■週報:世界の防衛,最新11論点
今回は航空関連の話題を特に練習機と戦闘機に関するものを中心に紹介しましょう、ただ最初は宇宙の話題が入ってきました。
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航空自衛隊は防府北基地へ第2宇宙作戦隊を創設する、11月14日に発表されました。宇宙作戦隊は現在、旧航空総隊司令部施設を利用し府中基地に置かれていますが、来年度に新たに山口県に第2宇宙作戦隊を設置、これに併せて府中基地の宇宙作戦隊は第1宇宙作戦隊へ改編され、2個の宇宙作戦隊を以て上級部隊の宇宙作戦群が創設される方針という。
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第2宇宙作戦隊創設は、岸防衛大臣の防府北基地視察に際して発表されました。防府北基地には第13飛行教育団のT-7練習機部隊が配置されていますが、第2宇宙作戦隊は同じ山口県の山陽小野田市に建設が進む宇宙観測用レーダーを用いて20名規模で宇宙デブリや攻撃人工衛星の識別を実施するとのこと。自衛隊は宇宙空間での防衛力整備を急いでいます。
■自衛隊M-346練習機教育IFTS委託
T-4練習機のエンジン補修問題に加えてそろそろ真剣に考えねばならない後継機の問題が突き付けられている。
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航空自衛隊は10月26日、イタリア空軍との間で航空要員練習教育IFTS委託協定を締結しました。IFTS委託教育ではイタリア空軍が保有するM-346練習機による航空要員教育が実施されており、F-15戦闘機要員やF-2戦闘機要員養成を行う方針という。なお、欧州NATO諸国には輸出されていない三菱重工製F-2やF-15を運用する空軍はありません。
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航空自衛隊はアメリカ空軍へ戦闘機要員養成委託教育を実施していますが、老朽化したT-38高等練習機に搭乗していた航空自衛官が墜落し殉職する事故も発生しています。今回のIFTS委託がアメリカ留学を代替するものであるのか、航空自衛隊が将来的にT-4練習機後継機としてガリレオ社製M-346練習機を導入する布石であるかは、判別できません。
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T-4練習機後継機については、航空自衛隊は200機以上を導入し中等練習機としての用途他に高等練習機区分の一部、そして連絡機や技量維持の用途に多数を運用していますが、川崎重工での生産終了から長く、後継機の必要性が指摘されています。後継機としては国産機やM-346,アメリカ製T-7高等練習機等が考えられますが、選定は開始されていません。
■宮古島へ戦闘機配備
代替滑走路ならばともかくとして大陸に近い先島諸島に戦闘機を配備するならば滑走路は最低三本用意し格納庫やエプロンを地下に設置し、最低でも5mの暑さの防護壁で守らなければ離陸前に全滅です。
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航空自衛隊は宮古島に戦闘機部隊配置を検討している、産経新聞が11月6日に報道しました。南西諸島周辺では中国空軍及び中国海軍艦艇の行動が活発である一方で、航空自衛隊飛行場は那覇基地に限られており、那覇基地は中国の中距離弾道弾や巡航ミサイルの射程内に在ります。在日米軍には普天間飛行場、嘉手納基地等がありますが共に本島にある。
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宮古島への戦闘機配備は産経新聞報道では、戦闘機は飛行隊単位の基地ではなく暫定配備という方式を検討しているといい、これは北海道の八雲分屯基地や計根別飛行場のような代替滑走路を想定しているのかもしれません。ただ、産経新聞以外に宮古島への戦闘機部隊配備の報道はありません。現在宮古島には陸上自衛隊の宮古島警備隊が置かれています。
■クロアチア,ラファール商談
結局最初に言われた改修費用さえ出せば機体そのものは少し古いラファールを無償提供というフランス提案は何処へ行ったのでしょうか。
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フランスのラファール戦闘機はクロアチアとアラブ首長国連邦に合計92機を販売する見通しです。クロアチアは2020年より中古機か新造機かを交渉していました12機の輸出が成約しました。またアラブ首長国連邦は80機というまとまった機数の輸出がミラージュ2000戦闘機後継機として前進した形で、実に92機という大規模な輸出という構図です。
