生ものも生もの! 一昨日夜に判明したばかりの湯気が立つような韓国大統領選挙の結果分析を昨夕聴くことができた。北大の公開講座「世界のリーダー交代を考える」シリーズの最終講(第4講)は韓国人の准教授玄武岩氏による「韓国大統領選挙を分析する」と題する講座だった。
※ 大統領選の当選後に笑顔を振りまく朴槿恵氏です。
大激戦が伝えられた韓国大統領選挙は保守系と目される朴槿恵(パク・クネ)氏が過半数を制して当選した。
講師の玄武岩(ヒョン・ヴァン と発音されたように聞こえた)氏は朴槿恵51.6%、文在寅48.0%の得票率について当初予想より朴槿恵氏が余裕をもって勝利したと語った。
玄氏はすでに地域別得票率、世代別得票率の結果についても情報を入手し私たちに提示してくれた。
それによると地域別得票率では、朴槿恵氏が地元である慶尚道を手堅くまとめたうえ、ソウルにおいても善戦したことが勝因であろうと分析した。
また世代別の得票率については、出口調査の結果であろうが若い世代が文在寅氏を、年代が高くなるにつれて朴槿恵氏を支持する率が高くなり、世代間の得票率が二人の間で見事にクロスしているが、ここでも朴槿恵氏が高い年代の層を手堅くまとめているのが見て取れた。
※ 大統領選の敗北が決し俯く文在寅氏です。
今回の韓国大統領選の特徴を玄武岩氏は次のように挙げた。
◇保守・革新の総力戦 ~ 一騎打ち
◇過去との戦い ~ 朴正熙 VS 盧武鉉
◇女性大統領/政権交代
◇第3勢力の浮上 ~ 安哲秀
全てについてレポートしたいが、一つだけ“過去との戦い”について触れると、朴槿恵氏は言うまでもなく韓国の軍部独裁大統領として名をはせた朴正熙大統領の愛娘である。一方、文在寅氏は盧武鉉大統領の秘書室長として大統領を支えた側近であった。
保守・革新の総力戦との表現もあるが、朴正熙と盧武鉉では真逆と言って良いほどの違いがある。その後継と目される二人のどちらを選ぶかが今回の大統領選だったとも云える。
※ 朴正熙大統領時代に暗殺された母親に代わってファーストレディ役を務めた朴槿恵氏の若き日です。
その他にも玄氏は両者の出自とか、政治的経歴、第3勢力の安哲秀氏のことなどさまざまに語り、分析してくれたが、その中から韓国大統領選に関する外国メディアの報道について興味深いお話を聞いた。それはアメリカを初めてとして欧米の有力紙は朴槿恵氏をこぞって「独裁者の娘」と報じているということだ。玄氏はこのことは「世界の常識」であるとも言い切った。
一方、韓国や日本のメディアではそうした表現は皆無とのことだった。
このことをどう見るか、ということだが…。玄氏はそのことには触れなかったので、私なりに考えてみることにした。
欧米が「独裁者の娘」というような強い表現をするのは、“人権”を無視する独裁という体制を忌み嫌う体質がそうした表現に繋がっているのではないだろうか。韓国においては朴正熙大統領の功罪は半ばすることもありそうした表現にはならないだろうことは理解できるのだが、問題は日本のメディアである。日本のメディアは欧米のメディアと比較して“人権”意識が希薄なのだろうか? そう言われても仕方のないことのように思われる…。はたして日本のメディアの反論は?
ただ、朴槿恵氏がいくら朴正熙大統領の娘だからといって、朴正熙時代の再来を夢見ているとは思えないし、またそうしたことができる状況にもない。
玄武岩氏が予想する朴槿恵新大統領がリードする韓国は大きく変化することはなく、南北朝鮮問題にしても、日韓問題にしても対話路線を模索する可能性が高いのではと予想した。
考えてみると、今回の「世界のリーダー交代を考える」シリーズは実にタイムリーな企画だったと云える。
このシリーズでは取り上げられなかったロシアのプーチン大統領の復権も含めると、日本を囲む、そして日本を含むアメリカ・ロシア・中国・韓国の全てでリーダーの交代があった。このことが今後の日本の外交にどのような影響を与えていくのだろうか?
間もなく政権に就こうとしている安倍政権の対応を見守りたいと思う。