北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

米中空母-南シナ海で対峙!中国海洋閉塞化へ原子力空母ニミッツ&ロナルドレーガン展開

2020-07-16 20:02:08 | 国際・政治
■日米豪関心集める中国南方進出
 ポストコロナの世界が模索される昨今ですがコロナ禍下では世界の耳目が疾病に集まる中で軍事緊張が進みます。

 南シナ海の緊張が静かに進行中です。米中航空母艦がにらみ合う。二つの海軍大国が空母をにらみ合わせるのは歴史上で二度目、前回は帝国海軍とアメリカ海軍が雌雄を争った太平洋戦争の際のことでした。75年後の今日、しかし東南アジアと日本の経済関係や日本のシーレーンを考えるならば、この緊張続く現状は決して看過できるものではありません。

 アメリカのポンペイオ国務長官は、13日の声明で南シナ海の現状について触れ、中国が南シナ海のほぼ全域の権益を主張している状況についてフィリピンと中国やヴェトナムと中国の国際仲裁裁判所勧告的意見を支持する方針を明確に示し、中国の主張全般を“完全に違法だ”としまして中国を強くけん制しました。この発言に中国は即座に反発しました。

 安倍総理大臣は9日、オーストラリアのモリソン首相と電話会談し、南シナ海と沖縄県近海の東シナ海において生じている緊張状態について重大な懸念を日豪間で共有することを確認しました。モリソン首相はコロナ禍下で突如受けた中国からのいわれなき経済圧力と軍事圧力、政治圧力に驚き、第二次世界大戦後屈指の国防強化施策を発表したばかりです。

 モリソン首相は今月1日に、今後十年間の国防力近代化へ2700億豪ドル、邦貨換算で20兆円の国防計画を発表したばかりであり、既に配備されたキャンベラ級強襲揚陸艦やホバート級イージス駆逐艦、陸軍の装輪装甲戦闘車及び装軌式装甲戦闘車選定に加え、長距離攻撃能力やサイバー攻撃対策の抜本的強化を行う計画で、先ずAGM-158C導入が計画中だ。

 中国海軍は南シナ海、ヴェトナムより中国が武力奪取した西沙諸島近海において五日間にわたる空母演習を実施、2015年に当時のオバマアメリカ大統領との間で中国はこの海域での開発において軍事施設化は行わず平和的な観測施設とする合意を習近平主席が交わしつつ、着々と要塞化を進める西沙諸島沖での航空母艦含む集中的な訓練を実施したとのこと。

 中国海軍による南シナ海での空母演習に対抗するようにアメリカ海軍は二つの演習を実施しました。一つは原子力空母ニミッツと原子力空母ロナルドレーガンを南シナ海へ展開、アメリカ海軍は公式声明において防空能力の最大発揮と艦載機による長距離精密攻撃能力の強化を演練した旨を発表しています。そしてこの演習の規模は異例のものといえました。

 ニミッツとロナルドレーガン、ヴェトナム戦争中にはヤンキーステーションとして複数の米空母が遊弋していた海域ではありますが、ヴェトナム戦争後では異例で、実際、南シナ海にアメリカ海軍空母2隻が展開するのは2014年以来とのことで、2014年以前では2001年に実施して以来といいますので、21世紀では二回目、といえば特殊性が分かりましょう。

 インディペンデンス級沿海域戦闘艦とステッドファスト級フリゲイト。アメリカ海軍はこの時期に二つの演習を実施したと前述しましたが、もうひとつの演習はシンガポール海軍とアメリカ海軍との合同演習でした。インディペンデンス級沿海域戦闘艦ガブリエルギフォーズはこの航海で同時に航行の自由作戦を実施、アメリカのプレゼンスを示したかたち。

 平和的観測施設を習近平主席がオバマ大統領に約束して五年、飛行場施設は地対空ミサイルと海軍歩兵部隊に3000t級フリゲイト3隻が同時接岸できる岸壁を有し、超水平線レーダを建設したことで東南アジア地域全域を監視できる体制を構築、更に空母部隊による演習を実施し、いわば東南アジア全域を中国勢力圏へ収める要塞となりつつある現状です。

 アメリカ海軍は、しかし2001年から数えて三回目という空母二隻による演習を実施したのは前述の通りですが、このプレゼンスを一時的にとどめる余裕は与えないようで、第三の空母、セオドアルーズベルトがフィリピン東方海域において訓練を実施中、必要であれば南シナ海に原子力空母三隻の打撃群を展開させる能力を示唆しており、覚悟が垣間見える。

