北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【日曜特集】海上自衛隊60周年観艦式【25】自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略(4)(2012-10-08)

2024-06-30 20:24:23 | 海上自衛隊 催事
■台湾有事は日本有事
 自衛隊とアメリカ軍マルチドメイン戦略、この視座に関する重要な部分は抑止力を構築する事で軍事力による現状変更を試みる周辺国に対して堪えがたいリスクを突き付けるところにあります。

 台湾有事は日本有事、という言葉がありましたが日本の防衛について認識しなければならないのはこの点で、過去の戦争を反省し、とか、太平洋戦争の反省、という言葉を安穏と使うならば、まさに、台湾が権威主義国家の圏内に収まるリスクを直視すべきだ。

 太平洋戦争の反省、というならばなぜ日本は本土決戦で敗北したわけでもないにも係わらず無条件降伏というポツダム宣言受諾を強いられたのかという理由を考えねばなりません、それは沖縄陥落によりシーレーンが完全に途絶され、戦争継続が不可能となった。

 海洋自由原則を堅持するのか海洋閉塞主義をとるのか、要するにマハン的ドクトリンかテルピッツ的アプローチか、ということになるのですけれども接近拒否領域阻止というものはどのように解釈しても海洋自由原則と理解することはできません。

 超限戦ドクトリンという、中国は過去に非対称型戦争モデルに関する研究論文を発表しまして、これは別に人民解放軍が採用していると確実に発表されたものではないのですが認知戦の専門部隊が存在するなど、超限戦ドクトリンは少なくとも具現化している。

 シーレーンの視点から考えますと、超限戦ドクトリンでは民間船はもちろん、なにしろ海上民兵を制度化している国なのですから民間船こそがソフトターゲットとして攻撃を受けるため、船団護衛、というわけではありませんが何らかの防衛措置は必要で。

 船団護衛は、これも日本の場合はアデン湾海賊対処任務において痛感したことなのでしょうが、船団を組むための待機期間を商船が待つことは少なく、結局海上自衛隊の護衛船団への参加を要望する国よりも哨戒海域だけをとおる商船が続出しています。

 紅海危機では、これはまだ自衛隊が参加していない任務ですが、フーシ派によるミサイル攻撃や武装ボート攻撃にヘリボーン強襲という事態が発生しますと、まだ運行している船会社は多いことたしかなのですけれども、大手海運の中には航路閉鎖も。

 スエズ運河経由ではなく喜望峰経由として、輸送運賃の値上げを要請するという。日本の場合は、マラッカ海峡ではなくオーストラリア南方航路を航行しマリアナ諸島以東を航行することでかなりミサイル危険海域を回避する事は可能となりますが。

 北太平洋航路、現実的には安全な航路はここだけとなるのかもしれません、中東からのタンカー経路はインド洋から喜望峰とマゼラン海峡を経由する航路、というところでしょうか。しかしそれでいても本州主要港が結局はミサイル圏内に入っている。

 シーレーン防衛、接近拒否領域阻止のミサイル圏外となりますと消去法で選択肢を考えれば北極海航路となりますが、一年間の半分近くを流氷に封じ込められ、しかもロシアのすぐとなりを航行する航路というものにすべてをかけるにはリスクが大きすぎます。

 米中全面戦争となった場合でも、日本が中立を宣言した場合はシーレーンを維持できるのではないか、という視点は少々同盟関係というものを忘れているうっかりさん意見といわざるを得ず、日本運行船がバベルマンデブ海峡でフーシ派に攻撃されたのと同じ。

 シーレーン防衛は北太平洋航路のみに集中する、こうした選択肢しかなくなるのでしょうか。ただ、東南アジアと日本本土を結ぶサプライチェーンを北米経由とするのはあきらかに無理があるもので、京都から大阪に行く際に舞鶴豊岡経由とするようなもの。

