■週報:世界の防衛,最新10論点
今回は海軍関連の話題を合せて。超音速滑空兵器は新しい時代の潮流ですが海上自衛隊も今後検討すべき時代が来るのでしょうね。
アメリカ政府は全てのアーレイバーク級ミサイル駆逐艦へ超音速滑空兵器を搭載する、ホワイトハウス安全保障大統領補佐官が10月20日に発表した。超音速滑空兵器は次世代の中長距離打撃手段であり、高高度に到達した飛翔体が高速落下し滑空しつつ目標に接近するもの、高速であり迎撃が難しいとされる。アーレイバーク級は100隻以上配備される。
プロンプトストライクプログラムとして超音速滑空兵器をズムウォルト級駆逐艦やヴァージニア級攻撃型原潜へ搭載する計画がある。今回の発表はこの配備計画をアーレイバーク級まで広める事を期したものであるが問題がある、新型ミサイルは従来型のMk41VLSに搭載出来ない為である。政府の突然の決定に搭載方法が無い海軍は困惑しているようだ。
アーレイバーク級ミサイル駆逐艦はイージスシステムを搭載し戦後量産された駆逐艦としては最大の建造数を誇るが、兵装の大半はMk41VLSに搭載する。対してプロンプトストライクプログラムのミサイルはMk57VLSやトマホーク用潜水艦VLSを念頭としており、アーレイバーク級に搭載するには装甲ボックスを採用するか根本的な改修が必要となる。
■ノルウェーイージス艦事故
海軍艦艇の事故は心痛むものですが、同時に重要な装備故にこうしたものは責任所在からやはり長引くのですね。
ノルウェー政府はイージス艦ヘルゲイングスタッド沈没事故について同艦を建造したDNV-GL社に16億ドルの賠償を請求する事となりました。ヘルゲイングスタッドは2018年11月8日にNATO演習からの帰途に際しタンカーソラ号と衝突、浸水が進み浅瀬に移動した上で総員退去となりましたが、その後浸水が進み沈没、世界初の喪失イージス艦に。
ヘルゲイングスタッドは2019年2月17日に引き上げが行われ修理不能が判明します。当初は防水作業の練度不足が沈没原因とされていましたが、シャフト部分など13の水密区画からの浸水が原因である事が判明し、事故調査報告書において建造に問題がある事が結論付けられた。本艦建造費は15億ドル以上と見積もられ建造費が賠償として請求されました。
■インド,ブラモス発射試験
インド海軍に超音速対艦ミサイルの時代が到来します。このミサイルは対艦用に用いるのではなく対地攻撃用とのこと。
インド海軍は水上戦闘艦発射型のブラモス超音速巡航ミサイル発射実験に10月18日、成功しました。ミサイル発射実験はミサイル駆逐艦チェンナイから実施、目標とされた地点に正確に命中したと発表しています。ブラモスはロシアとインドの共同開発ミサイルであり、航空機発射型と潜水艦発射型等が開発、これらは2007年に配備開始されています。
ブラモスミサイルは速力マッハ2.8で海面上10mを超低空飛行します。こうした装備を開発する背景には現在、中国弾道ミサイルの射程が延伸すると共に対艦弾道弾がインド海軍航空母艦への深刻な脅威となりつつあり、インド海軍では超音速巡航ミサイルにより対艦弾道弾を発射前に撃破する狙いがあるという。この為に駆逐艦は重要な打撃手段なのです。
■カナダ,26型フリゲイトを選定
カナダ海軍は昨今日本周辺に置いて頼もしい存在となっていますが、新しいフリゲイトを防空艦で固めるようですね。
カナダ海軍は11月6日、CSCカナダ次期水上戦闘艦計画用武器システムとしてスタンダードSM-2艦対空ミサイルの採用を決定しました。これはSM-2block3Cに最適化されたMk.41発射システムの垂直発射型と共に100発分を5億ドルで取得する計画で、CSCカナダ次期水上戦闘艦計画にはイギリス製26型フリゲイトが既に2018年に決定しています。
