■超高級装備か普及か
戦車は虎の子の奥の手たる最強装備であるのか、それとも近接戦闘における骨幹戦力であるのかという視点からアクティブ防護システムを考えてみたい。
イスラエルなどは戦車戦闘よりもイスラム過激派からのイラン製対戦車ミサイル攻撃などに戦車がさらされるため、この開発が急務となり、現実にかなり高い精度で対戦車ミサイルを迎撃するトロフィアクティヴ防護システムを完成させています。この完成度ですが、実戦での評価というよりNATOの厳しい評価基準で実用性を有していると認められました。
レオパルド2A7戦車へ、ドイツ連邦軍はトロフィアクティヴ防護システムの追加改修を決定、これはレオパルド2が重装甲を誇るものの、戦車砲弾と異なり飛来方向が予測できず戦車の装甲の薄い砲塔上部やエンジングリル部分をねらうという状況に、追加装甲で対応することはできないと現実的な判断を行い、新技術への評価試験を実施したためといえる。
エイブラムスシリーズへの追加搭載、驚いたのはアメリカもトロフィアクティヴ防護システムを評価し、M-1A2シリーズへの追加搭載を決定しました。第三世代戦車は好都合といいますか、イージス艦の艦橋に似た形状となっていて、砲塔正面部分にアクティヴ防護装置用のAESAレーダーを装着できたという点も、近代化改修を行う上で好都合という。
10式戦車、防衛装備庁はアクティヴ防護装置の開発は進めています、特殊なもので通常のアクティヴ防護装置は擲弾を投射して迎撃するものを、擲弾の場合は随伴歩兵が死傷する、装甲車に乗せていないためなのですが、この懸念から空中に膨張式クッション、つまりエアバッグを投射してミサイルの機動を阻害するという、もっとも、実験はまだなのですが。
近代化改修に耐えるのか、ここが疑問です。いや10式戦車の性能はもの凄い、それでも2010年の戦車であり今はいよいよ2020年代の半ばにさしかかっているのです。RWS遠隔操作銃塔の追加は今からでも可能でしょう、しかし乗員は3名でありRWSを各国では4名の乗員のうち装填手が操作していますが、10式戦車は文字通り動かすにも人手が足りません。
データリンク機能は2010年代当時もの凄い水準にありました、小隊の戦車1号車が照準したものの射撃した場合は発砲炎で位置が暴露する、この場合に陣地変換容易な場所に待機する2号車が、1号車の照準情報をリアルタイムで共有し見通し線外射撃を行う、これは2010年に制式化された当時には画期的といいますか、常識外の打撃力でした、けれど。
2020年代に入りますと、10式戦車のデータリンクリアルタイム目標情報共有は、まず多目的双眼鏡、これはレーザー誘導爆弾のレーザー照射装置のような、目標指示能力を有する双眼鏡なのですが、フランスのタレスなどが開発しています、かなり高価な物なのですがこれで下車した砲手や斥候が目標を指示できるようになる、これ正に技術進歩の賜物です。
2020年代はもう一つ、軍用ロボットの時代なのですが、バックポッドなど歩兵よりも前にでて索敵するロボットは2000年代からありました、2011年の東日本大震災ではアメリカ軍が福島第一原発の事故現場調査用に供与してくれました、速度は遅いが爆発物処理にも活用されるものでして、爆弾を一定水準まで解体できるマジックハンドも備えている。
斥候が戦車よりも前にでるのは危険である、当然ですね砲兵に撃たれる懸念がありますし、敵対戦車兵の伏撃を受ける危険もある。そこでMUM運用という、有人無人協同のロボットと有人兵器が協力する運用が出番を迎える。具体的には戦車から目標照準能力を備えたロボットが出撃するという運用です、場合によってはロボットにLAM弾薬を一発積む。
LAM対戦車弾薬、戦車が危険にさらされる状況ならばロボットを使い捨てる覚悟でLAMを発射し、戦車が部隊として集団での火力を投射した方が部隊が任務遂行できる、または生存できる場合にはロボットは情報収集をおこなう、こうした方式という。要するに戦車はロボット母艦となり、また砲塔後部に無人機を積み空からも斥候を行うという運用です。
300両時代、戦車が300両しか装備できないならば、戦車同士の協同だけでは対応できない部分が増えてゆきますし、何より近接戦闘部隊の宿命として損耗はある程度覚悟しなければならないにしても、若干数の損耗により部隊が機能不随となる可能性や、損傷した戦車も戦車300両を念頭とした生産基盤では防衛産業が直ぐ修理できない可能性もあります。
防衛産業の面から考えますと、戦車1000両時代ならば、年産50両という量産体制が可能となるのです、月産4両強でこれならば生産ラインを組めるのです。生産ラインは必要ならば増産にも対応できるのですが、現状の年産8両では、そもそも300両を量産するのに37年かかるののだ、急な予備部品で損耗に対応する方式は不可能となり、対策が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