 すると、中国側の長距離打撃力を破壊してシーレーンを航行できるような体制を構築するべきか、と問われますとこれも無理があるよう思えます、なにしろ感情に搭載できる装備には限界がありますので、昔話のアーセナルシップを出さねばならない。

 アーセナルシップというのは1990年代から2000年代初頭に構想されたアメリカ海軍の研究で、VLSしか積まないステルス艦を建造して、いわばミサイルの補給艦のように、その艦は運行しているだけですが、ほかの艦艇から発射の管制を受けるという。

 VLSだけしか搭載しない構想で、一応自衛用に艦砲だけは積もう的な案もありましたが、そのぶんVLSは500セルを搭載する計画でした。艦長はミサイル発射を直接命令できないだけにずいぶんとやりがいのない艦になるとはいわれていたものですけれど。

 ミサイルの不足というものは紅海でのフーシ派ミサイル攻撃などで問題が顕在化しているところで、冷戦時代にはソ連軍のミサイル飽和攻撃を警戒してイージス艦などはVLSに折りたたみ式クレーンを内蔵するなど再装填という作業をそうていしていましたが。

 ソ連軍によるミサイル飽和攻撃という脅威が過去のものとなりますとそうした必要性は低下し、いや、船団護衛にあたるミサイルフリゲイトであったOHペリー級からMk13発射装置が取り除かれスタンダードミサイルが撤去されるなど軽武装化がすすみました。

 冷戦後、平和の配当、という言葉がありましたが欧州各国はもう欧州正面での第三次世界大戦はおきないだろうという楽観論、2022年以降は楽観論は消えつつあるが、こうしたなかでの大規模軍縮を進めていて、アメリカもその流れに載ったという構図で。

 アメリカが防衛力を立て直すならば、こうした危惧も過去のものとなるのかもしれませんが、それには、ロッキードマーティンはペトリオットミサイルの生産数を2021年では350発まで縮小していた、2025年までに650発まで増強する計画といい、時間はかかる。

 縮小された防衛産業を再活性するには、ノウハウなども喪失しているものがあります、そして冷戦終結の恩恵を考えず軍事力近代化を進めていたのが中国であるわけですので、もちろん、戦いの主導権を握るドクトリン研究などではアメリカは先行しているが。

 アメリカ軍の増援まで耐えしのぐという発想は、もちろんアメリカの戦力は巨大であるし、なによりアメリカに対抗しようとしている中国の戦力を日本が通常兵器だけで互角の水準まで上ることは次元が異なるほどの難しさがあるのですけれども、一考の時代か。

 独自のドクトリンは、しかし必要であろうという。独自のドクトリンと入ってもアメリカの同盟国であり、アメリカと距離を置くような隔離乖離した防衛力整備ではあってはならないといいますか、逆に非効率ではありますが、右に倣えという時代ではない。

 シーレーン防衛はその一つの検討事例なのですが、すくなくともシーレーン護衛はミサイル防衛と画一化しなければ今日の紅海船団護衛のようにミサイルによる船団攻撃は対応できない時代です、そして本当にミサイルの雨のなかを盾を掲げて進めるのか。

 もっとも、船会社と船舶保険会社は海戦となれば運航停止と保険料大幅値上げを勧告し、輸送航路はそれだけで大打撃を受けるでしょうから、従来型の防衛力を十分整備し、そもそも戦争を封じ込めるような抑止力を構築することこそ、王道なのでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都発幕間旅情】広島電鉄5100系電車,広島交響楽団はサンフレッチェ広島と広島東洋カープと並ぶ広島の誇り

2024-06-30 20:00:36 | コラム
■広電5100系
 オレンジ色の電車というのはちょっとほかではみかけないなあ。

 広島電鉄5100系電車、羨ましい輸送力の連節電車ですが広島駅で待っていますと見慣れないオレンジ色の車両が向こうの方からやってきまして、一見広島カープの新塗装ラッピング電車なのかな、と考え何気なくカメラを向けたのですけれども、それは意外にも。