CSCカナダ次期水上戦闘艦計画計画では当初、カナダアリオン社とオランダダーメン社による防空フリゲイトデゼーヴェンプロヴィンシェン級派生型、スペインナヴァンティア社のイージス艦アルヴァロデバサン級にイージスシステムに代えCEAFAR2レーダーを搭載の独自案が提案されていましたが、最終的にイギリス製26型フリゲイトに決定されました。
26型フリゲイトはグローバルコンバットシップ計画として設計され、基準排水量5400tでイギリス海軍では射程120kmのアスター30対空ミサイルを搭載していますが、カナダ海軍はアメリカ海軍と同系統のミサイルを採用したものです。カナダ海軍は現行の全ての水上戦闘艦をこのCSC計画艦12隻により代替する計画で2020年代に建造が始ります。
■ルーマニア次期フリゲイト
ルーマニア海軍は冷戦時代の旧式艦と西欧からの中古艦艇を継ぐべくを最新鋭の小型艦で固めるようです。
ルーマニア海軍は2020年11月、フランスとの間で4隻のゴーウィンド級コルベットの建造契約を締結しました。ルーマニア海軍には国産で1992年に竣工したフリゲイトマラシェシュティとイギリス海軍より中古取得した22型フリゲイト2隻が配備されていますが、マラシェシュティは満載排水量5790tと大型ながら起工から40年を経て老朽化しています。
ゴーウィンド級コルベットは対潜型の全長102mで満載排水量2500tのものと哨戒型の全長85mで満載排水量1000tのものがあり、76mm単装砲を搭載、対潜型はナーバル社製セティス戦闘情報システムを搭載し対艦ミサイルとしてエクゾセもしくはオトマートを搭載するとともに飛行甲板を配置し、10t級までのヘリコプター発着が可能となっています。
フランスとの契約はゴーウィンド級4隻の新造と22型フリゲイト2隻の延命改修による契約総額は14億ドル、ゴーウィンド級コルベット4隻は2026年までに引渡が完了する契約とされ、ルーマニア海軍としては冷戦後最大の水上戦闘艦建造計画となります。無人機等を艦載機として搭載する計画ですが、コルベットの型式内訳は明らかにされていません。
■イスラエル,初の防空艦
イスラエル海軍が同国海軍初の、しかし詳細を見ますとちょっと不思議な防空艦といえる水上戦闘艦でした。
イスラエル海軍は初の防空艦となるサール6型コルベット一番艦マーゲンを受領します。これはドイツのティッセンクルップマリンシステムズにて建造されているもので将来的に4隻が導入されます、満載排水量は1900tでドイツ海軍が運用するブラウンシュバイク級コルベット派生型にあたるもので、契約金額は4億3000万ユーロにて建造される事となった。
サール6型コルベット最大の特色は本型がイスラエル海軍初の防空艦という点です、が、広域防空艦ではありません。その任務はイスラエルの排他的経済水域内にあります天然ガス掘削プラットフォームをイスラム過激派のロケット弾攻撃から防空する事に在り、イージス艦が100km圏内の防空を重視するのに対し、10km前後の防空を想定している点です。
防空にはEL/M-2248-MF-STAR-AESAレーダーを搭載し76mm主艦砲や16発の対艦ミサイル、324mm短魚雷発射管とともに射程10kmのバラク8 艦対空ミサイルをVLSに16発、アイアンドームC艦対空ミサイル40発搭載し戦術ロケット弾等による飽和攻撃に対し有効な迎撃が可能となります。また後部甲板にはUH-60クラスの航空機が発着可能です。
■バーソルフ級9番艦就役
バーソルフ級、アメリカ沿岸警備隊が誇るほとんど水上戦闘艦というべき沿岸警備隊のカッターですね。
アメリカ沿岸警備隊は11月11日、インガルス造船所よりバーソルフ級カッター9番艦ストーンを受領したとのこと。ストーンはサウスカロライナ州チャールストンに配備される計画で、同施設には同型艦のハミルトンとジェームズが配備されています。バーソルフ級は満載排水量4112t、57mm艦砲やCIWS個艦防空システム、航空機等を搭載しています。
