北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第五一回):ペントミック師団(五単位師団),戦車急縮小と高価な装甲戦闘車

2016-05-11 22:16:21 | 防衛・安全保障
■戦車急縮小と高価な装甲戦闘車
 五単位師団方式のペントミック師団、この方式の一つの利点は統合機動防衛力整備と南西諸島防衛や北方脅威増大という背景のもとで、論理展開を進めてきました。

 陸海空自衛隊の中でも従来の専守防衛を単純な本土決戦主義という平和憲法型防衛政策の想定外というべき近年の状況へ対応する中での海空重視政策へ、過度に防衛力を縮小する事で防衛力全体の均衡が破綻しないよう留意した、つまり無理をし過ぎない編成である点が特色です。本質的に戦車縮小という新防衛大綱下で更に人員規模を縮小する無理矢理な試案を提示したものが装甲機動旅団と航空機動旅団から成る広域師団編成案なのですが、言い換えれば陸上自衛隊が縮小し過ぎた戦車数の下で更に数万規模の陸上防衛力を縮小する無理難題へ、人員を縮小する分装甲戦闘車を配備して機動打撃力により精鋭化を実現しよう、という視点が本質でもあったわけです。

 さて、装甲戦闘車ですが、装甲機動旅団案に際し提示した案では、89式装甲戦闘車のような大口径機関砲と長射程の対戦車誘導弾を備えた高性能車両は理想的としながらも、大量に配備するには経済性が重要であり、対戦車ミサイルを省き、機関砲を35mmから25mmとすることで火器管制装置を射程に見合った程度のものとし、大量配備を実現する、としました。現行の通り89式装甲戦闘車を、搭載する79式対舟艇対戦車誘導弾は旧式化が進み、中距離多目的誘導弾車載化や01式軽対戦車誘導弾長射程型等を検討すべきとなりますが、25mm機関砲搭載案は、予算不足故の苦肉の策として提示した物に他なりません。

 この装甲戦闘車ですが、25mm機関砲搭載のものは、近年でも大量配備が2003年から開始されたイタリアのダルド装甲戦闘車や続いて近年配備が始まったフレシア装輪装甲戦闘車、フランスのVBCI装輪装甲戦闘車等事例があります、しかし小口径機関砲自体は1970年代のマルダーやAMX-10P,1980年代のアメリカ製M-2装甲戦闘車に、敷いて加えればシンガポールのバイオニクス装甲戦闘車程度で、それ以降は大口径化が基本となっています。実際、7カ国が採用し欧州標準装甲戦闘車の地位を占める事となったスウェーデンのCV-90/Strf-90は40mm機関砲を標準装備し、輸出仕様も30mmか35mm機関砲を搭載しています。

 世界ではほかにもドイツのプーマ重装甲戦闘車も30mm機関砲を搭載、スペインオーストリアのASCODも30mm機関砲を採用していますし、1980年代の時点で既にイギリスがウォーリア装甲戦闘車へ30mm機関砲を採用していました、25mmは少数派なのです。ただ、大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車は、その射程に見合った目標識別能力と射撃精度が必要とされる為、火器管制装置がどうしても高価となります。事実、現在欧州で選定が進む装甲戦闘車は、プーマ、CV-90,ASCOD等防御力強化や情報伝送機能付与により89式装甲戦闘車よりも高価になっており、10式戦車の量産価格、58両生産時の単価7億円と同程度かプーマ重装甲戦闘車の14億円と10億円以上の装甲戦闘車も出てきました。

 何故装甲戦闘車が高価格化するのかと問われれば、火器管制装置の高度化により取得費用が大きくなるため、一発の対戦車火器で無力化されないよう防御力を強化する事で増大した重量と機動力が損なわれないよう高出力エンジンを搭載し、上昇した費用に見合う性能を求め様々な追加装備を搭載し効率性を高めようとして更なる高性能化と高価格化の悪循環に陥る、という背景があります、それならば戦車を量産した方がよい。すると、10式戦車を量産し数を揃えた方が全体として安上がりとなるのではないか、と代案が上がります。

 防衛計画の大綱が戦車定数を300両として防衛計画を画定しましたが、それによる弊害や経済的負担増大が起こるならば戦車定数を600両程度とする代案を示し比較できるようすべきではないか。重要なのは攻撃衝力持続性ですので、足りない戦車を装甲戦闘車で支援し、対戦車火器や敵装甲戦闘車等戦車砲以外の機関砲でも撃破し得る目標ながら相手が我が戦車を破壊し得る打撃力を持つ目標への打撃力を補完する、という手段の一環が装甲戦闘車で、従って戦車が充分保有できるならば随伴できれば高度な火器管制装置は不要です。

 装甲戦闘車を機甲師団である第7師団普通科連隊用装備として、またC-2輸送機に搭載可能な最大規模の装備という特性を活かし中央即応連隊や空挺団への少数配備に留め、その他の普通科部隊用装甲車両は軽装甲機動車と96式装輪装甲車及び同改良型に留める、無理に師団と旅団を装甲機動旅団と航空機動旅団へ二分化する事も無く装備を簡略化可能です。また、将来的に機動旅団を主体とした編成に改編するかは、まず師団を旅団型普通科連隊五個体制に改め、その上で更に二個普通科連隊を縮小するかどうかの防衛警備及び災害派遣上の検証を行う事も可能です。

北大路機関:はるな くらま
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F-22戦闘機再生産計画!【中篇】 下院小委員会討議,ラプター生産再開の現実性と構想背景

2016-05-10 21:25:27 | 先端軍事テクノロジー
■ラプターと空軍大戦略
 F-22戦闘機再生産計画、下院小委員会討議されましたステルス戦闘機ラプターの生産再開について、現実性と構想背景との視点から見てみましょう。

 F-22再生産についてどの程度現実性があるのでしょうか、今回提示された生産数は190機前後との事で、20機30機の話ではない模様、この規模の生産であれば、これまでに調達したF-22の総数と同程度であることから採算性は充分確保出来ます、また合計で390機程度のF-22を確保出来るならば、空軍が現在運用中のF-15C戦闘機を完全代替する見通しも立つため、航空装備対英の効率化という意味では冷戦時代の高級なF-15戦闘機と軽快なF-16,という戦闘機装備体系を超高級なF-22と高級なF-35、という形で世代交代させることも可能でしょう。

 F-22は、空軍の世界規模での戦略上、数が少ない。非常に大きな作戦遂行能力を有するものの、187機という数では全世界規模での作戦展開能力に支障をきたすことは確かです。例えば、運用をアメリカ本土防空に限って運用するならば187機という規模でも対応出来た可能性はあります。一例として冷戦時代に米本土防空専用機として開発されたF-106等は生産数340機の内、防空軍団へ180機が配備され、米本土への戦略核爆撃への警戒に当たっていました。

 防空任務とF-22の配備数、米本土防空に限定する場合、米本土まで北極圏もしくは大西洋や太平洋を越えて飛来できる航空脅威は非常に限られていましたし、アメリカ本土周辺へ有力な空軍力を有する敵対国家は存在せず、1960年代初頭には中米のキューバがソ連への基地提供に踏み切り、戦域核ミサイルが持ち込まれるに至り一瞬子の優位性は危惧されたものの、アメリカは全面核戦争も辞さない覚悟で対応に臨み、この危機を回避する事に成功しました。

