北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】RCH-155自走榴弾砲とM-1A2-SEP-V3主力戦車,ペトリオットPAC-3-MSE,AH-1Z戦闘ヘリコプター

2024-06-11 20:19:29 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 今回完成したものはいうなれば99式自走榴弾砲が装輪式となって高速きどうしているようなものですね。

 ドイツ政府がウクライナへ供給のRCH-155自走榴弾砲はSETASを搭載します。SETASとはヘンソルト社が開発した全周電子外部視察システムであり、この搭載によりRCH-155の乗員は車内に居ながら周辺状況を即座に把握でき、また自動画像処理装置を後日搭載することが可能で、周囲の移動目標や脅威目標を識別表示が可能となるとのこと。

 SETASについて興味深いのはヘンソルト社はRCH-155を製造するKNDS社に54セットを販売したとのことですが、ウクライナ軍にドイツ政府が提供するものは2022年9月に決定した18両と2024年2月に追加決定した18両の36両であり、このRCH-155はウクライナ軍がローンチカスタマー、ほかには供給されないため、憶測が浮かんでしまう。

 RCH-155自走榴弾砲はボクサー装輪装甲車のモジュールシステムに52口径155mm榴弾砲を搭載したもので、車体はボクサー装輪装甲車のまま高い不整地踏破能力を有しています。射程はV-LAP射程延伸弾で54㎞、まだ試験されていませんがM-982エクスカリバー誘導砲弾ではそれ以上の射程が期待され、KNDS社はドイツ軍採用を期待している。
■防衛フォーラム
 MSEは自衛隊でも配備が進む。

 バーレーン軍はペトリオットPAC-3-MSEを受領します。これはロッキードマーティン社が発表したもので、バーレーンへの納入は複数回に分けて執り行われるとのこと。バーレーンはアラビア半島南部からのイエメン武装勢力フーシ派によるミサイル攻撃に苦慮しており、特に弾道ミサイル攻撃に対してはペトリオットPAC-3-MSEが有用という。

 ペトリオットPAC-3-MSEは弾道ミサイル迎撃能力を持つPAC-3が射程15㎞から30㎞、迎撃幸地により左右されるのですが対航空機用のPAC-2が100kmから150kmであったのに対して迎撃範囲が弾道ミサイルの特性上狭くなったことを受け2004年より開発を開始したもので、迎撃範囲は60kmから80km程度まで延伸、対航空機戦闘も可能です。
■防衛フォーラム
 電動装備は小型無人装備に必須の技術と云えます。

 ドイツのラインメタル社はオランダのスタートアップ企業REEQ社を買収しました。REEQ社は電動式小型ピックアップトラックの開発を進めており、またハイブリッド機動による小型オフロードバギー車開発を行っている企業です。ラインメタル社はこのREEQ社に次世代の自動運転兵站車両や歩兵支援車両などの用途を見込んだとのこと。

 REEQ社の買収に当たって、オランダ企業からドイツ企業になるのではなくオランダの現地法人であるラインメタルネーダーランド社の傘下に入ることとなります。REEQ社は2018年に創立、当初からオランダ国防省の近代化計画へ応募するための防衛産業として成立しており、このほかモータースポーツ部門なども有しています。
■防衛フォーラム
 本邦のAH-1Sの後継は絶対必要だと思うのだけれども。

 バーレーン空軍はAH-1Z戦闘ヘリコプターを導入しました。AH-1Zのバーレーン空軍における初公開は2月5日に挙行されたバーレーン軍建軍56周年記念行事において、式典にはバーレーンのハマドビンイーサーアルハリファ国王も臨席し、最新鋭機が展示されています。バーレーンは長らくAH-1シリーズを運用し続けてきました。

 AH-1Zバイパー戦闘ヘリコプターは12機導入され、また式典では近代化改修を完了したAH-1Fのバーレーン軍仕様であるAH-1FBも展示、バーレーン軍は17機を運用しています。バーレーン軍は2018年にAH-1Z戦闘ヘリコプター12機を関連機材と合わせ9億1140万ドルで取得、最初の6機が2022年に納入、2023年末に全機を完納しました。
■防衛フォーラム
 平凡だが重宝する機種という日本のUH-1みたいな。

 インド軍はALH-Mk3軽多用途ヘリコプター34機を取得します。インドのヒンディスタンエアロノーティクスリミテッド社が独自開発したALH軽多用途ヘリコプターは初飛行が1992年、開発開始は1984年であり、軍以外にも各種400機が採用、2010年代に制式化、ヒマラヤ山脈などでも運用可能である航空機として既に運用実績を積んでいます。

 ALH-Mk3軽多用途ヘリコプター34機、今回取得される機体の内25機はインド陸軍へ、9機はインド沿岸警備隊へ配備されるとのこと。その取得費用は80億7300万ルピーといい、同型機のインド軍採用は2017年からとなっていますがインド軍では国産機を継続的に調達することで、国産基盤を固め且つ維持することも狙いであるとしています。
■防衛フォーラム
 10式と比較するのが難しい戦車だ。

