■改修機は教育部隊優先
川崎重工が誇る国産練習機T-4は操縦性の素直さと低い調達と運用費で現場の信頼を勝ち得ていますが、現在も昨年からの不具合問題が続きます。
T-4練習機、米軍規格にあわせた新燃料規格に対するエンジン内部の圧縮装置不具合はその判明から一年以上を経て、改修が全力で進められています。しかし、この改修完了機は優先して浜松基地第1航空団や芦屋基地第13飛行教育団など、教育部隊へ充当されています。不幸中の幸いは昨年、不具合は第3航空団により墜落前に判明し事故を回避したことです。
ブルーインパルスもT-4を運用しています。T-4練習機の改修は順次教育部隊へ配備されていたため、昨年度のブルーインパルス飛行展示は当初実施見通しが立たず、年度最初の飛行展示は遅れに遅れ八月の千歳基地航空祭までずれこむこととなりました。そしてそのブルーインパルス飛行展示も第11飛行隊の稼働機を僅か2機に絞っての再開となりました。
教育部隊が優先である。T-4は航空自衛隊では初等練習機であるT-7練習機で初めて大空を飛行した飛行学生が、ジェット機課程や計器飛行課程、そして戦闘機操縦要員を目指す場合は戦闘機戦闘訓練の初歩を学ぶ重要な機体であり、このT-4が無ければ航空自衛隊の戦闘機操縦士を養成することはほぼ不可能だ。ほぼとは米国留学でも行わねば無理ということ。
T-4練習機の不足は教育訓練部隊では徐々に解消へと動いていますが、そのしわ寄せは実戦部隊へ波及しています。T-4練習機はその名の通り練習機であり、1985年の初飛行当時は中等練習機と位置づけられていました。そして実戦部隊でも戦闘飛行隊の戦闘機と伍して、航空団司令部などに配備されており、練習任務を越え実に多用途に用いられているのです。
航空団ではT-4練習機は、指揮官の連絡飛行や飛行訓練に先んじての天候偵察、また司令部要員の航空徽章、いわゆるウイングマークを有する操縦士の資格維持への年次飛行義務時間の飛行訓練に用いられています。T-4練習機は武装することはできませんが、実戦部隊の技量維持には不可欠であることはこの通りでして、多用途機として、代わりはありません。
F-15戦闘機やF-2戦闘機。天候偵察任務はいずれにせよ必要です、技量維持飛行もやはり必要なのですが、T-4練習機が稼働状態にないため、実戦部隊ではその任務に高コストのF-15戦闘機やF-2戦闘機を用いているのです。例えるならばちょっと近所へコーヒーを買いに行くために自転車の調子が悪いためにハイヤーを呼ぶ状況、といえるものでしょうか。
60万円と200万円。T-4練習機とF-15戦闘機、一時間当たり飛行させた場合の費用はこの程度の差があるとされます。T-4練習機とF-15戦闘機はともに双発機ではありますが、戦闘機と練習機ではエンジン出力が根本から違います、重さも相応に違うためですが、併せて電子機器とレーダー機能、整備負担も根本から大きさが違います、本来訓練にも支障だ。
巨大な防衛費からみるならば140万円の差、と思われるかもしれませんが、ウイングマークを持つ司令部要員の人数は多く技量維持飛行の回数は多くなりますし、天候偵察も天候偵察などは視程のキロ数が実際どうなのか、気象レーダに映らない積乱雲などの状況はないか、を実際に確認するため、実戦部隊でのT-4の飛行任務、非常に頻度が多いのですね。
天候偵察にF-15を。傍目からみている場合には迫力があって良いのかもしれませんが、問題はF-15戦闘機にもF-2戦闘機にも、機体耐用の面から飛行時間に上限があり、本来はF-15戦闘機を不可欠とする対領空侵犯任務や対戦闘機戦闘訓練というものに充てねば成りません、ここを天候偵察で用いることは即ち、それだけ寿命がはやまることを示します。
T-7練習機で代替できないのか、いや初等練習機T-7は速度の遅さも挙げられますが何より実戦部隊に配備されておらず全体で数が少ない。戦闘機部隊の基地に展開する救難隊のU-125はジェットだがどうか、しかし救難待機を考えればこちらも数はぎりぎりだ。MQ-9無人偵察機のような機体が配備されていれば、最良ですがそんなものは無く現実は厳しい。