 他方、F-22は世界への戦略展開が前提となります、187機、配備部隊を見ますと、米本土第1航空団第27飛行隊と第94飛行隊、アラスカ第3航空団第90飛行隊と第525飛行隊、ハワイの第15航空団第19飛行隊、第53航空団第422教導飛行隊、第325航空団第43飛行隊と第95飛行隊、第412開発航空団第411試験飛行隊、州兵空軍第154航空団第199飛行隊、第192航空団第149飛行隊、空軍予備第44航空群第301飛行隊、空軍予備第477航空群第302飛行隊、多くはありません。

 その上で将来戦闘機計画として当初考えられた数千機のF-35戦闘機量産による地域空域空間支配とX-47無人戦闘機による損害を顧みないステルス機の断続的浸透攻撃を併用し相手の戦闘能力を全ての面で瓦解させる、という2000年代初頭のアメリカ空軍統合航空打撃の未来像が、敵よりも先に開発計画と技術的障壁の前に瓦解、とまでは行かずとも著しい長期間の遅延と計り知れない財政悪化を前に数的縮小に見舞われている現状が反映されているともいえるところ。

 F-22の配備規模は純粋な飛行隊数だけではなく、近代化改修度合にも影響します。実はこの当たり、非常に大きな問題となっているものですが、以下の通り。一機種の戦闘機は開発され運用開始後、数年毎にプログラム改修を定期整備の際に実施し、更に電子機器や機体自衛装置とレーダー等は現役時代にこちらも十年前後で大きな改修を実施するものです。しかし、回収を行う以前に改修プログラムに基づき、各メーカーと協同しこれらの機材を開発しなければなりません。

 特に戦闘機は全世界規模で実施される空軍戦略、各種脅威への電子偵察情報や実運用を経ての諸問題を即座に反映させる必要があり、これは実際に空対空ミサイルか機関砲を以て最先端の敵戦闘機と戦火を交える戦闘機における宿命であり、非常に重要な課題でもあります。ところが、改修は当然ながら機種ごとに実施しなければなりません、レーダーも火器管制装置も機体制御装置も全て別々に異種がわかれているのですからある種当然ですが。

 このように一機種の改修プログラムは費用面で大きく、これが各国空軍の機種の合理化の背景でもあります。更にこの改修型の開発費用は機数により割られる為、2000機以上が米空軍に納入されたF-16で100億ドルの改修計画を建てたとしても2000で割った場合、現実的な費用となりますが、100億ドルかけ187機装備されているF-22の改修計画を構築したとして、100億ドルを187で割りますと、非常に厳しい数字となる事が見て取れます。

 しかし、戦闘機は改修をし続ける必要があります、管制の時点で数十年間先までの期間対応できるプログラムや脆弱性のない設計は理想ではあるのですが、これは技術が発達する以上、現実的ではありません。先端戦闘機の先端技術搭載を断念した瞬間に、その優位性は霧散しますので、そうした選択肢は実質的に早期退役させることと大差ありません、すると近代化改修を効率的に行う事は極力機種を絞ると共に各機種を多数生産しておくことが望ましい、という構図が見て取れるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【1】 北朝鮮核開発加速と北東アジア危機

2016-05-09 22:08:46 | 国際・政治
■アメリカのリスク
 アメリカのリスク、としまして大統領選ポピュリズム台頭と国際公序再構築という視点から大きな変動の徴候を考えてみる事としましょう。

 北朝鮮核実験準備、アメリカジョンズホプキンス大学の研究チームが衛星画像などからその兆候が、これまで確認された状況から更に進展しているとの分析を発表しました、ジョンズホプキンス大学は民間画像衛星から情報を集めており、核実験場付近での動きから解析したもので、これまでに地下坑道付近での除雪や車両の動きなど徴候が確認されてきました。

 おりしも平壌で36年ぶりに実施されている朝鮮労働党党大会では核開発の成果が強調されています。他方で、北朝鮮は水爆実験を過去に実施し、水爆の核融合を誘発する原爆の核分裂が、そのまま核融合に誘発せず原爆の実が爆発するという失敗から進んでおらず、党大会において強調する核開発の成果を考える場合、五回目の核実験は水爆実験となる可能性が非常に高く、警戒を要する事案です。

 北朝鮮の核政策に少なくない影響を与えているのはアメリカ大統領選でのアジア軍事軽視政策を掲げ、一種の軍事的孤立政策ともとれる公約を掲げるドナルドトランプ氏への支持の集まりです。実際には、民主党指名候補選により、優勢なクリントン候補と、事実上の共和党候補となったドナルドトランプ氏との大統領選の趨勢は見通しがたたないところ。

 この中でも、軍事的な孤立主義を掲げるドナルドトランプ氏を共和党代表へ支持し挙げたアメリカ与論の大きな動きというものは無視する事が出来ません、韓国からの米軍撤退を掲げたドナルドトランプ氏の施策は、在韓米軍が撤退した場合、韓国は自国で北朝鮮の核圧力に対応する事が出来ず、戦力過小により抑止力を維持出来ず勃発した朝鮮戦争前夜の状況となるでしょう 。

 過激な発言で知られつつ、ポピュリズム的手法により巧みに新しい支持層を開拓したアメリカ大統領選挙共和党候補に確定したドナルドトランプ氏が、共和党議員で下院議長であるライアン下院議員と来週12日にも会談を行うとのこと。既存政治家とのしがらみからの脱却を掲げ既存政党である共和党から出馬するトランプ氏は、議員経験や知事経験などは無く、ここを既存政治家からの距離として支持につなげた候補と、どのような討議が行われるのか、その内容は未知数ですが、大きな関心を以て見守りたいところです。

 韓国核武装、という選択肢は無いには無いのですが、アメリカの撤退を明示した上での核開発を開始した場合、アメリカが積極的に韓国の核武装を支持しなければ韓国は日本をはじめ核拡散防止の世界秩序からの経済制裁に耐える事は出来ませんし、在韓米軍撤退の方針が明示された後に、仮にトランプ氏が大統領に就任するまでの期間では核武装は間に合わないでしょう。

 更にアメリカの核は遺髪支持を抜きに核開発を進める事は難しい一方、確実に北朝鮮から韓国本土への核攻撃の口実となります、アメリカの勧告からの軍事的撤退は、その可能性示唆だけでも朝鮮半島の軍事情勢を致命的に悪化させ得るもので、我が国としては対岸の鍛冶では済まされない影響を与えます、何故ならば対岸の火事は核爆発となる可能性がある為で影響は計り知れません。

 北朝鮮の金正恩第一書記は、36年ぶりに開催されている朝鮮労働党大会において、北朝鮮の保有する核兵器は主権が侵害されない限り使用しない、との立場を表明したと北朝鮮国営メディアにより発表されました。この注意すべき事項は北朝鮮の主権定義が明らかにされていない点であり、軍事境界線以北での主権であるのか。

 この意味するところは、北朝鮮が繰り返し主張している南朝鮮傀儡政府という位置づけにある大韓民国からのアメリカ軍駐留や米韓軍事同盟そのものが北朝鮮の主権を侵害しているものでありアメリカが北朝鮮による韓国併合を認めない現在の米韓軍事関係そのものを北朝鮮が定義する主権に対しどのように判断しているかを明かしていない、という点が大きな問題となります。