 広島交響楽団電車、広島ではサンフレッチェ広島と広島東洋カープとともに全国に誇るプロフェッショナル集団ということで、いや広島大学始め広島には誇るものは多くあるとおもうのですが、広島交響楽団も市民の誇りとして親しまれているのだという。

 音楽、文化に理解の無い自治体などではその価値がりあい出来ず簡単に予算削減の先ぽうとされてしまうのですが、自前のコンサートホールを持てない楽団は定期演奏会の機会も限られ、結果的に市民と音楽の接点が限られ、理解できない方が増えてしまう悪循環に。

 広電のラッピング電車、広島市民交響楽団はラッピング電車で宣伝できる程予算に余裕があるのか、と何も知らずにちょっと余裕を羨ましく思ったものですが、実はそうではなく広島交響楽団と広電を売苑するクラウドファンディングにより予算を確保したのだ、と。

 1号線で広島駅と広島港を紙屋町東経由で運行されているというラッピング電車、なんでも車内アナウンスも特別なものが放送されているという事で一寸興味が湧くところですが、そんな話題を知ったのは広島から帰路に就いたとの事で一寸後の興味がわいたもの。

 むかし、ポーランド総領事館名誉総領事の方のお話を聞く機会が在った際、ポーランドでは演奏会が身近で日本では映画を観るくらいの間隔で、また予算的にも映画の感覚で週末は演奏会を愉しめる大衆文化があるという、羨ましいと思った事をふと思い出しました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】榛名さんの総監部グルメ日誌:京都-中京油屋町,重厚パスタと1400時からのランチタイムのヒミツ

2024-06-30 18:14:28 | グルメ
榛名さんの総監部グルメ日誌
 今にも降り出しそうな曇天の京都は上掲だけ見れば涼しげですが梅雨の曇天は蒸し暑さが盆地に滞留して吐きそうな頭痛と脱水の不快感が疼痛のように身を包む。

 ランチタイムというのは、最近この京都でも前は通し営業していたのに今はディナータイムとの間に休憩を置くお店が多くなってしまい、1400時を過ぎればそれはランチ難民という状態になってしまう、かといってファストフードというのも、なあ。

 カンティーナアルコさんはこうした状況で心強い味方です。中京区油屋町の、つまり有名な錦商店街のアーケードをアーケードから出てすこしのぼったところにある。ここはなんと、ランチタイムが1400時からはじまるという、ちょっとかわったおみせ。

 オリーブとケッパーとアンチョビーのトマトソースプッタネスカ、暑い日日という事で冷製パスタはないかなあ、と期待したのですが、たまにしかやらない、ということでこの日は無かったものですから、それならばと定番のトマトソースのパスタにしよう。

 トマトソースプッタネスカ、カンティーナアルコさんのパスタは太麺で、80gから150gまで好きな量を選べるという、そして太麺のパスタだから、フォークをくるりと廻すだけでおどろくほどたくさんのパスタが丸々とフォークを大きくしてくれて。

 ケッパーとオリーブは酸味の中に仄かな苦みと、そして歯ごたえの違いと、濃厚なトマトソースの中に在って確かな存在感を果たしていて、パスタはアルデンテ具合が新鮮さを残ししかし芯はゆで上げられている絶妙な感覚で美味しいという実感を伝える。

 カンティーナアルコさんのランチタイムが1400時から、というのは、奇をてらったわけではなく、ここのパスタは太麺でゆであがるのに12分かかるのだという、だから1100時からのランチタイムを始めると、昼休みが一時間しかない方には厳しい。

 南イタリアではランチタイムがちょうど昼過ぎからゆったりと取るという実情もあるようなので、カンティーナアルコさんはその時間に合わせた、と聞きました。冷たいアイスコーヒーを口にしながらそういう話を聞きますと、ほっとするのですね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ユーロサトリ2024,PULSロケット砲兵システムはMLRS用GMLRS精密誘導ロケット弾に非対応!