RF-4偵察機とYS-11輸送機。飛行時間を急激にのばしたことで退役までの時間が一挙に圧縮され早期退役となった航空機として、実際にこの二つの事例があります、後継問題に揺れた。何があったか、この時は東日本大震災災害派遣でした。RF-4は被災地への毎日毎時間にわたる偵察飛行、YS-11,海上自衛隊の方ですが、こちらは救援物資輸送のためのもの。
T-4練習機についてはエンジン部品交換後、順次飛行再開へと進んでいるのですが、前述の通り教育部隊が優先されており、実戦部隊、そして飛行開発実験団などへのT-4練習機運用再開はもう少しさきになるようでして、まだまだF-15やF-2といった戦闘機が、貴重な飛行耐用時間と防衛予算を削り、軽快なT-4練習機の任務代替を行う状況は続くことでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
川崎重工が誇る国産練習機T-4は操縦性の素直さと低い調達と運用費で現場の信頼を勝ち得ていますが、現在も昨年からの不具合問題が続きます。
T-4練習機、米軍規格にあわせた新燃料規格に対するエンジン内部の圧縮装置不具合はその判明から一年以上を経て、改修が全力で進められています。しかし、この改修完了機は優先して浜松基地第1航空団や芦屋基地第13飛行教育団など、教育部隊へ充当されています。不幸中の幸いは昨年、不具合は第3航空団により墜落前に判明し事故を回避したことです。
ブルーインパルスもT-4を運用しています。T-4練習機の改修は順次教育部隊へ配備されていたため、昨年度のブルーインパルス飛行展示は当初実施見通しが立たず、年度最初の飛行展示は遅れに遅れ八月の千歳基地航空祭までずれこむこととなりました。そしてそのブルーインパルス飛行展示も第11飛行隊の稼働機を僅か2機に絞っての再開となりました。
教育部隊が優先である。T-4は航空自衛隊では初等練習機であるT-7練習機で初めて大空を飛行した飛行学生が、ジェット機課程や計器飛行課程、そして戦闘機操縦要員を目指す場合は戦闘機戦闘訓練の初歩を学ぶ重要な機体であり、このT-4が無ければ航空自衛隊の戦闘機操縦士を養成することはほぼ不可能だ。ほぼとは米国留学でも行わねば無理ということ。
T-4練習機の不足は教育訓練部隊では徐々に解消へと動いていますが、そのしわ寄せは実戦部隊へ波及しています。T-4練習機はその名の通り練習機であり、1985年の初飛行当時は中等練習機と位置づけられていました。そして実戦部隊でも戦闘飛行隊の戦闘機と伍して、航空団司令部などに配備されており、練習任務を越え実に多用途に用いられているのです。
航空団ではT-4練習機は、指揮官の連絡飛行や飛行訓練に先んじての天候偵察、また司令部要員の航空徽章、いわゆるウイングマークを有する操縦士の資格維持への年次飛行義務時間の飛行訓練に用いられています。T-4練習機は武装することはできませんが、実戦部隊の技量維持には不可欠であることはこの通りでして、多用途機として、代わりはありません。
F-15戦闘機やF-2戦闘機。天候偵察任務はいずれにせよ必要です、技量維持飛行もやはり必要なのですが、T-4練習機が稼働状態にないため、実戦部隊ではその任務に高コストのF-15戦闘機やF-2戦闘機を用いているのです。例えるならばちょっと近所へコーヒーを買いに行くために自転車の調子が悪いためにハイヤーを呼ぶ状況、といえるものでしょうか。
60万円と200万円。T-4練習機とF-15戦闘機、一時間当たり飛行させた場合の費用はこの程度の差があるとされます。T-4練習機とF-15戦闘機はともに双発機ではありますが、戦闘機と練習機ではエンジン出力が根本から違います、重さも相応に違うためですが、併せて電子機器とレーダー機能、整備負担も根本から大きさが違います、本来訓練にも支障だ。
