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私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

世界のリーダー交代を考える アメリカ編

2012-12-01 22:38:09 | 講演・講義・フォーラム等
 期待していた講座が始まった。北大の公開講座「世界のリーダー交代を考える」シリーズ(4回講座)である。初回は「アメリカ大統領選挙の結果をどう見るか」 と題しての講座だった。アメリカを知る専門家ならではの見方を語ってくれた。 

 北大大学院のメディア・コミュニケーション研究院が主催する公開講座が始まった。
 第1回講座は11月29日(木)夜、北大情報教育館(北区北17西8)で開催された。
 講師は渡辺将人准教授だったが、この方のキャリアが特異だった。
 渡辺氏はシカゴ大学・大学院でアメリカ政治学を専攻した後、実際に連邦下院議員の事務所スタッフとして勤めたり、クリントン上院議員(現在の国務長官)の選挙スタッフの経験もされたりしたそうだ。その後帰国し、BS放送の政治討論番組の制作に関わった後、北大において研究生活に入ったという方だそうだ。

               

 渡辺氏は今回の大統領選の面白い見方を一つ提示してくれた。
 それはオバマ、ロムニー両者の争いは「アウトサイダー同士の争い」だったということだ。
 どういうことかというと、オバマは文化的・地理的に平均的アメリカ人ではなく、ロムニーもまた宗教的に平均的アメリカ人ではないというのだ。
 オバマはご存じのように黒人の血が流れていて、しかも出身がハワイというアメリカにとっては辺地の出身である。ロムニーもまたキリスト教の中では異端(?)のモルモン教徒ということだ。
 アメリカにおいて大統領に選ばれる者は伝統的にアメリカの主流に出自があるものという不文律のようなものが存在していたのが近年崩れつつあることを象徴した選挙だったということのようだ。

 次に今回の大統領選は結果としてはオバマが選挙人の獲得数ではかなり上回ったが、実態は僅差の戦いだった。
 その要因はオバマの民主党が中間選挙で敗北したことにより、経済政策で中道化せざるを得ず、社会政策においてリベラル性を維持するという分かりにくさがその要因の一つになったではないかと指摘する。(ここに話の多くの部分が割かれたのだが)
 一方、ロムニーは本来保守穏健派なのだが、予備選勝利のために右派的傾向を強めて大統領候補となったが、大統領選ではより多様な層にアピールするため本来の中道に戻すという「揺れ」(迷い?)が勝利に結びつかなかったのではないと分析した。

 そして総括として渡部氏は次の5点を挙げた。
 1.オバマ陣営の頭脳ゲームと地上戦 ~ 「選挙人」獲得に向けての資源配分と陣営内の調査の正確さが選挙人獲得数では大勝することに繋がった。
 2.オバマ政権への厳しい評価 ~ 経済政策への厳しい評価が一般投票では僅差の結果をもたらした。今後の議会運営や法案通過が難しくなる場面も想定される。
 3.混迷の保守 ~ 共和党内においてティパーティーに象徴されるようにリバタリアンをはじめとする強い保守派が存在する。穏健派のロムニーはそうした保守派対策に消耗してしまった。
 4.人口動態の変容 ~ ヒスパニック票の増加が今回の大統領選でも注目されたが、今後ますますアメリカ政界における影響力が増してきそうである。
 5.連邦上院に日系女性議員誕生 ~ 多民族国家アメリカを象徴する現象は今後ますます増えてくると予想される。

 今回のアメリカ大統領選は私も注目していた。NHK・BSの特集番組も興味深く見ていたが、ロムニー派のティーパーティーは渡辺氏も指摘したようにロムニー氏には頭の痛い問題だったようだ。
 再選されたとはいえ、実質的には薄氷の勝利だったオバマ大統領が今後アメリカ政界(ひいては世界の政治)をどのようにリードしていくだろうか。
 圧倒的に支持され、熱狂的に迎えられた4年前とは違い、今後の4年は難しさもあるかもしれないが、真のオバマが試される4年間なのかもしれない。そんなオバマを見守りたいと思う。

※ 写真撮影がNGのため地味~な投稿となってしまいました。