2024-06-30 07:01:45 | 先端軍事テクノロジー
■欧州ロケット砲構想に警鐘
 N社ユーザーである友人が昔、新しい一眼レフを買った際に今までのレンズを装着したところAFモーターが動かず、慌てて調べたところN社純正同士でも非対応で結局レンズも買いなおしたということが。

 アメリカと欧州で精密誘導ロケット弾に関する重大な摩擦が進行中です。これはNATOの装備体系全般に10年単位の禍根を残す懸念があり、ロシアとの緊張が増大する中においては致命的と言える対立となるのかもしれません。事の発端はオランダがMLRS多連装ロケットシステムの後継にイスラエル製PULSを採用したことにありました。

 HIMARS,現在精密誘導ロケットシステムの代名詞的存在はロッキードマーティン社が開発したGMLRS精密誘導ロケットであり、これは装輪式の機動性が高いM-142-HIMARS高機動ロケットシステムと、陸上自衛隊が91両を調達、したが現在は半数ほどに廃棄しているM-270-MLRS多連装ロケットシステムから投射が可能であるロケット弾だ。

 MLRSの後継、というよりもオランダは23両を装備していたものの2007年に、冷戦終結後にこれ以上例えばロシアと欧州が対立するような緊張はないだろうと保有した全数を廃棄しフィンランドなどに売却、ここで2022年のロシアウクライナ戦争勃発があり、急遽HIMARSかMLRSを調達しようとしたものの数年待ちと告げられたためでした。

 ロッキードマーティンはフルレート生産を行っていますが、例えば2022年にポーランドがHIMARSを500両調達しようとするなど、アメリカ陸軍保有数でさえ270両なのでその倍か、ロシアウクライナ戦争を受けての緊張増大と、ウクライナ軍によるGMLRSの大きな戦果を受け各国が相次ぎ発注、生産が2027年まで納入待ちという状況です。

 PULSはイスラエルのエルビットシステムズ社製のトラック式機動ロケット砲兵システムで、欧州NATO各国は納入見通しの立たないHIMARSに見切りをつけ、PULSの調達に舵を切りました、オランダとデンマークが調達を決定し、スペイン軍も採用を検討中です。エルビットシステムズ社によればGMLRS弾薬を含む多彩な弾薬に対応する。

 PULSは様々なロケット弾を投射可能で旧ソ連が第二次大戦中に開発し今も世界中で使われる122mmロケット弾ならば36発、イスラエル軍が第三次中東戦争の時代から多用する160mm口径のアキュラーロケット弾ならば26発、射程の長い新型の306mmエクストラならば2発、射程300kmのプレデターホーク弾道弾を4発発射することも可能だ。

 エルビットシステムズ社はこの延長線上に、ロッキードマーティンのGMLRSもPULSから発射可能だと発表、これに呼応して欧州の防衛企業KNDS社はエルビットシステムズ社と提携し、欧州の共通ロケットシステム開発を推進する方針をユーロサトリ2024国際装備展において発表しました、なにしろPULSはHIMARSよりも多数の弾薬を積む。

 ラインメタル社、ドイツの防衛企業ですが、意外にもこのKNDSの方針に疑義を唱えました、ラインメタル社は冷戦時代にロッキードマーティン社と共にMLRSを開発した企業です。ラインメタルのアーミンパペルガーCEOが、PULSの名前を敢えて挙げず、一部企業がGMLRS発射可能というシステムを提示しているが誇張であり現実的でない、と。

 ロッキードマーティン社のハワードブロムバーグ副社長も上記の発言に続いて、PULSはGMLRSに対応していない、と率直に発言しました。ユーロサトリ2024、エルビットシステムズ社はイスラエル企業で、フランス政府はガザ戦争による非戦闘員被害を憂慮し今回は出展を認められていません、しかしプロムバーグ副社長の発言は重大だ。

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