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ある時、バイト先で中学生のA君にB君がプレゼントを持ってきました。
帰り際、それを渡されたA君は嬉しそうに、
「昨日は、僕の誕生日だったんです。」と言い、
私と私の雇い主様が微笑みながら拍手しました。
「おめでとう~。」
「僕はまだ14歳なんだ。」
「若いねぇ。あっ、だからと言って、じゃあ『私は』なんて、私は言わないからね。」と意味のない予防線を張る私。
その子は、ニヤニヤしながら
「先は長いなぁ。」と言いました。
「うん、そうだね。だけどこの先も楽しいよ~。」と、私は心の底から想いを込めて言いました。
※ ※ ※
雨がしとしと降る帰り道、私は自分の言葉を思い起こしながらトボトボと歩いていました。
ー楽しいよ~。
それならば、未熟ゆえにいくつもの失敗を重ね、涙の川におぼれかけたあの日々は?
肉体の痛みや病の苦しさに、身をかがめ耐え抜いたあの時間は ?
嫉妬心に駆られ、または怒りのやり場に困り、憤怒の苦しみにもがいた愚かな私は ?
今まで生きて来た時間を5文字で表わせと言われたわけではないけれど、いろいろな事を含めても、きっと一言で言うならば、私の場合は「楽しいよ」となったのかと思いました。
またはそう言える歳になったのかも知れません。
だけどそんなには悟っているわけではありません。
むしろこんなことを書いていると、すべての禍の影に怯えている自分に気が付くのです。
それでも時には、人に贈った言葉を自分に向けて取り戻し、耳を澄ましてみたいと思うのでした。