人間の記憶がいかに頼りないものか、ということを知らされた映画だった。というのも、私は2010年にこの映画を一度観ていた。しかし、主演の葛優という男優に見覚えがあるだけで、ストーリーさえ新鮮に映った。私にとっては新しい映画を観る思いの2時間だった。(もっとも、それはお前の記憶力が衰えているからだ、と指摘されたら反論する言葉もないのだが…)
北海道立近代美術館の常設展において現在「北海道美術紀行」展が開催されている。それに併せて、本日(9月17日)から三日間、関連する映画を無料で上映するというニュースをキャッチし、足を運んだ。
ストーリーは、投資で大当たりした冴えない中年男の秦奮(葛優)がインターネットで「婚活」に励む姿を追う。秦奮の前には、株にはまっている人、同性愛者、お墓のセールス、台湾の富豪のわけあり娘、などなどさまざまな未婚女性が現れるが、秦奮は乗り気になれない。そうした中、美人の客室乗務員・梁笑笑(舒淇)が現れる。しかし、梁笑笑は妻子ある男性との不倫に悩んでいた。
秦奮の人柄に引き付けられつつも、不倫男性を忘れられない梁笑笑は、彼との思い出の地・北海道に秦奮と二人で旅立つのだが、彼の地において…。
ということで、北海道、特に東北海道(釧路、阿寒湖、網走、厚岸、斜里、美幌)の各地を旅する。この映画が中国国内でヒットすることによって、北海道は中国人にとって憧れの地となり、中国人の中に北海道旅行ブームが到来したのは記憶に新しい。
主演の秦奮は中年の上、禿頭という見たところは冴えない男という設定で、まるで美女と野獣のカップルが巻き起こすラブコメディーに仕立てられている。
映画は監督が東北海道の景観にほれ込んだということだが、私などから見るとけっして素晴らしい景観が切り取られたとは言い難い。日本人の映像作家ならもっと素晴らしい画面になるのでは、と思われたのだが…。それでも中国人は北海道に憧れたということだ。
映画の中で、台湾人の富豪のわけあり娘役で出演していた女優をどこかで見た女優だなぁ、と思いながら観ていたのだが、帰宅して調べてみると、日本でも活躍したビビアン・スーだった。
映画の日本題名だが「狙った恋の落とし方」という題名は、はたして適切だろうか?題名からは主演の秦奮が美女である梁笑笑を篭絡したかのようなイメージを抱かせるが、けっしてそのようなストーリーではなかった。国内で行われた映画祭では、「誠実なおつき合いができる方のみ」「誠意なる婚活」等の題名が付けられたという。むしろそちらの方がストーリーには近い題名のように思える。そのような題名ではヒットしなかった?
それにしても、6年前に観たはずの映画のストーリーをほぼ忘れていたとは、若干ショックである。そうしたことを自覚することが多くなっていくのだろうか…。