 主権定義を不明確としている問題は更に、核実験及びミサイル実験を契機として展開されている北朝鮮への経済制裁についても主権に対しどのような影響を与えているのかは未知数であり、現在の核開発への制裁を継続し北朝鮮による軍事境界線からの南進を行わない状況が維持されるのか、という視点から警戒すべき命題であり、核の先制使用を、現状が既に主権侵害として北朝鮮により一方的に正当化される状況であるならば、少なくとも核兵器を突き付けられているアメリカは自衛権の先制行使を念頭に対応を検討しなければなりません。

北大路機関:はるな くらま
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アメリカ合衆国海兵隊キャンプ富士日米フレンドシップデイ二〇一六(2016-05-07) X-20撮影速報

2016-05-08 23:18:36 | 在日米軍
■キャンプ富士2016
 ゴールデンウィークの5月7日、静岡県御殿場市のアメリカ海兵隊キャンプ富士日米フレンドシップデイ二〇一六が開催されました、LAV-25,AAV-7,M-1161,M-777様々な装備が展示されましてその様子を紹介しましょう。

 LAV-25はアメリカ海兵隊が1982年に軽装甲車計画として導入した装甲車両で、スイスのモワク社が開発したピラーニャ装輪装甲車をGMカナダ社がライセンス生産中でカナダ軍へ納入されていた装備を原型として25mm機関砲を搭載する軽装甲車として制式化されました。海兵隊はLAV-25を758両調達し、内422両が25mm機関砲搭載型となっています。車幅は2.5mと日本の道路運送車両法に適合するほど小型であり、C-17輸送機には6両も搭載可能です。

 M-242機関砲はLAV-25の主武装で、全溶接構造を採用するLAV-25の重量は12.79tと非常に軽量に抑えられています。これはCH-53重輸送ヘリコプターでの吊下げ空輸を念頭とした設計であり、GMデトロイト社製ディーゼルエンジンは装輪装甲車として時速100km/hという高い路上速力を誇ると共に668kmの航続距離を誇ります。加えて9.7km/hでの水上浮航能力を有し、沿岸部での自走航行も可能、と。

 海兵隊におけるLAV-25の任務は海兵軽装甲偵察中隊での機械化戦闘任務で、車体後部には背合わせ式に左右各3名の6名が乗車可能となっています。車長、砲手、操縦手、以上乗員は3名で車長は分隊長を兼ね下車戦闘を指揮する。一方、1990年代後半よりLAV-25の延命計画が開始され、25mm増加装甲を設置し14.5mm重機関銃弾への耐弾性を付与するなど生存性を向上させ、暗視装置を熱線暗視装置へ換装し夜間戦闘能力を近代化しました。

 LAV-M自走迫撃砲、海兵大隊迫撃砲小隊用の支援火器として運用されるもので、M-252迫撃砲を車体内に搭載している、81mm迫撃砲で海兵隊では可搬性が高い60mm迫撃砲とともに直掩火力に充てている。迫撃砲の搭載に伴い25mm機関砲搭は取り外され、戦闘室上天蓋を開放し射撃する。車体内には94発の81mm迫撃砲弾を搭載し、迫撃砲操作要員は3名が乗車しています。

 LAV-AT自走対戦車ミサイル発射機、エマーソンTOW連装発射装置を搭載するもので、射程3750mの有線誘導方式対戦車ミサイルです。連装発射機は射撃時に情報に延伸し遮蔽物から掩蔽しつつ射撃が可能で、乗員は発射要員含め4名、戦闘室にはTOW用弾架が設置されており、14発を収容する。射撃時に2発を射撃した後、発射機を上方に向け収縮させ、乗員は車内より天蓋から再装填、陣地変換しつつ戦闘継続が可能、というもの。

 AAV-7,海兵隊の両用強襲車両で、水陸両用装甲車としては最も成功した装甲車両、陸上自衛隊も採用しました。元々アメリカ海兵隊は1941年に来たるべき対日戦に備え太平洋島嶼部での強襲車両を必要としていました。日本軍は当時上陸用舟艇に当たる大発や装甲艇等先進的な両用戦装備を開発しており、海兵隊は珊瑚礁を踏破し海岸線へ海兵を輸送可能な車両として、湿地帯交通用の水陸両用車を原型としてLVT-1を開発しています、装軌式で履帯駆動法しい推進を採用、洋上を12km/hで航行可能、生産数は8351両に上りました。

 LVTP-7として現在のAAV-7は1972年に制式化されました。これはLVT-1の後継として朝鮮戦争期より開発が開始されたLVTP-5が35名という大人数を輸送可能であったが車体が大型化しすぎた事を受けて、戦闘車両としての生存性を確保出来る規模に抑え、且つ水上航行能力を考慮したもので、戦闘重量25.7t、21名の海兵を収容し水上を13km/h、陸上を72km/hで機動するものとして開発されています。生産数は輸出用を含め1414両に上るとのこと。

 M-777榴弾砲、イギリスのヴィッカースが1998年に超軽量155mm榴弾砲として開発したもので、砲システム重量は3.2tと従来の39口径155mm榴弾砲と比較し半分程度に抑える事に成功しました。陸上自衛隊が運用するFH-70榴弾砲が9.6t、従来米海兵隊が装備していたM-198榴弾砲が7.2tです、M-777はこの軽量化により従来105mm榴弾砲を空輸していた多用途ヘリコプターでも155mm榴弾砲が空輸可能となり、最大射程24km、射程延伸弾を使用すれば30kmの最大射程を誇る。

 新榴弾砲は、まず陸軍が採用し海兵隊が続きました。M-198の後継として大幅に軽量化され、FH-70榴弾砲やFH-77榴弾砲のような自走能力は付与されていませんが、空輸により迅速に展開する事が可能となりましたが、これは従来火砲と比較しアルミ合金とチタン合金を大胆に採用し、その上で砲架を四脚式、つまり従来のW形状からX形状というかつての高射砲型の形状を採用した事で実現した軽量化です。現在はBAEシステムズ社が製造と販売を対応しており、同社ではトラック後部に本砲を搭載するガンポーター簡易自走砲を提案しています。

 M-1161/1163グロウラー近距離輸送車、海兵隊がMV-22可動翼機に搭載するべく開発した小型戦術車両で、MV-22の格納庫には1.5mまでの車両しか搭載出来ない為、新設計された車両です。元々海兵隊はケネディジープとして知られるM-151を原型として開発する計画でしたがシャーシ部分の小型化を敢えて行うよりは再設計の方が妥当とされ、ジェネラルダイナミクス社により2009年に発表されました。

 M-1161は人員輸送型、M-1163は迫撃砲牽引型です、M-1161は12.7mm重機関銃を搭載し4名分の座席が配置されています、車体に箱乗りする事で11名まで機動可能、という。M-1163はEFSS120mm重迫撃砲牽引型です。EFSS120mm重迫撃砲はフランスのトムソン社製120mm重迫撃砲として2009年に採用された最新装備で海兵隊は66門を採用しています。

 EFSS120mm重迫撃砲、射程延伸弾を使用した場合の最大射程は13kmという優秀迫撃砲で、海兵隊は従来の81mm迫撃砲と155mm榴弾砲の中間を担う新装備として導入された最新鋭装備なのです、が、日本では120mm重迫撃砲RTとして、1994年から全ての普通科連隊重迫撃砲中隊若しくは本部管理中隊重迫撃砲小隊に装備されているもので、目新しさは、ありませんね。

