四元数の演算とベクトルの内積と外積とは関係がないかと思っていたが、そうではない。
虚部しかない四元数(これは実部をもたない四元数)を3次元ベクトルで表現できるとはGibbsの卓見だったろう。だから四元数の演算とベクトルの内積と外積の定義が関係ないはずがない。
しかし、どういう風に四元数の演算とベクトルの内積と外積の定義が関係がつくのかはよくわかならなかった。それは『四元数の発見』(海鳴社)を出版した後でもよくわからなかった。むしろ関係がないのではないかと思っていた時期もある。
それを追究しようとして書いた数学エッセイに「四元数(補遺2)」ー四元数とベクトル空間ー(「数学・物理通信」5巻5号(2015.5.1)2-6参照)があった。これを最近読みなおしたが、このエッセイを書いたときにはベクトルの内積と四元数の積との間の関係をよくわかっていなかったと思う。この二つは独立な演算であると思っていた節がある。
そうではないと知ったのはブルーバックスの松岡学『数の世界』(講談社)を読んだからである。ベクトルの内積の四元数の積と関係が示されていた。だが、外積の方も四元数の積との関係がつくとは思っていなかった。
もともとGibbsはHamiltonの四元数を知って、これから3次元のベクトルを考え、かつ、その中で重要なのはいま内積とか外積といわれるものだと認識してベクトル解析をつくったのだ。
ここでストレートに四元数の演算とベクトルの内積と外積のとの関係を表しておこう。
A=ai+bj+ck, B=xi+yj+zkとする。これはある二つの四元数の虚部部分である。
内積
ax+by+cz=(1/2)(A \bar{B}+B \bar{A})
であり、外積は
(bz-cy)\bm{i}+(cx-az)\bm{j}+(ay-bx)\bm{k}=- (1/2)(A \bar{B}-B \bar{A})
である。この外積の元の四元数での演算での表示法は知らなかった。先週の金曜か土曜にようやく調べて知ったことである。これは文献を調べて知ったことではない。自分で計算をしてみてようやく知ったことである。
ひょっとしたら、すでに『ハミルトンと四元数』(海鳴社)のどこかにでているのかもしれないが。
しかし、どこでも見たことがないように思う。
(注)「数学・物理通信」5巻5号(2015.5.1)2-6はインターネットで「数学・物理通信」で検索すれば、すぐに名古屋大学の谷村さんのサイトにたどり着く。谷村さん、いつもありがとうございます。