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【防衛情報】F/A-18&F-35対潜哨戒機転用アメリカ海軍研究とボーイング社F/A-18E/F生産ライン2025年閉鎖決定

2023-05-23 20:01:01 | 先端軍事テクノロジー
■特報:世界の防衛,最新論点
 今回は一寸驚きですが温故知新と云いますか昔の方式が再検討されている話題を中心に。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いられないか、冷戦時代にアメリカ海軍や海上自衛隊が構想した研究を2020年代に再度アメリカ海軍と海兵隊において再検討が始まっているようです。この研究はアメリカ海軍のコリンフォックス中佐とトレバーフィリップスレバイン中佐、アメリカ海兵隊のウォーカーミルズ大尉らが連名で共同研究を進めているものです。

 “Use Emerging Technology for ASW”新技術による対潜戦闘、と銘打った研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機を用いるというもので、これは現在対潜哨戒に用いられているP-8A哨戒機では今後西太平洋海域において想定される敵対戦闘機が展開する競合空域において、敵戦闘機の発射する長射程空対空ミサイルを前に生き残れない懸念があるため。

 MQ-9無人機へソノブイと中継装置を搭載し、無人機主体の対潜戦闘を展開する研究は既に進められていますが、今回の研究ではF-35戦闘機やF/A-18E戦闘攻撃機にソノブイと中継装置を搭載し、短時間でソノブイバリヤーを展開、またその最中に航空攻撃を受けた際には空対空戦闘を展開し撃退する、という対潜対空同時任務を想定しているようです。

 F-35戦闘機を対潜哨戒に用いる研究は、冷戦時代に海上自衛隊が研究した“F-4ファントムによる対潜戦闘”という概念と重なるものがあります。これは当時運用していたP-2哨戒機やS-2哨戒機では当時顕在化していたソ連原子力潜水艦の機動力に対応できないという課題があり、超音速飛行能力を持つファントムを対潜哨戒に用い速度で対抗するもの。

 ファントムに赤外線探知装置と磁気探知装置、そしてロケット弾を搭載する、この研究は第四次防衛力整備計画検討段階に出された数多の対潜能力構築案の一つで、実現はしていません。ただ、潜水艦に搭載するサブロック対潜ミサイルなど、浮上中の潜水艦を魚雷よりも早い装備により先行前に無力化するという発想であり、これと重なることとなります。

 A-6イントルーダー攻撃機、アメリカ海軍もS-2哨戒機ではソ連潜水艦の機動力に対抗できないという視点からジェット機の運用が研究され、この結果生まれたのが速力の大きなS-3バイキング艦上哨戒機です。S-3が既に退役した今、空母艦載機であるF/A-18Eに対潜能力を持たせるのには、短期間に固定翼ジェット哨戒機を空母に配備できる利点もある。

 アメリカのボーイング社はF/A-18戦闘機製造ラインを2025年に閉鎖する決定を発表しました。今後新たな追加発注があった場合に限り2027年まで製造を延長するとしています。ボーイング社では今後、新たな航空機のフルレート生産が開始されるのに合わせ、製造ラインを確保しなければならない状況がありF/A-18の時代が終焉を迎えるという構図だ。

 F/A-18戦闘機製造ラインは、T-7Aレッドホーク高等練習機、MQ-25スティングレイ艦上無人機、F-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機などに製造が転換することとなり、スーパーホーネットの生産は終了するものの、基本設計でははるかに古いF-15イーグルの改良型であるF-15EXイーグルⅡ戦闘爆撃機の製造が継続されるのはなにか感慨深いものがあります。

 ボーイング社によれば新規製造は終了するものの既存のF/A-18E/F戦闘攻撃機とEA-18G電子攻撃機の近代化改修は継続されるとのこと。この生産終了はドイツ空軍のF/A-18E戦闘攻撃機決定が撤回され、F-35戦闘機へ転換したことが終了を速めた可能性もあるでしょう。またこれによりF/A-18のさらなる改良型の開発も今後行われないこととなります。

 航空自衛隊が2018年に検討していたEA-18G電子攻撃機導入検討はボーイング社のF/A-18シリーズ2025年製造ライン閉鎖により事実上不可能となります。EA-18G電子攻撃機導入検討というのは政府部内の検討と航空自衛隊部内での電子戦専用機導入を求める声に対応したものですが、検討段階にとどまり導入検討段階までは進みませんでした。

 電子攻撃機導入検討という段階であれば、概算要求に旧式化したF-15戦闘機を電子攻撃機へ改造する電子戦ポッドを開発する検討は為されていますが、初期のF-15戦闘機は1981年より導入が開始され既に運用開始40年となっています。一方で、日本としてはEA-18Gと共にアメリカ海軍がF/A-18を対潜運用に充てる研究にも注目すべきかもしれません。

 荒唐無稽な案ではありますが、P-1哨戒機を今後中国軍の長射程空対空ミサイル脅威が及ぶ沖縄付近の戦場に投入するには、空挺空ミサイルを撃墜するレーザー砲を追加するか、空対空戦闘能力を持つ哨戒機が必要となります、すると航空自衛隊のEA-18Gと海上自衛隊のF/A-18Fを90機程度日本でライセンス生産してはどうか、とも考えてしまうのですね。

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1 コメント

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Unknown (軍事オタク)
2023-05-24 16:33:13
P-1は既に優秀なレーダーを積んでいるので、
自衛用に空対空ミサイルを装備して航空機やミサイル迎撃に使えるよう改修しても良いかと。
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