 M-1163は120mm重迫撃砲を牽引するもので、陸上自衛隊では巨大な高機動車を重迫牽引車として用いています、海兵隊は小型化の必要性から高機動車よりも遥かに小型のM-1163を牽引車として採用していますが、残念ながら重迫撃砲牽引時にM-1163には迫撃砲弾を3発しか搭載出来ません、このため、砲1門に対しM-1163を2両配置し、うち1両を弾薬牽引車としています、こうしなければMV-22に搭載出来ない為仕方ないのですが、弾薬牽引車には専用弾薬トレイラーを牽引させ、こちらに36発の120mm砲弾を搭載します、この車両、MV-22を導入する自衛隊にも必要な装備だ。

 MTVR7t中型戦術車両、オシコシ社製新型トラックで1998年より配備が開始されました、12.7tの重量級車両でボンネット方式の車体を採用し迫力がある車両、従来のM-939戦術車両の後継として海兵隊に採用されたもので、海軍施設部隊にも採用されました。車幅2.5mという割には大型に見えるのですがその筈、車高は3.65mあり、エンジン出力は440hpもある。

 MTVR7t中型戦術車両は迫力だけではなく、兵員輸送の基本車両や、各種クレーンなどを搭載し野戦での回収作業に用いられるほか、後部に防弾区画と重座を複数設置し、輸送車両の梯団護衛任務へ車体上部には12.7mm重機関銃架を標準装備、車両の多くは装甲キットを装着し待伏せ攻撃などに対応する装甲化策がとられています、シュノーケルを装備し、全部水没している状態でも運転手にはシュノーケルからのダクトを用いて呼吸を維持しつつ、どう見ても無茶しているようですが、車体が天井まで全水没しても渡渉可能、という。

北大路機関:はるな くらま
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将来小型護衛艦の量的優位重視視点【2】 LAMPS軽空中多目的システムの水上版LSMPSという構想

2016-05-07 22:19:06 | 先端軍事テクノロジー
■LSMPSという構想
 将来小型護衛艦は護衛艦の数の不足を補うと共に、高性能護衛艦であっても同時に複数海域へは展開できない物理的限界への多面的アプローチという側面から提示するものです。

 護衛艦の数の不足、というのは、一定海域へ常時哨戒出動していなければならない海域が複数広域的に存在しまして、艦隊の護衛艦としての能力、これは軍事的な視点からのものなのですか、こちらよりもその海域に護衛艦が遊弋し警戒監視にあたっている、といういわば政治的にこちらは我が国の領域である、若しくは我が国はその海域に対して極めて強い関心を有している、という示威、政治的な役割がある事を挙げます。

 たとえ小型であっても、艦砲とミサイルを搭載し、潜水艦や水上艦艇と航空機を警戒する事が可能な日本の艦船が遊弋している、ということはそれだけで意味があり、他方で、大型護衛艦であってもその任務には対応する事は可能なのですが、一隻の護衛艦は同時に複数の海域に遊弋する事は出来ませんし、護衛艦が長期航海に対応していたとしても乗員の疲労度は、そもそもどれだけ水上戦闘艦の技術が発展しても乗っているのは人間だという点は変わりません。

 ハイローミックス、護衛艦隊に配備され機動運用に用いられる護衛艦とは別の水上戦闘艦として哨戒任務に当たるというものです。陸上自衛隊の89式装甲戦闘車と軽装甲機動車、の関係に似たもの、というべきでしょうか。若しくはアメリカ海軍のフリゲイト艦載ヘリコプターLAMPS軽空中多目的システムの水上版として、Light Airborne Multi-Purpose SystemはいわばLight Surface Multi-Purpose System、LSMPSというようなものとしての理解もできるかもしれません。護衛艦、しかしその性能云々よりもその護衛艦が一隻であっても遊弋し哨戒している、というだけで大きな抑止力にはなります。

 そして哨戒任務や沿岸部での任務に限定されていても、性能は無関係に護衛艦による哨戒任務を求められる海域に一隻投入する、その最低限度の性能を満たしている護衛艦であれば高性能艦であっても、例えばかつての護衛艦ちくご型のような護衛艦でも用を満たすような艦で当ても、一隻には変わりありません、他方、大型護衛艦でなければ対応できない任務は他にも確実にありますので、小型護衛艦を護衛艦隊とは別枠で建造し運用しておくのならば、大型護衛艦はその能力が求められる状況に集中できますし、その乗員も休息をとれます。

 一方、日本近海に侵入しようとする勢力に対しては小型の護衛艦で当ても航行し哨戒任務に当たっている事は確実に大きな抑止力となります、潜水艦であっても小型のソナーを以て航行している護衛艦が一隻居り、発見されたならば海上自衛隊が多数を運用するP-3CやP-1といった固定翼哨戒機とSH-60J,SH-60K哨戒ヘリコプターが大挙して展開する、という条件があるならば、潜水艦はその兆候を示すだけでもその後の数十時間から十数日間、の行動リスクを計算するでしょう。

 即ち有力な航空哨戒部隊、続いて展開する護衛艦に徹底して追尾される、という非常な脅威の下で活動する事を強いられます。将来小型護衛艦の量的優位重視、というものは兎に角、個々の性能に特化し優位性を求めるのではなく、大量に運用する数的優位とネットワークでの他の装備システムとの連携により全体で優位となる独自の運用体系を構築する、この為の海上における小型水上戦闘艦、というものを志向するものが必要だと考えます。

北大路機関:はるな くらま
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巨大災害,次の有事への備え 02:東日本大震災で判明、充分ではなかった幹部自衛官の人員規模

2016-05-06 22:44:34 | 防災・災害派遣
■日本を構成する一七一五市町村
 東日本大震災、2011年の文字通り“有事”というべき状況下、突き付けられた問題点について。

 東日本大震災を受け、様々な方々の当時の話をお聞かせ頂いたところ共通する事例として、幹部自衛官の不足というものがありました。我が国では幹部自衛官、諸外国では将校や士官と呼ばれる指揮官が全人員の中において比較的比重が高く、一般幹部候補生や防衛大学校の定員がそもそも自衛隊の規模に対し多すぎるのではないかとの指摘があります。この視点は、指定職の区分と省庁規模という、日本の官僚制度の枠組において理解しているのですが。

 その一方で実際に震災が発生しますと、幹部自衛官が不足していた、ということが明らかになっています。具体的に不足していたのは、多すぎる市町村への連絡幹部の派遣とのことで、連絡幹部といっても幹部自衛官であれば他の方面隊や地方隊と航空方面隊の基地から引き抜けばいいのかという話かと問われればそうではなく、当該地位での防災情報にある程度意思疎通ができており、その上で統合任務部隊司令部との意思疎通が可能な幹部自衛官でなければなりません。

 我が国には1715もの市町村が今年度四月一日時点で置かれています。幹部自衛官の不足、とある刑事ドラマでは、事件は会議室で起こっているのではない現場で起こっているのだ、という象徴的な台詞がありましたが、実のところ巨大な組織同士が調整し動くという状況下、巨大災害においては様々な省庁間の調整と現場の調整が必要となります、第一線だけが独立してあらゆる支援と調整を超越した巨大な組織が存在するならば、こうした調整は不要となるのでしょうが。

