「自然と芸術の融合」というのが石山緑地のセールスポイントではないだろうか?札幌の建築用材として盛んに切り出された「札幌軟石」の産出地跡を利用して芸術家たちが素晴らしい異空間を創出した「石山緑地」は他には例を見ない貴重な公園の一つである。
明治期から昭和初期にかけて、札幌では建築用材として加工しやすい「札幌軟石」は盛んに活用された。その「札幌軟石」を産出した地が石山地区である。
※ 「石山緑地」の入口表示です。
昭和30年代以降、新たな建築用材の登場により需要が減り、やがて産出を止め跡地が残ったが、そこには切り出されなかった札幌軟石の山が残った。そこは不自然に残った岩肌が一見不気味にも映ったそうだが、そこを札幌を代表する彫刻家5人による造形集団「CIN Q(サンク)」に依頼して公園づくりがスタートしたという。
※ 壁泉とスパイラルリングです。奥の塔の壁を通って水が手前のスパイラルリングに水が流れます。今年はコロナ禍のために水は止められています。
※ 「手をつなぐ石」と名付けられた作品です。
CINQの5人は岩肌が剥き出しになった異様な空間を活かし、札幌軟石や他の石なども巧みに配したうえ、自分たちの作品もさりげなく並べるという、まさに自然と芸術が融合した素晴らしい空間を産み出した。
私は、この登録№020「石山緑地」を「札幌の都市緑地めぐり」で一か月前ほどに訪れてレポしたばかりだったが、このレポのために再び訪れてみた。何度訪れても私の中でその素晴らしさは色褪せることがない。
※ 「札幌軟石」を削り出した跡がうかがえる聳え立つ石の壁です。
※ 「赤い空の箱」と名付けられたオブジェが異空間を際立たせています。
※ さりげなく置かれたベンチも石を加工したものが置かれています。
※ 石山緑地の中心施設(?)のネガティブマウンド(野外ステージ)です。
※ ネガティブマウンドを反対側から見たところです。
特に私は「スパイラルスプリング」と称する「水の広場」、そして中心施設である「ネガティブマウンド」と称する「野外ステージ」が傑作であると感じる。
「ネガティブマウント」は札幌軟石を巧みに配して階段状の客席に見立てている。ちょうどすり鉢状になっているところなど、まるでローマ時代の野外劇場を見ているような錯覚に陥る。しかし、素人の私が不思議に思うのは、「野外ステージ」と称しながらも、中心部分が平坦になってはいないことだ。なにやらその中心部分にも彫刻が施されているのだ。きっと意味があるんだろうが、私にはとんと分からない。過去には、そこで野外劇も演じられたと聞く。その際はおそらく何か工夫をして演ずるのに不自由ないような仕掛けが施されたのだと思われる。
※ 緑地内にはこのような岩がところどころで顔を出します。
※ 「午後の丘」と名付けられた作品です。
※ こちらも「午後の丘」の作品の一部です。
石山緑地の造形を見ていると、私は実際には見たことはないが、大谷石を切り出した後の大きな地下空間を活用した観光施設(大谷資料館)のことを思い浮かべる。
自然をありのままの姿で保全し、観光資源として提示するというのが観光の本道なのだろうが、石山緑地のようにそれまでの自然の姿に手を加えることによって、さらに魅力をアップするという手法は、さしずめ住宅改修でいうところのリノベーションといったところだろうか?
※ 「午後の丘」の背景の剥き出しになった岩肌です。
※ 東屋に置かれたベンチもどこか芸術的です。
開発によって自然が削られ醜くなった姿をそのままにはせずに、反対にそれを活かして再生させた「石山緑地」は、バブル時代に日本各地が開発に晒された跡を再生するモデルの一つとなっているのではないだろうか?
《石山緑地概要》
〔住 所〕南区石山78-24外
〔面 積〕118810平方メートル
〔主たる施設〕・噴水・壁泉(スパイラルスプリング)・像・彫刻(オブジェ「赤い空の箱」「手つなぎ石」「呼吸する門」)・野外ステージ(ネガティブマインド)他
〔駐 車 場〕あり20台,18台,8台 3ヶ所46台
〔問い合わせ〕藻南公園管理事務所☎011-578-3361