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ラファール戦闘機はユーロファイタータイフーン戦闘機と比較し後塵を拝する構図となっていましたが、ユーロファイタータイフーンが様々な不具合と機体構造寿命の計算外の短さという問題が露呈する中で、ラファールは先行して開発されていたミラージュ2000戦闘機の後継機という位置づけにて、遅ればせながらの堅実な海外販売を進めているもよう。
■カナダF-X,二機種絞り込み
F-X次期戦闘機選定はなにかこうJAS-39という素晴らしい戦闘機を充て馬に仕立ててF-35を少しでも安価に仕入れようとしているように見える。
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F/A-18E/F白紙撤回のカナダ次期戦闘機FFCP計画はアメリカ製F-35A戦闘機とスウェーデン製JAS-39E戦闘機の二機種に絞られました。早ければ2022年にも機種を選定し2025年から運用を開始したいとのことですが、カナダ軍次期戦闘機はコスト見積もりの甘さを経て、暫定案が全て失敗した為後が無い状態であり、今度こそ画定するのでしょうか。
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コスト面で考えるならばJAS-39戦闘機ですが、伸びしろに限界のある第4.5世代戦闘機です、対するF-35Aは機体費用では高価な航空機ですが、メーカーによれば30年間運用した場合のライフサイクルコストではJAS-39よりもむしろ安価であるとしていて、また飛行訓練以外に地上でのシミュレーターによる訓練比重を高く出来る点が利点とのことです。
■T-7A練習機評価試験順調
JAS-39から生まれたT-7A戦闘機を見ますと日本もF-2後継機の後継はT-2とF-1のような双子の航空機が必要なように思えてくる。
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アメリカ空軍は最新のT-7Aレッドホーク練習機用射出座席システムの評価支援を完了しました。ニューメキシコ州ホロマン空軍基地において第704航空評価試験群第846評価試験飛行隊ではT-7A練習機の様々な状況での緊急脱出を想定した試験を繰り返しており、テネシー州アーノルド空軍基地の試験施設も参加して2022年一杯安全確認を行うとされます。
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T-38タロン高等練習機の後継機として、T-7Aレッドホーク練習機はスウェーデンのサーブ社とボーイング社が共同開発したもので、JAS-39戦闘機の技術が応用されています。T-38練習機は1000機以上が量産された優れた航空機ですが、初飛行が1959年と古く、維持費用が急上昇していると共に安全性の問題も指摘されており、T-7Aの実用化が期待されます。
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T-7Aレッドホーク練習機の特色の一つは、F-35戦闘機要員養成に特化した機体である点で、F-35戦闘機は従来のF-15戦闘機やF-16戦闘機が格闘戦を重視していたのに対し、機上電子機器の操作による視程外戦闘能力を重視しており、それだけに要員に求められる技術が異なります、一方単座型のみしかないF-35は操縦経験も必要でT-7Aはその為の機体です。
■アメリカのT-7A工場新設
防衛装備品の国産能力のある国へ海外製装備を売り込む際には雇用を現地に産むという視点も非常に大事なのです。
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スウェーデンのサーブ社はアメリカのインディアナ州に10万平方フィートに登る巨大新工場を建設しています、これはサーブ社は創設されて以来最大規模の海外工場であり、スウェーデン政府もこの計画を後押ししています、T-7Aレッドホーク練習機の製造拠点となっていますが、これはボーイング社とサーブ社の共同開発であり、サーブ社生産分を担う。
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T-7Aレッドホーク練習機はアメリカ空軍の要求に基づきF-35戦闘機操縦要員養成を第一として設計されている航空機である為、サーブ社では各国で採用が進むF-35に併せて、アメリカ空軍の他にもF-35採用国への幅広い採用を期待しています。10万平方フィートに登る巨大新工場は、こうした国への輸出を見込んでの新規建設と云えるのかもしれません。
■アゼルバイジャンJF-17検討
JF-17サンダー戦闘機は順調に売れているようで正直凄いですよね、もっとも写真が手元にないのでF-2戦闘機の写真で代用ですが。
