙空間は那覇の南西航空方面隊や春日の西部航空方面隊、入間の中部航空方面隊や三沢の北部航空方面隊といった管轄との線引きが今一つわからないのです。宇宙方面隊を創るのか。
航空宇宙自衛隊といいますと、不審な宇宙船が接近したのを感知して下地島基地からASAT対衛星兵器を搭載したF-15戦闘機がスクランブル発進する、こうした運用を思い浮かべる方もいるのかもしれませんが、実質、宇宙空間は将来戦闘に重要な位置を占める為に所掌する部隊が必要なのですが、陸海空自衛隊を見渡すと航空自衛隊、との帰結がありました。
名称を変えるだけではなく、踏み込んだ組織改編を行う覚悟はあるのか、疑問符はこうした点でも感じるのですね。前述の通り、宇宙任務は北部や中部に西部という関係はりません、宇宙条約により衛星軌道には領空の主権が及ばない為です。宇宙任務に取り組むならば、航空総隊の組織体系から、覚悟が必要となります。陸海空自衛隊との運用さえも。
アメリカ宇宙軍を挙げますと、9個の部隊があり、ペトリオットミサイルを運用する第1宇宙旅団、宇宙の人工衛星を地上から観測する第2宇宙部隊、宇宙での電子戦を担当する第3宇宙部隊、弾道ミサイル攻撃を警戒する第4宇宙部隊、宇宙空間の通信と衛星指揮を担う第5宇宙部隊、サイバー戦に当たる第6宇宙部隊、衛星情報収集を担う第7宇宙部隊など。
宇宙軍の実戦部隊は衛星情報戦を担う第8宇宙部隊、軌道軍として宇宙戦争を担当するのが第9宇宙部隊、そしてバンデンバーグ宇宙基地のロケット施設を担う第30宇宙旅団などが当たります。一方でICBM大陸間弾道弾の運用は空軍が所管したままとなっていまして、核戦争などに際してはミサイル攻撃の警報などで空軍と宇宙軍は協力する関係となります。
統合運用が充分に行われていない日本の自衛隊の場合、宇宙任務を一つの自衛隊組織に統合した場合は、例えば海上自衛隊のミサイル防衛ではSM-3迎撃ミサイルは衛星軌道に充分届くものの、管轄外という縦割り組織に阻まれる懸念があり、先ずは統合任務部隊を編成し、これを常設機構とした上で宇宙を所掌範囲としなければ、問題が生じるよう懸念する。
イージス艦のSM-3迎撃ミサイルはロフテッド軌道により周回衛星軌道よりも高い軌道を描いて落下するものを迎撃しますし、イージス艦のSPY-1レーダーと続いて導入されるSPY-7レーダーの方が軌道上の脅威を検知するには、少なくとも航空自衛隊の防空監視レーダーよりも適しています。すると先ずは宇宙任務を囲いこむよりも共有が必要となる。
海上宇宙自衛隊に航空宇宙自衛隊と共に改称して海上自衛隊のイージス艦などの宇宙関連任務も海上自衛隊が独自に運用できるようになればよいのではないか、こう皮肉を言いたくなりますのは、宇宙分野の任務は航空自衛隊の専管任務ではなく、寧ろ地球規模で部隊を現在進行形で展開させる海上自衛隊の所掌範囲も多いという事で、囲い込みは逆効果だ。
統合任務部隊から始めなければ宇宙任務は難しいのではないか。航空自衛隊の宇宙作戦群は、現在監視任務としまして、通信衛星などに脅威を及ぼすキラー衛星を警戒し、例えば我が国の管制する人工衛星に不審な人工衛星が接近した場合は、回避行動を執る為の情報を収集する、など施策を行っています。しかし、航空自衛隊全体で宇宙部隊はまだ少ない。
サイバー部隊、もう一つ重要なのは宇宙作戦は結局自衛隊がスペースシャトルの様な装備を持つわけではない為、衛星通信を介して電子空間の戦いも主柱となるのです、結果的にサイバー戦を担う事ともなるのですが、これこそ統合任務部隊として陸海空で運用せねば人員面で対応できません。宇宙が重要なのはわかる、しかしまだその前の段階に居るのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
防衛費がGDP1%枠から政治決定によりGDP2%と倍増される事となりましたが、それ以上に多くの任務を政治が課した為に予算不足は当面続く印象があります。
航空宇宙自衛隊への航空自衛隊からの改称が話題となっています、政府は今月中旬にも成立させる安全保障基本方針へ盛り込むとのことで、航空自衛隊に宇宙作戦能力を強化させるべく名称を変更させるとのこと。実現しますと1954年の自衛隊発足以来初の名称変更となり、航空自衛隊は航空宇宙自衛隊として、また創設一周年から創設年度が始まります。