 北朝鮮の金正恩委員長が新型戦車を試運転する様子を朝鮮中央通信が発表しました。3月11日に北朝鮮が韓国とアメリカの米韓合同軍事演習を実施する際への対抗演習として視察した際に戦車試運転を行ったもの。この戦車は2020年の平壌軍事パレードに登場し、北朝鮮からの命名がないためにM-2020と仮称されている新型戦車です。

 M-2020戦車はもとより、北朝鮮の戦車はどの程度新造されているのかは外見からは判断が難しく、性能もまた不明です。しかしイランが独自開発したとされるズフィカル戦車のようにパレードでは必ず輸送車に載せられているものとは異なり、自走しているために単なる見た目だけの戦車ではなく実用的な戦車であるとも考えられています。

 M-2020戦車は転輪が7個で北朝鮮軍の主力戦車であるT-62戦車の5個やT-72戦車の6個とは異なることから、独自開発であることはかわります。一見複合装甲のように見えますが装甲内部に発煙弾発射器が収められ、中空装甲であるとわかる。また珍しく砲塔側面に対戦車ミサイル発射器が配置され、主砲の射程を補っていることがわかります。
■防衛フォーラム
 VT-4は最先端ではないものの手頃な第三世代戦車といえる。

 パキスタンでは中国製VT-4戦車のライセンス生産が量産段階へ移行しました。パキスタンではハイダルと呼ばれる主力戦車で内蒙古第一機械集団を中心として2014年に発表、複合装甲に追加の爆発反応装甲を装着、1200hpの高出力エンジンと125mm大口径戦車砲を備えた第三世代戦車で、2020年より中国製造車体の輸入を開始していました。

 VT-4戦車のライセンス生産は工業生産能力強化を目指すパキスタンの重要政策の一環であり、中国製装備品のライセンス生産ではJF-17サンダー戦闘機のパキスタン国内製造などを既に実績として挙げており、VT-4戦車のライセンス生産についてもその一環なのでしょう。なおVT-4は中国では99-Ⅱ式戦車の輸出型という位置づけの主力戦車です。
■防衛フォーラム
 日本も82式指揮通信車の後継をそろそろ。

 スウェーデン軍はパトリア6×6装甲車321両を調達します。パトリア6×6はCAVS共通装甲車両システムとしてフィンランド、スウェーデン、ラドビア、ドイツという欧州各国が共同開発した汎用装甲車で、六輪車体に運転台と車長席を並列配置したキャブオーバー型の操縦室を配置し後部を広範な輸送区画として設計した装甲車両です。

 パトリア6×6装甲車321両の調達費用は4億7000万ユーロという。スウェーデンは2022年にこのCAVS共通装甲車両システム開発へ参加しており、今回初の調達になるとともに、フィンランドのパトリア社としてはスウェーデンへの輸出としては過去最大規模で、クングセンゲンのリヴガルデット連隊など機械化歩兵部隊へ配備されるとのこと。
■防衛フォーラム
 M-1戦車の配備が広がっている印象で大柄な戦車の時代はつづくのだろうか。

 バーレーン軍はM-1A2-SEP-V3主力戦車50両と関連機材を取得する計画がアメリカ国務省により対外有償供与認可を受けたと通知を受けました。アメリカ国務省は中東地域の安定化に資するとして輸出を許可したとのことで、アメリカとは同盟国やNATO加盟国ではないものの、主要パートナー国としてバーレーンをいちづけているもよう。

 M-1A2-SEP-V3主力戦車50両と関連機材の取得費用は22億ドル、関連機材はM-88A2戦車回収車4両とM-1110戦車橋8両及びM-1150戦闘工兵車8両、M-1002-120mm-TPMP-T訓練砲弾6000発とM-1147戦車砲弾5760発、GPSに通信機や車載機銃などとなっています。最新型車体にはトロフィーアクティヴ防護装置なども搭載されるもよう。
■防衛フォーラム
 まだ改良型が出ています。

 アメリカのゼネラルダイナミクスランドシステムズ社はLAV-700装甲車を発表しました。これは中東カタールのドーハで行われているDIMDEX国際防衛装備展において発表されたもので、同社が開発を継続しているものの近年カナダ向けLAV6.0の遅延情報以外には大きな動きが無かったLAVシリーズの最新型の発表となりました。

 LAV-700は八輪式の装輪装甲車で重量は21t、正面装甲は30mm機関砲弾耐弾であり側面走行も14.5mm機銃弾に耐え、車内には兵員8名を収容可能、兵装としては各種オプションが提示され、50mm機関砲であるXM-913ブッシュマスター機関砲の搭載も可能で、エンジンは715hp、速度は装輪装甲車としても早い110km/hを発揮するとのこと。
■防衛フォーラム
 自衛隊もボクサーにしたほうがよかったのかと当時は思いもしなかったものなのですが。