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アゼルバイジャン空軍は中国パキスタン共同開発のJF-17サンダー戦闘機導入の検討を開始しました。JF-17サンダー戦闘機は世界で最も安価な4.5世代戦闘機で、中国が設計しパキスタンが製造を担当、視程外空対空戦闘能力を有すると共に空対地及び空対艦戦闘能力を持つ、F-16戦闘機開発当時のコンセプトを2020年代に再現している中華戦闘機です。
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JF-17サンダー戦闘機の利点は取得費用が1600万ドルから1800万ドルと、F-16V戦闘機の五分の一程度と安価である点で、アゼルバイジャン空軍は2015年に導入を検討しましたが、その際には実現しませんでした。エンジンはKlimovRD-93、NRIET/CETC KLJ-7AレーダーはAESA方式を採用し、機体制御にはフライバイワイヤ方式を採用しています。
■フィリピン,ブロンコ復活
COIN機まで必要な程に大変な事になっているというフィリピン情勢です。
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フィリピン空軍は退役させたOV-10ブロンコ軽攻撃機を再就役させる事となりました。周辺情勢の緊迫化を受けての異例の措置といえましょう。これはかつてフィリピン軍が運用し、退役しフィリピンのカヴィテ海軍工廠にて保管状態にあった機体を再整備し飛行可能としたもので、11月、フィリピン空軍第15航空団において再就役式典を実施しています。
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OV-10ブロンコ軽攻撃機はCOIN機としてアメリカのノースアメリカン社が1965年に開発した航空機で、当初はアメリカ海兵隊の観測機として開発される計画でしたが、アメリカ空軍がヴェトナム戦争において対地攻撃任務に当る旧型のA-1スカイレーダー攻撃機の後継機を必要としたことから、LARA軽武装偵察航空機計画として発展してゆきました。
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COIN機とは対叛乱鎮圧機を意味し、軽武装のゲリラなどに威力を発揮する一方で高度な地対空ミサイル等で武装した正規軍に対しては能力が限定的です。しかし、乗員2名に加え空挺兵6名を空輸する事も可能ですし、1.5tまでの各種爆弾を搭載可能、7.62mm機銃4丁を対地攻撃用に搭載、観測機として設計され滞空時間も長く哨戒機として運用可能です。
■タイフーンがクウェート到着
ユーロファイタータイフーン戦闘機に久々の明るい話題到来という所でしょうか。
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クウェート空軍はユーロファイタータイフーン戦闘機の受領を開始しました。2021年12月14日にクウェート空軍に引き渡されたのは初号機と2号機で、クウェート空軍は28機のユーロファイター戦闘機を導入する。ユーロファイター戦闘機は新規採用国で同じ欧州機のラファール戦闘機好調に対して近年低迷が続いていましたが、久々に運用国増加です。
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ユーロファイター戦闘機はレオナルド社とBAEシステムズ及びエアバスディフェンスアンドスペース社の合資会社であるユーロファイターGmbHコンソーシアムが製造を担当していますが、今回のクウェートへのユーロファイター戦闘機引渡はイタリア空軍による綿密な支援で行われており、これらはユーロファイター国際協力プログラムを構成しています。
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ユーロファイター戦闘機の初飛行は1994年、しかし国際共同開発に手間取り運用開始は2003年、AESAレーダー開発は2020年代まで時間を要しました。開発国のドイツは181機、イギリスは160機、イタリアは96機、スペインは73機を取得、輸出はオーストリアの15機やサウジアラビアの72機、カタールの24機やオマーン12機など実績があります。
■イタリア空軍の戦闘機輸出支援
ユーロファイタータイフーン戦闘機という大物を輸出するには企業だけではなく軍隊の支援が必要だという事を示している。
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イタリア空軍はクウェート空軍のユーロファイター戦闘機配備を全面協力したとのことです。イタリア空軍はクウェート空軍ユーロファイター取得に当り、グロッセート空軍基地の第20航空団第4飛行隊にてクウェート操縦士の機種転換訓練と整備員の整備訓練を実施、フェリー飛行はプラティカディマーレ基地のKC-767空中給油機2機が支援しました。