宇宙、しかし航空宇宙軍という組織は世界中に存在します、アメリカは逆に陸海空軍と海兵隊に加え宇宙軍を独立させていますが、イスラエルやロシアは空軍を航空宇宙軍へ改称、フランスも続き人工衛星など多数を運用する国にはもはや宇宙分野でのキラー衛星など脅威情報監視や、逆に衛星攻撃兵器の運用などは必要な任務となっている証左ともいえる。
ただ、問題は航空自衛隊の大規模な組織改編を行うのか、という疑問符です。航空自衛隊の作戦基盤は航空方面隊であり、その上級司令部として航空総隊がおかれています。宇宙空間は那覇の南西航空方面隊や春日の西部航空方面隊、入間の中部航空方面隊や三沢の北部航空方面隊といった管轄との線引きが今一つわからないのです。宇宙方面隊を創るのか。
航空宇宙自衛隊といいますと、不審な宇宙船が接近したのを感知して下地島基地からASAT対衛星兵器を搭載したF-15戦闘機がスクランブル発進する、こうした運用を思い浮かべる方もいるのかもしれませんが、実質、宇宙空間は将来戦闘に重要な位置を占める為に所掌する部隊が必要なのですが、陸海空自衛隊を見渡すと航空自衛隊、との帰結がありました。
名称を変えるだけではなく、踏み込んだ組織改編を行う覚悟はあるのか、疑問符はこうした点でも感じるのですね。前述の通り、宇宙任務は北部や中部に西部という関係はりません、宇宙条約により衛星軌道には領空の主権が及ばない為です。宇宙任務に取り組むならば、航空総隊の組織体系から、覚悟が必要となります。陸海空自衛隊との運用さえも。
アメリカ宇宙軍を挙げますと、9個の部隊があり、ペトリオットミサイルを運用する第1宇宙旅団、宇宙の人工衛星を地上から観測する第2宇宙部隊、宇宙での電子戦を担当する第3宇宙部隊、弾道ミサイル攻撃を警戒する第4宇宙部隊、宇宙空間の通信と衛星指揮を担う第5宇宙部隊、サイバー戦に当たる第6宇宙部隊、衛星情報収集を担う第7宇宙部隊など。
宇宙軍の実戦部隊は衛星情報戦を担う第8宇宙部隊、軌道軍として宇宙戦争を担当するのが第9宇宙部隊、そしてバンデンバーグ宇宙基地のロケット施設を担う第30宇宙旅団などが当たります。一方でICBM大陸間弾道弾の運用は空軍が所管したままとなっていまして、核戦争などに際してはミサイル攻撃の警報などで空軍と宇宙軍は協力する関係となります。
統合運用が充分に行われていない日本の自衛隊の場合、宇宙任務を一つの自衛隊組織に統合した場合は、例えば海上自衛隊のミサイル防衛ではSM-3迎撃ミサイルは衛星軌道に充分届くものの、管轄外という縦割り組織に阻まれる懸念があり、先ずは統合任務部隊を編成し、これを常設機構とした上で宇宙を所掌範囲としなければ、問題が生じるよう懸念する。
イージス艦のSM-3迎撃ミサイルはロフテッド軌道により周回衛星軌道よりも高い軌道を描いて落下するものを迎撃しますし、イージス艦のSPY-1レーダーと続いて導入されるSPY-7レーダーの方が軌道上の脅威を検知するには、少なくとも航空自衛隊の防空監視レーダーよりも適しています。すると先ずは宇宙任務を囲いこむよりも共有が必要となる。
海上宇宙自衛隊に航空宇宙自衛隊と共に改称して海上自衛隊のイージス艦などの宇宙関連任務も海上自衛隊が独自に運用できるようになればよいのではないか、こう皮肉を言いたくなりますのは、宇宙分野の任務は航空自衛隊の専管任務ではなく、寧ろ地球規模で部隊を現在進行形で展開させる海上自衛隊の所掌範囲も多いという事で、囲い込みは逆効果だ。
統合任務部隊から始めなければ宇宙任務は難しいのではないか。航空自衛隊の宇宙作戦群は、現在監視任務としまして、通信衛星などに脅威を及ぼすキラー衛星を警戒し、例えば我が国の管制する人工衛星に不審な人工衛星が接近した場合は、回避行動を執る為の情報を収集する、など施策を行っています。しかし、航空自衛隊全体で宇宙部隊はまだ少ない。
サイバー部隊、もう一つ重要なのは宇宙作戦は結局自衛隊がスペースシャトルの様な装備を持つわけではない為、衛星通信を介して電子空間の戦いも主柱となるのです、結果的にサイバー戦を担う事ともなるのですが、これこそ統合任務部隊として陸海空で運用せねば人員面で対応できません。宇宙が重要なのはわかる、しかしまだその前の段階に居るのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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