久しぶりに月を見た。10月6日が朔なので10日は三日月より少し太っているようだ。斜め下方には金星が輝き、夕焼けの終わりのころの空と鉄塔との絶妙のハーモニーを醸し出していた。
緊急事態宣言が解除され、制限があるとはいえ親しい方々と一緒に食事をしたりする機会を最近得た。食卓を共にすることは親密性の最たるものであり、その楽しさは言葉に言い表せないくらいだった。
食卓を共にすることがコロナ禍で大変制限され、家族で食事をするときまでマスクがどうだとかで、考えてみれば実に悲しい事態なのだ。
しかし、こうした状況であることは、逆に親密性や愛に想いをはせらす良いタイミングだと思う。孤独感は意外に親密性や愛と繋がっている。
著名な心理学者エリクソンが人格形成理論で23-34歳の時を「愛ー親密性ー孤独感」の時代としている。この時代は、幼少期から青年期の一つの完成期のようであり(もちろん人それぞれ個性的な成長をするものだが)、私にとってもこれからの人生を見渡す時にかなり大切な時期とも言える。
「愛ー親密性ー孤独感」について、古今東西のホモサピエンスは多くの時間を使って思索してきたと思う。もちろん縄文時代の祖先もそうだったろう。先日訪れた井戸尻考古感には土器の図像に月の軌道を彷彿させる曲線があったり、イザナギが禊ぎで太陽、月などを産む日本神話を彷彿させる図像ではないかと思うものもある。
月は天球の中で最も古代人にとっては大切だった天体だったと思う。夜の恐怖から救う存在であり、もっとも親密な天体の一つである。その軌道や形の変化は大事な季節や時間を教えてくれる。
親密になってお行儀の悪くなりがちな人間と違い、礼儀正しくその恩恵を無条件に与えてくれる。これから、しばらく愛と孤独と親密さについて考えていきたい。
1/10 愛と孤独と親密さ
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