「例は説教よりも重要である(Examples are more important than precepts.)」とは中学校のときに覚えたことわざである。
これはかの有名なニュートンが彼の書いた数学の本の中で述べた言葉だと聞いている。いま辞書を引いてみるとpreceptには説教といった訳はなく、規範、指針、格言といった訳がついている。
どうしてこんなもう50年以上も前に覚えた文が頭に浮かんだ来たのだろう。基礎物理学の試験が終わってその答案をもって電車の停留所の方へ向かっているときであった。こんな言葉が頭に浮かんだのは。
教育とは何の足しにもならないものだとつくづく思う。如何に一生懸命に教えてみても所詮その定着度はとても低い。何回も繰り返し教えたことがひとつも学生の頭には定着していない。
さすがに答案では採点者の頭に来るようなことを書く学生は誰もいないが、しかし私の授業のやり方を評価したといっている学生の答案は本当に彼らが何を理解したのだろうかと思わさせるようなことしか書かれていない。単に間に合わせの点を取るための方便としての迎合ではないかとも疑いたくなる。それくらい結果はひどい。
学生に単位を出すように試験問題で正規の設問以外に救済問題を出したのでそれをほとんどの学生が選んでいる。それでなければ合格点ぎりぎりかまたは不合格の学生が続出しただろう。