田舎おじさん 札幌を見る!観る!視る!

私の札幌生活も17年目を迎えました。これまでのスタイルを維持しつつ原点回帰も試み、さらなるバージョンアップを目ざします。

道新フォーラム「現代への視点」

2017-09-22 16:11:14 | 講演・講義・フォーラム等
 識者の言葉は重い。そして説得力がある。「しかし、それは一方の見方だろう」と指摘されると、そのとおりなのかもしれない。そのことも意識しつつ、保阪正康氏、姜尚中氏、田中優子氏の三人の考えに耳を傾けた。 

 9月18日(月・祝)午後、道新ホールで開催された北海道新聞社主催の道新フォーラム「現代への視点2017 ~歴史から学び、伝えるもの~」に参加した。

               

 フォーラムは、前半が三氏の講演、後半が三氏によるパネルディスカッションという盛りだくさんの内容だった。
 各氏の演題は次のとおりである。
 ◇保阪正康氏 ~ 「昭和・平成そして新時代へ」
          
   
 ◇姜尚中氏  ~ 「内戦の記憶と記憶の内戦をめぐって」
          

 ◇田中優子氏 ~ 「江戸から学び今に伝える」
          

 全ての講演が含蓄に富み、素晴らしい内容であったが、その全てをここに再現するにはかなりのボリュームとなるし、私の手にはあまりそうだ。
 そこで、この道新フォーラムの実質的主客である保阪氏の講演内容について振り返ってみることにする。(「道新フォーラム 現代への視点」は第9回目の開催ということだが、保阪氏は第1回目から欠かさず参加されている)

 保阪氏は「昭和・平成そして新時代へ」と題する講演の中で、我々は昭和・平成と同時代史を生きてきたが、やがてそれは歴史への移行していくとした。そうした中で、特に昭和史は我々に多くの示唆を与えているという。
 そして昭和史を語るキーワードとして、◇天皇、◇軍事、◇国民の三つを挙げた。
 「天皇」に関しては、昭和の時代に神格化された存在から、象徴天皇、人間天皇へと変化した。
 「軍事」に関しては、軍事主導体制から、非軍事国へと変化した。
 「国民」に関しては、臣民から国民に変化した。とそれぞれを分析した。

 つまり、昭和という時代は、前半と後半では合わせ鏡のようであり、私たちは後者を引き継がねばならないのではないか、と言及した。そして今、前者の顔を復元しようとする勢力の存在が徐々に声を大きくしていることに警戒感を示した。

 次に平成時代を語るキーワードとして、保阪氏は◇天皇、◇政治、◇災害の三つを挙げた。
 「天皇」に関しては、今上天皇が、昭和の時代の遺恨を清算するために追悼と慰霊の旅を繰り返しているのは、人間天皇の枠づくりをしようとしているのだ、と保阪氏は解説した。
 「政治」に関しては、現在の政治はシステムが機能不全を起こしているという。そのシステムとは「小選挙区制と比例代表制」による国会議員の選出方法についてである。つまりこのシステムによって選出された立法府は機能不全に陥っていると保阪氏は指摘する。
 昭和初期の軍部独裁といわれた仕組みは、実は行政独裁でもあったのだが、現代も行政が機能しすぎの傾向があり、立法府がないがしろされている傾向であると指摘した。
 このように政治のシステムがおかしくなるにつれ、選出される国会議員の資質も劣ってきていると指摘した。
 続いて「災害」についてだが、我が国は1995年の阪神淡路、2011年の東日本、2016年の熊本などの大震災をはじめとして非常に自然災害に見舞われることの多い国である。
 そのため、人々は虚無感に苛まれることもしばしばだが、こうした災害に遭った方々が陥るのが「情報閉鎖集団」化されることだという。こうした集団に虚々実々の流言飛語が飛び交うことが憂慮されるという。(このとき保阪氏は「○○ま」という言葉を使ったのだが、それが判然としない)情報化時代だからそこ、反対の意味で小さな流言飛語が人々を混乱に陥れる危険があるので注意しなければならないとした。

 保阪氏は、こうして昭和と平成の時代を振り返り、やがてやってくる次の時代に、二つの時代の反省点を生かしていくためには、国民一人一人が真剣に歴史と向き合うことの大切だとし、保阪氏は「愚民になるな!」と強調された。

 保阪氏の講演の概要は以上のようなものだと解したが、他のお二方もそれぞれの立場から自説を披露され、それぞれが傾聴に値するものだった。
 そして、この後、三人によるパネルディスカッションを行われたのだが、その内容については後日、北海道新聞紙上において詳報が掲載されると案内があった。今日現在、まだ掲載されてはいないが、近日中には掲載されるはずである。興味のある方はそちらをご覧いただきたい。