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ミサイル防衛専用艦,ひゅうが型設計応用案【3】ながと型護衛艦案と陸上配備型の再検証

2022-09-10 20:21:17 | 防衛・安全保障
■ながと型ミサイル護衛艦
 ひゅうが型護衛艦の設計を応用し護衛艦ながと型とする、伊勢型戦艦の次が長門型戦艦という部分に妙に重なるのですが。

 ながと型護衛艦、巨大な陸上配備イージスミサイル防衛システム用のSPY-7を政治的理由から陸上に配備できなくなったため、しかし既にSPY-7はアメリカへ発注しており、キャンセスした場合は数百億円が返還されないままとなるのを回避する為に無理に海上に陸上配備システムを搭載するという無理な案に、ひゅうが型護衛艦の船体を利用する提案です。

 戦艦長門、真珠湾攻撃の際には呉軍港に連合艦隊旗艦として停泊しており、太平洋戦争の激戦が続く中でもトラック諸島に展開し動かない動かさない戦艦となっていた、第三次ソロモン海海戦などに参加していれば相応の活躍が期待できたのに、という歴史がありますが、イージスアショア艦載型ならば、まさに動かない事が日本本土の守りとなる訳ですね。

 イージスアショア代替の護衛艦設計に巨大な護衛案ひゅうが型を提示する背景にはもう一つ居住性の視点があります。ブルーリッジの様に空母型船体の中央部に蔵部構造物を配置し、航空機用エレベータの位置にミサイルのVLSを搭載する、こうした場合でも護衛艦ひゅうが型の広大な格納庫容積は充分居住性の高い設計に転用するだけの余裕が残ります。

 乗員は努めて個室、個室が難しい場合でも二人部屋として一人が当直中にはプライバシーを確保できるよう配慮する必要がありますし、イージスシステムのSPYレーダーは強力故に甲板上に出る事が不可能となりますので、艦内の体育施設や入浴施設、供用施設という名の娯楽施設なども配慮すべきでしょう、ストレスと疲労は事故に繋がる、その為のもの。

 ひびき型音響観測艦、海上自衛隊に2隻が配備され、更に3番艦が建造されている双胴船型の観測艦などは、長期間の航海に対応するべく、ほぼ個室、という良好な居住環境を確保すると共に太陽光採光型の運動施設や供用区画に余裕を持たせ、艦上での温室や野菜栽培装置まで搭載し、長期間の観測任務に対応させています。人間が乗る原則を忘れず、に。

 もっとも、イージスミサイル防衛システムは海上自衛隊がアメリカ海軍とその草創期から研究を重ねた分野であるものを、陸上自衛隊という野戦防空では世界最高水準の能力を持つがイージスシステムとは別の技術を独自構築した集団へ押しつけ、実績に疑問あるSPY-7を採用してしまった状況が始発点、追い上げには負担の覚悟が相応に必要となります。

 イージスアショア。ただ、やはり検証しなければならないのは何故SPY-7を採用したかの不明瞭な選択肢です、富士通製端子が採用されている等相応の利点は強調されるのですが、日本のイージスシステム運用の実績がSPY-1とその発展型SPY-6に依拠する事を踏まえての決定であったのか、また陸上配備を行う前提でしたが、イージス艦が省かれた理由は。

 航空自衛隊がペトリオットPAC-3ミサイルを運用しており、弾道ミサイル防衛の一翼を担っていますが、陸上自衛隊にはこれを受け巡航ミサイル防衛という別の能力が求められ、野戦防空に加え新しい能力を整備してきました、此処に弾道ミサイル防衛だ。いわば甲子園を目指し府下有数の野球部に明日からラグビーをやれと命じられ今度はサッカーだ、と。

 イージスアショアの問題は迎撃ミサイルのブースターが自衛隊施設外に落下するという、切り離したブースターの制御技術が確立しない為と云いますが、スタンダードミサイルを搭載するMk41VLS垂直発射装置は車載型が既に開発されており、ミサイルを別の場所から発射する事も可能です、こうした事情を加味せず海上に置くのは、全く納得できません。

 SPYレーダー、イージスアショアはブースター問題に終始していますが、逆にSPYレーダーから照射される強烈な電磁波の問題、動く艦艇同士での海上運用では問題は指摘されませんが数千km先を警戒するレーダー電波を常時持続的に照射された場合の周辺住民の影響などは解決されているのか、防衛装備庁が試験を行ったという話も、聞かないのですね。

 イージスアショアは動かない分、巡航ミサイル攻撃を受けやすく、また陸上自衛隊の装備体系とも異なり、12式地対艦ミサイルシステムや改良型の開発が続く03式中距離地対空誘導弾システム等の装備体系と一部重複する為、四半世紀単位で装備体系再構築に進む懸念もありました、ただ、数を装備し各方面隊に一基を配備できれば本土防衛に資するとも。

 利点も欠点も数多いですが、此処まで検討して導入を決定したのか、そもそも費用算出が既存イージス艦から機関部と航行装置や船体費用を省いた費用が競合するTHAADよりも安価という丼勘定で選定され、安価が利点でしたが実際に算出するとTHAADよりも高価、更に海上配備で高価としようとしている。何れこの決定妥当性も検証せねばなりません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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2 コメント

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Unknown (ファッツ)
2022-09-14 22:46:22
ひゅうが型はちと無駄が多い様な…。艦隊のスピードに併せて機動力取りやすくするって利点有るかもですがセル数に大きく制約受けそうな気も。Twitter上だと丁度発表された寸法そっくりなJAMSTECのちきゅうの同型艦を母体にするかアメリカの造船所が案だしたドック型揚陸艦(JMUと三井が揚陸艦の計画出してましたし)を母体にする案が大きな流れでしたね。揚陸艦案だと出されたスペックより少し小さくなりますが。
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既に設計図 (はるな)
2022-10-06 08:25:06
ファッツ さま おはようございます

ひゅうが型転用の利点ですが、既に設計図があるのが大きな意味で、艦船設計では設計費用は少なくない比率を占めます、この点でCGだけのものよりも意味はあるのかな、と
返信する

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