 しかし調整会議と連絡幹部が必要となるような巨大災害においては、調整のための幹部とは文字通り人的後方支援の象徴的な存在となり、併せてこの調整要員無くしては対処出来ません。特に、巨大災害に際して、第一線は自衛隊の小銃小隊ではなく、地方自治体市町村の防災職員と土木職員に消防救急であり臨時吏員としての消防団員が初動を担い主力を展開します。勿論、末端の消防と救急だけであらゆる災害に対応できるならばこれに越したことは無いとはいえるのです。

 これはこれで民間防衛という視点からも理想的ではあるのですが、巨大災害の破壊力に対応できる自治体防災能力を平時から確保する事は現実的ではありませんし非効率となります。それでは大規模災害に対し、連絡幹部の派遣は自動化する余地はあるのでしょうか。具体的には、衛星通信機能を全ての市町村に維持し、その上で市町村長を首班とする臨時防災対策機構と自衛隊の統合任務部隊司令部が常時意思疎通を行う枠組みや通信設備を準備する事で対応は出来る可能性はあるのです。

 理想論ではありますが、地震に際し確実に機能する防災庁舎、津波災害や震度七規模の地震が繰り返される中で倒壊せず津波から孤立せず、発電能力を維持し衛星通信を行う機能を持たせることは、機上で考える程容易ではありません。更に連絡幹部は、自衛隊の幹部として訓練を受けた要員ですので、自治体の情報と自衛隊への要請を的確に調整し上級司令部へ送る事が可能です、自治体が求めている事と自衛隊の能力の乖離と情報の氾濫のまま未処理で送る事は逆に混乱を生むため、連絡幹部は必要です。

北大路機関:はるな くらま
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こどもの日特集、家族揃って行きたい自衛隊行事とファミリーコースとしての行事散策案内

2016-05-05 20:41:00 | 北大路機関特別企画
■家族で行きたい自衛隊行事
 こどもの日、本日五月五日はこどもの日です、そこで家族で行きたい自衛隊行事、という視点から少し考えてみました。

 航空祭は最前列を確保するべく重い一眼レフとガラスに金属の塊である望遠レンズを背負って全力疾走、駐屯地祭は開門前の炎天下に正門前に長く並び開門後は最前列付近の撮影地を吟味し数時間式典を待ち訓練展示まで、艦船撮影は入港時間と航路を慎重に見極め何度も撮影位置を陣地変換しつつ、これでこそいい写真が、というのは、家族連れには難しい話です。

 それでは、家族連れ、子供たちと自衛隊行事を楽しむ方法は無いのだろうか、というところです。実のところ、初めて我が子と行く航空祭が開門数時間後の一番混雑した入間基地航空祭、となれば、もう二度と行かない、という簡単な結論で終わってしまうでしょう。しかし、元々自衛隊行事は隊員さんの家族連れと、自衛官になってくれそうな子供たちが主役です、そこで、家族連れに向いた行事について考えてみましょう。

 春日井駐屯地祭、初めて足を運んだのは私にとりこの自衛隊行事でした。中学時代、友人と春休みを利用し行きましたのは20世紀の話、64式小銃にOD作業服の時代でしたが、時間に余裕を以て、途中で迷ったとも言いますが、足を運び、装備品展示を中心に写真を撮る事が出来ました。当時の写真は風景写真と鉄道写真を中心に撮影していましたので、初めて見る第10対戦車隊の装備は新鮮でした。

 装備品展示を中心に撮影する、訓練展示の方が確かに迫力はありますが、いきなりは無理です。この十年間を見ても陸上自衛隊行事の人口密度は著しく上昇し、身動きが取れない状況が出ています。中には、真駒内駐屯地や帯広駐屯地など、会場に訓練展示まで余裕がある場所はありましたし、鹿屋航空基地や那覇基地などは余裕がありました、大都市から離れた行事などは、風通しも良く家族連れには最適なのですが、今や少数派です。

 家族連れ、やはり子供は大事です。大事ですので、子供たちと自衛隊行事に足を運ぶのは、まず、陸上自衛隊行事では正午過ぎに装備品展示を中心に見学に行く、海上自衛隊も入港や、未就学児童が入れない展示訓練や観艦式ではなく、毎週末の基地桟橋一般公開から、というものが理想だと考えます、航空祭はブルーインパルスだけを軸にまずは基地の近くから、その後基地に入るなど、待たなくても見る事が出来る、というものがいい。

 護衛艦などですが、舞鶴基地や佐世保基地と呉基地は毎週末一般公開が行われています、年々実任務が増えて広報業務に限界が生じていますが、HP等で確認しますと意外に簡単に護衛艦などを観る事が出来ます。この週末一般公開は、桟橋からのみ見学する、というものが基本ですから、入港などでの艦艇一般公開では未就学児童が見学できない為、疎外感を子供たちが感じ残念な気持ちになります、しかし、週末一般公開では桟橋しか一般公開されず、みんな見学者は平等です。

 桟橋からの護衛艦見学、それでも、子供の視点から見る護衛艦の大きさは凄いものです、一枚二枚記念写真を撮って現像すれば、宝物になるでしょう。その次の段階ですが、艦艇広報等で入港時間が公開されている場合、入港する様子を少し離れた場所から見学する、という段階に進むことができます、船は動くものですが、なかなかあの大きな艦船が動き出す様子は日常生活では観る事が出来ません、出入港は時間がしっかり決まっていますので、待たず、また、混雑していない場所は必ずあります、家族連れ向けともいえる。

 航空祭ですが、無理に基地に入らず、飛行展示の情報について、航空祭を実施する基地HP等で確認し、基地から少し離れた場所、空港に隣接した基地の場合は空港側で、見上げてみる、という方法が大混雑を避ける一つの方法です。編隊飛行や機動飛行は上空度粉われますから、多少離れていても大丈夫なのです、千歳基地ならば南千歳駅前、入間基地ならば西武新宿線沿線、浜松基地は広報館、岐阜基地は航空宇宙博物館や航空公園、築城基地は防波堤側、小松基地は小松空港から、新田原基地は眺鷲台公園から、と。

 飛行機は見慣れてくると近くで見たくなる、するとどうしても基地に入らなくてはなりません。航空祭が混雑する場所は二つ、滑走路が見える最前列とシャトルバス乗り場です。そしてシャトルバス乗り場はブルーインパルスが飛行した直後が一番混雑します。そこで、ブルーインパルスが飛行するまでの時間を利用して基地の外に出るならば、シャトルバス待ちで一時間以上たっている必要は無くなります。また、どうしても待たなければならない時間に備え、ミネラルウォーターとジュースに子供用の椅子などはお勧めでしょう。ミネラルウォーターは凍ったもの、場合によっては親子で頭から被ってもよい。

 最近の子供たちは、我慢強いなあ、というものが昨今自衛隊関連行事を撮影していて考えさせられるところです。お弁当を広げて飛行場の芝生でピクニック、という選択肢もあります。しかしそれだけではなく、例えば駐屯地祭は、開門時間が0900時頃ですが式典が始まるのは1030時、観閲行進は1115時から、訓練展示は1145時から、かなり待つ事となります、が、いい子にしている、といいますか、我慢強く待っています。そこで考えるのは、撮影というかたちでカメラをプレゼントしてはどうでしょうか。

