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【京都発幕間旅情】長浜城,大地震に潰えた琵琶湖畔城郭は防守城塞から戦略策源地への転換点

2020-07-15 20:04:39 | 旅行記
■天正地震に消えた戦国の夢
 豊臣秀吉がまだ羽柴秀吉だったころ琵琶湖の湖畔に巨大な城郭が在った。赤影参上、とは続きませんが、そんなお城のおはなしです。

 長浜城。豊臣秀吉がまだ羽柴秀吉だったころ、織田信長により拝領した最初の城郭です。新快速基点駅である北陸本線長浜駅から隣り合う城郭としまして、ご覧になった方も多いでしょう。いや、サンダーバードを利用しますと湖西線で北陸に向かう為通りませんがね。

 独立式望楼型三重五階の模造天守が造営されていますが、これは戦後の1983年に高知城等を参考として建築した模造天守閣で、豊臣秀吉建造当時の天守閣形状は明らかとなっていません。しかし初めて拝領した所領の城郭、琵琶湖水運を考えた城構えと考えられている。

 天正元年の1573年、浅井長政を破った織田信長は撤退の殿や姉川の戦い等で勲功厚かった羽柴秀吉に浅井氏旧領を与えます。感激した秀吉はこの地の今浜を信長の名から一字拝領し長浜に改名し、城郭造営に着手します。浅井氏本拠の小谷城とは若干離れたこの地に。

 小谷城は日本五大山城に数えられ小谷山多峯の尾根や峡谷地形を活用した難攻不落を誇りましたが籠城は援軍が前提でなければ干上がり、浅井氏も城と共に潰えました。ここは城郭としては有利ですが地形が険しく策源地には不適です。その為に今浜、いや長浜が。

 築城は廃城となった小谷城の資材流用や琵琶湖に浮かぶ竹生島に浅井氏が戦略備蓄を行っていた材木などを流用し、三年程で完成しています。堅固な城郭への籠城も孤立化してしまえば落城する、それよりは城郭は戦術拠点と共に策源地であるべき、その思想に基づく。

 包囲軍必勝の論理は、実はこの後に日本ではインパール作戦まで、つまり第二次世界大戦中ですか、堅持されます。籠城軍は西南戦争の熊本城籠城のように増援が展開しなければ補給線が絶無で生き残れません。この為に策源地として湖畔を選らんだ点は慧眼でした。

 堀秀政、織田信長没後は清洲会議により柴田勝家が近江所領を得て、甥の柴田勝豊に長浜城を与えます。ただ、秀吉と対立した事で柴田勝豊は開城に追い込まれ、続く天正年間の1583年、賤ヶ岳の戦いの勲功を経て山内一豊が入ります。ただ、その拠点も残念ながら。

 天正地震、天正13年11月29日、西暦では1586年1月18日に発生した若狭湾沿岸を震源とする我が国最大規模の内陸地震です。被害が大きかった地域は、福井県、石川県、愛知県、岐阜県、富山県、滋賀県、京都府、奈良県、三重、つまり日本の中心部全域に当る。

 若狭湾沿岸の一つの巨大地震を引き金に、飛騨高山庄川断層と阿寺断層、養老断層伊勢湾断層、養老-桑名-四日市断層帯、余りに広い激甚被害により最初の地震を契機にここが一斉に動いたとも研究があり長浜城はこの巨大地震にて天守閣倒壊、再来しない事を願いたい。

 山内一豊は無事でしたが倒壊した天守閣が屋敷を圧し潰して長女と家老が圧死、十二日間に続く余震により長浜城の多くが地すべりにより琵琶湖に押し流され、対岸の近江今津が津波被害を受けています。何しろこの地震は全国で当日日記が殆ど残らない程に激甚です。

 飛騨国帰雲城は山岳崩壊で一族郎党ごと消滅、伊勢国長島城、大垣城、越中木舟城倒壊、京都でも東寺が破損しています。ただ長浜城は幾つかの櫓と城門が残り、江戸時代初期に一国一城令とともに廃城となりますが、新たに築城される彦根城へ資材は流用されました。

 市立長浜城歴史博物館として模造天守閣は活用されています。長浜城は天正地震により潰えましたが、しかし城下町の活況は北国街道の要衝として今日に至り、明治時代の北陸本線敷設からも今日に至ります。意外な歴史街道その象徴としての長浜城は駅前に在ります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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