■任務達成へのアプローチ
自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略で観艦式の写真説明をごまかす第三回です。
シーパワーの概念が中国の接近拒否領域阻止とアメリカのマルチドメインドクトリン、これにより大きく変容しようとしている。そのために自衛隊の任務はシーレーン防衛など代わりはしないのですが、その任務達成へのアプローチは変容を強いられます。
射程の長いミサイルを爆撃機や潜水艦から撃ち合うという意味だろう要するに、という指摘とともにもう一つ、これは冷戦時代にもソ連のドクトリンとして存在した、という反論が加わるのかもしれませんが、問題はその射程と数が2020年代相応ということ。
砲台に軍艦はかなわない、というのは第一次世界大戦中のガリポリ半島上陸作戦などでイギリスの戦艦3隻があっさりトルコ軍に撃沈されて以来の現実であり、いや1905年日露戦争の旅順要塞攻防戦などでも戦艦では対抗できないから地上攻略を強いられた。
要塞の理念はこういうものがありますが、しかし現代は、要塞だけでシーパワーそのものを揺るがすほどにその射程が延伸しているという点にこそ問題があり、第二次大戦中にイギリスとドイツの火砲がドーバー海峡を封鎖できなかった時代とは根本が違う。
専守防衛の理念、これは憲法改正を経なければ不変であるにしても、専守防衛と接近拒否領域阻止の中国ドクトリンとの両立となりますと、先ずアメリカ空母部隊をも飽和攻撃する規模のミサイル攻撃からシーレーンを守りきれるのか、という問題となる。
限定戦争と全面戦争、するとケネディ政権時代の段階的アプローチ戦略のように、接近拒否領域阻止のミサイル飽和攻撃に至らない段階でのシーレーン防衛を考えるべきなのかという視座を、思考に含めるべきなのかもしれませんが、これはこれで難しさがある。
アイゼンハワー政権時代の大量報復ドクトリン、一回でも核兵器が使われれば全面核戦争に応じることで、いやアイゼンハワー大統領自身は核戦争回避を模索していたので、一歩も譲らない態度を示すことが核戦争を防ぐ抑止力と考えていたものなのですが。
ケネディ政権の段階的アプローチは核兵器が使われないかぎりは自らも使わず、限定核戦争の場合は相手の使用した規模に応じた使用としたうえでICBM大陸間弾道弾を一斉に撃ち込んでくるような状況以外では第三次世界大戦は回避しようというものでした。
大量報復ドクトリン、難しいのは日本の反撃能力整備が結局のところこちらに、日本は核兵器を持ちませんので、こう構造の共通点が生まれてしまう点にありまして、言い換えれば本土ミサイル攻撃を含む時点でアメリカのマルチドメイン戦略にも危うさが。
板挟みにある、日本の平和政策が試されるというのは、そうたとえば第一次世界大戦において中立国のベルギーがドイツ軍のフランス侵攻の接近経路として利用され中立が破られたように、日本は接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンに挟まれていて。
陸上防衛に関してその大量報復ドクトリンとの類似性を示しますと、やはりAH-64D戦闘ヘリコプター廃止やMLRSの段階的廃止、90式戦車の退役開始と本土戦車部隊全廃など、段階的アプローチを踏めない装備体系にみずから陥っている現状を指摘したい。
日本版段階的アプローチ戦略のための、戦争を小規模の撃ちに全力で押しとどめる装備体系を構築しなければ、冗談抜き出相手が限定侵攻として仕掛けた戦争を全面戦争に拡大させるという、日中戦争の全面戦争拡大の歴史さえ踏襲しかねないことになります。
海上防衛は、この場合どのように応じるべきか。ミサイル防衛の延長として接近拒否領域阻止の枠組みに対してイージス艦で応じるという選択肢はあります、が、果たして迎撃しきれるのだろうかという疑問があります、なにしろ中国ロケット軍のミサイルは。
2010年の段階では沖縄本島まで届く准中距離弾道弾が150発で先島や台湾まで届くミサイルが600発、と見積もられていましたが、いまは台湾をねらうミサイルが4000発、ここに巡航ミサイルがくわわる。日本本土へと毒ミサイルも第一撃で2500発ほど。
難しく考えずに言い換えるならば、接近拒否領域阻止の概念を日本も踏襲するものが、結局日本国内でアメリカが構想するマルチドメインドクトリンでもあると解釈が成り立つわけで、すると射程がのびた以外は専守防衛の概念を維持しているというわけで。
しかし、射程が延びることこそが専守防衛の逸脱になるのではない加藤反論も成り立つわけで、これはいわば、韓国と北朝鮮の陸上国境が52口径155mm榴弾砲だけで反撃能力のような射程になっている状況と、日本と中国の射程延伸が重なっただけ、とも。
