■報道を分析する手法
ウクライナ軍は南部と東部で反撃に転じました。現在の報道は軍事的な知識があると全容を理解する大きな助けとなるのですが要諦となる手法を、無関係に勇壮な第7師団の写真とともに、挙げてみます。
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南部ヘルソン州においてウクライナ軍の反撃成功、CNNやNHKにBBCやF2とZDFにCBCとABCで報道され、ロシアのRTRがウクライナ軍の反撃の大半を撃退したと報道、これを見ますと何処を信じれが良いのかと疑心暗鬼になってしまうかもしれません、もしかするとゼレンスキー大統領の発表に根拠は、という。しかし、これには理由があります。
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九月に入っての南部ヘルソン州でのウクライナ軍反撃はドニエプル川に向け、ウクライナ軍は四方向から攻撃を開始しました。さて、軍事行動における攻撃は接敵行動-攻撃-戦果拡張-追撃、という四要素から構成されています。そしてこの手順に基づき、攻勢位置、攻勢時間、非突撃攻撃位置、接近経路、こうしたものを敵情と地形と天候や時間で計画化する。
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遮二無二前に横一列に並び津波の様に進む戦術は勇壮に見えますが単純い進むだけでは各個撃破されます、これは2月にロシア軍が行い失敗した手法ですが、前面に渡り突破口を探るのは本来偵察部隊の任務であり、これを考えずに物量に物を言わせる戦術は冷戦時代にソ連軍が構築していた戦術ですが、40年以上前に対抗する手段が開発されているのです。
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攻撃作戦は上記に基づき、OA前進軸、FCL最終到達予定線、LOA前進限界線、LD発起線、OB目標、PD発起地点、PLD展開予想線、ORP再集結点、支援火器位置、各攻撃段階時間、こうしたものを設定するのですが、するとOAは一本化する必要があり、四か所から攻撃を開始するとしてもOAを四本、つまり戦力を分散させてはならないのですね。
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前進軸は一本化する、大切なのはOA前進軸を相手に悟らせないようにする事です。すると一本化するとは言っても部隊を一カ所に纏めて進撃しますと、敵もOA前進軸を悟り一カ所を集中的に防御を固めます、だからこそ、OA前進軸を秘匿する為に複数の場所で同時に攻撃を開始し、どれが本命であるかOA前進軸を隠す事となります、つまりは陽動だ。
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PLD展開予想線はこうした陽動を元に作成します、PLD展開予想線は陽動とともにOA前進軸を相手が察知した場合でもOA前進軸に敵が戦力を集中させないよう拘束する任務があり、要するに陽動であっても簡単に撤退するのではなく、相手をこちらの主力に転進させられないように、釘づけとする。戦果を挙げられなくとも戦闘を継続する必要がある。
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LOA前進限界線を相手に悟らせてはいけません、そして攻撃する部隊もこの線を越えて攻撃するならば火力支援や補給などで息切れし相手に逆襲されるというLOA前進限界線も認識して作戦を建てねばなりません、そして任務が占領ではなく撃破である場合にはORP再集結点を明確とし、目の前に破壊できそうな目標が有っても深追いせぬ認識共有が必要だ。
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南部ヘルソン州でのウクライナ軍反撃は、第一段階のOB目標はロシア軍の後方連絡線となる橋梁の破壊と補給拠点の破壊でした。四か所で始まった攻撃のOA前進軸は、やはり一本でした、そしてLOA前進限界線を越える事無く任務を完遂、ORP再集結点に集結すると後退を開始します。作戦の目的はロシア軍の補給を遮断し弱体化させることにあった。
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反撃の大半を撃退したというロシア側の主張は、OA前進軸以外のPLD展開予想線に沿ってのウクライナ軍攻撃、つまり四本ある攻撃の内の陽動である三本を阻止したのだから間違いではありません、多少不謹慎ですがスポーツに喩えればいい戦いをして試合に負けたという構図なのかもしれません。ウクライナ軍は損害を抑えて軍事目標を達成したかたち。
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ウクライナ軍の反撃成功は、続いてここ数日間の南部での地域奪還への攻撃再開で見て取れます、ロシア軍は補給線を破壊された為、弾薬の補給などは勿論、部隊の後退や損傷した装備の更新も出来ない状況となっている、つまり撃てば撃つほど弾薬が枯渇し弱ってきている為に、今度は一撃離脱のような戦闘ではなく、地域を取り返すという次の段階へ。
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ゼレンスキー大統領の発表はプロパガンダではないか、ロシア発表だけを見る限りにはこうした疑心暗鬼に陥りますが、実態はこうしたところにあるのですね。逆に、適当な作戦を組まずに慎重にロシア軍の侵攻部隊を各個撃破するか補給を叩き弱体化させたうえで、どの程度弾薬や物資を消耗させたうえで次の段階へ反撃を開始する、細心大胆といえる。