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クウェート空軍はユーロファイター戦闘機をアルセーラム空軍基地に配備していますが、イタリア空軍とイタリアの防衛大手ガリレオ社は整備要員やテストパイロットを派遣しクウェート空軍におけるOCU作戦転換部隊養成を支援しており、現代の防衛装備品輸出は官民一体と訓練体系構築では民間軍事会社でなく軍の海外派遣が必要であると示しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
今回は航空関連の話題を特に練習機と戦闘機に関するものを中心に紹介しましょう、ただ最初は宇宙の話題が入ってきました。
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航空自衛隊は防府北基地へ第2宇宙作戦隊を創設する、11月14日に発表されました。宇宙作戦隊は現在、旧航空総隊司令部施設を利用し府中基地に置かれていますが、来年度に新たに山口県に第2宇宙作戦隊を設置、これに併せて府中基地の宇宙作戦隊は第1宇宙作戦隊へ改編され、2個の宇宙作戦隊を以て上級部隊の宇宙作戦群が創設される方針という。
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第2宇宙作戦隊創設は、岸防衛大臣の防府北基地視察に際して発表されました。防府北基地には第13飛行教育団のT-7練習機部隊が配置されていますが、第2宇宙作戦隊は同じ山口県の山陽小野田市に建設が進む宇宙観測用レーダーを用いて20名規模で宇宙デブリや攻撃人工衛星の識別を実施するとのこと。自衛隊は宇宙空間での防衛力整備を急いでいます。
■自衛隊M-346練習機教育IFTS委託
T-4練習機のエンジン補修問題に加えてそろそろ真剣に考えねばならない後継機の問題が突き付けられている。
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航空自衛隊は10月26日、イタリア空軍との間で航空要員練習教育IFTS委託協定を締結しました。IFTS委託教育ではイタリア空軍が保有するM-346練習機による航空要員教育が実施されており、F-15戦闘機要員やF-2戦闘機要員養成を行う方針という。なお、欧州NATO諸国には輸出されていない三菱重工製F-2やF-15を運用する空軍はありません。
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航空自衛隊はアメリカ空軍へ戦闘機要員養成委託教育を実施していますが、老朽化したT-38高等練習機に搭乗していた航空自衛官が墜落し殉職する事故も発生しています。今回のIFTS委託がアメリカ留学を代替するものであるのか、航空自衛隊が将来的にT-4練習機後継機としてガリレオ社製M-346練習機を導入する布石であるかは、判別できません。
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T-4練習機後継機については、航空自衛隊は200機以上を導入し中等練習機としての用途他に高等練習機区分の一部、そして連絡機や技量維持の用途に多数を運用していますが、川崎重工での生産終了から長く、後継機の必要性が指摘されています。後継機としては国産機やM-346,アメリカ製T-7高等練習機等が考えられますが、選定は開始されていません。
■宮古島へ戦闘機配備
代替滑走路ならばともかくとして大陸に近い先島諸島に戦闘機を配備するならば滑走路は最低三本用意し格納庫やエプロンを地下に設置し、最低でも5mの暑さの防護壁で守らなければ離陸前に全滅です。
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宮古島への戦闘機配備は産経新聞報道では、戦闘機は飛行隊単位の基地ではなく暫定配備という方式を検討しているといい、これは北海道の八雲分屯基地や計根別飛行場のような代替滑走路を想定しているのかもしれません。ただ、産経新聞以外に宮古島への戦闘機部隊配備の報道はありません。現在宮古島には陸上自衛隊の宮古島警備隊が置かれています。
■クロアチア,ラファール商談
結局最初に言われた改修費用さえ出せば機体そのものは少し古いラファールを無償提供というフランス提案は何処へ行ったのでしょうか。
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フランスのラファール戦闘機はクロアチアとアラブ首長国連邦に合計92機を販売する見通しです。クロアチアは2020年より中古機か新造機かを交渉していました12機の輸出が成約しました。またアラブ首長国連邦は80機というまとまった機数の輸出がミラージュ2000戦闘機後継機として前進した形で、実に92機という大規模な輸出という構図です。
