北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

自衛隊サイバー戦と自衛官募集難【1】令和の大型免許としてのプログラミング教育強化提言

2019-12-10 20:07:46 | 防衛・安全保障
■自衛隊,二つの難題に処方箋
 将来の戦争は武力攻撃と共にサイバー攻撃からはじまる、とは1990年代の認識ですがこれは2020年を前にというよりも2000年代から現実のものとなっています。

 アメリカ軍のサイバー戦部隊がイランに極秘のサイバー攻撃をサウジアラビア油田施設の攻撃後に実施していた、米軍当局者の発言がロイター報道により報じられました。この問題で重視したいのは、サイバー攻撃は国際法上の武力攻撃とみなされていない点、でしょうか。この部分を留意するならば、勿論イランへの対応は別としまして、新しい視点が。

 自衛隊は平時から攻勢サイバー戦部隊を、師団規模で養成する必要はあると視点を。実際、通信とサイバー戦に無人機運用に特化した部隊として、イギリス陸軍が今年の八月に第6師団を新編しています、イギリス陸軍師団は完全な歩兵師団の第1師団と重装備で機甲師団編成を採るの第3師団だけでしたので、三つ目の師団がサイバー戦専用、となった。

 日本の防衛を考える場合、サイバー戦部隊の強化、それこそ陸上自衛隊の師団を再編してでも一万数千人単位のサイバー戦部隊を創設する事は意味があります、これは武力攻撃の要件と憲法上の自衛権の行使、少なくとも国際法はサイバー攻撃を武力攻撃とみなしていない可能性を示唆しています。そしてサイバー戦部隊は別の意味を自衛隊にもたらします。

 師団規模のサイバー戦部隊を、とは極論ですが、しかしプログラミング人材を自衛隊が組織手kに大量養成する事は意味があります。デジタル器材はアナログ器材と異なりプログラミング書き換えにより用途が無限となりますし、なにより情報端末を含め今後装備品は確実に増える、現時点でも増えている。ただ、複雑機材に対応、という点以外にも利点が。

 募集難対処、という意味で。自衛官の若年定年制、特に陸曹候補学生の昇進見送りを要因とする三十代での定年が自衛官という職業の魅力を著しく引き下げていますが、要員が予算不足である事から簡単に新隊員制度へ戻す事は出来ません。しかしサイバー戦部隊を大幅に増強するならばどうか、自衛官として学んだ経験をそのまま民間企業に応用できます。

 サイバー攻撃部隊での経験は、要するに自衛官としての職務が最先端のプログラミング教育の場となるのですから。国は現在、プログラミング人材の大幅な強化を期していますが、プログラミング言語は短期間で置き換わる為に、大学教育の場では即戦力を養成したとしても、卒業の頃には知識の陳腐化が予想されます、アプレンティという制度がある程だ。

 アプレンティとはアメリカの民間制度でプログラミング人材枯渇に悩むアメリカのIT業界が苦肉の策として導入したもので、給与を受け取れるプログラミング専門学校、高卒でも中卒でもITに関する資格が無くとも素養があれば受け入れ、プログラミングだけを徹底教育するという方式です。日本では実力よりも大卒という資格が求められる分野はまだ多い。

 大学は専門学校ではない為にプログラミングだけを行う大学は有り得ず、基礎教養を含め学位を授与するのですから。しかしサイバー戦部隊はどうか、文字通り使う知識と技能に特化し延々と教育訓練を行う、いわば若年退職自衛官は先端知識を身に着けた先端企業が高給で雇い入れたい羨望の人材となるでしょう。自衛隊を魅力ある職場とする選択肢です。

 プログラミング、技術と適性の多寡はあり、全てをサイバー戦部隊へ配属、という極論ではなく、平時におけるグレーゾーン事態へのサイバー攻撃とその対処を行うと共に有事の際には増加する戦域情報管理や個人用端末の運用管理を含め、つまり高度なサイバー人材から個人用端末の管理まで自衛隊はプログラミング教育訓練を普及させる必要があります。

 自衛隊においてプログラミング教育を訓練の一環として導入することは、電子通信や無人航空機管制、武器システム全般の整備維持は勿論訓練まで含めて今後の装備運用体系から不可欠になるでしょう。今後普及する車載端末や個人用端末が一線で故障した際に整備大隊へ持ち込むのは難しい。そしてこれが令和時代における"大型免許”となるのではないか。

 大型免許、かつて自衛隊では募集に際し"タダで大型免許が取れる”という、地方強力本部が地方連絡部と呼ばれていた時代の定型句がありました、もちろん職種によっては必ずしも該当しないのですが、退官後の職業を考えますと任期制自衛官には大型免許と退職金は厳しい訓練と制約の多い生活に見合ったものといえます。これの令和時代版を、という。

 さて、プログラミング資格についてはITパスポートなど国家資格が幾つかあげられますが、国家資格であり且つ企業のプログラミング人材に該当する先端知識を自衛隊において教育訓練の一環として拾得できるとしましたら、自衛官という職業、特に任期制自衛官について任期が数年で終了する場合でもその職に対する見方を変えるもの、とおもうのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 検証-首都直下地震【3】危機... | トップ | 【京都幕間旅情】南禅寺(瑞龍... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

防衛・安全保障」カテゴリの最新記事