数日前に辛淑玉さんの岩波新書「悪あがきのすすめ」を読んだ。
その日の午後、仕事をしようとしたのだが、暑いのと興がならず気晴らしをと思い、昼寝の後に目を覚ましてから読んだ。
するすると読めて数時間で読めてしまった。ちょっと「読みで」がないともいえるが、まあいい。
辛さんがその活動に感心した何人かの人たちやグループを紹介したりしているが、辛さんなりのいくつかの悪あがきの仕方の要領も述べている。悪あがきのコツには7つの項目が載っている。
(1)あせらずに、力を抜いて
(2)自分だけのこだわりを大事にする
(3)肝が据わっていれば、ハチャメチャもできる
(4)ああ言えば、こう言う
(5)ときには運も味方につける
(6)「私はここにいます」と発信する
(7)日和見だって悪あがきになる
この7つの項目には入っていないが、「闘わずに逃げる」とか「しぶとく生き延びる」という項目もある。
辛さんはこれらを反権力闘争のやり方として書いたのだが、これは他の場合にも使うことができよう。たとえばだが、子供をカルトにとられてしまった親御さんのカルトとの闘争の仕方としても読むこともできる。
「思想の科学研究会」編の大部な書籍「転向」の研究を牧師の村上密先生たちはカルトに図らずも入ってしまった人たちをカルトから脱会させる方法を探る書として研究したという。
これだけを見ても村上先生たちの優れた作戦的思考(strategical thinking) が伺える。またその後かなりの数のカウンセラーが村上先生たちの指導を受けて育成された。
こういう発想をできる人たちをすばらしいと思う。転向研究を主導した鶴見俊輔先生も自分たちの研究がこのような形で役立つだろうとはまさか思いもしなかったであろう。
研究というのはいつもこういう発想の転換ができる人には難しいものではない。いや、別に研究には限らない。人間が生きていくためにこのような発想の転換ができる思考の柔軟性をもちたいものだ。