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■カナダF-X,二機種絞り込み
F-X次期戦闘機選定はなにかこうJAS-39という素晴らしい戦闘機を充て馬に仕立ててF-35を少しでも安価に仕入れようとしているように見える。
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コスト面で考えるならばJAS-39戦闘機ですが、伸びしろに限界のある第4.5世代戦闘機です、対するF-35Aは機体費用では高価な航空機ですが、メーカーによれば30年間運用した場合のライフサイクルコストではJAS-39よりもむしろ安価であるとしていて、また飛行訓練以外に地上でのシミュレーターによる訓練比重を高く出来る点が利点とのことです。
■T-7A練習機評価試験順調
JAS-39から生まれたT-7A戦闘機を見ますと日本もF-2後継機の後継はT-2とF-1のような双子の航空機が必要なように思えてくる。
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アメリカ空軍は最新のT-7Aレッドホーク練習機用射出座席システムの評価支援を完了しました。ニューメキシコ州ホロマン空軍基地において第704航空評価試験群第846評価試験飛行隊ではT-7A練習機の様々な状況での緊急脱出を想定した試験を繰り返しており、テネシー州アーノルド空軍基地の試験施設も参加して2022年一杯安全確認を行うとされます。
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T-38タロン高等練習機の後継機として、T-7Aレッドホーク練習機はスウェーデンのサーブ社とボーイング社が共同開発したもので、JAS-39戦闘機の技術が応用されています。T-38練習機は1000機以上が量産された優れた航空機ですが、初飛行が1959年と古く、維持費用が急上昇していると共に安全性の問題も指摘されており、T-7Aの実用化が期待されます。
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T-7Aレッドホーク練習機の特色の一つは、F-35戦闘機要員養成に特化した機体である点で、F-35戦闘機は従来のF-15戦闘機やF-16戦闘機が格闘戦を重視していたのに対し、機上電子機器の操作による視程外戦闘能力を重視しており、それだけに要員に求められる技術が異なります、一方単座型のみしかないF-35は操縦経験も必要でT-7Aはその為の機体です。
■アメリカのT-7A工場新設
防衛装備品の国産能力のある国へ海外製装備を売り込む際には雇用を現地に産むという視点も非常に大事なのです。
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スウェーデンのサーブ社はアメリカのインディアナ州に10万平方フィートに登る巨大新工場を建設しています、これはサーブ社は創設されて以来最大規模の海外工場であり、スウェーデン政府もこの計画を後押ししています、T-7Aレッドホーク練習機の製造拠点となっていますが、これはボーイング社とサーブ社の共同開発であり、サーブ社生産分を担う。
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T-7Aレッドホーク練習機はアメリカ空軍の要求に基づきF-35戦闘機操縦要員養成を第一として設計されている航空機である為、サーブ社では各国で採用が進むF-35に併せて、アメリカ空軍の他にもF-35採用国への幅広い採用を期待しています。10万平方フィートに登る巨大新工場は、こうした国への輸出を見込んでの新規建設と云えるのかもしれません。
■アゼルバイジャンJF-17検討
JF-17サンダー戦闘機は順調に売れているようで正直凄いですよね、もっとも写真が手元にないのでF-2戦闘機の写真で代用ですが。
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アゼルバイジャン空軍は中国パキスタン共同開発のJF-17サンダー戦闘機導入の検討を開始しました。JF-17サンダー戦闘機は世界で最も安価な4.5世代戦闘機で、中国が設計しパキスタンが製造を担当、視程外空対空戦闘能力を有すると共に空対地及び空対艦戦闘能力を持つ、F-16戦闘機開発当時のコンセプトを2020年代に再現している中華戦闘機です。
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JF-17サンダー戦闘機の利点は取得費用が1600万ドルから1800万ドルと、F-16V戦闘機の五分の一程度と安価である点で、アゼルバイジャン空軍は2015年に導入を検討しましたが、その際には実現しませんでした。エンジンはKlimovRD-93、NRIET/CETC KLJ-7AレーダーはAESA方式を採用し、機体制御にはフライバイワイヤ方式を採用しています。