 撮影という形で子供たちも行事に参加している、という形が重要なのですね。単三電池仕様の初級用でいいので、子供たちにはコンパクトデジカメを、と。被写体があり撮影していますと、かなり時間を有効に利用できます。携帯電話ではなく、周りのオッサン、失礼、俺ら、失礼、多くのカメラ愛好家の人たちと同じく小さくともカメラで撮影する行動は、子供たちの知的好奇心を満たしてくれます。中には凄い写真を撮影した子もいましたよ。

 自衛隊行事は、本格的に子供たちと自衛隊を見に行こう、と言いますと家族連れには言いにくくなっています、というものの、最初からすべてを観てゆこうとするのではなく段階を踏んで観てゆく場所を毎年少し早起きして、少し遠くまで、急ぎ過ぎず、ゆっくりと、楽しむ方法はいろいろとあります。そして、時間はかかるものですが、普通に例えば京都で生活していますと、中々見る事は出来ないものが多く、良き思い出として記憶にはしっかりと残ることでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.05.05/07/08)

2016-05-04 22:40:20 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 熊本地震への自衛隊災害派遣が継続する中、アメリカ大統領選挙では共和党指名選に大きな動きがありましたが、今週末の行事について。

 大津駐屯地祭、琵琶湖畔の陸上自衛隊駐屯地で中部方面混成団本部が置かれる駐屯地です。今年度の大津駐屯地祭は、中部方面隊隷下部隊の熊本地震災害派遣の影響で大幅な縮小行事となり、訓練展示等模擬戦や災害派遣展示は中止、空挺降下が中止されるほか、装備品展示の一部も縮小となります、困難に挑む自衛官候補生の凛々しい姿をご覧ください。

 アメリカ海兵隊岩国航空施設日米親善航空基地祭2016、明日開催です。入場には写真つき公的身分証明が必要となりますが、アメリカ海兵隊第1海兵航空団の展開する航空拠点で、海上自衛隊航空部隊と施設を供用しています。海上自衛隊の航空基地祭は九月ごろ例年実施され、別の行事となっていますが、海兵隊のAV-8やF/A-18等航空支援用航空機、更に沖縄から回転翼航空部隊も参加する航空祭で、新滑走路完成に伴い離着陸は撮影位置から距離が大きくなりましたが、ゴールデンウィークの航空祭として、お勧めの筆頭です。ただ、ブルーインパルスなどは中止、自衛隊機の展示も行われません。

 アメリカ海兵隊キャンプ富士フレンドシップデー2016、滝ヶ原駐屯地に隣接するアメリカ海兵隊の日本本土における施設で、身分証を提示するだけで入場できます。在沖米軍の東富士演習場での射撃訓練等の拠点としても機能する沖縄基地負担軽減にも寄与する施設です。自衛隊のような式典や観閲行進と訓練展示ではなく、装備品展示、そしてアメリカンな屋台を中心とした一般公開で、装備品はどの装備が展開しているかにより、MV-22等の航空機、運が良ければLAV-25軽装甲車やAAV-7両用強襲車、運が悪くともM-1114ハンヴィー高機動車やMRAP耐爆車両などが展示されます。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭

・5月7日:アメリカ合衆国海兵隊キャンプ富士フレンドシップデイ…http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/Fuji.html
・5月8日:中部方面混成団創設8周年・大津駐屯地祭…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/macb/
・5月5日:アメリカ合衆国海兵隊岩国航空施設日米親善航空基地祭2016…http://www.kanji.okinawa.usmc.mil/Installations/Iwakuni.html

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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憲法記念日、将来の世界を展望し現代の日本国憲法と日本国民の防衛安全保障を考える

2016-05-03 23:56:04 | 北大路機関特別企画
■憲法記念日
本日は憲法記念日です。安全保障を重要な論点として提示する際、意識しなければならないのは憲法の関係です、そこで本日はこの視点から少し考える事としましょう。

憲法記念日という事で、安易な憲法をこのまま維持するのか憲法を改正するのか、という視点が先行していますが、我が国の将来に大きくかかわる命題であるため、単純に改憲の是非として考える事を少し超えて討議する部分はあるのではないか、その為には知るべき知識と共有すべき論点がもっとあるのではないか、と。

憲法は英訳でConstitution、constitutionは構造を意味しますので、語源を遡れば酷夏の候像を示す基本法規、ということとなります。日本国憲法は103の条文で構成され、天皇、戦争放棄、国民の権利義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正、最高法規、補則、となっています。

日本国憲法は内容を見ますと法の下の平等として身分格差を禁じ、自由権として精神を挙げ国家による宗教支配からの自由を明記、更に世界の憲法では唯一の男女同権を明示しています。更に生存権として国家による積極的な社会保障を盛り込み、参政権を明文化し国民の支持を以て構成される国家として政治への参加権利を示しています。

憲法改正、これは憲法の日に護憲と改憲を巡り大きな議論となる一日でもあります。憲法改正において最も大きな視点は、日本国憲法九条の平和主義、この中で戦力の不保持を明記している部分です、即ち、戦力の不保持では独立国家として自衛権を維持し自分の国を自分で守る事が出来ない為改正すべきという視点と平和のために現在の自衛隊で我慢しよう、という視点です。

勿論この他に憲法には、環境権や孤立権に情報開示請求権等日本国憲法制定当時には概念として不明確であったものが反映されない等の分野はあり、プライバシーの権利や国からそっとしてもらう権利というもの、環境が良い環境で生きるための国家への積極的な関与を求めるという視点、こちらの改憲を求める声、こちらがある事も理解しておくべきでしょう。

アメリカにより押し付けられた憲法なので改正すべき、憲法改正を求める際に自主憲法制定、としましてこういう視点はありますが、これは半分間違っている視点と云わざるを得ません。ご存知の通り、日本国憲法は大日本帝国憲法から改正という形で帝国議会での議決を経て成立したものです。

大日本帝国憲法は国民の権利や信教の自由等の面で先進的な部分はありますが、第二次世界大戦の敗戦と共に占領統治下、新憲法案が日本案と連合国案を経て、占領軍による連合国案が強く推奨され、帝国議会において成立したものです。可能性としてですが、帝国議会において否決する制度上の手続きはあったわけです。

故に半分は押し付けられた形という理解も出来なくはありませんが、大日本帝国憲法下の帝国議会により改正されたという手続きがありました。強制力を背景とした改正だ、との批判がありますが、これを不当とするならば、韓国併合等日本の過去の手続きも不当という事となります、ですから、日本国憲法は日本国民の代表たる帝国議会での手続きを経て改正された、という点、忘れるべきではありません。

カントの永遠平和、若しくはHGウェルズの平和主義思想、というものが日本国憲法の憲法制定過程に影響を与えた、といわれるものですが、この背景には第二次世界大戦こそが最後の戦争であり、そののち国連を主軸とした世界連邦の形成が、理想とされていたものです。しかし、実際の世界史はそのようには進まず。

世界連邦の形成にはアーサーCクラークが“幼年期の終わり”に記したような外圧、若しくは次の世界大戦により、当時の対立軸であったイデオロギー対立を払拭する必要がありました。反面、核兵器の誕生により相互確証破壊という新しい不戦基盤が醸成され、これらは実現することなく今に至ります。