 ドイツ連邦軍はウィーゼル空挺戦闘車の後継にボクサー装甲偵察車を配備します。ウィーゼルはもともと西ドイツ軍空挺部隊用にCH-53輸送ヘリコプターの機内へ搭載できる装軌式軽装甲車として開発され、ラインメタル20mm機関砲などを搭載するものの戦闘重量は5t程度と非常に軽量に設計され、連邦軍では偵察車両として運用しています。

 ボクサー装甲偵察車は、連邦軍が採用している装備ではありますが基本的に装甲輸送型が装備されており、今回配備される事が決定したものはオーストラリア軍が採用したASLAV軽装甲車の後継仕様のもので大口径機関砲とセンサーを搭載したもの。オーストラリア軍はドイツ国内でこの評価試験を支援しており、今回正式採用に至ったかたちです。
■防衛フォーラム
 自衛隊の近接戦闘に関する認識はかえられるのだろうか。

 陸上自衛隊は無人アセット防衛力としてフジインパック社製E-5L無人機の実証試験を開始します。陸上自衛隊では八輪式のラインメタルカナダ社製ミッションマスターSP、装軌式のミルレム社製THeMIS、四足歩行式のゴーストロボティクス社製Vision60などを試験中で、この中の国産メーカーとしてフジインパック社製無人機が選ばれています。

 フジインパックは2008年の段階で2500㎞の無人飛行を実験し稚内から那覇までの長距離飛行に成功しています。同社製E-7Kは全備重量115kgで滞空時間は10時間と航続距離は1100㎞、最大20㎏までの物資などを空輸可能で巡航速度は110km/hとされていて、陸上自衛隊の無人機評価試験は国産装備、地上装備は外国製としてすすめられるもよう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ まや
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ウクライナ情勢-ロシア軍毎日死傷者1200名,クリミア半島ネボIED長距離レーダー破壊!

2024-06-11 07:00:05 | 国際・政治
■防衛情報-ウクライナ戦争
 クリミア半島は最早狩場という印象ですが対艦ミサイルの地上攻撃誘導方式については興味あるところですね。

 ウクライナ海軍はネプチューン対艦ミサイルによるクリミア半島攻撃に成功した、ISWアメリカ戦争研究所5月31日付戦況報告において概況が示されていました。ネプチューンはクリミア半島のロシア軍長距離レーダー施設と、クラスノダールクライの石油備蓄施設に命中、特に長距離レーダーへの攻撃はクリミア半島情勢を一変させる可能性がある。

 クリミア半島のレーダー施設はネボIED長距離レーダーを標的としていて、これはクリミア半島から380km圏内を探知していたもので、攻撃によりレーダー電波は停波状態になっているとのこと。早期警戒機撃墜を受けクリミア半島での防空管制に大きな空隙が発生している状況においてレーダーの運用不能という状況は航空優勢確保に影響を及ぼします。

 ロシア軍はこの状況下、ハリコフ近郊のヴォフチャンスクとアウディイフカ近郊で前進すると共に、ドネツク西方のクラスノホリフカではロシア軍が中心部に進出して市議会議事堂まで到達しているとのこと。ウクライナ軍はケルチ海峡などでロシア兵站輸送を担うフェリー攻撃に成功するなど、対艦ミサイルと無人機で戦闘を継続しています。
■防衛情報-ウクライナ戦争
 これ、自衛隊だと毎日一個普通科連隊が消えている状況なのですが専制主義国家では最早国民は形ばかりの選挙ですべて権利を手放し溶鉱炉行列車に乗るほかないのでしょうか。

 ロシア軍死傷者は50万名に達している、5月31日付イギリス国防省ウクライナ戦況報告で状況が示されました。ロシア軍死傷者増大の背景にはロシア軍が全ての戦線で消耗戦を行っている為で、5月の平均死傷者数は1200名に達しているという。この1200名という数字は2022年のロシアウクライナ戦争開戦以来最大規模となっているようです。

 死傷者増大のもう一つの背景には、ロシア軍の新兵教育水準の低下が有り、新兵は教官が不足している事と教育期間の短縮によりまともな戦闘教育を受けられないまま第一線に投入され、経験ある下士官などの指揮を受けられぬままウクライナ軍の減殺を目的とした連続しての小規模な波状攻撃に投入され、犠牲を重ねているもよう。

 ロシア軍は教育不足により高い犠牲を支払っている一方、兵員不足は毎日1200名という死傷者により加速し続けている状況であり、一人でも多くの戦闘員を前線に投入する必要から更に教育時間や教官が不足する状況となり、ロシア軍にとり消耗戦以外の作戦行動可能となる高水準の能力を発揮出来る部隊を編成する事が出来ない状況となっています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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