■フィリピン,ブロンコ復活
COIN機まで必要な程に大変な事になっているというフィリピン情勢です。
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フィリピン空軍は退役させたOV-10ブロンコ軽攻撃機を再就役させる事となりました。周辺情勢の緊迫化を受けての異例の措置といえましょう。これはかつてフィリピン軍が運用し、退役しフィリピンのカヴィテ海軍工廠にて保管状態にあった機体を再整備し飛行可能としたもので、11月、フィリピン空軍第15航空団において再就役式典を実施しています。
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OV-10ブロンコ軽攻撃機はCOIN機としてアメリカのノースアメリカン社が1965年に開発した航空機で、当初はアメリカ海兵隊の観測機として開発される計画でしたが、アメリカ空軍がヴェトナム戦争において対地攻撃任務に当る旧型のA-1スカイレーダー攻撃機の後継機を必要としたことから、LARA軽武装偵察航空機計画として発展してゆきました。
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COIN機とは対叛乱鎮圧機を意味し、軽武装のゲリラなどに威力を発揮する一方で高度な地対空ミサイル等で武装した正規軍に対しては能力が限定的です。しかし、乗員2名に加え空挺兵6名を空輸する事も可能ですし、1.5tまでの各種爆弾を搭載可能、7.62mm機銃4丁を対地攻撃用に搭載、観測機として設計され滞空時間も長く哨戒機として運用可能です。
■タイフーンがクウェート到着
ユーロファイタータイフーン戦闘機に久々の明るい話題到来という所でしょうか。
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クウェート空軍はユーロファイタータイフーン戦闘機の受領を開始しました。2021年12月14日にクウェート空軍に引き渡されたのは初号機と2号機で、クウェート空軍は28機のユーロファイター戦闘機を導入する。ユーロファイター戦闘機は新規採用国で同じ欧州機のラファール戦闘機好調に対して近年低迷が続いていましたが、久々に運用国増加です。
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ユーロファイター戦闘機はレオナルド社とBAEシステムズ及びエアバスディフェンスアンドスペース社の合資会社であるユーロファイターGmbHコンソーシアムが製造を担当していますが、今回のクウェートへのユーロファイター戦闘機引渡はイタリア空軍による綿密な支援で行われており、これらはユーロファイター国際協力プログラムを構成しています。
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ユーロファイター戦闘機の初飛行は1994年、しかし国際共同開発に手間取り運用開始は2003年、AESAレーダー開発は2020年代まで時間を要しました。開発国のドイツは181機、イギリスは160機、イタリアは96機、スペインは73機を取得、輸出はオーストリアの15機やサウジアラビアの72機、カタールの24機やオマーン12機など実績があります。
■イタリア空軍の戦闘機輸出支援
ユーロファイタータイフーン戦闘機という大物を輸出するには企業だけではなく軍隊の支援が必要だという事を示している。
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イタリア空軍はクウェート空軍のユーロファイター戦闘機配備を全面協力したとのことです。イタリア空軍はクウェート空軍ユーロファイター取得に当り、グロッセート空軍基地の第20航空団第4飛行隊にてクウェート操縦士の機種転換訓練と整備員の整備訓練を実施、フェリー飛行はプラティカディマーレ基地のKC-767空中給油機2機が支援しました。
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クウェート空軍はユーロファイター戦闘機をアルセーラム空軍基地に配備していますが、イタリア空軍とイタリアの防衛大手ガリレオ社は整備要員やテストパイロットを派遣しクウェート空軍におけるOCU作戦転換部隊養成を支援しており、現代の防衛装備品輸出は官民一体と訓練体系構築では民間軍事会社でなく軍の海外派遣が必要であると示しています。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本も新たなCOIN機の導入を検討してもいいのではないでしょうか?