バーソルフ級は水上戦闘艦に準じる性能を有しておりHH-65ヘリコプター2機か同1機とMQ-8無人ヘリコプター2機を搭載可能で、艦内にはスリップウェイを艦尾に有し11m複合艇など艦内に3隻を搭載可能です。アメリカ沿岸警備隊は本型10隻の整備に続いて、満載排水量4520tと更に大型化させたヘリテージ級カッターの整備に移行する計画です。
■ギリシャ掃海艇事故で全損
艦艇は何処の国でも伝統的な名前とともに国民の期待を背負って配備されているだけに、海軍艦艇の事故はやはり心が痛むものですね。
ギリシャ海軍の掃海艇カリストがアテネ近海にて貨物船と衝突、船体が破断し船体の半分が千切れて沈没する重大事故が発生しました。事故は10月27日に発生、乗員27名は総員離艦しましたが2名が重傷を負って病院に搬送されています。沈没を免れた船体後半部分は近傍のサラミス海軍基地に曳航されましたが、修理は事実上、断念されています。
カリストはイギリス海軍のハント級掃海艇を2001年に中古取得したもので満載排水量750t、ハント級掃海艇はギリシャ海軍においてエヴロピ級掃海艇として2隻が運用されています。ハント級掃海艇の船体は磁気機雷を想定しFRP製船体を採用しており、大型貨物船との衝突は元々想定していません、貨物船が磁気機雷の爆発を想定していない様にです。
■アドミラルクズネツォフ動静
アドミラルクズネツォフ、ロシア海軍唯一の航空母艦の去就は隣国日本としては重大な関心事です。
ロシア海軍は長らく重整備中である空母アドミラルクズネツォフの海上公試を2022年にも再開する方針と発表しました。空母アドミラルクズネツォフはロシア海軍唯一の航空母艦であり、Su-27戦闘機海軍型を運用可能であるとともに飛行甲板には24基の長距離対艦ミサイルが垂直発射方式で内臓されており、艦載機と併せ強力な打撃力を有しています。
空母アドミラルクズネツォフは2019年に大規模な火災事故に見舞われており、これは定期整備中に艦内で実施した溶接作業が艦内に大量放置された定数外の油性廃棄物を含む布きれに引火、これが艦内の電力ケーブル被膜へ延焼したことで、大規模な火災となっており、これにより作業員と乗員の内2名が死亡し14名が負傷する重大事案となっていました。
空母アドミラルクズネツォフは2018年にも造船所にて70tクレーンの倒壊に巻き込まれる事故に見舞われ、船体老朽化と共に常に現役維持の難しさが指摘されるところです。しかし空母アドミラルクズネツォフはロシア海軍にとり唯一の航空母艦であり、クリミア併合による経済制裁がロシア経済を悪化させたため、後継艦建造見通しも無く、今日に至る。
■ブラジル海軍旧オーシャン
ブラジル海軍の唯一の航空母艦である元ヘリコプター揚陸艦は海軍旗艦となりました。
ブラジル海軍はイギリス海軍コマンドー空母旧オーシャンとして知られるアトランティコを11月26日付で多目的ヘリコプター母艦から多目的航空母艦へ区分変更しました。アトランティコは現在、ブラジル海軍旗艦に位置付けられています。もともとブラジル海軍旗艦は旧フランス空母フォッシュをサンパウロとして運用していましたが退役しています。
アトランティコの前任、空母サンパウロは満載排水量32800tで2000年に再就役しましたが元々1963年に就役した空母であり、2017年に老朽化から除籍、この後継としてオーシャンが選ばれました、満載排水量22500tで現在のところサンパウロのような固定翼機は運用しませんが、1998年竣工とまだ当面運用が可能で、海軍唯一の空母へ位置付けられました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今回は海軍関連の話題を合せて。超音速滑空兵器は新しい時代の潮流ですが海上自衛隊も今後検討すべき時代が来るのでしょうね。