海上防衛、すると、このお互いの射程内、しかし核兵器と異なりほぼほぼ使われる前提の兵器の射程内において海上防衛というものを再構築することとなるのかもしれません。そして確実であるのは、現在の方式と装備体系には限界があるということ。
もがみ型護衛艦の建造とともにF-35B運用能力いずも型護衛艦付与と、厳しい予算的制約下でも自衛隊、いや日本という国家そのものが地政学上はこの、接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの板挟みという状況に陥っていることだけは変わりない。
中立国という視点を挙げれば、たとえば第一次世界大戦においてベルギーの中立政策は、ドイツ軍がフランスに侵攻するさいにドイツフランス国境はフランス軍の防備が堅いためにベルギーを通過するというかたちであっけなく中立は踏みにじられまして。
NATO本部がベルギーのブリュッセルに置かれている背景の一つはこうした中立政策の変更によるものなのでしょう。ただ、日本の場合は、痛い目にあったので中立政策を見直す、という状況まで待つことは、恐らく比類のない打撃を一度だけ容認することに。
問題はシーレーン防衛という現実を直視することです。接近拒否領域阻止のミサイル網は変な話相模湾まで延びている状況ですので、鈴木政権時代の1000浬シーレーン防衛という、当時の政権対外公約、先ずこれを実行することからむずかしくなっています。
有事の際には先ず佐世保基地や呉基地と舞鶴基地、恐らく横須賀基地まで攻撃される。護衛艦は退避できるのかもしれませんが補給施設などが攻撃を受けると再補給の問題が生じます、これはロシア軍がセヴァストポリ軍港で突きつけられているようなもの。
ミサイル防衛、ペトリオットPAC-3-MSEの性能はある程度証明されていますので、准中距離弾道弾の攻撃を受ける佐世保については、航空自衛隊のPAC-3-MSEを集中させることである程度守れる可能性がありますが、問題は中距離弾道弾の攻撃を受ける横須賀など。
ペトリオットPAC-3-MSEを航空自衛隊が海上自衛隊基地防衛のためだけに集中する必然性は低いものですから、海上自衛隊が基地防衛をどう考えるかということも突きつけられるのでしょうが、まず日本の防衛はこの段階まで厳しい状況であると認識が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略で観艦式の写真説明をごまかす第三回です。
シーパワーの概念が中国の接近拒否領域阻止とアメリカのマルチドメインドクトリン、これにより大きく変容しようとしている。そのために自衛隊の任務はシーレーン防衛など代わりはしないのですが、その任務達成へのアプローチは変容を強いられます。
射程の長いミサイルを爆撃機や潜水艦から撃ち合うという意味だろう要するに、という指摘とともにもう一つ、これは冷戦時代にもソ連のドクトリンとして存在した、という反論が加わるのかもしれませんが、問題はその射程と数が2020年代相応ということ。
砲台に軍艦はかなわない、というのは第一次世界大戦中のガリポリ半島上陸作戦などでイギリスの戦艦3隻があっさりトルコ軍に撃沈されて以来の現実であり、いや1905年日露戦争の旅順要塞攻防戦などでも戦艦では対抗できないから地上攻略を強いられた。
要塞の理念はこういうものがありますが、しかし現代は、要塞だけでシーパワーそのものを揺るがすほどにその射程が延伸しているという点にこそ問題があり、第二次大戦中にイギリスとドイツの火砲がドーバー海峡を封鎖できなかった時代とは根本が違う。
専守防衛の理念、これは憲法改正を経なければ不変であるにしても、専守防衛と接近拒否領域阻止の中国ドクトリンとの両立となりますと、先ずアメリカ空母部隊をも飽和攻撃する規模のミサイル攻撃からシーレーンを守りきれるのか、という問題となる。
限定戦争と全面戦争、するとケネディ政権時代の段階的アプローチ戦略のように、接近拒否領域阻止のミサイル飽和攻撃に至らない段階でのシーレーン防衛を考えるべきなのかという視座を、思考に含めるべきなのかもしれませんが、これはこれで難しさがある。
アイゼンハワー政権時代の大量報復ドクトリン、一回でも核兵器が使われれば全面核戦争に応じることで、いやアイゼンハワー大統領自身は核戦争回避を模索していたので、一歩も譲らない態度を示すことが核戦争を防ぐ抑止力と考えていたものなのですが。
ケネディ政権の段階的アプローチは核兵器が使われないかぎりは自らも使わず、限定核戦争の場合は相手の使用した規模に応じた使用としたうえでICBM大陸間弾道弾を一斉に撃ち込んでくるような状況以外では第三次世界大戦は回避しようというものでした。