戦車は虎の子の奥の手たる最強装備であるのか、それとも近接戦闘における骨幹戦力であるのかという視点からアクティブ防護システムを考えてみたい。
イスラエルなどは戦車戦闘よりもイスラム過激派からのイラン製対戦車ミサイル攻撃などに戦車がさらされるため、この開発が急務となり、現実にかなり高い精度で対戦車ミサイルを迎撃するトロフィアクティヴ防護システムを完成させています。この完成度ですが、実戦での評価というよりNATOの厳しい評価基準で実用性を有していると認められました。
レオパルド2A7戦車へ、ドイツ連邦軍はトロフィアクティヴ防護システムの追加改修を決定、これはレオパルド2が重装甲を誇るものの、戦車砲弾と異なり飛来方向が予測できず戦車の装甲の薄い砲塔上部やエンジングリル部分をねらうという状況に、追加装甲で対応することはできないと現実的な判断を行い、新技術への評価試験を実施したためといえる。
エイブラムスシリーズへの追加搭載、驚いたのはアメリカもトロフィアクティヴ防護システムを評価し、M-1A2シリーズへの追加搭載を決定しました。第三世代戦車は好都合といいますか、イージス艦の艦橋に似た形状となっていて、砲塔正面部分にアクティヴ防護装置用のAESAレーダーを装着できたという点も、近代化改修を行う上で好都合という。
10式戦車、防衛装備庁はアクティヴ防護装置の開発は進めています、特殊なもので通常のアクティヴ防護装置は擲弾を投射して迎撃するものを、擲弾の場合は随伴歩兵が死傷する、装甲車に乗せていないためなのですが、この懸念から空中に膨張式クッション、つまりエアバッグを投射してミサイルの機動を阻害するという、もっとも、実験はまだなのですが。
近代化改修に耐えるのか、ここが疑問です。いや10式戦車の性能はもの凄い、それでも2010年の戦車であり今はいよいよ2020年代の半ばにさしかかっているのです。RWS遠隔操作銃塔の追加は今からでも可能でしょう、しかし乗員は3名でありRWSを各国では4名の乗員のうち装填手が操作していますが、10式戦車は文字通り動かすにも人手が足りません。
データリンク機能は2010年代当時もの凄い水準にありました、小隊の戦車1号車が照準したものの射撃した場合は発砲炎で位置が暴露する、この場合に陣地変換容易な場所に待機する2号車が、1号車の照準情報をリアルタイムで共有し見通し線外射撃を行う、これは2010年に制式化された当時には画期的といいますか、常識外の打撃力でした、けれど。
2020年代に入りますと、10式戦車のデータリンクリアルタイム目標情報共有は、まず多目的双眼鏡、これはレーザー誘導爆弾のレーザー照射装置のような、目標指示能力を有する双眼鏡なのですが、フランスのタレスなどが開発しています、かなり高価な物なのですがこれで下車した砲手や斥候が目標を指示できるようになる、これ正に技術進歩の賜物です。
2020年代はもう一つ、軍用ロボットの時代なのですが、バックポッドなど歩兵よりも前にでて索敵するロボットは2000年代からありました、2011年の東日本大震災ではアメリカ軍が福島第一原発の事故現場調査用に供与してくれました、速度は遅いが爆発物処理にも活用されるものでして、爆弾を一定水準まで解体できるマジックハンドも備えている。
斥候が戦車よりも前にでるのは危険である、当然ですね砲兵に撃たれる懸念がありますし、敵対戦車兵の伏撃を受ける危険もある。そこでMUM運用という、有人無人協同のロボットと有人兵器が協力する運用が出番を迎える。具体的には戦車から目標照準能力を備えたロボットが出撃するという運用です、場合によってはロボットにLAM弾薬を一発積む。
LAM対戦車弾薬、戦車が危険にさらされる状況ならばロボットを使い捨てる覚悟でLAMを発射し、戦車が部隊として集団での火力を投射した方が部隊が任務遂行できる、または生存できる場合にはロボットは情報収集をおこなう、こうした方式という。要するに戦車はロボット母艦となり、また砲塔後部に無人機を積み空からも斥候を行うという運用です。
300両時代、戦車が300両しか装備できないならば、戦車同士の協同だけでは対応できない部分が増えてゆきますし、何より近接戦闘部隊の宿命として損耗はある程度覚悟しなければならないにしても、若干数の損耗により部隊が機能不随となる可能性や、損傷した戦車も戦車300両を念頭とした生産基盤では防衛産業が直ぐ修理できない可能性もあります。
防衛産業の面から考えますと、戦車1000両時代ならば、年産50両という量産体制が可能となるのです、月産4両強でこれならば生産ラインを組めるのです。生産ラインは必要ならば増産にも対応できるのですが、現状の年産8両では、そもそも300両を量産するのに37年かかるののだ、急な予備部品で損耗に対応する方式は不可能となり、対策が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)