アメリカ政府は全てのアーレイバーク級ミサイル駆逐艦へ超音速滑空兵器を搭載する、ホワイトハウス安全保障大統領補佐官が10月20日に発表した。超音速滑空兵器は次世代の中長距離打撃手段であり、高高度に到達した飛翔体が高速落下し滑空しつつ目標に接近するもの、高速であり迎撃が難しいとされる。アーレイバーク級は100隻以上配備される。
プロンプトストライクプログラムとして超音速滑空兵器をズムウォルト級駆逐艦やヴァージニア級攻撃型原潜へ搭載する計画がある。今回の発表はこの配備計画をアーレイバーク級まで広める事を期したものであるが問題がある、新型ミサイルは従来型のMk41VLSに搭載出来ない為である。政府の突然の決定に搭載方法が無い海軍は困惑しているようだ。
アーレイバーク級ミサイル駆逐艦はイージスシステムを搭載し戦後量産された駆逐艦としては最大の建造数を誇るが、兵装の大半はMk41VLSに搭載する。対してプロンプトストライクプログラムのミサイルはMk57VLSやトマホーク用潜水艦VLSを念頭としており、アーレイバーク級に搭載するには装甲ボックスを採用するか根本的な改修が必要となる。
■ノルウェーイージス艦事故
海軍艦艇の事故は心痛むものですが、同時に重要な装備故にこうしたものは責任所在からやはり長引くのですね。
ノルウェー政府はイージス艦ヘルゲイングスタッド沈没事故について同艦を建造したDNV-GL社に16億ドルの賠償を請求する事となりました。ヘルゲイングスタッドは2018年11月8日にNATO演習からの帰途に際しタンカーソラ号と衝突、浸水が進み浅瀬に移動した上で総員退去となりましたが、その後浸水が進み沈没、世界初の喪失イージス艦に。
ヘルゲイングスタッドは2019年2月17日に引き上げが行われ修理不能が判明します。当初は防水作業の練度不足が沈没原因とされていましたが、シャフト部分など13の水密区画からの浸水が原因である事が判明し、事故調査報告書において建造に問題がある事が結論付けられた。本艦建造費は15億ドル以上と見積もられ建造費が賠償として請求されました。
■インド,ブラモス発射試験
インド海軍に超音速対艦ミサイルの時代が到来します。このミサイルは対艦用に用いるのではなく対地攻撃用とのこと。
インド海軍は水上戦闘艦発射型のブラモス超音速巡航ミサイル発射実験に10月18日、成功しました。ミサイル発射実験はミサイル駆逐艦チェンナイから実施、目標とされた地点に正確に命中したと発表しています。ブラモスはロシアとインドの共同開発ミサイルであり、航空機発射型と潜水艦発射型等が開発、これらは2007年に配備開始されています。
ブラモスミサイルは速力マッハ2.8で海面上10mを超低空飛行します。こうした装備を開発する背景には現在、中国弾道ミサイルの射程が延伸すると共に対艦弾道弾がインド海軍航空母艦への深刻な脅威となりつつあり、インド海軍では超音速巡航ミサイルにより対艦弾道弾を発射前に撃破する狙いがあるという。この為に駆逐艦は重要な打撃手段なのです。
■カナダ,26型フリゲイトを選定
カナダ海軍は昨今日本周辺に置いて頼もしい存在となっていますが、新しいフリゲイトを防空艦で固めるようですね。
カナダ海軍は11月6日、CSCカナダ次期水上戦闘艦計画用武器システムとしてスタンダードSM-2艦対空ミサイルの採用を決定しました。これはSM-2block3Cに最適化されたMk.41発射システムの垂直発射型と共に100発分を5億ドルで取得する計画で、CSCカナダ次期水上戦闘艦計画にはイギリス製26型フリゲイトが既に2018年に決定しています。