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ハリコフ州でのウクライナ軍反撃開始、感心するのは東部戦線からロシア軍はヘルソン州占領地域防衛へ兵力を引抜くために戦力が手薄となった際に、前線でロシア軍を釘づけしていた部隊を即座に攻撃部隊へ再編制し、その反撃を成功させている事です。ウクライナ軍は時機を逃さず軍事行動に転換できる柔軟な作戦体系と指揮系統を有しているのが分ります。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ軍は南部と東部で反撃に転じました。現在の報道は軍事的な知識があると全容を理解する大きな助けとなるのですが要諦となる手法を、無関係に勇壮な第7師団の写真とともに、挙げてみます。
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南部ヘルソン州においてウクライナ軍の反撃成功、CNNやNHKにBBCやF2とZDFにCBCとABCで報道され、ロシアのRTRがウクライナ軍の反撃の大半を撃退したと報道、これを見ますと何処を信じれが良いのかと疑心暗鬼になってしまうかもしれません、もしかするとゼレンスキー大統領の発表に根拠は、という。しかし、これには理由があります。
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九月に入っての南部ヘルソン州でのウクライナ軍反撃はドニエプル川に向け、ウクライナ軍は四方向から攻撃を開始しました。さて、軍事行動における攻撃は接敵行動-攻撃-戦果拡張-追撃、という四要素から構成されています。そしてこの手順に基づき、攻勢位置、攻勢時間、非突撃攻撃位置、接近経路、こうしたものを敵情と地形と天候や時間で計画化する。
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攻撃作戦は上記に基づき、OA前進軸、FCL最終到達予定線、LOA前進限界線、LD発起線、OB目標、PD発起地点、PLD展開予想線、ORP再集結点、支援火器位置、各攻撃段階時間、こうしたものを設定するのですが、するとOAは一本化する必要があり、四か所から攻撃を開始するとしてもOAを四本、つまり戦力を分散させてはならないのですね。
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前進軸は一本化する、大切なのはOA前進軸を相手に悟らせないようにする事です。すると一本化するとは言っても部隊を一カ所に纏めて進撃しますと、敵もOA前進軸を悟り一カ所を集中的に防御を固めます、だからこそ、OA前進軸を秘匿する為に複数の場所で同時に攻撃を開始し、どれが本命であるかOA前進軸を隠す事となります、つまりは陽動だ。
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PLD展開予想線はこうした陽動を元に作成します、PLD展開予想線は陽動とともにOA前進軸を相手が察知した場合でもOA前進軸に敵が戦力を集中させないよう拘束する任務があり、要するに陽動であっても簡単に撤退するのではなく、相手をこちらの主力に転進させられないように、釘づけとする。戦果を挙げられなくとも戦闘を継続する必要がある。
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LOA前進限界線を相手に悟らせてはいけません、そして攻撃する部隊もこの線を越えて攻撃するならば火力支援や補給などで息切れし相手に逆襲されるというLOA前進限界線も認識して作戦を建てねばなりません、そして任務が占領ではなく撃破である場合にはORP再集結点を明確とし、目の前に破壊できそうな目標が有っても深追いせぬ認識共有が必要だ。
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南部ヘルソン州でのウクライナ軍反撃は、第一段階のOB目標はロシア軍の後方連絡線となる橋梁の破壊と補給拠点の破壊でした。四か所で始まった攻撃のOA前進軸は、やはり一本でした、そしてLOA前進限界線を越える事無く任務を完遂、ORP再集結点に集結すると後退を開始します。作戦の目的はロシア軍の補給を遮断し弱体化させることにあった。
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ゼレンスキー大統領の発表はプロパガンダではないか、ロシア発表だけを見る限りにはこうした疑心暗鬼に陥りますが、実態はこうしたところにあるのですね。逆に、適当な作戦を組まずに慎重にロシア軍の侵攻部隊を各個撃破するか補給を叩き弱体化させたうえで、どの程度弾薬や物資を消耗させたうえで次の段階へ反撃を開始する、細心大胆といえる。
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ハリコフ州でのウクライナ軍反撃開始、感心するのは東部戦線からロシア軍はヘルソン州占領地域防衛へ兵力を引抜くために戦力が手薄となった際に、前線でロシア軍を釘づけしていた部隊を即座に攻撃部隊へ再編制し、その反撃を成功させている事です。ウクライナ軍は時機を逃さず軍事行動に転換できる柔軟な作戦体系と指揮系統を有しているのが分ります。
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