大量報復ドクトリン、難しいのは日本の反撃能力整備が結局のところこちらに、日本は核兵器を持ちませんので、こう構造の共通点が生まれてしまう点にありまして、言い換えれば本土ミサイル攻撃を含む時点でアメリカのマルチドメイン戦略にも危うさが。
板挟みにある、日本の平和政策が試されるというのは、そうたとえば第一次世界大戦において中立国のベルギーがドイツ軍のフランス侵攻の接近経路として利用され中立が破られたように、日本は接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンに挟まれていて。
陸上防衛に関してその大量報復ドクトリンとの類似性を示しますと、やはりAH-64D戦闘ヘリコプター廃止やMLRSの段階的廃止、90式戦車の退役開始と本土戦車部隊全廃など、段階的アプローチを踏めない装備体系にみずから陥っている現状を指摘したい。
日本版段階的アプローチ戦略のための、戦争を小規模の撃ちに全力で押しとどめる装備体系を構築しなければ、冗談抜き出相手が限定侵攻として仕掛けた戦争を全面戦争に拡大させるという、日中戦争の全面戦争拡大の歴史さえ踏襲しかねないことになります。
海上防衛は、この場合どのように応じるべきか。ミサイル防衛の延長として接近拒否領域阻止の枠組みに対してイージス艦で応じるという選択肢はあります、が、果たして迎撃しきれるのだろうかという疑問があります、なにしろ中国ロケット軍のミサイルは。
2010年の段階では沖縄本島まで届く准中距離弾道弾が150発で先島や台湾まで届くミサイルが600発、と見積もられていましたが、いまは台湾をねらうミサイルが4000発、ここに巡航ミサイルがくわわる。日本本土へと毒ミサイルも第一撃で2500発ほど。
難しく考えずに言い換えるならば、接近拒否領域阻止の概念を日本も踏襲するものが、結局日本国内でアメリカが構想するマルチドメインドクトリンでもあると解釈が成り立つわけで、すると射程がのびた以外は専守防衛の概念を維持しているというわけで。
しかし、射程が延びることこそが専守防衛の逸脱になるのではない加藤反論も成り立つわけで、これはいわば、韓国と北朝鮮の陸上国境が52口径155mm榴弾砲だけで反撃能力のような射程になっている状況と、日本と中国の射程延伸が重なっただけ、とも。
海上防衛、すると、このお互いの射程内、しかし核兵器と異なりほぼほぼ使われる前提の兵器の射程内において海上防衛というものを再構築することとなるのかもしれません。そして確実であるのは、現在の方式と装備体系には限界があるということ。
もがみ型護衛艦の建造とともにF-35B運用能力いずも型護衛艦付与と、厳しい予算的制約下でも自衛隊、いや日本という国家そのものが地政学上はこの、接近拒否領域阻止とマルチドメインドクトリンの板挟みという状況に陥っていることだけは変わりない。
中立国という視点を挙げれば、たとえば第一次世界大戦においてベルギーの中立政策は、ドイツ軍がフランスに侵攻するさいにドイツフランス国境はフランス軍の防備が堅いためにベルギーを通過するというかたちであっけなく中立は踏みにじられまして。
NATO本部がベルギーのブリュッセルに置かれている背景の一つはこうした中立政策の変更によるものなのでしょう。ただ、日本の場合は、痛い目にあったので中立政策を見直す、という状況まで待つことは、恐らく比類のない打撃を一度だけ容認することに。
問題はシーレーン防衛という現実を直視することです。接近拒否領域阻止のミサイル網は変な話相模湾まで延びている状況ですので、鈴木政権時代の1000浬シーレーン防衛という、当時の政権対外公約、先ずこれを実行することからむずかしくなっています。
有事の際には先ず佐世保基地や呉基地と舞鶴基地、恐らく横須賀基地まで攻撃される。護衛艦は退避できるのかもしれませんが補給施設などが攻撃を受けると再補給の問題が生じます、これはロシア軍がセヴァストポリ軍港で突きつけられているようなもの。
ミサイル防衛、ペトリオットPAC-3-MSEの性能はある程度証明されていますので、准中距離弾道弾の攻撃を受ける佐世保については、航空自衛隊のPAC-3-MSEを集中させることである程度守れる可能性がありますが、問題は中距離弾道弾の攻撃を受ける横須賀など。
ペトリオットPAC-3-MSEを航空自衛隊が海上自衛隊基地防衛のためだけに集中する必然性は低いものですから、海上自衛隊が基地防衛をどう考えるかということも突きつけられるのでしょうが、まず日本の防衛はこの段階まで厳しい状況であると認識が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
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