CSCカナダ次期水上戦闘艦計画計画では当初、カナダアリオン社とオランダダーメン社による防空フリゲイトデゼーヴェンプロヴィンシェン級派生型、スペインナヴァンティア社のイージス艦アルヴァロデバサン級にイージスシステムに代えCEAFAR2レーダーを搭載の独自案が提案されていましたが、最終的にイギリス製26型フリゲイトに決定されました。
26型フリゲイトはグローバルコンバットシップ計画として設計され、基準排水量5400tでイギリス海軍では射程120kmのアスター30対空ミサイルを搭載していますが、カナダ海軍はアメリカ海軍と同系統のミサイルを採用したものです。カナダ海軍は現行の全ての水上戦闘艦をこのCSC計画艦12隻により代替する計画で2020年代に建造が始ります。
■ルーマニア次期フリゲイト
ルーマニア海軍は冷戦時代の旧式艦と西欧からの中古艦艇を継ぐべくを最新鋭の小型艦で固めるようです。
ルーマニア海軍は2020年11月、フランスとの間で4隻のゴーウィンド級コルベットの建造契約を締結しました。ルーマニア海軍には国産で1992年に竣工したフリゲイトマラシェシュティとイギリス海軍より中古取得した22型フリゲイト2隻が配備されていますが、マラシェシュティは満載排水量5790tと大型ながら起工から40年を経て老朽化しています。
ゴーウィンド級コルベットは対潜型の全長102mで満載排水量2500tのものと哨戒型の全長85mで満載排水量1000tのものがあり、76mm単装砲を搭載、対潜型はナーバル社製セティス戦闘情報システムを搭載し対艦ミサイルとしてエクゾセもしくはオトマートを搭載するとともに飛行甲板を配置し、10t級までのヘリコプター発着が可能となっています。
フランスとの契約はゴーウィンド級4隻の新造と22型フリゲイト2隻の延命改修による契約総額は14億ドル、ゴーウィンド級コルベット4隻は2026年までに引渡が完了する契約とされ、ルーマニア海軍としては冷戦後最大の水上戦闘艦建造計画となります。無人機等を艦載機として搭載する計画ですが、コルベットの型式内訳は明らかにされていません。
■イスラエル,初の防空艦
イスラエル海軍が同国海軍初の、しかし詳細を見ますとちょっと不思議な防空艦といえる水上戦闘艦でした。
イスラエル海軍は初の防空艦となるサール6型コルベット一番艦マーゲンを受領します。これはドイツのティッセンクルップマリンシステムズにて建造されているもので将来的に4隻が導入されます、満載排水量は1900tでドイツ海軍が運用するブラウンシュバイク級コルベット派生型にあたるもので、契約金額は4億3000万ユーロにて建造される事となった。
サール6型コルベット最大の特色は本型がイスラエル海軍初の防空艦という点です、が、広域防空艦ではありません。その任務はイスラエルの排他的経済水域内にあります天然ガス掘削プラットフォームをイスラム過激派のロケット弾攻撃から防空する事に在り、イージス艦が100km圏内の防空を重視するのに対し、10km前後の防空を想定している点です。
防空にはEL/M-2248-MF-STAR-AESAレーダーを搭載し76mm主艦砲や16発の対艦ミサイル、324mm短魚雷発射管とともに射程10kmのバラク8 艦対空ミサイルをVLSに16発、アイアンドームC艦対空ミサイル40発搭載し戦術ロケット弾等による飽和攻撃に対し有効な迎撃が可能となります。また後部甲板にはUH-60クラスの航空機が発着可能です。
■バーソルフ級9番艦就役
バーソルフ級、アメリカ沿岸警備隊が誇るほとんど水上戦闘艦というべき沿岸警備隊のカッターですね。
アメリカ沿岸警備隊は11月11日、インガルス造船所よりバーソルフ級カッター9番艦ストーンを受領したとのこと。ストーンはサウスカロライナ州チャールストンに配備される計画で、同施設には同型艦のハミルトンとジェームズが配備されています。バーソルフ級は満載排水量4112t、57mm艦砲やCIWS個艦防空システム、航空機等を搭載しています。