 日本にとり、南シナ海は東南アジアとの多国間国際分業による部品サプライ網の根幹を担う重要なシーレーンが通ります。一説には中東からの石油シーレーンは南シナ海を避け豪州北方を太平洋へ迂回した場合でもそれほど輸送費用は影響しないという主張はありますが、東南アジアからの多国間国際分業サプライチェーン輸送網はそうはいきません。

 結局のところ、北東アジア情勢と東南アジア情勢の緊張は単なる一過性のものではなく、軍事的な現状変更を試みる動き、海洋自由原則という第二次世界大戦以来の国際公序から海洋閉塞という地域的な公序改編の試みが、極めて憂慮する摩擦を引き起こすよう思えます。表面的緊張緩和にあまり意味は無く、日本は深い意味での長期対応が求められています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)

コメント (6)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【京都発幕間旅情】長浜城,大... | トップ | 令和二年度七月期 陸海空自... »
最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (反市民のミカタ)
2020-07-22 20:44:25
コリア参った。
頑張って世界一を目指して下さい。
なお、このブログははるな様が独自の視点で客観的に分析されているので、ご覧になるとあなたの世界一のプライドが傷つきますよ。
閲覧(訪問)されない事をお薦めします。
返信する
Unknown (市民のミカタ)
2020-07-22 00:24:51
これからはコリアの時代だ
日本の若者は韓国語を勉強するべき
返信する
Unknown (人民の目)
2020-07-20 03:48:41
釣魚島領海に侵入している日本漁船の拿捕を実行するべきでしょう。人民解放海軍の派兵も視野に対日行動は原理原則を貫徹すべし。今こそ、中国包囲網を主導し中国の発展を阻害し続けている日本を懲罰する時だ。一撃無くして日本の対中友好政策への転換は全く期待できない。
返信する
矛盾しているのでは? (ドナルド)
2020-07-18 23:05:24
尖閣を侵略すれば、日本はますます米国との同盟をふかめる「しかなくなり」ます。選択肢がなくなるのです。

だって、中国は沖縄だって日本じゃないとか言っている人がいるし、南鳥島のただの岩礁で、そのうち中国が南沙諸島でやっているように、中国が侵略した挙句要塞化しようとするでしょう?まさにフィリピンに対してやったことであり、実績と証拠があります。

見え見えですよね、その未来は。

中国が日本と米国の離反を狙うなら、逆に尖閣を日本のものと条約で正式に認め、台湾を絶対に軍事侵略はしないと憲法に定めて台湾と明確な条約を結び、香港の一国二制度の形骸化をやめ、代わりに憲法で1国2制度を国是=国の理念として保証し(「社会主義中華と資本主義中華の連邦」とか、美しそうな理念は十分ありえる。当然台湾の代表も、香港の代表も、新しい中国中央政府に代表を送り込むイメージ)、その代わりに在日米軍の沖縄基地の撤退を条件にする(ある程度人気が出る意見でしょう)、とかの方が良いのでは?

実際問題、中国がこのような動きをし、米国があの政権のままだと、結構深刻に、米国と日本の離反が一定の可能性を持つと思いますよ?
返信する
Unknown (反人民の目)
2020-07-18 19:44:06
人民の目とは、「中華人民共和国民の目」ということか。
天安門事件のようなことを平気でやる国の人間、或いはそれを賛同する人々には、人権や平和を語る資格は無いと考えます。
事実、香港でも同様の人権侵害や自由の抑圧をおこなっいる。ウイグルでも。
このブログはさは左翼や中国のプロバガンダの場ではありません。即刻退出して下さい。
はるな様、これからも良い記事を続けて下さい。楽しみにしております。
返信する
Unknown (人民の目)
2020-07-18 14:41:50
日米があくまでも中国包囲網をあきらめようとしないのなら中国としてはやむを得ないが、日米への打撃を真剣に考えなければならないでしょう。
日本が一番やられたくないであろう、『尖閣』問題で対日痛撃を加えることが可能です。中国海警局艦船は既に日本よりも実効支配を確立しております。日本漁船への法執行も確実に積み上げており、日本が妨害すれば日本側による一方的現状変更として国際的慣例に反する非難行動に当たります。中国としては着実に日本を追い込み、実力行使も示唆することでさらに有利な状況を推し進められます。
アメリカが尖閣に出てこられないようにすることで日本の肉をゆっくりと削いでいく。日米離反も進む。やられたくなければ、日米は反中主義を捨てよ
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

国際・政治」カテゴリの最新記事