世界連邦が成立しないまま、一国平和主義は基本的に成り立ちませんが、建前と本音の文化、というべきでしょうか、軍隊ではない軍隊を組織し、集団安全保障機構へ流れで加盟を果たし、同盟国と国際関係の欠缺に経済大国としての位置づけを内包させることで、非常に危うい形ではありますが世界政治に対し確たる位置を確立させ、今日に至る事が出来ました。

自衛権、という視点ですが、自衛権については国際慣習法において、元々自衛権と正当防衛の英訳は同じものであり認められてきたものですが、成文国際法としても国連憲章51条により広く認められたもので、国連憲章は1989年に国際司法裁判所勧告的意見において強行規範、即ち国際公序として他の規範に先んじる優位性を持つ規範とされています。

ただ、自衛権を有する事は権利ではあるが義務ではない、という視点も踏まえつつ、実のところ主権国家が自衛権を保持し行使する事は国際法上認められた概念であり、併せて武力攻撃を他国に対しかける事は国連憲章二条四項において禁じられています、この点は何度か提示しました。

そしてこれらを履行するべく、国連は集団安全保障機関として機能しており、その上で国連加盟国は国連への支援義務が明記されていますので、日本国憲法を文字通り自衛権や戦力の不保持を教条的に適用すれば国連にさえ加盟する事は出来ません、すると、日本国憲法の戦力の不保持というものの基盤は元々国連加盟後、非常に流動的な位置にある事が理解できます。

憲法の形骸化、その波及と拡大という視点が、上記実情には危惧されています。こういいますのも、憲法は上記の通り健康快晴の種たる視点は戦力不保持という部分に挙げられるわけですが、一方で日本国憲法は非常に先進的な部分を含んでおり、戦力不保持には自衛権の明記若しくは全文の削除という。

このように改憲を求める声がある反面、男女同権や参政権の在り方へ反対する意見は少数派です、信教の自由を改める要求も少数派です。他方、現行憲法は自衛権の視点から、特に自衛隊を合憲とみなすかという視点、平和主義もその定義は突き詰めれば曖昧模糊としているものですが、手段としての平和主義をどのように位置づけるか。

平和主義を単純に考える場合、世界には世界史を以下に見回しても平和国家は多く歴史上に記録を見出すことは可能であり散見しますが、歴史上侵略国家や戦争国家を挙げた国はありません、すると、平和国家の定義とはどういったものであるのかは非常に難しくなります、戦争しない事を平和として掲げていたとして自国民を尊重しない国家は平和的とは解釈されません。

また、軍事力の対外投射を積極的に実施する諸国であっても、国際平和維持活動において積極的に軍事力を世界へ展開させ、国民皆兵制と重武装を国是とし、大量の兵器を海外へ輸出しているスウェーデン等は平和国家に定義されます。一方、制度上常備軍を持たない憲法を有するコスタリカは、安全保障を実質外注に出すことにより生じる人権問題等から平和国家とか必ずしも含まれないことも、あります。

手段か目的なのか、という議論とともに、明文化された九条の内容と我が国の自衛権に関する諸制度を考えた場合、この状況を放置する場合、憲法の形骸化を生むのではないか、という視点にも繋がり、一部憲法学者で保守派とされる方々の中には現状を違憲状態としたうえで積極的な改憲を模索すべき、という視点も、ある。

憲法改正について。上記の視点を踏まえますと、憲法を現実に即したものとする余地が見えてくるところです。ただ、憲法改正となりますと、新しい条文の明文、憲法制定という視点から再検討する場合、国民的な合意をどのように条文へ反映させるか、という視点は、憲法改正を正面から向き合う事を一種の禁忌としていたことから、充分討議されているとは言い切れません。

総論一致各論反対、の典型例となりそうですが、保守勢力や改憲派の中にも、憲法を改正するとしてどのように改正するかについては温度差があり、この点、国民的な議論が必要でしょう。更に、安易な改憲は革新勢力による一時的な政権交代となった場合、国家体制を含めた取り返しのつかない政策変更へ繋がる危険がある。

天皇、戦争放棄、国民の権利義務、国会、内閣、司法、財政、地方自治、改正、最高法規、補則、日本国家はこうした国であるとして、天皇陛下の日本国家統合の象徴としての地位から始まる日本国憲法は、相互に均衡を考え制定しているものであることは重要な点で、これら憲法の均衡については慎重を期すべきという見方も出来るでしょう。

その上で、やはり必要とする視点は、国民的な討議の基盤、政治参加への主権者としての権限の行使にあると考えます。実際のところ、社会生活において政治について討議し、主体的に参加する時間は驚くほど少なく、議論を深める余裕がありません、そもそも学生運動一つとっても左翼運動ばかりで保守的な学生運動が無い歪な国なのですから。

これは休日の不一致や住民生活と経済活動の地理的偏差、どうしても政治は国民の種観事項ではなく為政者の選挙民としての選出へ一部関与する点を例外として社会生活に追われている事が実情です。選挙権を投票として投じる時間さえも少なくない国民は持てず、という実情がある。

どうするべきか。市民活動として休日以外に集う市民は経済圧胴に参加していないといわざるを得ず、本当の意味で政治を参加する視点から討議する機会は驚くほど少ないことが実情です。政治問題は話題からさけるという視点がありますが、これは我が国政治参加と憲政以前の政治参加への社会的要求の歴史とは無関係ではないとも考えるのですが、兎に角少ない。

もちろん、ある種文化に近い側面、社会学的に政治と国民生活の接点の限界という環境に起因するものが多いのですが、改めて改憲を考える場合、政治へ参加するための休日を含め、時間はかかるが、国のconstitution、国の在り方についての共通理解を以て、その改正を考えなければ、隔靴掻痒の循環に陥りかねません。

ただし、現行憲法を仮に平和主義に限ったうえで見た場合、現状に甘んじて良いのかについては、討議の余地があります。こういいますのも、平和主義が目的ではなく手段として用いられている現状では、平和憲法を目的は無く手段とした場合、必ずしも平和的生存権と平和憲法は両立しえません。

平和憲法は自衛手段を制限しているだけですので、第一撃を受けての国土での専守防衛を念頭としており、これは国土が戦場となる事を意味します。しかし、先制攻撃を国土の外において受動的に防衛する選択肢、国際の平和と安全絵の価値観を共有する諸国との連携した防衛力の投射を選択肢から省いている現行憲法下の防衛政策を有事まで堅持する場合、どうか。

専守防衛を貫けば、国土戦となります、これは平和主義ではあっても平和的生存権が守られた状況なのか。すると、選挙民の意識として専守防衛とは国土での戦闘を念頭とした、いわば本土決戦主義という非常に危険な政策であることを認識しているのか、その是非も含め選挙民が共有しているかについては疑問符がどうしても残ります。

意見集約を行う上で、共通知識に立脚した有機的な討議を国民規模で行うには非常に時間を要します。例えば、海外では直接民主主義を制度の一部に含めているスイスなどは意見集約に時間をかけ過ぎ、慎重と云えばそれまでですがなかなか結論が出ません。スイスは参政権でも時間をかけて議論している為、例えば女性参政権の結論が出たのは1975年、というほど、議論に時間を掛ける国です。

スイス、21世紀の今日となっても例えば国連加盟や欧州連合へも住民集会や州議会など拒否と投票を通じ、意見集約に確たる意見を出すには時間が充分ではなく暫定議論の結論を見出す範囲に収まっています、日本でも時間がかかるが着実な議論、という選択肢を採った場合、情勢の変化に間に合わない可能性もありますが。

