基礎物理学の答案から知ったことは意外と私の講義のやり方が支持されていたということである。
講義の前半部で前回の質問とか感想への返事をする。これが意外に時間がかかるが、それを気にしないできちんと行い、それがすめばその時間のテーマについて講義する。最後の10分間はアンケートで質問や感想を書いてもらう。
前回の質問や感想に答えるところが長くなり、講義の本体が少し短くなるが、どうせ難しいところは聞いてもわからないからさっと済ませる。講義で十分でなかったところはアンケートでの質問が寄せられればそこで詳しく答える。復習でもあるが、できれば前の講義での論点と違った観点についても触れる。こういうやり方だ。
「講義の印象に残った点について述べよ」という救済問題(正規の問題に答えられなかった学生が1問だけ選べる問題)の答えからは採点者としての私に対する迎合もあるのだろうが、肯定的な反応がほとんどだった。あくまでも彼らの期待した講義ではなかったところが意外に好評である。これは自画自賛的だからちょっと割引が必要だが、それでも学生の本音の部分もいくらかはあるだろう。
いつかの授業前に会ったある学生からは時間の使い方がうまくて授業に集中できるという感想をもらっていた。その学生は以前は他の大学の国文科の学生であったそうで、薬学部へと方向転換したために物理は高校でも学んだことはないと言っていた。
しかし、授業の途中では内容が難しいとの反応やH先生の授業より難しいとの厳しい批判もあった。それでこの授業は未修教育ではないといったが、最後まで一部の学生の理解は得られなかったと思う。
質問に答えないという不平もあったが、それならなぜ授業中に質問をしないのかと授業で言ったのだが、そのことについての反論はその後出てこなかった。アンケートは授業のほんの一部で授業とあわせて成り立っているという考えがないらしい。
言葉がわからないという批判もあった。それに対して「日本語で話しており、また講義ノートもあるのだから、わからない言葉を書き出して一つ一つ科学事典で調べたらどうですか」 といい、「それでもわからない言葉は質問してくれてもいい」といったが、それを実行した学生はいなかった。