北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】NATO次期AWACS選定AFSC計画とMQ-9リーパー無人航空機AEW装置,ステルス空中給油機

2024-06-18 20:24:36 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回は各国の早期警戒機についての最新情報を纏めましたが無人機や小型化などの動きとともに旅客機を原型としていた点で同じ空中給油機についても動きがあるようです。

 NATO北大西洋条約機構の次期AWACS選定について。現在NATOでは2035年にNATO共同運用のE-3早期警戒管制機14機を退役させる方針で、その後継機としては現在のところアメリカのボーイング社製E-7A早期警戒機が有力視されています。しかし、2024年に相次いだロシア軍A-50早期警戒機撃墜が影響を及ぼす可能性があります。

 NATOでは2022年に次期早期警戒機研究を行い、ボーイング社とエアバス・ノースロップ・グラマン社企業連合などに情報提案書を要請し、各社の提案を受け取りました。そして上記二社に加えてこの研究にアメリカのジェネラルアトミクス社が参加し、三社が研究結果を発表しています。ジェネラルアトミクス社といえば無人機大手の筆頭という。

 ジェネラルアトミクス社は、同社のMQ-9リーパー無人航空機に縦長のポッド型AEW装置を搭載し、無人航空機複数による空中警戒任務を提案しました。MQ-9は滞空時間が長く、そして万一撃墜された場合でも操縦士や管制要員を危険にさらさないという利点があり、UAEW&Cとして新しい早期警戒機の在り方を提案しましたが不採用でした。■

 NATO次期AWACS選定AFSC計画におけるUAEW&Cについて。ロシアウクライナ戦争は地対空ミサイルの長射程化や空対空ミサイルの早期警戒機を標的とした射程延伸を前に現実問題として短期間で複数のA-50早期警戒機が撃墜され、ロシア軍はソ連時代に退役し野外で保管しているA-50早期警戒機の現役復帰へ大童となっています。

 AFSC計画の情報提案書が発表されたのは2022年3月31日、既にロシアウクライナ戦争は海戦一か月を過ぎていましたが早期警戒機の喪失というリスクは考えられなかった時点でもあります。ここでジェネラルアトミクス社の提案したUAEW&Cについて、ミシガン州のシンクタンクであるエアロダイナミックアドバイザリーが興味深い指摘を。

 UAEW&C無人早期警戒機はP-3C哨戒機後継機に冠捨てのアメリカ海軍のアプローチと重なる部分があり、ボーイングP-8Aポセイドン多目的哨戒機の性能を補完しているノースロップグラマンMQ-4Cトリトン無人偵察機のような関係が、NATOのAWACS運用においても有人の早期警戒機との間に成り立つかもしれない、という見解を示しました。■

 アメリカのロッキードマーティン社はステルス空中給油機を構想しています。F-22戦闘機などさまざまな最先端航空機を開発したロッキード社時代からのスカンクワークスが構想したもので、イメージCGとしてはF-35に給油する状況をえがく。開発にいたら無かったFB-22戦闘爆撃機をまるごと大型化したような航空機を構想している。

 ステルス空中給油機という装備は1990年代に未来の軍用機として盛んに提案されたものの冷戦後の軍縮機運を背景に実用化は勿論試作機や実証機までさえも進むことはありませんでしたが、2020年代にはいり中国軍の作戦能力が1990年代とは異次元といえる水準まで高まったことで、給油機をどう維持するか再度提案されている形です。

 アメリカ空軍ではKC-46A空中給油輸送機を危険な空域で運用する選択肢として、現在給油オペレーターは遠隔操作可能であることから、これを機上ではなく地上から遠隔操作する方式として、操縦士も副操縦士を省いたワンマンオペレータ方式とすることで、万一撃墜された場合でも人的損耗を抑える非常に厳しい検討さえなされています。■

