浮世の中で理想や夢を持って生きていても何か空しい。そこで浮世を捨て出家する。これは何も仏教だけでなく多くの宗教でも普通に行われることである。出家すると、浮世での理想と夢が消えるのでストレスがなくなり本当の平安感が感じられるのだと思う。浮世の理想や夢は富や名誉を得られるかもしれないが、ストレスを生む母体なのだ。私もかつて出家ではないが、会社生活をやめて全く違う世界に飛び込んだが、その時の解放感・平安感は忘れられない。
それならば宗教が存在していたといわれる縄文時代はどうだったのだろうか。恐らく信仰深い時代なので、同じようなことがあったと思う。かつて2017年に上梓した縄文小説では、仮説的に縄文中期の関東西南部・甲信の部族を離れる主人公を描いたものだ。主人公が丸木舟で大栗川を下り海へ向かうシーンはどこかで自分の疑似出家体験につながっているかもしれない。しかし浮世を完全に捨て去ることは今の世でも厳しすぎるので、部族内における宗教家といったところがいいとこかもしれない。
さらに、宗教家ように浮世を捨てるのは難しいかもしれないが、日常の中で浮世の理想と夢を限定的に放棄することはできる。旅行に行ったり、神社・仏閣・教会に行ったり、異文化に触れたりなどはそれにあたるかもしれない。
こうしたことは縄文時代でも当然あったと思う。環状集落の中央広場や環状列石での季節の祭儀、冠婚葬祭・・・
縄文後晩期の田端遺跡
縄文前期の阿久遺跡
江戸博での縄文2021が5日で終了する。先日5回目の見学をしたが、特に田端遺跡の245遺跡関係を念入りに見学した。ヒスイの勾玉、中空土偶の頭部、舟形土器、注口土器、各種土偶。祖先が浮世を離れて観た世界の一部を、私も浮世を離れて観たようだった。
巻頭の写真は吉野。
2/10 明るく生きるには
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