バーソルフ級は水上戦闘艦に準じる性能を有しておりHH-65ヘリコプター2機か同1機とMQ-8無人ヘリコプター2機を搭載可能で、艦内にはスリップウェイを艦尾に有し11m複合艇など艦内に3隻を搭載可能です。アメリカ沿岸警備隊は本型10隻の整備に続いて、満載排水量4520tと更に大型化させたヘリテージ級カッターの整備に移行する計画です。
■ギリシャ掃海艇事故で全損
艦艇は何処の国でも伝統的な名前とともに国民の期待を背負って配備されているだけに、海軍艦艇の事故はやはり心が痛むものですね。
ギリシャ海軍の掃海艇カリストがアテネ近海にて貨物船と衝突、船体が破断し船体の半分が千切れて沈没する重大事故が発生しました。事故は10月27日に発生、乗員27名は総員離艦しましたが2名が重傷を負って病院に搬送されています。沈没を免れた船体後半部分は近傍のサラミス海軍基地に曳航されましたが、修理は事実上、断念されています。
カリストはイギリス海軍のハント級掃海艇を2001年に中古取得したもので満載排水量750t、ハント級掃海艇はギリシャ海軍においてエヴロピ級掃海艇として2隻が運用されています。ハント級掃海艇の船体は磁気機雷を想定しFRP製船体を採用しており、大型貨物船との衝突は元々想定していません、貨物船が磁気機雷の爆発を想定していない様にです。
■アドミラルクズネツォフ動静
アドミラルクズネツォフ、ロシア海軍唯一の航空母艦の去就は隣国日本としては重大な関心事です。
ロシア海軍は長らく重整備中である空母アドミラルクズネツォフの海上公試を2022年にも再開する方針と発表しました。空母アドミラルクズネツォフはロシア海軍唯一の航空母艦であり、Su-27戦闘機海軍型を運用可能であるとともに飛行甲板には24基の長距離対艦ミサイルが垂直発射方式で内臓されており、艦載機と併せ強力な打撃力を有しています。
空母アドミラルクズネツォフは2019年に大規模な火災事故に見舞われており、これは定期整備中に艦内で実施した溶接作業が艦内に大量放置された定数外の油性廃棄物を含む布きれに引火、これが艦内の電力ケーブル被膜へ延焼したことで、大規模な火災となっており、これにより作業員と乗員の内2名が死亡し14名が負傷する重大事案となっていました。
空母アドミラルクズネツォフは2018年にも造船所にて70tクレーンの倒壊に巻き込まれる事故に見舞われ、船体老朽化と共に常に現役維持の難しさが指摘されるところです。しかし空母アドミラルクズネツォフはロシア海軍にとり唯一の航空母艦であり、クリミア併合による経済制裁がロシア経済を悪化させたため、後継艦建造見通しも無く、今日に至る。
■ブラジル海軍旧オーシャン
ブラジル海軍の唯一の航空母艦である元ヘリコプター揚陸艦は海軍旗艦となりました。
ブラジル海軍はイギリス海軍コマンドー空母旧オーシャンとして知られるアトランティコを11月26日付で多目的ヘリコプター母艦から多目的航空母艦へ区分変更しました。アトランティコは現在、ブラジル海軍旗艦に位置付けられています。もともとブラジル海軍旗艦は旧フランス空母フォッシュをサンパウロとして運用していましたが退役しています。
アトランティコの前任、空母サンパウロは満載排水量32800tで2000年に再就役しましたが元々1963年に就役した空母であり、2017年に老朽化から除籍、この後継としてオーシャンが選ばれました、満載排水量22500tで現在のところサンパウロのような固定翼機は運用しませんが、1998年竣工とまだ当面運用が可能で、海軍唯一の空母へ位置付けられました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)