巨大な防衛費からみるならば140万円の差、と思われるかもしれませんが、ウイングマークを持つ司令部要員の人数は多く技量維持飛行の回数は多くなりますし、天候偵察も天候偵察などは視程のキロ数が実際どうなのか、気象レーダに映らない積乱雲などの状況はないか、を実際に確認するため、実戦部隊でのT-4の飛行任務、非常に頻度が多いのですね。
天候偵察にF-15を。傍目からみている場合には迫力があって良いのかもしれませんが、問題はF-15戦闘機にもF-2戦闘機にも、機体耐用の面から飛行時間に上限があり、本来はF-15戦闘機を不可欠とする対領空侵犯任務や対戦闘機戦闘訓練というものに充てねば成りません、ここを天候偵察で用いることは即ち、それだけ寿命がはやまることを示します。
T-7練習機で代替できないのか、いや初等練習機T-7は速度の遅さも挙げられますが何より実戦部隊に配備されておらず全体で数が少ない。戦闘機部隊の基地に展開する救難隊のU-125はジェットだがどうか、しかし救難待機を考えればこちらも数はぎりぎりだ。MQ-9無人偵察機のような機体が配備されていれば、最良ですがそんなものは無く現実は厳しい。
RF-4偵察機とYS-11輸送機。飛行時間を急激にのばしたことで退役までの時間が一挙に圧縮され早期退役となった航空機として、実際にこの二つの事例があります、後継問題に揺れた。何があったか、この時は東日本大震災災害派遣でした。RF-4は被災地への毎日毎時間にわたる偵察飛行、YS-11,海上自衛隊の方ですが、こちらは救援物資輸送のためのもの。
T-4練習機についてはエンジン部品交換後、順次飛行再開へと進んでいるのですが、前述の通り教育部隊が優先されており、実戦部隊、そして飛行開発実験団などへのT-4練習機運用再開はもう少しさきになるようでして、まだまだF-15やF-2といった戦闘機が、貴重な飛行耐用時間と防衛予算を削り、軽快なT-4練習機の任務代替を行う状況は続くことでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
T-4による天候偵察のお考え、とても良いとおもいます。
機体の酷使や燃料費をかんがえると、もっとT-4を活用したらいいと思います。
私はスクランブルさえ、T-4を少し制空戦闘機風に改造した機体でも良いかと思います。
スクランブルの度に燃料費分損失を与えることは、その分他国の軍事費を浪費させることになり、長期的視野において、有効な「攻撃」となります。(憲法にも抵触しませんし)
余り能力差があると牽制できないので、しっかりとしたミサイルを充分装備して。
#というか、近代的な高等練習機も開発しないで、大型戦闘機を開発しても、うまくいかない気が。そもそもなぜ練習機が富士重工や川崎で、戦闘機が三菱のような流れになっているのでしょう?技術者を集約しないと、経験不足で失敗します。次期FXには、正直、全く本気度を感じません。国内航空機産業の大統合くらいやるのが大前提では?
いかに多数を生産するか、をベースに考えると、T-4の高等な部分と、F-2Bの訓練所用、それに平時のスクランブル、有事の後方防空(例えば南西諸島で有事っぽくなった時には、「当然の対応」としてロシアが北海道にちょっかいを出してくるでしょうし、逆もまた然りですから)で200機ほどの需要があるかと。
韓国のTA50や、アメリカのT7規模とし、日本なりの工夫をする。例えば、複座の高等練習機、単座の軽戦闘機、そして無人の「ロイアルウィングマン」を、同一機体から開発。
軽戦闘機と無人機は良いレーダーFCSをもち、巡航速度を早くして要撃任務に向くようにし、前者は4発以下ほどの少数のミサイルを、後者は8-12発と多くの対空ミサイルを搭載。
複座練習型は燃料タンクを削る。簡易的なレーダーを搭載し、操縦席はフルスペックのF35仕様を2セット搭載し、F35の訓練飛行所要を削減して、飛行時間を確保する、とかとか。
まあ、まだ妄想レベルですが「日本独自の大型戦闘機を作って、F35よりも高性能かつ低価格にする」などは、工業的にも技術的にありえないことなので、それよりはマシな妄想かと思います。(苦笑)