 アラブ首長国連邦空軍はグローバルアイ早期警戒機4号機を受領しました。4月18日、4号機は引き渡されています。イエメンフーシ派武装勢力の長距離自爆用無人機攻撃等の脅威に直面したUAEアラブ首長国連邦は2015年にスウェーデンのサーブ社との間でグローバルアイ早期警戒機にかんする12億7000万ドルの契約を結んでいます。

 グローバルアイ早期警戒機の納入は初号機納入が2020年に執り行われ、続いて2021年までに3機を納入、短期間で納入実績を積んだことによりアラブ首長国連邦政府は2021年に2機の追加契約を結んでおり、今回納入されたのはこのうちの1機となります。サーブ社は4年で早期警戒機を契約から納入まで実現したわけです。

 ボンバルディア社製グローバルビジネスジェットを原型とするグローバルアイは、基地から550㎞先において11時間にわたる警戒飛行が可能であり、搭載するグローバルアイレーダーシステムは450㎞の範囲内において航空機を警戒、またイタリアのレオナルド社製シースプレイ7500Eレーダーを搭載しており、洋上哨戒機としても運用可能だ。

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プーチン大統領北朝鮮公式訪問,懸念される核戦力関連防衛協力強化とウクライナ戦況チャシブヤール市街地戦

2024-06-18 07:00:23 | 国際・政治
■朝ロ防衛協力拡大を懸念
 日本海の向こう側で本日から大きな出来事です。

 プーチン大統領は本日から北朝鮮を訪問するとのこと。ロシア大統領府がプーチン大統領の訪朝を発表しており、KCNA北朝鮮国営朝鮮中央通信が金正恩朝鮮労働党総書記の招待で18日から19日にかけ平壌を公式訪問すると17日に報道しています。プーチン氏は2000年に北朝鮮を訪問しており、今回は実に24年ぶりの北朝鮮訪問となりました。

 プーチン大統領訪朝、懸念されるのは世界最大規模の火砲を保有する北朝鮮からの軍事援助が行われる懸念と、2006年の北朝鮮核実験以来初の訪朝であり、ロシアから北朝鮮へミサイル技術や宇宙関連技術、核戦力の運搬手段として用い得る潜水艦などロシアが先進的な技術と共に、核関連技術が提供される可能性など軍事協力強化が懸念されています。

 金正恩朝鮮労働党総書記の訪露の際にプーチン大統領を北朝鮮に招いた昨年のロシアと北朝鮮との関係が前進したかたちですが、北朝鮮はその後実施した偵察衛星打ち上げに失敗した事からロシアからの技術提供を求める一方、ロシアはウクライナで用いる大量の砲弾を必要としています。なお、プーチン大統領は北朝鮮に続きヴェトナムへむかうとのこと。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 市街戦訓練の重要性を。

 ロシア軍はチャシブヤール市街地へ浸透を開始した、6月12日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告によれば、ロシア軍が侵入を開始したのはチャシブヤールの東部郊外地域であり、いまのところ浸透は限定的であるものの、ウクライナ軍と激しい戦闘になっている。チャシブヤール南東のイワニフスケ村は既に村落が占領されている状況という。

 チャシブヤールはバフムトから8㎞の距離にありまして、ロシア軍はチャシブヤール市街地を流れる運河に沿って浸透しており、しかしこの運河そのものがウェットギャップとなり侵攻を抑えている模様です。ロシア軍は浸透を強化するべく機械化部隊の下車戦闘を展開しており、しかしこれが死傷者を増大させ前進を阻んでいるという状況です。

 市街地戦闘は一時期自衛隊も重点的に訓練を実施していましたが、特殊な戦場で在り火力の発揮が難しく無差別砲撃は瓦礫など逆に地形を複雑化させ、通信や部隊間連携などにも影響を及ぼすため、都市と森林は兵を呑む、といわれているところですが、ロシア軍は損耗を度外視することで前進しており、人的資源がどう続くのかが大きな関心事といえます。

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