今日の朝日新聞に60歳代の女性が虚数は世の中に存在しない数だと中学校か高校で学んだが、実際の世の中では技術的な分野とかでそれが実際に使われていることを知ったと書いてあった。
虚数を英語の辞書で調べると、an imaginary numberとあり、想像上の数が本当の意味だと知ったとあった。この投書などは一般人の虚数に対するイメージとして面白いから投書欄に採用されたのだろう。
平面上に二つの実数 (x,y) で一つの点を指定するのは歴史的にはデカルトとかフェルマーによるのだが、その平面を複素数を表すのに使うことは数学者のガウスによると言われている。
それで、i とは実軸上の1に対してちょうど時計の針と反対方向に90度だけ原点を中心にして回転して得られる。もう一度原点を中心にして時計の針と反対方向に90度回転させると-1が得られる。それで、i^ {2}=-1であることがわかる。
この説明は遠山啓著『数学入門』(岩波新書)に書かれてあって、この説明の巧みさに感心した。それでこの説明法は遠山先生の独創かと長い間思って来たのだが、先日ベルの『数学をつくった人々』(早川文庫)を読んでいたら、すでにベルがこのような説明をしていることを知った。遠山先生の説明は詳しいが、ベルの説明はさらっとされている。
この虚数 i の解釈はハミルトンの四元数でも述べられており、私も当然のことのように小著『四元数の発見』(海鳴社)でも述べた。それによく不思議な関係式として引用される e^{i\pi}+1=0 などでもなんのことはない、実軸上にある線分01(0から1までの線分)を\pi=180度だけ原点を中心にして、反時計方向に回転すれば、得られる関係である。何の神秘的なこともない。言葉で書くと面倒だが、図で示せば、とても簡単なことでこのことがわからない人がいるとは思わない。いくら数学音痴だと自称する人であっても。
だが、よく無理数 \pi (円周率パイ)と別の無理数 e (自然対数の底)と虚数 i (-1の正の平方根)とを関係づける不思議な関係と言われるので、不思議な気持ちがする人も多いだろう。小川洋子さんの『博士の愛した数式』(新潮文庫)などにもそのように書いてある。
しかし、インターネットを検索すると虚数 i の上に述べた意味を説明しているサイトも最近ではある。同様にハミルトンは複素平面に対して垂直な平面上で同じように \sqrt{-1}=j と定義される虚数単位があると思いついて、それが彼の「三元数」の探求の契機となり、最後に代数系としては「三元数」は成り立たないが、四元数があるという四元数の発見へと導かれた。詳しいことは自己PRで悪いが、小著『四元数の発見』を見られたい。
どうしても『四元数の発見』を購入して読んでくださいというわけではない。当該の書を図書館で見て頂いてもいいし、インターネットで「数学・物理通信」を検索して以前の号に掲載された、「四元数の発見」とあるエッセイを読めば、まったくお金もかからずにすむことである。