それでも安易に変えるべきではないものの改正するさいに後世憂いを残さぬよう、上記視点から個人的にその手間を惜しむべきではない、と考えるところです。こうした一方で、情勢変化に追い付かず不測の事態となった場合には、非常に懸念すべき状況を覚悟しなければなりません。

なのですが、幸い、付随的違憲審査権を採用する我が国では憲法判断は司法府が具体的事例を背景に判断するものであり、現在のところ、最高裁判所は安全保障問題について統治行為論を掲げ、要するに政治問題として内閣府に判断を委任しているため、合憲の判断はここになる、と。

政治問題として最高裁が行政府へ判断を委ねる、こうして現在の防衛政策は合憲の範囲内において、自衛隊として防衛力を整備し、国連への加盟と加盟国としての義務を履行、日米同盟を堅持し、豪州やインドとの包括安全保障協定を締結しています。包括安全保障協定は同盟条約を補完する新しい安全保障の協力関係という事は先日紹介しました。

その上で、この現状を一つの暫定案とするのか、永続的な憲法との国家国民の関係として視るのか、この部分は未だ不明確です。その為にも、国民的な議論として、安易な改憲の是非という論点の端緒を結論とするのではなく、という本質的な見極めが必要となります。

いわば、平和主義の目的と手段のはき違えに似た、改憲を手段ではなく目的に終わるとの短絡的な理解を戒め、出来る限り、価値観や憲法観の議論へ参画できるよう、多忙な日常生活の中から時間をねん出する努力を、先ず第一に行うことから始めるべきなのではないか、そんなことを考えてみました次第です。

北大路機関:はるな くらま
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F-22戦闘機再生産計画!【前篇】 米連邦議会下院小委員会がステルス戦闘機再生産を軍事委員会へ提言

2016-05-02 21:14:44 | 先端軍事テクノロジー
■F-22戦闘機再生産計画
 CNNが報じたところによれば、米連邦議会下院の小委員会において、かなり現実的且つ具体的にF-22戦闘機の生産再開が討議されているとのこと。

 F-22,最強の戦闘機、と提示して本機ほど異論がない航空機もないでしょう。米連邦議会下院の小委員会は4月30日までに、コスト増大を理由に生産中止となっていた最新型戦闘機F-22について、再生産を行った場合の財政負担水準及び再生産の工程上において生じる諸問題等の説明を求める条項を国防関連法案に盛り込むことで合意に至った、とのこと。共和党議員で議会下院小委員会委員長のマイクターナー議員は、F-22再生産の是非に関する検討は米空軍の戦力優位性を問う上で有意義な議論になるとし、この決定を元に下院軍事委員会はF-22再生産を審議するという。

 何故F-22か、それは更に先進的というF-35の開発遅れ、無人ステルス空母艦載機X-47Bの中止、アメリカ下院でのF-22生産再開論争、F-22よりも先進的と云われていたF-35が予備エンジン開発凍結後のメインプランの混乱などを受け開発は遅延に遅延、その上でロシアと中国が第五世代戦闘機開発を進めている事から、急遽F-22を再生産するという下院での討議が現実味を帯びてきた形です。もともと、F-35はF-22とハイローミックスを構成する廉価版という位置づけでもありましたが、ここが冷戦後の防衛計画見直しにより頓挫しています。

 空軍は187機のF-22戦闘機を運用しています。AN/APG-77レーダーは250km先の敵戦闘機を発見する能力があり、ファーストルック&ファーストキル、という運用が基本となっています。F-22はステルス設計により0.025㎡程度のレーダー反射面積しか有しませんが、高精度のレーダーならば索敵は可能です、しかし、AN/ALR-94電子戦装置により戦闘機からの450km先からのレーダー照射を探知でき、逆にいち早い位置把握が可能というもの。即ち、ステルス性を活かして相手に発見されず攻撃優位位置から一方的に攻撃し相手が気付いた時にはミサイルが極超音速で命中する直前というこの航空機は超音速巡航能力を持っている。

 主として任務は敵国上空へ進入し、上空を防護する敵戦闘機を全て叩き落とす事で空域の絶対航空優勢を確保するというもので、従来の制空戦闘機よりも進んだ、航空支配戦闘機と称され配備されました。F-22戦闘機は冷戦時代、749機を調達し空軍のF-15C制空戦闘機を全て置き換える計画でしたが、4億1200万ドルという高い費用を要し、このため生産が縮小されることとなりました。空軍がF-16戦闘機の後継として開発を進めるF-35戦闘機の調達費用はは9800万ドルから1億1600万ドルとされ、このF-35も元々は2400万ドルから3500万ドルに収められる予定であったのが高騰しているのですが、そのF-35と比較しても群を抜く高価な航空機であることは変わりありません。

 F-22への急浮上ともいえる再評価はその現状でのポテンシャルにあります、特に、近年急速に東西冷戦時代以来の通常戦力同士の対峙を含めた対立関係が再構築されている中、即座に威力を見せ付ける装備として有望視されているものです。緊張関係、米国防総省によると、先日のイージス艦へのSu-24戦闘爆撃機異常接近事案に続きロシア軍のSu27が先月29日、バルト海上空の国際空域で米軍のRC135偵察機に異常接近し、同機の上方でバレルロールを行ったとのこと。

 電子偵察機RC-135へSu-27戦闘機が急接近、冷戦時代はありふれた光景で近年では中国のSu-27が南シナ海において実施している構図ですが、報道によればバルト海上空においてロシア軍のSu-27戦闘機が米軍のRC-135へ15mという近距離まで接近しバレルロールの機動飛行を実施、最も接近した事案では7.6mまでの超近距離まで接近したとの事です、この地域での緊張に対し、アメリカ政府は挑発行為を停止するようロシア政府へ繰り返し要請していますが、ウクライナ危機後緊迫化する米ロ対立を背景に沈静化の見通しは立ちません。

 F-22が展開するだけで大きな抑止力が発揮できる、それならばこのF-22をもっと増やそう、ということ。ウクライナ危機後、緊迫の度合いを増す欧米とロシアの対立、特にソ連軍に占領された過去を持つ東欧諸国は、全力で防衛力の近代化を進めていますが、その軍事圧力に対し充分な抑止力を確保するには至っていません。こうした中、F-22はアメリカの象徴的な先端装備としてその動向が大きく報じられている形です。アメリカ空軍はF-22戦闘機をルーマニアのミハイルコガルニチャヌ空港へ初展開、イギリスのレイクンヒース基地より長躯展開訓練を実施したという行動でした。

 ポテンシャルについて。F-22ルーマニア初展開、とはいっても数時間後には撤収する一時的な訓練でしたが、大使が到着したF-22戦闘機2機を出迎えるなど、F-22の持つ強力な能力、ステルス性と超音速巡航性能を以て展開する航空優勢支配能力が大きなポテンシャルを期待されている事が端的に視てとれます。また、朝鮮半島等へもF-22が展開した際、大々的に報道される事も記憶に新しいでしょう。ただし、F-22の現在の装備数が空軍の世界規模での運用へ制約を課しているとの視点、更に他の次世代航空機、F-35戦闘機開発の遅延、X-47Bの開発中止という実情等もその再生産討議へ大きな影響を与えている事も確実です。

北大路機関:はるな くらま
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